【九州×美容皮膚科】自由診療の美容整形クリニックを事業集中のために譲渡

【九州×美容皮膚科】自由診療の美容整形クリニックを事業集中のために譲渡
【九州×美容皮膚科】自由診療の美容整形クリニックを事業集中のために譲渡
エリア 九州圏
診療科目 美容皮膚科(医療脱毛)
運営組織 個人経営
譲渡理由 事業整理
運営年数 2年

M&Aによる第三者承継を検討している売り手が、何らかの事情により、急いであるいは一定の期限までに譲渡したいということがあります。そのような場合には、譲り受けの相手選びや、M&A実行プロセスにおいてその優先目的を常に念頭に置き、ぶれないようにコントロールしながら進めることがポイントです。

【売り手側】多数経営するクリニックの大半を、選択と集中で譲渡

売り手となったのは、九州地方某県の県庁所在地にある医療脱毛専門の美容クリニック、藤井クリニック(仮称)です。クリニックオーナーの藤井先生(仮名)は、近隣で計4軒のクリニックを経営する50代の皮膚科医師です。ご自身は別のクリニックで院長として勤務しており、藤井クリニックの院長は大学の後輩の医師に任せていました。

藤井クリニックが駅近くのビルの2階で開院したのは2年程前で、藤井先生が経営するクリニックの中では最近の開院でした。当初からレーザー機器を用いた医療脱毛を専門としており、保険診療は行わず自由診療のみで経営してきました。

自由診療が100%の場合、保険診療と比べれば当然、患者1人あたりの収益は高くなります。

しかし一方で、広告・宣伝、ホームページ運営などのマーケティング費用がかさみます。近隣エリアに競合となる美容クリニックも複数存在しているため競争は厳しく、集患は楽ではありません。また院長に支払う報酬も必要です。そのため、開院から2年近く経った時点でも最終的な利益はわずかで、平均するとぎりぎり赤字にならない程度の利益でした。

開院当初、藤井先生はマーケティングに力を入れれば長期的には患者を増やしていけると考えていまたした。しかし、少し前からご家族の事情により業務時間を大幅に減らさなければならなくなってしまいました。そのため複数のクリニックの経営が難しくなってしまい、自身が院長を勤めているクリニック以外の3つのクリニックはM&Aで譲渡することを決断します。藤井クリニックは、そのうちの1軒です。

【買い手側】保険診療から自由診療にチャレンジ

買い手となったのは、40代の皮膚科医師、中田先生(仮名)です。中田先生は同じ県内で2軒のクリニックを経営していましたが、それらはいずれも保険診療中心の経営でした。

かねてより自由診療のみで経営する美容クリニックに興味を持っていたものの、ゼロからマーケティング施策などを実施するのはハードルが高いと考え、M&Aでの譲り受けを希望なさっており、本件に興味を持ってくださいました。 なお、最終的に買い手となった中田先生以外にも、2つの医療法人が譲り受けの意思を表明しました。

売り手がM&Aを急いだ事情

実は、藤井先生は私たちにご相談いただく前に、別のM&A仲介会社に仲介を依頼しており、買い手候補と基本合意までは進んでいました。

基本合意を受けて、藤井先生はクリニックが入居しているビルのテナント契約の解除を申し入れていました。商業テナント契約の解除は、退去予定日の6か月前までに申し出なければならないとされているケースが多く、藤井クリニックが入っているビルも同様でした。基本合意が提携されたのでもう大丈夫だろうと思い、半年以上先の退去日を想定してテナント契約解除を申し出たのです。

ところが、最終契約の交渉段階で、買い手の事情によりM&Aが破談となってしまいました。すでにテナント契約解除を申し入れていることに加えて、ご家庭の事情もあるため、藤井先生は困ってしまいました。そして、可能な限り早期に譲り受けてくれる相手を探してほしいということで、私たちにご相談をいただいたのです。

優先事項がぶれることのないようにサポート

中田先生と2つの医療法人の合計3者の譲り受け意向表明を受け、トップ面談を実施した後、藤井先生は当初、1つの医療法人への譲渡を希望なさっていました。その理由は、数多くの医療機関を経営する大手医療法人であるため安心感があったこと、また譲り受け希望価格がもっとも高かったことなどです。

しかし、私たちは中田先生のほうがベターであると藤井先生に推奨をしました。理由は、過去の経験上、その医療法人は大組織ゆえに細かい条件などの決定に時間がかかる傾向があったためです。またトップ面談時点では、院長となる医師が定まっていないという点も懸念材料でした。

