院長の体調不良で休診中のクリニックが、希望した水準の価格で譲渡できた理由とは

初めてクリニックを譲り受ける個人医師の心情にも配慮しながら双方の条件をすりあわせたことが、わずか1か月の短期承継に結びつく
エリア 首都圏
診療科目 泌尿器科、内科
運営組織 個人経営
譲渡理由 高齢によるリタイア
運営年数 25年

今回の売り手クリニックの院長から譲渡のご相談を受けた際、そのクリニックは休診(休業)中でした。もちろん、休診中でも譲渡は可能です。しかし、どうしても条件面で厳しくなることは否めません。そこで、他の選択肢をご提案することにより、売り手の望まれた目線に近い条件での譲渡に成功しました。

【売り手側】駅前の好立地で順調に経営していた泌尿器科クリニック

CPクリニックは、東京都東部のZ区に所在する泌尿器科を中心にしたクリニックです。

駅前のロータリーに面したビルの2階という好立地で、通りからも目立つため患者が途切れることがありません。またそのような好立地であるにも関わらず、入居しているビルのフロアの賃料は周辺相場と比べて6~7割程度の水準と、格安でした。

院長のCP先生がクリニックを開設したのは25年ほど前で、開院当初は別の場所でした。しかし、開院から10年ほど経った時に以前のビルが建て壊されることとなり、現在の場所に移転してきたのです。以前のビルと現在のビルは同じオーナーで、オーナーの都合で移転になるからということで、新しいビルの家賃を割安に設定してもらえたのです。

また、オーナーは地元に多くの土地を多く持つ、古くからの地主一族で、賃料収入よりもクリニックなど地元の人に必要な施設に入居してもらいたいという意向がありました。CP先生とも良好な関係を築いていたこともあり、家賃が値上げされることはありませんでした。

ベテラン院長の丁寧な診療と駅前の好立地により安定した患者数があり、さらに固定費用である家賃が安かったことから、CPクリニックは毎年順調に利益を残していました。

高齢の院長の体調不良で休診に

ところが、院長のCP先生は2年ほど前70歳になって以降、体調不良を感じるようになりました。精密検査を受けたところ神経系の疾患が発見されます。たびたび強い倦怠感に襲われ、ついに2か月程前からクリニックを完全に休診(休業)としました。

70代という年齢もあって、CP先生はそのままクリニックを譲渡してリタイアしようと考え、私たちにご連絡をいただいたのです。

休診中のクリニックは評価が厳しくなる

業績の良いクリニック経営をしてきたためCP先生の個人資産には余裕があり、リタイア後の生活資金に困る状況ではありませんでした。

しかし、長年経営してきたクリニックは、いわば“医師人生の集大成”であり、その価値を低く見積もられたくないという気持ちを強くお持ちで、一定水準以下の価格では譲渡したくないというのがCP先生の意向でした。ただ、その際にネックとなるのはクリニックが休診中であることです。

譲り受け手にとって、クリニックを承継するメリットの中心は者がついているので開業初期の集患労力がほぼ不要になる点です。ところが、譲渡時点で長期間休診していれば患者は離れてしまっており、そのメリットが享受できません。当然、評価額の目線もその分下がります。

もちろん、長年その場所で経営してきた信用のあるクリニックですから、再開すればまた患者が戻ってくるでしょう。また、もともと好立地であるため、新規の集患も比較的やりやすいという強みはあります。しかし、通常通り診療を行っている状態と比べれば、休診中のクリニックの評価はうしても下がってしまうことが否めません。

私たちは上記の点を、CP先生に丁寧に説明した上で、様々な可能性、選択肢を先生と一緒に検討しました。その中から、しばらく休養して体調も回復傾向にあったCP先生は、一度休診をやめて診療を再開することを選択されます。すると再開後はすぐに患者が戻ってきて、以前と変わらない経営状況になりました。その様子を見て、私たちは買い手候補の探索を開始しました。

個人医師を中心に買い手を探索

今回のご相談のもう1つの特徴は、CPクリニックが泌尿器科という比較的マイナーな診療科を中心としていたことです。内科などの比較的メジャーな診療科であれば、多院展開をしている医療法人が有力な買い手候補になります。

