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医療法人の解散|手続きの流れややるべき事項の基本

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医療法人の解散|手続きの流れややるべき事項の基本

医療法人の解散は、社員総会で決議したうえで、都道府県知事の認可を受けて成立します。認可は、都道府県医療審議会にかけたうえで判断されます。審議会の開催は年に数回です。申請の締切を過ぎれば次の開催まで待つことになり、認可が下りるまで半年かかる場合もあります。

そこで本記事では、医療法をもとに医療法人を解散する場合の手続きと期間をまとめました。

医療法人の解散とは

医療法人の解散とは、医療法人の活動を停止して、法人格を消滅させる行為を指します。自然人(人間)でいえば、死亡とほぼ同じだと考えればいいでしょう。
ただ、自然人の死亡と違うのは法人の解散においては、相続という概念がなく、解散手続きの中で財産をすべて清算する必要がある点です。

医療法人の解散が検討されるケースとしては、以下のような場合が考えられます。

(1)医療法人が債務超過の場合

医療法人も、株式会社等の他の法人と同様に事業活動を行っています。病院建物や医療機器等をローンで購入し、診療報酬などの収益の中からローン返済等の支出を行ったりしています。また、医薬品の仕入れや職員への給与等の日常業務に伴う支出もあります。
この収入と支出のバランスが崩れて、支出のほうが大きくなってしまった場合、いわゆる赤字になります。そして赤字が続けば、総資産よりも負債のほうが大きい、債務超過の状態に陥る場合もあります。

債務超過が続き、金融機関から借入の返済ができない状態となれば、解散が検討されるでしょう。

(2)後継者が見つからない場合

医療法人を運営していく上で、医師の存在が不可欠です。原則的に、理事長は医師でなければなりませんし、勤務医師がいなければ、医療法人は事実上運営できなくなってしまいます。特に親族のみで運営している小規模な医療法人等では、後継者が見つからないために、継続できないケースもあります。

(3)他の医療法人との合併

他の医療法人と合併することにより、法人を解散するというケースもあります。上で挙げた債務超過や後継者が見つからない場合でも他の医療法人に吸収合併されるということもありますし、そうではなくとも、事業戦略として他の医療法人と合併するというケースもあります。
なお、合併はM&Aの一種だといえますが、一般的によく用いられている出資持分の売却(法人格が残る)とは異なるM&Aの方法です。

解散手続きの流れ

医療法人の解散手続きの流れ

医療法人を解散させる場合の、手続きの流れを解説します。

(1)法律上の解散事由を確認する

医療法人について定める医療法では、解散事由は以下の7つと定められています。いずれかに該当するかを確認しておきましょう。

  1. 定款を以って定めた解散事由(例えば、定款で「本法人の存続期間は設立から10年間とする」などと定めている場合です)
  2. 目的たる業務の成功の不能
  3. 社員総会の決議(原則として総社員の3/4以上の賛成を得る必要があります)
  4. 他の医療法人との合併
  5. 社員の欠亡(社員がいなくなること。ここでの社員は、従業員のことでは亡く、社員総会を構成する社員です)
  6. 破産手続開始決定
  7. 設立認可取消し(医療法人が違法行為を行うなどして、行政(都道府県知事)から設立認可を取り消された場合に該当します)

出典:医療法第五十五条

法律上は以上の7つの事由が定められていますが、いずれにせよ実務上の手続きとしては「社員総会決議」をもって進めていくことが多いです。

(2)社員総会で決議する

医療法人の解散は、社員総会決議により決定されます。理事長の独断、あるいは理事会では解散できません。

医療法人を解散させるにあたって、社員総会で決めることは以下の事項です。

決議する事項内容
解散する旨そもそも解散するのかどうかを決議します
破産手続きを選択するかどうか債務超過にある場合には、破産手続きを選択するのが一般的です。裁判所へ破産手続開始を申立てする旨を決議します
清算人を誰にするか理事以外の人を清算人にしたい場合のみ決議します

清算人とは、解散後に残った財産や債務を整理する役割です。医療法では、次のように定められています。

“医療法人が解散したときは、合併及び破産手続開始の決定による解散の場合を除き、理事がその清算人となる。ただし、定款若しくは寄附行為に別段の定めがあるとき、又は社員総会において理事以外の者を選任したときは、この限りでない。”

