クリニックや医院の親子間での承継(継承)。必要な手続きやよくあるトラブルとは?

売却 2022/05/26

日医総研の調査によると、すでに後継者を決めている医療機関のうち、後継者の属性が「子ども」である割合は診療所で52.9%、病院では34.8%でした*。近年、第三者承継(継承)も増えているとはいえ、依然として後継者は自身の子どもというケースが多いようです。

本記事では、クリニック・医院を親子間で承継する際に必要となる手続きや、トラブルの事例などをご紹介します。

*日医総研ワーキングペーパーNo.422 『医業承継の現状と課題』

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クリニック・医院を親子間で承継する前の準備と対策

いざ、「自分のクリニックや医院を子どもに引き継がせよう」と思っても、綿密な準備をしておかなければ円滑な承継は難しいと言われています。
親子間承継のトラブルを避けるためにも、次の2点については事前に話し合う等しておくことをおすすめします。

クリニック・医院承継の話をする最適なタイミングは?

院長に医師の子どもがいる場合は「将来、自分のクリニックあるいは医院を子供が継いでくれるだろう」と考えがちです。

しかし、子どもへクリニック・医院の承継について話してみると「跡を継ぐ意思がなかった」というケースも多いため、早めに意志の確認をしておいてください。
子どもの意思確認を早めに行うことで、場合によっては第三者への承継を検討できるようになる等、その後の選択肢を多く持つことができます。

なお、子どもにクリニック・医院の跡を継いでもらう場合には、一緒に働く期間を作ることも良いです。
その中で、クリニック・医院の理念や実情、経営状態等を共有しておくことで、親子間承継はスムーズになることが期待できます。

あらかじめ税理士に相談し、相続税対策をする

クリニック・医院を親子間で承継する際は、相続に関する対策をしておくことが大切です。
税理士や医業承継に詳しい専門家に依頼する等して、必要な手続きを行います。

例えば、院長が所有する土地や建物、医療設備なの財産を特定します。その上で、税理士等と相談しながら生前贈与や売却・賃貸借・使用貸借などの方法で子どもに引き継いでおくなど、円滑に承継できるように準備しましょう。

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クリニック・医院を親子間承継する際に必要な手続き:2点

親子間承継の手続き①:現院長の「廃業」と新院長の「開業」

個人経営のクリニック・医院の場合

個人経営のクリニック・医院の承継には、たとえ親子間であっても必要な手続きがあります。承継前に確認して、漏れがないようにしてください。

例として、親子間でクリニック・病院を承継する場合、譲渡する親は「病院廃止届」を所轄の保健所へ提出し、承継した子どもは「病院開設届」提出する必要があります。

なお、書類の提出期限は、クリニック・医院の承継開設後10日以内とされています。

また、もともとのスタッフ・従業員を引き継ぐためには、社会保険事務所や労働局などで手続きも行わなければなりません。

医療法人化しているクリニック・医院の場合

親から子どもに理事長を交代する手続き等を行うことで、クリニック・医院の資産や許認可を保有する医療法人をそのまま承継できます。
スタッフの雇用契約も医療法人と締結しているため、新たな手続きは必要ありません。

なお、出資持分を持つ医療法人の場合には、出資者の持分の移転手続きを行わなければなりません

親子間承継の手続き②:負債の引継ぎ

一般的には、承継するクリニック・医院の未払い金や借入金等の負債についても、後継者がそのまま引き継ぐことになります。

たとえば、親である院長個人で経営するクリニック・医院の経営資金を借入している場合には、個人保証や担保も後継者である子どもが引き継ぎます。

その場合、金融機関で保証人や担保の変更などの手続きが必要です。

クリニック・医院の親子承継で多い3つのトラブル事例

トラブル事例①:親と子の価値観・経営方針の違いによる摩擦

クリニック・医院の承継後、経営方針を巡って親子間でトラブルになってしまう事例。

親子間における価値観の違いから、跡継ぎとして活躍するはずだった子どもが辞めてしまったという話もあるそうです。
親子という身近な関係性だけに、双方が自分の考え方を譲らず、争いになってしまうことが多いようです。

例えば、つい最近まで先進的な大病院などに勤務していた子どもの医師からしてみれば、長年個人でクリニック・医院を経営してきた親の価値観や経営理念に、物足りなさや古臭さを感じることはあるかもしれません。

しかし、承継では、お互いを認めて尊重しあう姿勢が大切です。
親は新院長となった子どもの意見にもしっかり耳を傾け、子どもとしても、親がこれまで培ってきた地域での信頼や実績に敬意を払いながら引き継いでいくようにしましょう。

トラブル事例②:承継が済んだ後も、親が経営権を手放さない

親から子どもにクリニック・医院を承継が済んだ後も、母親などの親族が事務長として残り、予算などを管理しているようなケースもあります。
このような場合、たとえば新院長(子)が設備投資を行いたくても事務長に反対されてしまう等、なかなか思うような経営ができず不満に思うこともあるでしょう。

このようなことにならないよう、クリニック・医院を子どもに承継したのであれば、経営権も子どもに引き継いでいくことが大切です。

トラブル事例③:業務の変化によるスタッフ離れ

新院長が既存の診療スタイルを急に変え、次々に最新のシステムや機材を導入してしまうようなケースは注意。
こうした急激な変化が起こることで、古参スタッフは新しい業務になかなか慣れず、結果的に離職してしまう恐れがあります。

よって、クリニック・医院の承継後、まずは前院長の方式を踏襲してみて、徐々にスタッフにも説明しながら新しいスタイルを取り入れていくようにしましょう。

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まとめ

医院・クリニックを親子間承継する際の準備や手続き、よくあるトラブルについてご紹介いたしました。

リタイアの際、子どもから「承継する気がない」と言われてしまったら、第三者承継もおすすめです。

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