医療法人の理事とは?社員との違いや職務について

医療法人を率いるトップマネジメントは「理事長」です。これは多くの方がご存じでしょう。

理事長は、文字通り「理事の長」ですが、では、医療法人における「理事」とは、どんな役割の役職なのでしょうか? 病院関係者であっても、改めてそう聞かれると、すぐ正確に答えられる方は、案外少ないのではないかと思われます。

また、医療法人の構成メンバーには「社員」もいますが、社員と理事との違いも正確には理解されていることが少ないようです。

本記事では、医療法人に欠かせない役職でありながら、正確に理解されていることの少ない、医療法人の「理事」について解説します。

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理事は、医療法人の必要機関の1つ

医療法では、医療法人に必要な「機関」が規定されています。理事は、その「機関」の1つです。法人の機関という言葉に馴染みのない読者もいると思われますので、まず機関について説明します。

法人の機関とは?

医療法人は「法人」の一種です。法人とは、自然人(人間)と同様に、法律上の権利・義務の主体となることができる、法律上の存在のことです。

法的な権利・義務を持つといっても、法人という法的な存在自体が、自ら意志決定をしたり、業務を執行したりすることができないことはいうまでもありません。それらを実際におこなうのは、その法人を構成する人間です。

そして、法人を構成し、意志決定や業務執行などの行為をおこなう「役割」(役職)や「会議体」のことを、法人の「機関」と呼びます。

例えば、株式会社であれば「株主総会、取締役、取締役会、監査役、監査役会、会計参与、会計監査人、委員会」などが設置できる機関として、会社法で規定されています。ちなみに、株主総会と取締役会は必須機関ですが、それ以外の機関の設置は会社によって異なります。

理事や理事会は、医療法に定められた医療法人の機関

医療法の「第三節 機関 第一款 機関の設置」において、医療法人の機関について下記のように定められています。

医療法 第四十六条の二
社団たる医療法人は、社員総会、理事、理事会及び監事を置かなければならない。
2 財団たる医療法人は、評議員、評議員会、理事、理事会及び監事を置かなければならない。

引用:医療法

医療法人においては、上記の機関はすべて必須です。

(なお、上記条文にあるように、医療法人には「社団たる医療法人」と、「財団たる医療法人」の種類がありますが、現存する医療法人の99%以上は社団たる医療法人なので、本記事では以後、特に断りのない限り、社団たる医療法人を前提に説明します)。

つまり、医療法人の「理事」とは、医療法に規定された医療法人の機関の1つなのです。

そして、理事の役割は、「理事会」の一員として、医療法人の業務執行に関する決定を担うことです。この点において、医療法人の理事は、株式会社における「取締役」に、そして理事会は「取締役会」に類似する機関だといえます。

また、理事会において、理事の中から「理事長」が選出されます

理事長は、原則として、医師または歯科医師でなければなりません。理事長の役割は、株式会社でいうと「代表取締役」に似ています。医療法人を代表し、その一切の行為をする権限を有する者となります。

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理事の選出、任期、資格、必要数

理事は、定期または臨時の社員総会(後で説明します)で選出されます。理事の任期は2年です。

理事になれるのは、自然人のみで、法人は理事になることができません。また、以下のいずかれに該当する者は、理事になれないことが、厚生労働省「医療法人運営管理指導要綱」に記載されています。

①精神の機能の障害により職務を適正に行うに当たって必要な認知、判断及び意思疎通を適切に行うことができない者。
②医療法、医師法等、医療法施行令第5条の5の7に定める医事に関する法令の規定により罰金以上の刑に処せられ、その執行を終わり、又は執行を受けることがなくなった日から起算して2年を経過しない者。
③②に該当する者を除くほか、禁錮以上の刑に処せられ、その執行を終わり、又は、執行を受けることがなくなるまでの者。

引用:厚生労働省「医療法人運営管理指導要綱」

さらに、医療法人と関係のある特定の営利法人の役員が理事長に就任したり、役員として参画したりしていることは、非営利性という観点から適当でない、とされています。

なお、理事の人数については、医療法第第四十六条の五において、理事3名以上(都道府県知事の認可を受けた場合は例外あり)、および監事1名以上を置かなければならないとされています。