出典:医療法第56条の3

理事がそのまま清算人になるため、社員総会での決議は要りません。実務では理事長が清算人となるケースが多いです。

(3)社員総会決議と並行して準備すべきこと

医療法人の解散は最終的には社員総会で決議して決めることになりますが、それまでに下準備が必要です。社員総会の決議に先立って、あるいは並行して行っておくべき事項は以下の通りです。

行政への認可、届出の準備

上記の解散事由のうち、①定款、⑤社員の欠亡による場合は行政への届出のみで解散手続きが可能です。

しかし、②目的たる業務の成功の不能の場合、③社員総会決議による場合には、行政(都道府県知事)の認可を得る必要があります。これは、医療法人は公益性があるため、安易に解散させないためであるとされています。これらの場合には、行政に解散認可を申請し、医療審議会で審査してもらう必要があります。

解散を検討する中で、社員総会に先行して、行政に解散することを相談して進めていくのが良いでしょう。

公告の準備、実施

清算人は就任した日から2か月以内に、少なくとも3回の公告を行わなければなりません。公告は官報に掲載して行います。

公告に書く内容は下記のとおりです。

  • 債権者に債権の申出を求めること
  • 申し出を受け付ける期間は2か月以上とすること
  • 期間内に申し出がなければ、清算での弁済を受けられなくなる旨

出典:医療法第56条の8

なお、都道府県知事の認可が必要な解散事由の場合は、認可を得たあとに公告を行うことになります。

債権者への個別の催告

官報への公告とは別に、清算人は債権者一人ひとりに対して債権を申し出るよう書面で催告します。ここでいう債権者とは借入先の金融機関、医療機器のリース会社、医薬品など医療法人の支払い先のことです。

すでに把握している債権者には、申し出がなくても支払う義務が残ります。そのため、帳簿からたどれる相手をもれなく洗い出し、宛名と送付文書を用意しておく必要があります。

解散決議の登記手続き

社員総会で解散決議をしたら、解散決議を行った旨、および清算人が誰になるかを法務局で登記する必要があります。なお、行政の認可が必要な解散事由の場合は、行政の認可を得た後に登記を行うことになります。こちらも解散決議後すぐに登記できるように準備しておきましょう。

▶解散以外の選択肢として、売却・譲渡の進め方を確認する

解散手続きに要する期間

医療法人の解散は、社員総会で決議してから法人が消滅するまで半年以上かかることもあります。手続きは「都道府県知事の認可を待つ期間」と「財産を整理する清算の期間」に分かれます。

▼解散手続きにかかる期間の目安

段階期間
認可を待つ期間半年程度
清算の期間2か月以上

認可に時間がかかるのは、都道府県医療審議会にかけたうえで判断されるためです。たとえば東京都の場合、解散認可を受け付けるのは年2回で、令和8年度の第1回は8月末に受付が始まり、認可書の交付は翌年2月下旬です。受付期間を逃せば次の回まで半年待たなければなりません。

出典:医療法人設立、解散、合併認可等に係る年間スケジュール(令和8年度)|東京都保健医療局

清算の2か月は、医療法第56条の8第1項で定められています。

出典:医療法第56条の8第1項
関連記事:病院M&Aのスキームを基本から解説|必要な期間・費用は?

解散決議後の清算中に行うべきこと

清算人は、主に下記の(1)~(4)の業務を行うことになります。

(1)現在業務の決了

業務を終了させて残務処理を行うことです。患者さんには他の病院を紹介したり、入院患者には転院を促したりして業務を終了させます。

(2)債権債務の取りまとめ

各債権者から返送されてくる債権届をもとに負債の取りまとめをします。また、未払いの診療報酬等の債権がある場合には債権回収を行い換価します。

(3)リースされている医療機器や自動車等、医療法人の財産ではないものの返却

医療法人の所有ではないリース物件等は、速やかにリース会社への返還等を行います。

(4)医療法人所有の医療機器等、資産価値のあるものを換価すること

医療法人では高価な医療機器を保有している場合も多く、また、病院の敷地・建物等の医療法人の資産があれば、これらも売却する等して換価する必要があります。

清算人の禁止事項

清算人が上記の業務を遂行する際に、禁止されている事項があります。

  1. 特定の債権者のみへの返済を優先して行うこと
  2. 法人所有を換価する中で不当に低い金額で売却したり、無償で廃棄したりすることなど

清算人は、清算をする上で、医療法人に対して善管注意義務を負っています。

上記の2点は、特定の債権者のみを優遇したり、法人の資産を不当に低減させたりするものであり、悪質な場合には清算人の任務懈怠として損害賠償を請求される恐れもあるため、十分に注意してください。

