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2025年度「医療・福祉事業」倒産が過去最多|原因と倒産を避ける方法

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2025年度「医療・福祉事業」倒産が過去最多|原因と倒産を避ける方法

「経営がじわじわ苦しくなっているが、倒産するほどではないだろう」

そのようにお感じの先生も多いのではないでしょうか。しかし2025年度、医療・福祉事業の倒産件数が478件を記録し、1988年度以降38年間で最高水準となりました。リーマン・ショックや金融危機の時代をも超え、3年連続で過去最多を更新し続けています。

「医療機関は倒産しにくい」という感覚は今や通用しません。クリニックも例外ではなく、1日あたり2〜3院のペースで閉院が続いている状況です。

本記事では、医療機関が倒産・廃業に追い込まれている構造的な原因と、倒産・破産・休廃業・解散それぞれの違い、そして倒産を避けるために今すぐ見直すべきポイントを解説します。経営に不安を感じている先生は、ぜひ最後までご覧ください。

2025年度は医療・福祉事業の倒産件数が過去最多

医療・福祉事業全体の倒産件数は、2025年度に478件を記録しました。1988年度以降の38年間で最高水準です。3年連続で過去最多を更新しており、リーマン・ショックや金融危機など過去の経済的混乱期をも上回っている状態です。

「医療・福祉業は景気に左右されにくい」と考えられてきた時代は終わりつつあります。後述する複数の構造的な問題が重なった結果、医療・福祉業界に固有の経営危機が静かに広がっています。

※出典:医療・福祉業の倒産動向調査(2025年度)|東京商工リサーチ

医療機関(病院・クリニック・歯科医院)でも66件と過去最多水準

医療機関(病院・クリニック・歯科医院)の倒産件数推移(2000年~2025年)

※出典:医療機関の倒産動向調査(2025年)|帝国データバンク

医療機関に限定した倒産件数も66件と、過去最多水準となりました。内訳は診療所(一般診療所)が28件、歯科医院が25件、病院が13件です。

種別を問わず倒産が起きているという点が重要です。個人経営の小規模クリニックだけでなく、複数の診療科を持つ病院も13件が倒産しています。病院1件の閉院は、診療所1件の閉院とは影響規模が異なります。スタッフ数・患者数・地域の医療提供体制への影響は、はるかに大きいです。

「自分のクリニックには関係ない」と言い切れる業態は、もはやありません。

休廃業や解散は823件

医療機関の倒産件数・負債総額、休廃業・解散件数の推移(2000年~2025年)

※出典:医療機関の倒産動向調査(2025年)|帝国データバンク

倒産よりもはるかに多いのが、休廃業・解散の件数です。2025年度の医療機関の休廃業・解散は823件と、倒産件数(66件)の約12.5倍に達しています。

10年前の2015年(359件)と比べると約2.3倍となっており、特に休廃業は「静かに消える」ケースが多く、倒産統計には表れないため「見えない廃業」とも呼ばれています。倒産件数と合わせると、1日あたり2〜3院が消えている計算です。

医療機関の倒産・廃業が止まらない構造的な原因

医療機関の倒産・廃業となる要因のほとんどが「収入の減少」となっており、その背景には単純な売上不振以上の問題があります。なぜ医療機関の経営が行き詰まっているのか、5つの構造的な原因を見ていきましょう。

関連記事:クリニック閉院時の従業員への手続きは?閉院に必要な費用や注意点も解説

診療報酬の改定がコスト上昇に追いつかなかったため

ラーメン店であれば、小麦粉や光熱費が上がれば値上げで対応できます。しかしクリニックの収入は、国が毎年改定する「診療報酬」で上限が決まっており、自分で値上げする手段がありません。

ここ数年、光熱費・医薬品費・人件費は大幅に上がり続けています。それでも収入の「天井」は国が決める。このコスト増を収入で吸収できない構造が、経営を圧迫する根本の原因です。

2026年度には、1996年度以来30年ぶりに本体改定率3.09%の引き上げが決定しました。しかし、老人福祉・介護事業・療術業など、公定価格の枠組みに縛られる業種ほど倒産が多く、この改定で経営が実際にどこまで改善するかは不透明です。

