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【2026年最新】ドラッグ・ロスとは?海外の薬が日本に来ない問題と動向

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【2026年最新】ドラッグ・ロスとは?海外の薬が日本に来ない問題と動向

「海外では使える新薬が、なぜ日本では使えないのだろうか」

このような疑問を持たれた先生も多いのではないでしょうか。近年、海外で承認された薬が日本では開発すら始まらない「ドラッグ・ロス」が深刻な問題となっています。特に希少疾病やがん領域では、治療の選択肢そのものを失う事態にもつながっている状態です。

そこで本記事では、ドラッグ・ロスの定義・最新の品目数・発生する理由・医療現場への影響を、はじめての先生にもわかりやすく解説します。国の対応状況や医院継承を考える先生が知っておきたいポイントもまとめたので、ぜひ最後までご覧ください。

ドラッグ・ロスとは海外で承認された薬が日本で開発されない状態のこと

ドラッグ・ロスとは、海外ではすでに患者に使われている薬が、日本では開発(承認申請)にすら入っていない状態のことを指します。

たとえば、アメリカやヨーロッパのお店に並んでいる新しい薬が、日本では「いつ売られるか」どころか「作る予定もない」状態のままになっている。そんなイメージです。

医療現場の先生にとって深刻なのは、海外のガイドラインで推奨されている治療薬が手元になく、最善の選択肢を患者に提示できない場面が出てくる点です。あとで紹介する「ドラッグ・ラグ」と違って、待っていればそのうち届くという保証もありません。

まずは、ドラッグ・ロスの規模感とドラッグ・ラグとの違いを順番に確認しておきましょう。

アメリカで承認された薬の約7割は日本では未承認

アメリカで承認されている新薬のうち、約7割は日本ではまだ承認されていません。これはヨーロッパと比べても、日本の承認率が16〜19ポイント低い水準にとどまります。

特に未承認の割合が高いのは、患者数の少ない希少疾病用医薬品です。患者数が少ない病気ほど、日本での薬の選択肢が不足しているのが現状といえます。

医院継承を検討する先生にとっても、この数字は無視できません。専門領域によっては「使える薬の選択肢そのものが限られる」前提で、今後の診療体制を考える必要があります。

ドラッグ・ラグとの違いは「遅れて届く」か「届かない」か

ドラッグ・ロスとドラッグ・ラグとの違い

ドラッグ・ロスとよく似た言葉に「ドラッグ・ラグ」があります。両者の違いを整理すると、次のとおりです。

用語状態解消の見込み
ドラッグ・ラグ海外より遅れて、日本でも承認・販売される時間が経てば解消する可能性がある
ドラッグ・ロス日本での開発自体が始まっていない解消の見込みが立たない

ドラッグ・ラグは「届くのが遅い」状態のことで、欧米より数年遅れて発売されるイメージです。一方でドラッグ・ロスは「そもそも届かない」状態を意味します。日本で治験が始まっていないため、いつ患者に届くかが見通せません。

かつて日本の課題はドラッグ・ラグが中心でしたが、近年はドラッグ・ロスという新しい問題が前面に出てきています。「待てば届く」段階から「待っても届かないかもしれない」段階に進んでいるのが現状です。

日本のドラッグ・ロスは2025年時点で86品目

日本のドラッグ・ロスは、2025年時点で86品目※にのぼると報告されています。これは「海外で承認された薬のうち、日本では開発のスタートラインにも立っていない薬」が86種類もあるということです。

しかも、そのうち14品目は「特に必要性が高い」と分類されており、医療現場にとって早急に手当てがほしい薬が含まれています。希少疾病やがん領域で複数の薬も含まれており、患者が選べる治療の幅を狭めています。

開業医や理事長の先生方が今後の診療体制を考えるうえでも、自院の専門領域に該当する薬が含まれていないかを把握しておくことが大切です。

※出典:未承認薬・適応外薬問題に関する資料|厚生労働省

【2026年4月】厚生労働省はさらに28品目をドラッグ・ロスとして追加

2026年4月、厚生労働省は新たに28品目を「国内で開発が未着手の医薬品」として公表しました。前述した86品目とは別の調査結果である点に注意が必要です。

新たに洗い出された28品目を含めると、日本の患者に届いていない薬の総数はさらに増えることになります。ここでは、28品目の内訳と「優先的に開発を進めるべき」とされた6品目について確認しておきましょう。

