病院やクリニックを売買する前に!知っておきたい【医療分野のM&A基本用語集】1

契約関連 2021/11/30

初めて病院やクリニックを売却または買収したいと考えた時に、まずはインターネットや書籍などで医療分野のM&Aについて調べてみた方も多いのではないでしょうか。
その時にネックになるのが、初心者には聞きなれないM&A用語です。

今回は、知っておいて欲しいM&Aの基本的な用語を解説していきます。これらを知っているだけで、病院やクリニックのM&A情報がグッと分かりやすくなりますよ!

医業継承に関する基本用語

ここではまず、医業承継やM&Aなど、まず初めに知っておきたい基本用語を解説します。

医業承継

医業承継とは、病院やクリニック、個人医院などの医療機関を院長が引退し、ほかの人に引き継ぐことをいいます。

親子間で引き継ぐ場合には親子継承、引き継ぐことのできる子どもがいないなど後継者がいない場合には、いわゆる医業版のM&Aである第三者承継を考えなくてはいけません。

M&A

M&A(エムアンドエー)とは、Merger(合併)and Acquisitions(買収)の略で、「会社あるいは経営権の取得」という意味になります。
一般的には、企業の合併買収のことを指し、2つ以上の会社が1つになること(合併)や、ある会社がほかの会社を買ったりすること(買収)をいいます。

医療分野のM&Aではほかの事業とは異なり、生命に関わるため非営利性の原則を持っていたり、人員の数や料金、設備、施設などに関して規制があったりと、医療法に基づく医療分野特有の特徴を持っています。

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医療法人と個人診療所の違いとは?

医業承継‗個人診療所画像

ここでは医療法人や個人診療所とは何なのか、また病院やクリニックや個人医院はどう違うのかを、比較しながら詳しく説明します。

医療法人(病院)

病院とは、複数の診療科と20以上の病床を持つ医療機関のことをいいます。運営は医療法人が行い、創業者である医師は理事長や院長となり、医療法人の構成員という立場になります。

診療契約や雇用契約などの病院との各種契約は、院長ではなく医療法人が締結します。また、医療法人には個人診療所よりも医療法によるさまざまな規制や義務などがあり、個人診療所と比較した際の医療法人の特徴は以下になります。

  • 税制は段階税である法人税を適用
  • 複数の医療機関を開設でき、介護施設や老人ホームの設置も可能
  • 売上げや資産は医療法人に帰属し、院長は給与を受け取る
  • 承継では、資産とともに負債や契約も引き継ぐ
  • 承継では理事長などの役職者を交代するのみで、医療法人自体の財産や立場は変わらない

個人診療所(クリニック、個人医院)

クリニックや個人医院は、病床数が1~19の有床診療所や病床を持たない無床診療所や、歯科診療所のことをいいます。
個人診療所の場合、院長が個人事業主として経営を行います。医療法人と比べて、個人診療所には以下のような特徴があります。

  • 税制は累進課税制度を適用
  • 複数の医療機関を開設できない
  • 売上や資産は院長個人の資産
  • 承継で資産は引き継ぐが、負債や契約は引き継がない
  • 承継の際は一度廃院し、新規開業となる

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医療法人を構成する役職

医業承継_社団法人イメージ図

出典:厚生労働省『医療法人・医業経営のホームページ 医療法人類型』

ここでは、M&A方法に関する用語を解説していきます。

出資持分(しゅっしもちぶん)

社団医療法人に出資した人が、その社団医療法人の資産に対して出資額に応じて持つ財産権のこと。社団医療法人は、出資持分の有無によって、「出資持分のある医療法人」と「出資持分の無い医療法人」に分けられます。

出資持分を持っている人は、定款の定めるところにより、出資額に応じて払戻し、または残余財産の分配を受ける権利があります。
持分の払戻請求権は定款の規定を根拠に発生する権利で、出資した社員が医療法人を退社した場合に発生するのが一般的なケースにといえます。