医療法人の「社員」と「理事」の関係

出典:厚生労働省「医療法人の基礎知識」

社団医療法人における最高意志決定機関は、法人の「社員」によって構成される「社員総会」です。社員総会は、株式会社でいうと「株主総会」に相当しますが、議決権割合が1人1個である点などが異なります。

なお、社員総会を構成する「社員」は、株式会社でいう「株主」に近い立場の者です。法人と雇用契約を結んで雇われる「使用人(=従業員)」のことではないので、注意してください。

医療法人の理事は、社員総会の決議によって選出され、理事は社員から委託されて、医療法人の業務を決定する権限を与えられているという関係にあります。この点において、医療法人における社員と理事との関係は、株式会社における「株主」と「取締役」の関係と相似しているといえます。

理事は社員から委託を受けて職務を執行し、社員総会に対して、業務に関する事業報告書等を提出し説明をする義務を負っています。

また、理事が社員の意志に反する業務執行をおこなった場合などは、社員総会決議により理事を解任することもできます。これは、理事長であっても同様です。

医療法人の具体的な業務運営に関する決定をするのは理事(理事会)ですが、それはあくまで、社員から任されておこなっているというのが理事の立場なのです。

その関係性からいえば、理事(理事長も含め)よりも、社員のほうが組織構成上は、“上の立場”であるということができます。

ただし、社員が理事に就任することは、医療法上、禁じられていません。実際には、多くの医療法人で、社員の中から理事や理事長が選出されています。

一方、監事は理事を監査する立場であるため、監事と理事の兼任は認められていません。

理事会の職務

実は、理事会は、2016年の医療法改正以前は、医療法で規定された機関ではありませんでした。しかし同改正により、現在では、社員総会、理事、監事と並んで、必要な機関として規定されています。

理事会は、全理事によって構成される合議体で、医療法人における業務執行の意思決定をおこなう機関です。具体的には、「医療法人の業務執行の決定、理事の職務の執行の監督、理事長の選出および解職」をおこなうこととされています。

※参照:医療法 第四十六条の七

医療法人運営における業務の進め方を決めているのは理事会ということです。

もちろん、業務の実際に細かい部分まですべて理事会で決定することはできませんから、各理事や、院長、診療部長、事務長などに業務権限を委譲し、それらの人たちから上がってきた稟議や報告を理事会で承認決定するということが多くなるでしょう。

ただし、医療法では、理事会が理事に委任することができない決定事項も定められています。

それは、

  • 重要な資産の処分及び譲受け
  • 多額の借財
  • 重要な役割を担う職員の選任及び解任
  • 従たる事務所その他の重要な組織の設置、変更及び廃止

などです。

※参照:医療法 第四十六条の七

これらは理事(理事長を含む)に委任することができず、理事会でのみ決定されなければなりません。例えば、重要な資産の処分について、理事会に諮らずに理事長が専断することはできないということです。

理事の責任

理事は、法令および定款並びに社員総会の決議を遵守して、医療法人のため、忠実にその職務を行わなければならないこととされています。

また、医療法人に著しい損害をおよぼすおそれのある事実があることを発見したときは、直ちに、その事実を監事に報告しなければならないことも定められています。

※参照:医療法 第四十六条の六の三、六の四

例えば、他の理事が不正を働いているのを知ったときなどに、見て見ぬ振りをするのは許されないということです。

さらに、理事は、「その任務を怠つたときは、当該医療法人に対し、これによって生じた損害を賠償する責任を負う」、「医療法人の評議員又は理事若しくは監事(中略)がその職務を行うについて悪意又は重大な過失があつたときは、当該役員等は、これによって第三者に生じた損害を賠償する責任を負う」とされています。

※参照:医療法 第四十七条

つまり、医療法上、理事には、職務怠慢や重大な過失に対する医療法人に対する損害賠償義務とあわせて、第三者に対する損害賠償責任も規定されているのです。

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まとめ

医療法人の理事は、株式会社でいうと取締役のような、業務的意志決定をおこなう立場の者です。社員総会により委任されて、その任につき、社員総会の決定事項を遵守しなければなりません。場合によっては、社員総会決議により、解任されることもあります。

実際上は、多くの医療法人で、社員=理事となっており、上記の関係が正確に理解されていないことも多いでしょう。しかし、事業承継などによって、社員や理事の交代が生じる際には、それぞれの役割について正確な理解が必要となります。

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