28品目のうち6品目が「優先的に開発すべき」と分類

厚生労働省は28品目を、学会からの医療ニーズと企業の見解をもとに4つのグループに分類しました。

分類開発の必要性品目数
グループA特に高い5品目
グループB1高い1品目
グループB2高いがエビデンス不足10品目
グループC低い7品目
グループD必要性なし4品目
その他1品目

※出典:ドラッグ・ロスの解消に向けた実態の把握及び情報の整理 に関する調査事業|厚生労働省

このうちグループAとB1の合計6品目は、今後「未承認薬検討会議」で評価されたあと、企業への開発要請や開発公募が予定されています。

つまり、国が「日本でも作るべき」と判断した薬については、製薬会社へ正式に開発を呼びかける段階に進む、というわけです。

優先6品目はがん診断薬や希少疾病薬が中心

優先的に開発すべきとされた6品目は、がん診断薬や希少疾病用医薬品が中心です。具体的には次のような対象になります。

  • グループA(5品目):前立腺がんの診断薬、CDKL5欠損症、外陰膣カンジダ症、カンジダ血症、ブドウ膜黒色腫を対象とする薬
  • グループB1(1品目):A型モリブデン補酵素欠乏症(MoCD)を対象とする薬

なお、この6品目は2021〜2023年に欧米で承認された薬のうち、日本で未着手のものを新たに調査したものです。先ほど紹介した86品目の中から選ばれたものではない、という点を押さえておきましょう。

日本でドラッグ・ロスが発生する3つの理由

日本でドラッグ・ロスが発生する背景には、大きく分けて3つの理由があります。製薬業界の構造変化と、日本市場の魅力低下が同時に起きていることが特徴です。それぞれを順番に確認していきましょう。

バイオベンチャーが日本での開発を避けるため

1つ目の理由は、新薬開発の中心がバイオベンチャーになっている点です。バイオベンチャーとは、新しい技術で薬を開発する小規模なベンチャー企業のことです。

現在、アメリカで承認される新薬の約65%はバイオベンチャー企業が開発しています。

バイオベンチャーは、大手製薬会社と違って資金や人員に余裕がありません。そのため、市場規模が大きい欧米での承認を優先し、日本での治験までは手が回らないケースが多いです。

そのため「日本でもいつかやる」のではなく、「日本は後回し」もしくは「日本ではやらない」という判断が増えているといえます。

日本市場の収益性が落ちたため

2つ目の理由は、日本市場で薬を売っても、製薬会社が利益を出しにくくなっていることです。

日本では診療報酬のマイナス改定が続き、薬価が長期的に下がっています。一度発売した薬も、年を追うごとに値下げされていくのが基本ルールです。

代表例が、がん免疫療法で使われるニボルマブです。発売時の薬価は約72.9万円でしたが、その後の改定で2025年時点では約13.2万円まで下がりました。実に約82%の値下げです。

ニボルマブの薬価の推移
薬価
発売時(2014年9月)約72.9万円
2025年時点約13.2万円
下落率約82%

ここまで値下げされると、製薬会社にとって日本市場は「投資に見合うリターンが得られない地域」になります。費用対効果が厳しい以上、欧米での販売を優先し、日本での開発を見送るケースが増えるのは当然の流れといえるでしょう。

関連記事:病院における赤字経営の実態と黒字化させる対策・改善事例

日本企業が新薬を作れていないため

3つ目の理由は、日本企業自身が新しい薬を生み出せていないことです。

世界の売れ筋トップ100医薬品のうち、バイオ医薬品45品目に絞ると、アメリカ企業が19品目を占めるのに対し、日本企業はわずか2品目しかありません。新薬の主流であるバイオ領域で、日本の存在感が薄くなっているのがわかります。

かつて日本の製薬市場は、世界全体の25%以上を占めていました。それが現在は大幅に縮小し、新薬を生み出すスタートアップ環境(エコシステム)も欧米に比べて整っていません。

海外のバイオベンチャーが日本に来てくれないだけでなく、日本国内からもイノベーションが生まれにくい状態。この二重の構造が、ドラッグ・ロスを長期化させる大きな要因となっています。