しかし、比較的マイナーな診療科のクリニックの場合、医師を手配することの難度が高くなることから多院展開を目指す法人は買い手になりにくくなります。

一方、今回の譲渡対価は2,500~3,000万円程度で、その他費用や初期の運転資金等を見込んでも総額で4,000万円以内には収まる水準だと見込んでいました。この金額なら、個人医師でも比較的検討しやすい水準です。私たちは、データベースに登録されている個人医師を中心に探索を進めました。

【買い手側】Z区での開業を検討していた個人医師

買い手となったのは、静岡県内の大手病院の泌尿器科に勤めていた40代前半の医師、UI先生です。UI先生には、奥様のお母様が要介護状態になり、1人娘である奥様が介護に入らなければならないという事情がありました。その奥様の実家が、CP病院と同じZ区だったのです。

UI先生は介護のため実家近くへの転居を検討しましたが、転居すると現在勤務している病院には通勤できなくなるため、あわせて実家近隣、つまりZ区でのクリニック開業を検討していました。ただし、新規開業には特にこだわりはなかったのでM&Aでの承継も視野に入れていました。

そして、現在勤務している病院に転職する際に、私たちの転職サービスを利用して転職されたことから、M&Aを視野に入れたときにもUI先生は私たちのサービスにご登録をなさいました。

買い手探索の依頼を受けた私たちがデータベース検索をしたところ、UI先生の希望地域や希望診療科がぴったりであったため、すぐにコンタクトを取りCPクリニックをご紹介しました。それからほどなくして、面談がセッティングされました。

わずか1か月のスピード承継が実現

UI先生は、経営拡大意欲が強いタイプというよりは、医師として患者のために診療すること自体にやりがいを感じるタイプの先生でした。介護の事情があったため開院を検討していましたが、もしそれがなければ、勤務医のままでもいいと考えていたそうです。もちろん、クリニックの譲り受けも初めてなので、不安に思われることを色々とご相談していただきました。

私たちは早期の譲り受けを成功させるために、CP先生との面談前にどのような点が話題になりそうか、譲り受け条件の論点では何が重視されそうかなどについて、入念な打ち合わせを実施しました。併せて価格目線についても、合理的な算定根拠を元にご説明して納得を得ました。

当初は大きな不安を感じていたというUI先生も、落ち着いて面談に臨めたようです。面談は和やかな雰囲気で行われ、CP先生、UI先生のどちらも面談後すぐに契約締結への意向を示してくださいました。

こうして、CP先生に買い手の探索を依頼されてから、わずか1か月ほどの短期間で最終契約までこぎ着けたのです。

また、承継後は不動産の賃貸借契約を新規に締結しなければなりませんが、ビルのオーナーも引き続きクリニックに入居してもらうことを望んでいたため、従来の破格の賃料条件がほぼそのまま引き継げることになりました。

本事例のポイント

最後に、本事例のポイントをまとめておきます。

①売り手の希望をかなえるために、様々な選択肢を提案できたこと

医業承継において、売り手となる先生が一定以上の対価を望むのは当然のことです。しかし、今回はクリニックが休診中ということで、そのままでは売り手のCP先生の希望を実現することは困難な状況でした。私たちがいくつかの選択肢をご提案した中から、診療の再開という方法が可能になったことで、結果としてCP先生の希望に添った内容で承継を実現することができました。

②好条件をアピールして価格水準の目線を合わせられたこと

売り手と買い手の両者で、譲渡価格に対する目線が一致しなければ、承継は実現しません。特に買い手が、初めて譲り受けをする個人医師の場合、売り手の提示する価格が妥当なのかは判断に迷いがちなポイントです。

個人医師にとって数千万円という価格は決して安価ではないため、慎重を期したいという気持ちから、もっと低くなるのではないかと考えてしまうこともよくあります。 そのような買い手に対して、クリニックの収益性や立地面での優位性などの客観的な根拠を示しながら、面談の前に価格の目線を合わせておけたことも早期の承継実現に結びつきました。

③最新の買い手候補データベースから、最適な個人医師を選定できたこと

泌尿器科のような比較的マイナーな診療科の承継で、早期に買い手を探索するためには、譲り受けの意志を持つ買い手候補のデータベースが重要です。

しかし、特に個人医師の場合、その譲り受け意欲はライフステージやキャリア上のタイミングなどによって変化しやすいものです。私たちは、医師専門の転職プラットフォームと連携しているグループ力によって常に最新情報にアップデートされたデータを用いているため、確度の高いマッチング候補の選定が可能です。

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