医院継承が破談になる原因とは?基本合意後・最終契約前のトラブルと対策
目次
医院継承の破談は、条件の話がまとまってからでも起こります。デューデリジェンスで簿外債務が見つかったり、理事長交代の認可が期日までに下りなかったりするためです。
そこで本記事では医院継承の商談時に破談が起こりやすい3つのタイミングと、それぞれで起きやすいトラブルを解説します。途中でやめたときに負う責任と、破談を防ぐための準備もまとめました。
破談を避けて承継を成立させるために、原因になりやすいポイントから確認していきましょう。
医院承継の破談は3つの段階で起こりやすい
医院承継の商談で破談が起こりやすいのは「基本合意の直後」「デューデリジェンス期間」「最終契約の直前」の3つの時期です。
まずは基本合意の直後から確認しておきましょう。
基本合意直後に起きやすいトラブル
基本合意の直後につまずくのは、価格や条件ではありません。承継の枠組みそのものです。医療法人の社員からの反対と、買い手が医師でないケースです。順に確認しておきましょう。
医療法人の社員・親族からの反対
医療法人の承継において、基本合意の直後に起きやすいトラブルは社員総会における反対です。
医療法人の承継は、法人を残したまま理事長だけを交代させる形で進みます。その交代を決めるのが社員総会です。ここで議決権を持つ「社員」は、出資額の大小は関係なく「1人1票」と決まっています。
たとえば親族の社員が3人いて、全員が反対票を投じたとします。いちばん多く出資した院長先生が賛成しても、理事長の交代は認められません。

問題になりやすいのは、社員の構成を院長先生自身が把握できていないケースです。医療法人をつくったのが数十年前なら、当時お願いした遠い親戚や元事務長が名前を連ねたままのこともあります。何も伝えずに譲渡を進めれば、社員総会で反対票が入るわけです。
しかも社員は、本人が辞めると言わない限り外せません。基本合意の前に、名簿と一人ひとりの意向を確かめておきましょう。
関連記事:クリニックや医院の親子間での承継(継承)。必要な手続きやよくあるトラブルとは?
買い手側が非医師で理事長になれない
買い手側が非医師の場合、承継が進まなくなる場合もあります。医療法によって、理事長は医師もしくは歯科医師から選ぶことが定められているためです。
たとえば投資ファンドがクリニックを買い取っても、ファンドの社員は理事長になれません。基本合意のあとに理事長に就任する医師を確保できていないとわかれば、承継のやり方を一から組み直すことになります。
また、名前を借りただけの医師の配置は認められません。行政は、その医師が経営の責任を実際に負っているかまで確かめるためです。
つまり「医師を1人立てれば解決する話」ではありません。
買い手が非医師なら、理事長になる医師の名前と経営への関わり方を聞いておきましょう。個人クリニックでも、買い手が医師でなければ開設に都道府県知事の許可が必要です。
デューデリジェンス期間に発覚しやすいトラブル
デューデリジェンス(DD)とは、買い手側が売り手側のクリニックを細かく調査することです。財務も労務も契約書も、対象になります。
この調査で起こりやすいトラブルを3つ、確認しておきましょう。
関連記事:医院継承のDD(デューデリジェンス)とは?種類や調査内容、費用をわかりやすく解説
簿外債務・偶発債務の発覚
デューデリジェンス時に帳簿に載っていない借金が見つかると、買い手側は値下げを求めるか、承継の話そのものを見送ります。
代表的なのが未払いの残業代です。決算書に載っていないうえ、スタッフは過去3年分までさかのぼって請求ができます。
たとえば月給30万円で月160時間働く常勤スタッフなら、残業1時間あたりの割増賃金はおよそ2,300円です。10人に月10時間ずつの未払いがあれば、3年分で800万円を超えます。
