医業承継における「ネームクリア」について

契約関連 2023/05/31

医業承継において、「第三者承継」と呼ばれるM&Aが近年増加しています。M&Aでは、まず、売り手側が特定されない範囲で、概要情報が記載された「ノンネームシート」により、買い手候補を探索します。そして、買い手候補が買収意思を示した後で、次のステップとして、売り手側は具体的な病院名等を開示することになります。これが「ネームクリア」です。

本記事では、医業承継におけるネームクリアのプロセスについて解説します。

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ネームクリアとは

本記事での医業承継は、第三者による承継、すなわちM&Aのことを指します。M&Aで買い手候補は、匿名性の高いノンネームシートの中から売り手候補を絞り込んでいきます。そして、買い手候補の持つイメージに近いノンネームシートが見つかると、売り手候補に対して具体的な情報の開示を求めます。

こうした買い手候補のリクエストに応じ、売り手側が具体的な病院名などを開示することを、「ネームクリア」といいます。

ネームクリアの目的

医業承継は、不動産などの売買とは違い、具体的な情報はできるだけ開示しない形で進めて行きます。これは、院長が医院の買い手を探していることが広く知られてしまうと、医療従事者をはじめ取引先や通院している患者さん達に不安を抱かせてしまう恐れがあるからです。

ですが、ある程度以上の具体的な情報を買い手候補に示さなければ、そもそも買うかどうかの判断をすることができません。

このように、医業承継は通常の商取引などと比べるとかなり特殊なため、匿名性の高いノンネームシートを経てネームクリアを行うプロセスが採用されています。

ネームクリアまでの手順

次に、ネームクリアまでの手順について解説します。医業承継の売り手側がノンネームシートを用いて買い手候補探しをスタートしてからネームクリアを行うまでの手順は、おもに以下の5つです。

  1. ノンネームシートを作成する
  2. ノンネームシートを見て買い手候補が検討する
  3. 買い手候補に情報を開示するかを検討する
  4. 秘密保持契約書を締結する
  5. ネームクリアを行い詳細な情報を開示する

1.ノンネームシートを作成する

医業承継の買い手候補を探すにあたり、はじめに行うのがノンネームシートの作成です。具体的な病院名や住所などが特定できないように細心の注意を払いつつ、病院の特徴や魅力などができるだけ正確に相手に伝わるように、過不足なく記載します。

なお、一般的にノンネームシートは、医業承継をサポートする仲介会社のアドバイザーが売り手側の院長などにインタビューを行い、それをもとに仲介会社が作成します。

2.ノンネームシートを見て買い手候補が検討する

ノンネームシートが出来上がると、売り手側の特徴や買い手との相性なども考慮した上で、医業承継を計画している買い手候補に対して仲介会社からの提案が行われます。

提案を受けた買い手候補はノンネームシートの内容を確認し、自身がイメージする売り手候補の条件と一致するかどうかを確認します。その結果、買い手側がもう少し本格的な情報を確認したいと考えた場合は、売り手側に対してネームクリアをリクエストします。

3.買い手候補に情報を開示するかを検討する

買い手候補からネームクリアのリクエストを受けた売り手側は、買い手候補に対してネームクリアを行うかどうかの検討をします。

たとえば、買い手候補が競合だったなどの理由により「買い手候補として相応しくない」と判断した場合は、ネームクリアを行わず、新たに次の買い手候補が現れるのを待ちます。

反対に、買い手候補として望ましいと思われた場合はネームクリアを行い、医業承継に向けた交渉を進めて行きます。

4.秘密保持契約書を締結する

買い手候補に対してネームクリアを行うことが決まったら、これらの情報を開示する前に秘密保持契約書を締結します。秘密保持契約書とは病院に関する財務情報や従業員名簿、取引先情報など、交渉過程で知りえた機密情報を第三者へ開示しないことを定めた契約書で、情報漏えいや第三者による不正利用などを防ぐ目的で締結されます。

この秘密保持契約書を締結せずにネームクリアを行ってしまうと、ネームクリアによって買い手側が得た情報を売り手側が守る術はなくなり、莫大な損失を負いかねません。したがって、ネームクリアをする前には、必ず秘密保持契約書を締結する必要があります。

5.ネームクリアを行い詳細な情報を開示する

秘密保持契約書を締結したところで、いよいよネームクリアを行います。なお、ネームクリアでは売り手の病院名だけでなく、病院の財務状況をはじめとする具体的な内容をまとめた企業概要書(IM:インフォメーションメモランダム)などが買い手候補に対して開示されます。

こうして開示された情報をもとに、買い手候補は売り手に対する買収を本格的に検討することになります。

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ネームクリアの段階で起きがちなトラブル・注意点

では最後に、ネームクリアの段階でよく起きるトラブルや注意点などついて解説します。ネームクリアに関するトラブルや注意点は、おもに以下の3つです。

  • ネームクリア前に必ず秘密保持契約書を締結する
  • ネームクリア時に提示する資料の作成には細心の注意を払う
  • 医業承継に詳しい専門家のサポートを積極的に受ける

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ネームクリア前に必ず秘密保持契約書を締結する

ネームクリアを行うと、売り手側の病院名や所在地などの基本情報から、事業の概要や財務状況、主要取引先などに関する詳細情報に至るまで、病院経営に関するあらゆる内容が買い手候補に開示されます。

開示された内容の秘密保持が遵守されず外部に漏えいしてしまうと、医業承継が不成立に終わってしまうだけでなく、病院の信用は大きく崩れその後の経営に深刻なダメージが与えられかねません。

たとえば、情報が洩れて医業承継の噂が立ってしまうと、病院が売りに出されると思い退職を考える医療従事者も現れます。医療従事者が退職してしまえば、病院の経営はもちろん、人材獲得を目標とする買い手の意思にも大きな影響を与えます。

したがって、ネームクリアを行う前には必ず秘密保持契約書を締結するとともに、お互いがそれを遵守することを心がけなければなりません。

万が一秘密保持が遵守されず、相手方に損害が生じた場合には、損害賠償請求を受けることになります。そうならないように、秘密情報の取り扱いには十分に注意するように心がけましょう。

ネームクリア時に提示する資料の作成には細心の注意を払う

ノンネームシートには売り手が特定されない程度の情報しか記載できないため、買い手に対して本格的なアピールができるのは、ネームクリアの段階からです。

買い手がネームクリアを求めたからといって、必ずしもその後の進展があるとは限りません。ネームクリアをして本格的に検討してみたものの、思うような相手でなかったため取引が終了となることもあります。こうなってしまっては、今までかけてきた時間はすべて無駄になり、また振り出しに戻らなければなりません。

したがって、ネームクリア時に買い手候補に提示する資料を作成する際には、売り手側の病院の魅力が十分に相手側に伝わるように留意しながら企業概要書などの資料を作成するようにしましょう。

医業承継に詳しい専門家のサポートを積極的に受ける

ネームクリア前に締結する秘密保持契約書は、法的に不備がないものを作成しなければなりません。これを作成し、リーガルチェックを行うためには、医療承継に詳しい専門家のサポートが必要です。

また、企業概要書には、買い手に売り手側の魅力を過不足なく十分に伝わるものでなければなりませんが、こうした資料の作成に慣れていなければ、思い通りの結果を望むことは難しくなってしまいます。

このように、医業承継のプロセスは専門的なものが多いため、医業承継に詳しい専門家のサポートを積極的に受けるとよいでしょう。

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