一方、中田先生は、譲り受け希望価格の面では低い水準だったものの、個人であるため意思決定は迅速でした。また、現在院長を勤めているクリニックを勤務医に任せて、藤井クリニックに自分が院長として入ることができるといい、その面で検討が遅れる心配もありませんでした。

私たちは藤井先生と密に連絡を取りながら優先事項を整理し、スピードと確実性であること再確認して、最終的には中田先生がベストであると藤井先生からも納得していただけました。

確実な譲渡を目指すために違約金を設定

通常のM&Aプロセスでは、基本合意書の取り交わしまでは複数の買い手候補と並行で交渉ができますが、基本合意締結後は合意をした相手、この場合は中田先生とのみ交渉を続けることになります。

ここで、藤井先生は以前の破談の経験から、基本合意後に再び破談となることを強く懸念され、より確実な段取りを求められました。M&Aは交渉ごとですので、100%確実ということはありえませんが、より確実性を高める手段はあります。私たちは、中田先生に申し出て、「買い手の都合による破談となった場合、違約金を支払っていただく」旨の合意を取り付けました。

もちろん、実際に破談となったら違約金を払ってもらったところで困ることにはなるのですが、いわば「本気度」と確かめるための要件として、これを設定しました。中田先生は抵抗を感じられたようですが、私たちが売り手の藤井先生のご事情を正直かつ丁寧に説明し、理解を得ることができました。

■■■関連記事■■■

自由診療の美容クリニックならではの会計上の論点

本件でもう1つ特徴的な点は、藤井クリニックが自由診療のみの医療脱毛クリッニックである点です。脱毛治療は複数回の施術を受けられるコース契約を患者に結んでもらい、そのコース全回分の対価を最初に支払ってもらいます。

その金額は、未提供の役務に対する前受金として、貸借対照表の負債の部(受け取った現金は資産の部の現預金)に計上されることになります。藤井クリニックではこの契約件数が300件ほどあり、前受金は約5,000万円計上されていました。

もしクリニックが廃業や長期間休業となると、契約者全員に連絡をして契約金返還などの手続きを取らなければなりません。これは大変な手間です。 その手間を避けるためにも、早期に確実な譲渡を実施したいというのが藤井先生の意向でした。

広告代理店引き継ぎに関するトラブル

最初に述べたように、美容系の自由診療クリニックの経営は広告・宣伝などのマーケティングがかなり重要な部分となります。買い手の中田先生はこれまで通常の保険診療クリニックの経営しかしていないため、マーケティングの実施経験がほとんどありません。そこで、それまで藤井クリニックの宣伝やWebサイト運営を担当していた広告代理店に引き続きサポートしてもらうことを希望しました。

ところが、その広告代理店会社はM&A後に、業務の受託を続けることを断ったのです。この理由は不明なのですが、困ったのはマーケティング知識がない中田先生です。

私たちはネットワークをたどって、藤井クリニックのある地域で美容系クリニックの広告経験の豊富な広告代理店を探し、承継後の業務を依頼できることを確認して事なきを得ました。 こうして、無事に最終契約を締結することができました。

事例のポイント

最後に、本事例のポイントをまとめておきます。

①売り手に寄り添って、真のニーズを捉えた提案ができたこと

藤井先生とのヒアリングを通じて、最優先課題は「早く、確実に承継を実現すること」だと理解していました。売り手自身は長期間にわたるM&Aプロセスにおいて複数の相手候補との交渉をするなどの複雑な面もあるため、買い手自身が本来優先すべき事項を見失ってしまうこともあります。

売り手が本来の目的や優先事項からぶれてしまっているときには、M&Aをサポートするコンサルタントが、しっかりと売り手を支えることが大切です。

②より確実化させるための工夫が奏功

M&Aのプロセスには、思わぬところに障害が潜んでいることがあります。本件では、広告代理店が業務の継続を受け入れないという想定外の事態もありました。

また、基本合意後に買い手にも納得してもらえる形で違約金を設定することも、ややイレギュラーな形です。そういった外部要因によるアクシデントやイレギュラーな要素にも、素早く柔軟に対応できたこともポイントでした。

③自由診療の美容クリニックならではの会計論点

M&Aの本質的な部分については、一般の保険診療クリニックでも自由診療クリニックでも変わるところはありません。

しかし、多額の前受金が計上されているなど、会計、財務の評価ポイントが大きく異なることがある点は、留意しておいたほうがよいでしょう。

自由診療クリニックの承継をお考えの場合は、こちらからお気軽にお問い合わせください。

医業承継バナー_売却_1 医業承継バナー_買収_1
▼おすすめの買収・譲受案件はコチラ!▼

最新の成約実績

成約実績をもっと見る