買い手側は当然、この800万円を譲渡額から差し引くように求めるでしょう。売り手にとっては、想定していた受取額が減少することになります。
ここで折り合いがつかなければ、交渉は破談してしまいます。
スタッフがM&Aに気付いて離職する
デューデリジェンスの資料をそろえる過程で、スタッフに医院承継を検討していることがスタッフに伝わり、離職につながるケースがあります。
デューデリジェンスでは、給与台帳もタイムカードも雇用契約書も、まとめて買い手側に渡します。この準備をするのは経理や総務のスタッフです。普段は求められない書類をそろえるように頼まれれば、担当者は「何かあるのかな」と察するでしょう。
たとえば予約の管理を1人で背負っている受付スタッフが辞めると、その日から診療がまわらなくなります。しかも破談になっても、辞めたスタッフは戻ってきません。
契約スキームの選択ミス
医療法人の承継では、対価の受け取り方が固まらないまま進めると、最終契約の直前で条件が合わなくなります。
対価の受け取り方は大きく2つの方法があり、それぞれ税金が変わってきます。
- 出資持分の譲渡代金としてまとめて受け取る
- 一部を退職金として受け取る
たとえば内部留保の大半を退職金として支払えば、法人に残る純資産が減ります。そのぶん出資持分の譲渡代金も下がるため、買い手側の支払額も変わってきます。
つまり受け取り方ひとつで、売り手の手取りも買い手側の負担も変わるわけです。決めるのが遅れるほど、やり直しの範囲は広がります。
なお個人クリニックの承継は事業譲渡になるため、この選択は生じません。
最終契約締結に向けた交渉で起きやすいトラブル
最終契約の直前になると、最終契約の直前になると、金額や条件について最終的な調整が行われます。ここまで来れば安心と思いたくなるものですが、破談はこの時期にも起こります。
原因は当事者どうしの話し合いと、役所の手続きの両方です。ここで起こりやすいトラブルを5つ確認していきましょう。
譲渡価格・条件面での対立
デューデリジェンスのあとに提示される価格が売り手側の希望を大きく下回り、そのまま破談になることがあります。
譲渡価格は、時価純資産にのれん代(数年分の想定収益)を含みます。そして争点になりやすいのは「のれん代」です。
純資産は帳簿から計算できますが、のれん代は将来の見込みなので評価が分かれるためです。
とくに前院長の腕や人柄で患者がついている医院ほど、医院継承時に「患者離れ」が多くなってしまいます。そのため買い手側も、承継後の推定収益を低く見積もる傾向にあるわけです。
たとえば年間の利益が1,000万円なら、のれん代が1年分と3年分では2,000万円もの差になります。売り手と買い手の評価に差が生じ、価格交渉が難航することがあります。
関連記事:時価純資産(実質純資産)とは?医院継承における評価や計算方法を解説
表明保証条項・MAC条項をめぐる対立
最終契約の条件を詰める段階で対立するのは、帳簿やトラブルの有無について売り手が負う責任の範囲です。
最終契約書には、次の2つの条項が入ります。
| 条項 | 決めていること |
|---|---|
| 表明保証条項 | 契約書に書いたことは本当だと、売り手が約束する |
| MAC条項 | 契約後に大きな悪材料が出たとき、買い手側が契約から降りられる |
表明保証条項で約束するのは、契約を結んだ時点の事実です。未払いの残業代がないこと、患者との間でもめごとを抱えていないことなどが対象になります。
買い手側は、将来問題が発覚した場合に備え、表明保証の対象範囲を広く、保証期間を長く設定したいと考える傾向があります。一方の売り手にとっては、承継から何年も経ってから出てきた話まで責任を負う形になります。範囲も期間も限っておきたいと考えます。
この線引きがつかないまま期日を迎えれば、最終契約には進めません。
関連記事:表明保証とは?医院継承のM&Aで知っておくべきリスクや対策方法を解説