関連記事:医療法人内の1つの医院を譲渡する際のスキーム・注意点

残余財産の分配

上記の手続きで、清算人は、医療法人の資産と負債を整理することになります。その結果に応じて、残余財産を分配します。

(1)清算の結果、負債のほうが大きい場合

清算の結果、負債のほうが大きい場合には、清算人は破産手続を申し立てる必要があります(法56条の10)。

(2)資産のほうが大きく、残余財産がある場合

残った財産を先生が受け取れるかどうかは、出資持分の有無で決まります。

▼定款に定められる残余財産の帰属先

医療法人の種類帰属先
出資持分あり持分の割合に応じて社員へ
出資持分なし国・地方公共団体・ほかの医療法人など

出典:医療法第56条

2007年4月以降に設立された医療法人は、すべて出資持分なしです。それより前に設立した場合は、定款の残余財産に関する条項で確認できます。社員が受け取れる場合も、分配の対象は法人税を差し引いたあとの金額です。

医療機器や建物を簿価より高く売却できれば、その差額に法人税がかかります。受け取った社員にも、出資額を超えた部分に所得税と住民税がかかります。

関連記事:出資持分とは?医療法人の出資持分ありとなしの違い

清算の完了

残余財産の引き渡しが完了すれば、清算手続きがすべて終わります。清算人が最後に行うべきことは以下の2点です。

  1. 行政への清算決了の届出
  2. 清算決了の登記

これを以って、清算手続は終了し、医療法人の解散は完了します。

まとめ

医療法人の解散は社員総会の決議に始まり、都道府県知事の認可、官報への公告、清算と続きます。決議してしまえば、あとから戻せません。解散を選ぶ理由の多くは、後継者がいないことです。しかし解散してしまうとスタッフは新しい職場に転職しなければならなくなり、患者も最悪の場合「通院できる場所」がなくなってしまいます。

第三者へ譲る医院継承(M&A)なら、スタッフの雇用も患者の通院先も変わりません。

私たちエムステージマネジメントソリューションズには、医療経営士の資格を持つコンサルタントが在籍しています。解散をお考えの先生は、ぜひ一度お気軽にご相談ください。赤字で苦しい経営状況だとしても、買い手が見つかるケースもあります。

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この記事の監修者

田中 宏典(医業承継M&Aアドバイザー/医療経営士1級/医業承継士/ファイナンシャルプランナー

田中 宏典 <専門領域:医療経営>

株式会社エムステージマネジメントソリューションズ代表取締役。
医療経営士1級。医業承継士。
静岡県出身。幼少期をカリフォルニア州で過ごす。大学卒業後、医療機器メーカー、楽天を経て株式会社エムステージ入社。医師紹介事業部の事業部長を経て現職。
これまで、病院・診療所・介護施設等、累計70件以上の事業承継M&Aを支援。また、自社エムステージグループにおけるM&A戦略の推進にも従事している。
2025年3月にはプレジデント社より著書『“STORY”で学ぶ、M&A「医業承継」』を出版。医院承継の実務と現場知見をもとに、医療従事者・金融機関・支援機関等を対象とした講演・寄稿を多数行うとともに、ラジオ番組や各種メディアへの出演を通じた情報発信にも積極的に取り組んでいる。
医療機関の持続可能な経営と円滑な承継を支援する専門家として、幅広く活動している。
より詳しい実績は、メディア掲載・講演実績ページをご覧ください。

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本コラムは一般的な情報提供を目的としたものであり、特定の取引や個別の状況に対する税務・法務・労務・行政手続き等の専門的なアドバイスを提供するものではありません。個別案件については必ず専門家にご相談ください。