※出典:令和8年度診療報酬改定について|厚生労働省

コロナ関連融資の返済が2023年以降に本格化したため

コロナ禍の2020〜2021年、多くの医療機関が融資を受けました。「返済は数年後でいい、今は経営を守れ」という条件の、ゼロゼロ融資(政府系の無利子・無担保融資)やWAM融資(独立行政法人福祉医療機構が医療機関向けに提供する低金利融資)がその代表です。

しかし猶予期間が終わった2023年以降、この返済が一斉に始まりました。コロナで傷んだ売上が完全に回復していないクリニックに、毎月の返済が重なる形になったのです。

さらにコロナ補助金の打ち切りも重なり「補助金で見えなくなっていた赤字」が一気に表面化しています。

人口減少で患者数が構造的に減り続けているため

地方・郊外では若い世代の流出が続き、受診患者数が恒常的に減少しています。高齢化で慢性疾患の患者は増えるものの、地域全体の人口が減れば受診の絶対数は増えません。

外来患者数が減ると、診療報酬収入が直接落ち込みます。家賃・人件費・設備費といった固定費はそのままで患者数だけが減り続けると、赤字は避けられません。

景気の変動とは無関係に進む人口減少は、今後も長期的に医療機関の経営を圧迫し続けることが見込まれます。

カルテ電子化など設備投資が小規模クリニックの経営を圧迫するため

電子カルテシステムの導入費用は数百万円規模に上ります。大病院であれば設備投資の予算を確保できますが、スタッフ数名規模の小規模クリニックにとってこれは死活問題です。

2024年度以降、オンライン資格確認システムとの連携が事実上必須化したことで、対応できない診療所が廃業を選択するケースもあります。「まだ使えるから」と先送りしてきたアナログ運用が、制度変更のタイミングで廃業の引き金になるパターンが増えてきているわけです。

設備費用の問題だけでなく、院長・スタッフの業務変更の負担も大きく、高齢の院長ほど対応に難しさを感じる傾向があります。

院長の高齢化と後継者不在が廃業を加速させているため

院長の高齢化と後継者不在の実態

全国の診療所経営者を対象に帝国データバンクが調べた調査によると、年齢が判明した約1万人のうち70歳以上が56.7%を占めていました。半数以上の院長がすでに70代以上という状況です。

2024年の調査では医療業の後継者不在率は61.8%と、全業種平均(52.1%)を9.7ポイント上回っていました。「高齢化」と「後継者不在」が同時に進んでいる実態が浮かびます。

「自分(先生)が元気なうちはなんとかなる」という意識が、承継を先送りにしている要因にもなっているわけです。

※出典:医療機関の倒産動向調査(2025年)|帝国データバンク

※出典:全国後継者不在企業動向調査(2024年)|帝国データバンク

倒産・破産・休廃業・解散の違い

「倒産」「破産」「休廃業」「解散」は混同されがちですが、それぞれ意味が異なります。どの段階にあるかによって、残された選択肢も大きく変わります。

各用語の違いを整理しておきましょう。

倒産とは破産や民事再生を含む返済不能に陥った状態のこと

「倒産」は法律上の手続きの名称ではなく、「借金が返せなくなった状態」の総称です。破産・民事再生・特別清算など、返済不能に陥った後にとる複数の手続きをまとめて指します。

重要なのは、倒産の局面に入った時点で院長が自ら選択できる余地はほとんど残っていないという点です。患者への説明・スタッフへの配慮・承継先の検討、これらを丁寧に行う時間は、倒産の段階では確保できません。

破産とは裁判所が法人を強制消滅させ負債を清算する手続きのこと

破産とは、裁判所が介入して法人の財産をすべて清算し、法人格そのものを消滅させる手続きのことです。裁判所が選任した「破産管財人」が建物・医療機器・預金などすべての資産を換金し、得たお金を銀行などの債権者に分配します。

医療機関が倒産に至った場合、その95.5%が破産※という結末を迎えています。診療を続けながら再建を目指す民事再生は2025年わずか3件で、「立て直せる可能性がある」手続きに持ち込めるケースは極めてまれです。