買い手側の資金調達の失敗
買い手側の融資が下りず、最終契約の直前で破談になるケースもあります。医院を引き継ぐには多額の資金が必要で、買い手側は金融機関から融資を受けるのが普通です。
たとえば審査に3か月かかったとします。そのあいだ売り手は独占交渉権を渡しているため、ほかの買い手候補と交渉もできません。待ち続けた結果「融資不可」となった場合、その3か月がまるごと無駄になるわけです。
関連記事:医院・クリニック承継開業の資金調達【コンサルタント解説】
定款変更の認可が最終契約までに下りない
医療法人の承継では、役所の認可が最終契約で決めた日までに下りず、交渉が止まるケースもあります。医療法人が承継にあわせて定款を変えるには、都道府県知事の認可が必要です。認可が下りる時期は行政の審査次第で、書類に不備があればそのぶん延びますし、こちらから急かすこともできません。
最終契約書では、代金を支払って医院の引き渡し日を決めます。その日までに認可が下りなければ、支払いも引き渡しも進みません。買い手側には融資の実行期限がありますし、売り手側も次の予定を組めない状態が続きます。
関連記事:医療法人の定款変更完全ガイド|手続きの流れから費用・失敗しないポイントまで解説
有床クリニックの病床数を維持できない
個人の有床クリニックを承継する場合、前と同じ病床数を引き継ぎできないトラブルも発生します。個人のクリニックを継承する際は一度廃院手続きをしたあと、新たにクリニックの開設手続きを行います。
開設手続きの際に、地域ごとで設定されている病床数がすでに過剰状態だった場合、有床クリニックの開設許可が下りない可能性が高いわけです。
たとえば19床のクリニックでも、許可が下りなければ無床で開業するしかありません。有床診療所は入院基本料が収入の柱ですから、病床数が決まらなければ事業計画も譲渡価格も立てられないわけです。
なお医療法人の場合は理事長の交代だけで承継が完了するので、病床数の問題は発生しません。
関連記事:診療所・病院の承継でありがちなトラブル
【段階別】医院継承が破談した際の法的責任の違い
医院継承が破談した際には、法的な責任が問われる場合もあります。そして、その法的な責任は「基本合意の直後」と「最終契約に署名したあと」でも重さがまるで違います。
段階ごとに確認しておきましょう。
【基本合意後】条項によって異なる
基本合意のあとに破談した場合、責任の有無は条項によって変わります。基本合意書に入る主な条項は次の3つです。
| 条項 | 守る側 | 内容 |
|---|---|---|
| 独占交渉権 | 売り手 | 有効期間中は、ほかの買い手と交渉しない |
| 秘密保持 | 双方 | 受け取った資料を第三者に見せない/交渉していること自体も外に出さない/破談になったら資料を返す |
| DD協力義務 | 売り手 | 買い手の調査に応じ、求められた資料をそろえて出す |
一方で譲渡価額や引き渡しの時期は、最終契約に向けた交渉のなかで変わるものですので、契約違反には該当しません。
そのため「基本合意書に法的拘束力がない事項については、交渉を取りやめること自体が直ちに契約違反となるわけではありません。」
関連記事:医業承継(医院継承)における「基本合意書」の役割・注意点
【DD期間中】独占交渉権・秘密保持義務の違反が違約金の対象になる
DDのあいだに破談した場合も、基本合意書に含まれている独占交渉権と秘密保持義務に違反した際に違約金の対象となります。
たとえば独占交渉権を渡しているあいだに、別の買い手候補と条件の話を始めれば違約金を請求されます。DDで受け取った資料を目的外に使ったり、第三者に漏らしたりした場合も同様です。
関連記事:優先交渉権とは?独占交渉権との違いや法的拘束力を徹底解説
【最終契約書の署名前】交渉経緯によっては損害賠償が発生する
