医療法人は売却できる?出資持分ありとなしの場合の譲渡スキームやしくみ

売却 2021/12/27

医療法人を売却する際には、出資持分の有無によって譲渡のスキーム・しくみなどが異なります。

出資持分ありの医療法人と出資持分なしの医療法人、2つの場合の医療法人の売却について、詳しく解説します。

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医療法人における出資持分の有無

出典:厚生労働省『出資持分のない医療法人への 円滑な移行マニュアル 医療法人の基礎知識①~医療法人の類型~』

医療法人とは

医療法人とは、病院、医師もしくは歯科医師が常時勤務する診療所、介護保健施設または介護医療院を開設しようとする社団または財団で、医療法の規定に基づき設立された法人のことをいいます。

医療法人は「社団医療法人」と「財団医療法人」に分かれ、社団医療法人が全体の9割以上*の数を占めています。

*厚生労働省『出資持分のない医療法人への 円滑な移行マニュアル 医療法人の基礎知識①~医療法人の類型~』

出資持分のある医療法人と、出資持分のない医療法人の違い

医療法人は出資持分の有無によって、「出資持分のある医療法人」と「出資持分のない医療法人」に分かれます。

ちなみに、2006(平成18)年の医療法改正により、出資持分のある医療法人は新設することができなくなりました。

つまり、現存している出資持分のある医療法人は、それ以前に設立され経過措置として残っているものです。現在もなお、社団法人の7割ほどは、この出資持分のある医療法人となっています。

出資持分のある医療法人と出資持分のない医療法人の違いとは、簡単にいうと出資者の財産権が認められているかいないかという点です。

出資持分のある医療法人の場合は医療法人の解散時などに出資額に応じて払い戻しを受けることができますが、出資持分のない医療法人は払い戻しが受けられません。

出資持分と似たような形として、2006(平成18)年の医療法改正後に「基金」という仕組みが登場しました。基金拠出型医療法人の出資者は、出資額に応じてではなく拠出額に応じて払い戻しを受けることが可能です。

医療法人売却の際のスキーム(手法)

医療法人売却スキーム①事業譲渡

事業譲渡とは、売り手と買い手で事業譲渡契約を交わし、譲渡日に契約書で定めた対象資産の権利を買い手に移転させ、代わりに売り手は譲渡対価を受け取ります

譲渡の対象範囲を売り手と買い手双方の合意で決められるという柔軟性がある点がメリットです。

一方、不動産賃貸契約など各種契約は売り手から買い手に引き継がれないため、契約を結び直しが発生する等、手続きが煩雑になるというデメリットもあります。

医療法人売却スキーム②持分の譲渡

持分の譲渡は、出資持分のある医療法人限定で使えるスキームです。売り手の医療法人の出資持分を、買い手に譲渡します。

医療法人ごと譲渡し、法人が持つ資産および負債を一手に承継する形になるので、医療法人が結んだ契約などもそのまま引き継がれます。事業譲渡に比べると手続きがシンプルになるといえるでしょう。

医療法人売却スキーム③合併

合併は、2つの医療法人を1つの医療法人に統合し、組織編制を行うスキームです。

医療法人が合併する場合、社団法人であれば社団法人と、財団法人であれば財団法人と合併する必要があります。

また、合併後の医療法人が2つの医療法人の資産および負債を一手に引き継ぎます。

合併のメリットは、2つの医療法人が同一地域圏だった場合には、病床の移動も可能であることなどが挙げられます。

医療法人売却スキーム④法人格の売買

法人格の売買とは、契約締結や登記の権利のみを売買することで、売り手側の資産や負債などは買い手に引き継がれません。

売り手の医療法人は資産や負債などを自分で相殺して、外側の法人格のみを買い手に承継します。資産などは承継しないため、ほかのスキームより安価で手続きが少なくなるになる場合が多いでしょう。

出資持分ありの医療法人を売却する場合

出資持分ありの医療法人を売却する際に使えるスキーム

出資持分ありの医療法人は、「事業譲渡」と「持分の譲渡」、「合併」、「法人格の売買」いずれのスキームを使うことも可能です。

手続きが簡素化されることや税制上のメリットから「持分の譲渡」を売却時のスキームとして選ぶことが多いです。

出資持分譲渡のしくみ

持分の出資者が理事長だけでない場合には、売り手である理事長がその持分を買い取ってからでないと譲渡の手続きが進められません。また、譲渡にあたり、医療法人の社員および役員を全て変更する必要があります。

出資持分なしの医療法人を売却する場合

出資持分なしの医療法人を売却する際に使えるスキーム

出資持分なしの医療法人の場合には、「事業譲渡」、「合併」、「法人格の売買」、といったスキームが使えます。

また、法人の清算時に残余財産の分配を受ける権利がないので、売り手側の理事長等は譲渡後に基金または退職金として対価を受け取ります。

合併における医療法人売却のしくみ

医療法人が合併を行う場合には新しく医療法人を設立し、消滅する2つ以上の医療法人を引き継ぐ「新設合併」と、合併後存続する医療法人に消滅する医療法人を引き継ぐ「吸収合併」がありますが、後者の「吸収合併」の方が一般的です。

吸収合併では、存続する側の医療法人が消滅する側の医療法人の資産だけでなく、負債やスタッフなどの雇用も全て引き継ぐことが多いです。

  1. 持分なし」と「持分なし」の医療機関が合併:「持分なし」の医療法人
  2. 「持分あり」と「持分あり」の医療機関が合併:「持分あり」と「持分なし」の医療法人を選択可能
  3. 「持分あり」と「持分なし」の医療機関が合併:「持分なし」の医療法人

事業譲渡における医療法人売却のしくみ

売り手と買い手が譲渡契約を締結し、譲渡範囲を決めて譲渡を行います。売り手側は病院の廃止届出、買い手側は新規の開設許可を取得する必要があります。

まずは医業承継のプロにご相談を

医療法人の種類や売却する際のスキームなどについて、詳しくご紹介しました。

医療法人の売却は、法人化されていない個人診療所の売却よりも、医療法の制限などで複雑な手続きなどが必要になります。

医療法人の売却を考える際には、医業承継のプロにまず相談してみることをおすすめします。

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