破産決定と同時に診療停止となり、患者の転院対応・スタッフへの解雇通知・医療機器の処分がほぼ同時に動き出します。

※出典:医療機関の倒産動向調査(2025年)|帝国データバンク

休廃業とは院長が自らの意思で診療をやめること

院長が自らの意思で診療を停止することを「休廃業」といいます。破産とは全く別の話で、「自分で決断できる」という点が最大の違いです。

後継者がいない・体力的に続けられない・経営が苦しくなってきたなど、理由はさまざまです。破産と違い、患者への引き継ぎやスタッフへの配慮を行う時間が確保できます。

2025年度における医療機関の休廃業は823件と倒産件数の12倍となっており、多くの医療機関が「倒産に至る前に自ら決断している」という実態を示しています。

関連記事:クリニックの廃業率は0.47%|倒産・廃業の理由と対策

解散とは医療法人の法人格を消す法的手続き

解散とは、医療法人の法人格そのものを消滅させる法的手続きです。

医療法人は設立時に都道府県知事の認可を受けた法人格を持っています。そのため、院長が診療をやめても法人は存続したままになります。法人格を終わらせるには、改めて都道府県知事の認可を受けて解散手続きを行わなければなりません。

つまり医療法人の廃業には「診療をやめる(休廃業)」と「法人を終わらせる(解散)」の2段階が必要です。解散後は清算手続き(残余財産の処分)を経て、はじめて法人格が消滅します。

個人クリニックであれば廃業届の提出だけで済みますが、医療法人を設立している先生はこの2段階が必要になる点を把握しておきましょう。

医療機関が倒産を避けるために見直すべきポイント

倒産を防ぐためには、経営が悪化してからではなく、余力があるうちに手を打つことが大切です。今すぐ取り組むべき4つのポイントを確認しましょう。

毎月の患者数と収支の把握

経営悪化の初期サインは、患者数と手元資金の変化に先に現れます。「売上は変わっていないのに手元資金が減っている」「患者数が前年比でじわじわ落ちている」こうした変化を月次で追うことが、経営管理の基本です。

注意が必要なのは、損益計算書が黒字でも手元資金が薄くなるケースがある点です。キャッシュフロー(毎月の現金の出入り)は損益とは別に動くため、利益が出ているように見えても実態として資金が詰まっていることがあります。

月次で現金の動きを確認する習慣を持ちましょう。

補助金に頼らない経営への切り替え

コロナ補助金・医療IT関連補助金が終了するたびに収入が急落し、「補助金後の赤字」が表面化するケースが増えています。「補助金があれば黒字、なければ赤字」という構造のまま続けると、次の打ち切りが経営危機の引き金になります。

自費診療・健診・予防医療など保険外収入の複線化を検討し、公定価格に依存しない収益の柱を持つことが重要です。すぐにすべてを変える必要はありませんが、「補助金がなくても成立する収益モデル」への転換を少しずつ進めておきましょう。

赤字診療科とコストの整理

不採算診療科・固定費・仕入れコストを洗い出し、経営の実態を正確に把握することが必要です。複数の診療科を持つクリニックでは、全体としての収支は把握していても、赤字が特定の科目に集中しているケースがあります。

科目ごとに収支を分解すると「この診療科があるから全体が赤字になっている」という構造が見えてくるでしょう。縮小・廃止・自費診療への転換など、対策は選択肢が複数あります。「なんとなく経営が苦しい」という状態から「どこが原因か」を特定することが、次の手を打つための前提です。

余力があるうちの医院継承(M&A)を検討する

倒産・廃業を避けるための選択肢として、医院継承(M&A)があります。医院継承とは、院長が引退する際に、設備・スタッフ・患者をそのまま次の経営者に引き継ぐことです。後継者がいなくても、M&Aという形で「医院を残すこと」は可能です。

ただし、承継先の探索・交渉・各種手続きには通常1〜2年以上かかります。診療を続けながら準備できるのは、クリニックの経営に余力があるうちだけです。早めに相談するほど条件交渉の余地が広く、承継先の選択肢が多く、患者・職員への影響を最小限にできます。

医院継承・医療M&Aに関するご相談はこちら(無料)

医療や福祉事業の倒産に関するよくある質問

医療機関の倒産・廃業に関して、先生からよく寄せられる質問にお答えします。

Q1. 医療法人が破産した場合、院長個人の財産はどうなる?

