医業承継(病院M&A)で使われる主な契約書・書類6点

契約関連 2022/06/17

医業承継(病院M&A)には、さまざまな契約書や関連する書類が使用されます。
本記事では、契約書やその他の書類について内容と役割を紹介しますので、病院の譲渡・譲受をお考えの方は事前にチェックしておきましょう。

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医業承継(病院M&A)にて使用する主な契約書・書類

医業承継‗M&A 契約書

1.売り手の情報漏洩を防ぐ「ノンネームシート」

ノンネームシートとは、譲渡者(売り手)が特定されない範囲で情報をまとめた資料です。売り手および譲渡検討中の病院・クリニックの業務内容、おおよその所在地や特徴、売上高、営業利益、譲渡理由などが記載されています。

ノンネームシートは秘密保持契約(NDA:後述)の締結前に開示されるケースが多いです。秘密保持契約の締結前に売り手が特定できる内容を譲受者(買い手)へ開示してしまうと、「売り手が譲渡を行おうとしている」という情報が漏えいする恐れがあるからです。

こうした情報の漏えいを防ぐのがノンネームシートの役割です。

また、ノンネームシートは売り手の存在が特定できない範囲でありつつも、買い手が譲渡対象の病院・クリニックをイメージできるような情報が記載されています。

秘密保持契約の締結後にネームクリアにて売り手の個人情報が開示される

秘密保持契約の締結後、ノンネームシートの情報が開示されます。この、買い手に対して売り手の情報(病院・クリニックの名称等)の情報を開示することを、ネームクリアといいます。

なお、売り手はネームクリアを行うか否かの判断ができます。これは、もし買い手の候補者が競合だった場合等に拒否することも可能にするためです。

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2.売り手・買い手の個人情報を守る「秘密保持契約書(NDA)」

2つめの書類は「秘密保持契約書(NDA:Non-disclosure agreement)」です。

秘密保持契約書は、情報の開示範囲や契約の有効期間といった秘密情報の取り扱いを定めることで、情報漏えいや第三者による不正利用を防ぐ目的で締結されます。

よって、医業承継(病院M&A)における秘密保持契約では、関係者が取得した個人情報をはじめ、譲渡の理由、そのほか面談等で得た内容等を第三者に開示しないことが定められます。

また、秘密保持契約書の締結には「売り手と買い手のそれぞれが仲介会社とNDAを結ぶ」あるいは「売り手と買い手が直接NDAを結ぶ」という、主に2つの形式があります。

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3.医業承継(病院M&A)の仲介会社と締結する「アドバイザリー契約書」

3つ目の書類は「アドバイザリー契約書」です。

アドバイザリー契約書は、医業承継(病院M&A)を仲介会社等に依頼する際、その会社との間で締結するものです。

医業承継(病院M&A)仲介会社の業務内容や契約金額、交渉に関する決め事等について、合意するための内容が記載されます。

なお、このアドバイザリー契約書は、秘密保持契約の締結の前後に行うことが一般的です。

4.買い手が医業承継(病院M&A)の意志を伝えるための「意向表明書(LOI)」

医業承継(病院M&A)における重要な書類の4つ目は「意向表明書(LOI : Letter of Intent)」です。

意向表明書は、その名の通り病院・クリニックを買収する意向や希望条件等を伝える書類であり、買い手が売り手に対して提出するものです。

意向表明書を提出することで、承継に対する意志の強さを伝えられるという利点もあります。特に、買い手の候補者が多数存在する場合などには効果を発揮しますので、売り手から独占交渉先に選んでもらうためにも提出すると良いでしょう。

5.買い手・売り手の認識を合わせる「基本合意書(MOU)」

医業承継(病院M&A)に関する基本的な条件のすり合わせが行なわれると、次のステップで交わされる書類が「基本合意書(MOU:Memorandum of Understanding)」です。

基本合意書は、売り手と買い手双方の認識を揃えるために締結される重要な書類です。

なお、前述した意向表明書を提出していない場合であっても、基本合意書を取り交わすことにより、買い手は売り手から譲渡案件の「独占交渉権」が与えられます。

また、病院・クリニックの規模が小さい場合や、譲渡成立までの時間が限られているような場合では、基本合意書が省略されることもありますが、秘密保持義務や独占交渉権の観点から推奨はされません。

6.医業承継(病院M&A)における「最終契約書(DA)」

基本合意書が承継の中間地点で締結されるのに対し、「最終契約書(DA:Definitive Agreement)」は文字通り医業承継(病院M&A)の最終段階で締結される書類です。

最終契約書(DA)には、主に取引の基本条件や表明保証、宣誓、クロージング実行の前提条件、補償などが記載されます。

医業承継における最終契約書は、①医療法人譲渡時の最終契約書と、②事業譲渡時の最終契約書(個人経営の医院や分院など)の2種類に分かれます。

①医療法人譲渡時の最終契約書

医療法人の承継は、出資持分または拠出金債権の譲渡と経営陣の交代という形で行われます。そのため、最終契約書は、出資持分もしくは拠出金債権を譲渡する書類と、経営権を引き継ぐための書類の2種類になります。

・出資持分払戻債権譲渡契約書または、拠出金返還請求債権譲渡契約書

承継対象が出資持分ありの医療法人の場合は出資持分を譲渡する「出資持分払戻債権譲渡契約書」を、基金拠出型医療法人の場合には拠出金の返還請求権を譲渡する「拠出金返還請求債権譲渡契約書」を締結します。

・経営引継契約書

経営引継契約書は、社員や役員といった経営陣を交代するための手順などが定められています。形式は決まっておらず、単に覚書という名称の場合や、出資持分や拠出金債権を譲渡する書類と合わせて1種類の契約書とする場合もあります。

②事業譲渡時(個人経営の医院や分院など)の最終契約書

個人医院や分院の承継は事業譲渡により行われるため、最終契約書は事業譲渡契約書の1種類のみになります。

・事業譲渡契約書

個人経営の医院や分院の運営に必要な、資産や権利の譲渡対象が定められています。

医業承継(病院M&A)に関する契約書・書類確認の要点

医業承継‗M&A 契約書

要点①:ノンネームシートの情報を見極める

ノンネームシートの作成には明確なルールがないため、病院M&Aの仲介会社によって様式が違ったり、用語の定義が微妙に異なっていたりする場合があります。

さらに、買い手にとって「メリットになる情報は大きく」「デメリットとなる情報は小さく」表記されている場合もあるので、ノンネームシートの段階での情報をそのまま信用せず、慎重に判断するようにしましょう。

要点②:秘密保持契約の内容を確認する

秘密保持契約では、秘密情報の範囲や情報の管理方法、情報漏えいが発生した場合の損害賠償などを定めます。

しかし、秘密保持契約を締結後、もし情報漏えいがあったとしても、損害の立証が困難であるため、実際には損害請求が難しいという問題もあります。

締結前に、秘密情報の定義や範囲、秘密保持義務の具体的な内容、情報漏洩の防止措置、行為の差し止めに関する条項などが整備してあるのかをしっかり確認しておくことが重要です。

要点③:知識・ノウハウを持つ専門家に相談してみる

ここまで、医業承継(病院M&A)に関する書類・契約書について挙げてきましたが、すべてを自作することは容易ではありません。

また、必要書類や契約書はここに挙げた他にもあり、作成には医療に関する法律や税務などの知識も必要となります。

当社は、医業承継(病院M&A)の支援を専門に行っている仲介会社です。そのため、承継に関する多くの実績はもちろん、医療施設とも多くのネットワークを有しています。

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