最終契約書への署名前であれば、交渉を取りやめたことだけを理由に直ちに損害賠償責任が生じるとは限りません。ただし、基本合意書などの法的拘束力のある条項への違反や、交渉経緯によっては損害賠償責任が生じる場合があります。
ただし相手に「もう決まったも同然」と思わせておきながら、はっきりした理由もなく急にやめた場合は損害賠償が発生することもあります。
最高裁判所は昭和59年9月18日の判決で、契約の準備段階でも損害賠償の責任を負う場合があると判断しました。
“マンシヨンの購入希望者において、その売却予定者と売買交渉に入り、その交渉過程で歯科医院とするためのスペースについて注文を出したり、レイアウト図を交付するなどしたうえ、電気容量の不足を指摘し、売却予定者が容量増加のための設計変更及び施工をすることを容認しながら、交渉開始六か月後に自らの都合により契約を結ぶに至らなかつたなど原判示のような事情があるときは、購入希望者は、当該契約の準備段階における信義則上の注意義務に違反したものとして、売却予定者が右設計変更及び施工をしたために被つた損害を賠償する責任を負う。”
出典:最高裁判所第三小法廷 昭和59年9月18日判決(昭和59(オ)152)|裁判所
一方、デューデリジェンスの結果を見て条件が折り合わず破談になるのは一般的なことですし、損害賠償にはなりません。
また基本合意書の独占交渉権・秘密保持義務の条項も引き続き有効なので違反した場合には別途違約金が発生します。
【最終契約書の署名後】基本的に損害賠償が発生する
最終契約書に署名したあとに破談すると、基本的に損害賠償を求められます。
例外は「契約書に書いてある解除の条件どおり」にやめた場合です。たとえば「認可が期日までに下りなければ解除できる」と決めてあり、そのとおりに解除した(破談となった)場合、賠償は発生しません。
医院継承の破談を防ぐための対策
破談の原因の多くは、売り手側の準備で防げます。ただし原因ごとに打つ手が違うため、対策は7つに分かれます。順に確認しておきましょう。
交渉の初期段階で承継スキームの設計を弁護士・税理士に相談する
承継を考え始めたら、買い手を探す前に弁護士と税理士にも相談しておきましょう。医院承継の手続きでは、さまざまな専門家が関わってきます。
| 専門家 | 受け持つこと |
|---|---|
| 弁護士 | 契約書の設計、条件交渉の代理 |
| 税理士 | 譲渡価格や税金の試算 |
| 行政書士 | 許認可の申請 |
ただし、院長先生が直接それぞれの専門家に依頼する必要はありません。M&A仲介会社が、必要な場面で適切な士業のプロに依頼をします。
関連記事:医業承継に必要な専門家とは?買い手・売り手別に法律と士業の役割を解説
スタッフへの説明は基本合意が終わったあとに行う
基本合意で買い手候補と大まかな条件が固まったら、社員への説明を始めましょう。
とくに医療法人の社員は、理事長交代の決議に加わる立場です。定款変更の申請にも社員総会の議事録が要るため、ここで反対されると手続きが止まります。
個人クリニックを引き継ぐ場合も、スタッフへの告知のタイミングや説明が重要です。雇用契約の結び直しでトラブルにならないためにも、M&A仲介会社と相談をしながら告知のタイミングを見計らいましょう。
関連記事:事業譲渡時の雇用契約はどうなる?裁判にもなったトラブル事例も解説
買い手側が非医師の場合は医師の確保状況を確認する
買い手が株式会社や投資ファンドなら、理事長を引き受ける医師の名前と、就任の内諾を確かめておきましょう。医師がいなければ、そもそも承継が成り立たないためです。
たとえば買い手側から「いま探しているところです」という返事しか返ってこないなら、最終契約の直前になって承継のやり方ごと組み直すトラブルもありえます。
買い手側の医師が見つかる「めど」が立っていなければ、独占交渉権の期間を短くするなども考えましょう。
定款変更認可の申請は基本合意直後から進める