【出資持分のある医療法人】

出資者である社員が退社した際の出資持分の払い戻しや、医療法人の解散に伴う残余財産の分配に関する定めがあるなど、出資者の財産権が認められる医療法人のことをいいます。

【出資持分のない医療法人】

出資持分のある医療法人は2007(平成19)年4月1日以降設立できなくなり*、それ以降は財産権の認められていない出資持分のない医療法人しか設立が認められなくなりました。

そのため、2007(平成19)年4月以降に設立された医療法人は、すべてこの出資持分のない医療法人となります。

*厚生労働省『出資持分のない医療法人への 円滑な移行マニュアル 医療法人の基礎知識①~医療法人の類型~』

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基金

医療法人に出資された金銭や財産のことをいいます。出資持分がその出資額の割合に従って払い戻しを受けることができるのに対し、基金も拠出額が限度となりますが払い戻しを受けることができます。

基金制度を利用した医療法人

2007(平成19)年4月1日以降に設立された出資持分のない医療法人のうち、資金の調達方法に基金を利用している医療法人のことをいい、基金拠出型医療法人ともいいます。

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スキーム

M&Aを行う際に使う手法のことをいいます。医療法人でよく使われるM&Aスキームには、以下のようなものがあります。

医療法人のM&Aスキーム1.出資持分譲渡

医療法人の中で最もよく使われるM&Aスキームで、株式会社でいうと株式譲渡にあたります。医療法人への出資者の出資持分を売却することで、医業承継を行うことができます。

医療法人のM&Aスキーム2. 事業譲渡

医療法人が複数経営しているクリニックの1つを譲渡するなど、事業の一部を譲渡するM&Aスキームのことをいいます。
一般企業が事業譲渡を行う場合は異業種の企業に行うことも可能ですが、医療法人の事業譲渡の場合には医療法人もしくは医師に限定されています。

医療法人のM&Aスキーム3.合併

2つの医療法人が1つになるM&Aスキームで、合併により消滅する医療法人の権利義務を存続する医療法人に一括して継承する場合には、医療法人の資産や負債だけでなく、従業員などもすべて引き継がれます。

仲介会社

売り手と買い手の間に立ち、双方がスムーズに医業承継できるよう、アドバイスやサポートを行う会社のことをいいます。

譲渡価格

病院やクリニックを譲渡した代わりに売り手がもらう対価のことをいい、時価純資産額に営業権を上乗せして算出した金額が目安となる場合が多いです。

【時価純資産額】

資産を時価算定するだけではなく、未払いの賃金や退職・リースの債務なども控除して算定します。

【のれん代】

病院やクリニックが保有する無形固定資産のことをいい、ブランド力や技術力、ノウハウなどのことを意味します。
会計用語ではのれんとも言われ、正常収益額から営業用資産に期待利率を加味した金額から控除した金額を超過収益額とし、通常1~3年分の超過収益を時価純資産額に加味して算定します。

解散

医療法に基づく解散事由によって医療法人が解散し、事業活動を停止することをいいます。解散後は原則として理事から清算人を選び、現務を結了させて残った財産を換価し、債権を取り立て、債務を弁済します。

また、清算人は医療法人の財産状況を調査し、財産目録と貸借対照表も作成します。残った医療法人の財産を換価し、債務を弁済しても財産が残っている場合には、定款や社員総会の決議で決められたところに、残余財産を引き渡します。

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閉院(廃院)

病院やクリニックを引き継ぐ後継者がおらず、医療活動を停止することを閉院(廃院)といいます。医療法人の場合には、医療法に基づく解散事由により解散します。閉院する30日前には、雇用者には解雇予告を行うことが労働基準法**で義務付けられています。

**出典:厚生労働省『労働契約の終了に関するルール』

まとめ

医業承継でよく出てくる言葉の意味を説明してきました。医業承継には専門用語が多く、税金や行政手続きなどについても豊富な知識が必要です。

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