医療法人が破産しても、院長が「連帯保証人」になっていなければ個人財産は原則として守られます。

現実には、多くの金融機関が融資条件として院長の連帯保証を求めているため、個人資産に影響が及ぶケースが多い点に注意が必要です。「経営者保証に関するガイドライン」では、保証人の生活費相当の資産は手元に残せる仕組みがあります。

連帯保証の有無と内容は、顧問税理士・弁護士とあらかじめ確認しておきましょう。

Q2. 銀行に返済条件の相談をしたら融資は止まってしまいますか?

返済条件の変更(リスケ)を相談すると、新規・追加融資は難しくなるのが一般的です。リスケとは、「月々の返済額を減らす」「返済を一定期間猶予してもらう」など、返済条件を金融機関と交渉して変更することです。

ただし、相談せずに延滞した場合はより深刻な信用毀損につながります。「言い出しにくい」まま放置することのリスクは、相談することのリスクより大きいです。

経営状況が厳しいと感じた段階で、早めに金融機関や中小企業再生支援協議会に相談することをおすすめします。

Q3. 赤字や小規模なクリニックでもM&Aで売却できますか?

赤字・小規模でも、M&Aで売却できるケースはあります。承継を希望する医師や医療法人は増えており、売却可否は収益状況だけで決まるわけではありません。立地・患者数・スタッフ体制など、買い手側にとって価値のある要素は収益以外にも複数あります。

しかし、業績が悪化するほど条件交渉の余地が狭まるのは事実です。「赤字だから相談しづらい」と先送りするより、経営体力があるうちに医療業界を専門とした仲介会社に相談することをおすすめします。

まとめ|少しでも経営状況に不安を抱いたら医院継承も視野に

2025年度、医療・福祉事業の倒産件数は478件と38年間で最高水準を記録し、医療機関に限っても66件と過去最多水準の状況が続いています。診療報酬の制約・コロナ融資の返済・人口減少・設備投資負担・後継者不在という複合的な要因が重なり、経営環境は構造的に厳しさを増しています。

しかし、廃業や倒産は突然起きるものではありません。早期に異変を察知して対策を取れれば対策が可能です。毎月の患者数・収支の確認、補助金依存からの脱却、不採算コストの整理、そして余力があるうちの医院継承(M&A)の検討が、倒産を避けるうえで重要なポイントです。

私たちエムステージマネジメントソリューションズでは、医院継承・医療M&Aについて多くの先生をサポートしています。経営状況に不安を感じている先生、後継者問題でお悩みの先生は、ぜひお気軽にご相談ください。

医院継承・医業承継(M&A)のご相談は、エムステージ医業承継サポートにお問い合わせください。

この記事の監修者

田中 宏典 <専門領域:医療経営>

株式会社エムステージマネジメントソリューションズ代表取締役。
医療経営士1級。医業承継士。
静岡県出身。幼少期をカリフォルニア州で過ごす。大学卒業後、医療機器メーカー、楽天を経て株式会社エムステージ入社。医師紹介事業部の事業部長を経て現職。
これまで、病院・診療所・介護施設等、累計70件以上の事業承継M&Aを支援。また、自社エムステージグループにおけるM&A戦略の推進にも従事している。
2025年3月にはプレジデント社より著書『“STORY”で学ぶ、M&A「医業承継」』を出版。医院承継の実務と現場知見をもとに、医療従事者・金融機関・支援機関等を対象とした講演・寄稿を多数行うとともに、ラジオ番組や各種メディアへの出演を通じた情報発信にも積極的に取り組んでいる。
医療機関の持続可能な経営と円滑な承継を支援する専門家として、幅広く活動している。
より詳しい実績は、メディア掲載・講演実績ページをご覧ください。

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本コラムは一般的な情報提供を目的としたものであり、特定の取引や個別の状況に対する税務・法務・労務・行政手続き等の専門的なアドバイスを提供するものではありません。個別案件については必ず専門家にご相談ください。