医療法人の承継では、基本合意の直後から定款変更の書類をそろえ始めましょう。認可が下りるまで、理事長の交代は登記できないためです。
たとえば東京都の場合、仮申請から認可書を受け取るまで3か月程度かかるとしています。
出典:診療所の新規開設や移転等を行う際の手続きについて|東京都保健医療局
最終契約を結んでから申請したのでは、代金の支払いと引き渡しの日に間に合いません。
あわせて、認可が最終契約の日までに下りなかったときの扱いを契約書に書き込んでおきます。「認可が下りなければ白紙に戻せる」と決めてあれば、認可の遅れが損害賠償の話に発展せずに済みます。
基本合意後に主要契約のCOC条項を整理する
基本合意のあと、売り手の院長先生はクリニックの運営に使っている契約書を集めて確かめましょう。建物の賃貸借や医療機器のリース契約には、経営者が代わったときに相手方が解除できると定められた「チェンジオブコントロール(COC)条項」と呼ばれるものが含まれている場合もあります。
たとえば建物の賃貸借契約にこの条項があれば、院長が代わることを理由に貸主から解除を申し入れられます。診療を続ける場所がなくなれば、承継の話そのものが成り立ちません。
診療に欠かせない契約は、売り手の院長先生から貸主や取引先に「院長が代わっても契約を続けてほしい」と伝えて承諾をもらっておく必要があります。
関連記事:チェンジオブコントロール条項とは?クリニックのM&Aで知っておくべき契約リスクと対策
デューデリジェンスの前に簿外債務・未払い残業代を洗い出す
買い手側に調べられる前に、売り手側がしっかりと財務と労務のリスクを出しておきましょう。
【主な簿外債務の確認内容】
- タイムカードと給与台帳の突き合わせ
- 役員貸付金・役員借入金の残高
- リース契約をやめるときの条件など
とくに未払い残業代の発覚は、よくある問題ですので要注意です。
未払いの残業代が見つかったら、弁護士や社会保険労務士と相談したうえで、デューデリジェンスの前に整理しておきましょう。先に片づけておけば、買い手側のリスクそのものがなくなります。
契約前に表明保証条項の内容を専門家とすり合わせる
表明保証条項は、書き方によって売り手が負う責任の重さが変わります。何も限定せずに「開示した情報はすべて真実である」と約束すれば、売り手が知りようのなかった事実まで責任の対象になりかねません。
そこで用いるのが、限定条項と開示スケジュールです。限定条項は「売り手が知る限りにおいて」といった条件を付ける方法、開示スケジュールは、把握している懸念事項を契約書の別紙に記載して保証の対象から外す方法です。
たとえば患者から苦情を受けている事実がすでにあるなら、それを開示スケジュールに記載しておきます。買い手はそれを織り込んで価格を判断でき、売り手はあとから表明保証違反を問われずに済むわけです。
この作業は契約書の文言を扱うため、弁護士と一緒に進めます。
医院継承が破談になった場合に売り手側がすべき対応
どれだけ売り手側の準備が万全だとしても、買い手側との交渉次第で破談することはあります。ここでは医院継承が破談になった場合に、売り手側が行うべき内容を確認しておきましょう。
契約書で違約金・損害賠償の発生有無を確認する
破談になったタイミングによって、違約金や損害賠償の条件が変わるので、まずは契約した条項の内容を確認します。
【医院継承における主な契約書】
- 秘密保持契約(NDA)
- 仲介会社とのアドバイザリー契約
- 基本合意書
- 最終契約書
該当する契約書の「違約金条項・損害賠償に関する定め・解除の条件」を確認し、破談になったきっかけが違約金や損害賠償に該当する場合には、相手側に請求する権利があります。
なお意向表明書は、買い手側が希望条件を伝えるための書面なので、守る義務は基本的にありません。
関連記事:医業承継(医院継承)で使われる主な契約書・書類とは?
破談になった原因を整理して次の買い手候補に備える
同じ理由で2度目の破談を招かないよう、原因を片づけてから次の交渉に入りましょう。まずは破談の原因を「次に直せるもの」と「相手側の事情」に分けます。
たとえば未払い残業代や簿外債務、行政手続きの遅れは、次の交渉までに改善できる内容です。一方で買い手側の資金調達の失敗や社内事情は、売り手側の問題ではありません。
次のマッチングは成約できるように、M&A仲介会社と破談の原因を共有したり改善したりしてから、次の買い手候補を探しましょう。
医院承継の破談に関するよくある質問
医院承継の破談について、先生からよく寄せられる質問にお答えします。
基本合意後に譲渡価格は変わりますか?
変わることがあります。
基本合意書は、独占交渉権や秘密保持義務など一部の条項を除いて法的拘束力を持たないため、基本合意で示した価格は確定額ではありません。
医院承継で保健所の手続きに時間がかかることはありますか?
承継のかたちによって変わります。
個人クリニックの場合「保健所への開設の届出」「地方厚生局に保険医療機関の指定」を申請しますが、指定は原則として毎月1日付で、申請の締切は前月10日前後(厚生局によって異なります)です。締切を逃すと指定が翌月以降にずれ込み、その間は保険診療ができません。
医療法人の出資持分を譲渡する場合は開設者が変わらないため、この申請は不要ですが、代わりに定款変更の認可に3か月前後かかります。
破談になったら仲介手数料は返金されますか?
アドバイザリー契約の中身によります。
仲介手数料の発生時期や返金の可否は、仲介会社との契約内容によって異なります。成功報酬型の場合でも、最終契約の締結時や譲渡実行時など、報酬が発生するタイミングは契約によって異なるため、アドバイザリー契約の内容を確認しましょう。着手金や中間金についても、返金の可否は契約条件によります。
あわせてテール条項も確かめておきましょう。仲介契約が終わったあと、その会社が紹介した買い手側と成約すると手数料を請求される取り決めです。期間は長くても2〜3年が目安になります。
まとめ|医院承継の破談を防ぐには基本合意後の準備が重要
医院承継の破談は、条件がまとまってからでも起こります。よくある原因は社員の反対や簿外債務、認可の遅れなどです。
準備不足による破談を防ぐためにも、売り手側は医療法人の社員の意向確認や契約書の洗い出し、未払い残業代などの簿外債務の整理を事前に進めておくことが重要です。
私たちエムステージマネジメントソリューションズでも、これまで数多くの医院継承を実現してきました。先生のクリニックを次の世代へつなぐためにも、まずはクリニックの現状の整理から、ぜひお気軽にご相談ください。
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この記事の監修者

田中 宏典 <専門領域:医療経営>
株式会社エムステージマネジメントソリューションズ代表取締役。
医療経営士1級。医業承継士。
静岡県出身。幼少期をカリフォルニア州で過ごす。大学卒業後、医療機器メーカー、楽天を経て株式会社エムステージ入社。医師紹介事業部の事業部長を経て現職。
これまで、病院・診療所・介護施設等、累計70件以上の事業承継M&Aを支援。また、自社エムステージグループにおけるM&A戦略の推進にも従事している。
2025年3月にはプレジデント社より著書『“STORY”で学ぶ、M&A「医業承継」』を出版。医院承継の実務と現場知見をもとに、医療従事者・金融機関・支援機関等を対象とした講演・寄稿を多数行うとともに、ラジオ番組や各種メディアへの出演を通じた情報発信にも積極的に取り組んでいる。
医療機関の持続可能な経営と円滑な承継を支援する専門家として、幅広く活動している。
より詳しい実績は、メディア掲載・講演実績ページをご覧ください。
【免責事項】
本コラムは一般的な情報提供を目的としたものであり、特定の取引や個別の状況に対する税務・法務・労務・行政手続き等の専門的なアドバイスを提供するものではありません。個別案件については必ず専門家にご相談ください。