※出典:鈴木智之「ドラッグ・ロスの現状及び対策」国立国会図書館調査及び立法考査局

ドラッグ・ロスが医療現場にもたらす2つの影響

ドラッグ・ロスは、医療現場に大きく2つの影響をもたらします。最善の治療法が選べないこと、そして希少がん・難病では治療の選択肢そのものを失うことです。

医院継承を検討する先生にとっても、この影響は無関係ではありません。承継後の診療方針を考えるうえで、押さえておきたいポイントを順番に見ていきましょう。

最善の治療法が選べない

1つ目の影響は、海外の診療ガイドラインで推奨されている治療薬が国内になく、次の選択肢で対応せざるを得ないことです。

たとえば皮膚科領域では、体幹ざ瘡(体にできるニキビ)の治療薬が日本で未承認です。そのため既存薬を長く使うことになり、耐性菌のリスクや副作用の蓄積が増えるという問題が指摘されています。

また、日本国内で臨床データが積み上がらないため、学会ガイドラインの更新も後追いになりがちです。海外の標準治療が日本で広く採用されるまでに時間がかかり、医療現場の最適化が遅れるという悪循環につながっています。

希少がん・難病ではそもそも治療の選択肢を失う

2つ目の影響は、希少がん・難病の患者では、治療の選択肢そのものを失うことです。

希少がんは全がんのおよそ15〜20%を占めますが、これらの領域ではドラッグ・ロスが特に多く、患者の生存率にも影響しています。患者数が少なく市場が小さいため、企業にとって日本での開発の優先度が下がりやすいためです。

未承認薬のうち約6割は日本での開発が未着手で、その半数以上がバイオベンチャー発の薬とされています。

つまり、「世界には治療薬があるが、日本では治験すら始まっていない」状態が、希少疾病の現場で広がっているということです。医師としてどう情報を集め、どう患者に伝えるかが問われる状況になっています。

国はドラッグ・ロス解消に向けて制度整備を進めている

国もこの状況を放置しているわけではありません。薬価制度の改革や、新しい承認制度の整備など、ドラッグ・ロスを解消するための制度づくりが進んでいます。

ここでは、2024年以降に整えられた主な仕組みを2つ確認しておきましょう。

薬価制度改革で希少疾病薬の評価が見直された

2024年度の薬価制度改革で、希少疾病用医薬品や小児用医薬品の評価が見直されました。

具体的には、有用性加算(薬の価値が高いと判断された場合に上乗せされる評価)の項目に、難病・希少疾病を対象とする新薬が加えられました。これにより、市場規模が小さい薬でも、価値に見合った価格がつきやすくなります。

また、小児用医薬品への加算も強化されました。希少疾病や小児を対象とする薬はドラッグ・ロスに含まれやすいため、構造的な手当てをしているといえるでしょう。

加えて、売上が伸びた薬の価格を引き下げる「共連れルール」(ニボルマブの薬価が大きく下がった要因の一つ)も、一部の医薬品では対象外とされるようになりました。

※出典:薬価制度改革に関する資料|厚生労働省薬価制度の見直しについて|厚生労働省

先駆的医薬品指定や条件付き早期承認制度が整備された

薬価以外の面でも、開発を後押しする仕組みが整えられています。代表的なのが「先駆的医薬品指定制度」と「条件付き早期承認制度」です。

制度内容
先駆的医薬品指定制度画期的な新薬を優先的に審査する仕組み
条件付き早期承認制度第II相試験で有効性が確認された場合などに、条件付きで早期承認する仕組み

通常の薬は第III相試験まで終えてから承認申請するのが原則です。しかし、希少疾病のように患者数が少なくて大規模試験が難しい薬では、こうした特例制度が大きな意味を持ちます。

さらに2024年には「未承認薬等迅速解消促進調査事業」が設立され、ドラッグ・ロスの実態を継続的に調査・公表する枠組みも整いました。先ほど紹介した28品目の調査も、この事業の一環として実施されたものです。

医療現場の発信がドラッグ・ロス解消の力になる

ドラッグ・ロスを動かす力は、制度づくりだけにとどまりません。医療現場からの発信も、解消への大きな推進力になります。

国の未承認薬検討会議では「学会からの医療ニーズ」が、品目を優先的に開発すべきかどうかの重要な判断材料になっています。つまり、医師が現場の声を学会・論文・症例報告として発信することが、国を動かす材料になるということです。

海外で使われている薬を使えた患者と、使えなかった日本の患者の転帰の差を可視化することは、医療上の必要性を示す強力な根拠になります。また、患者会による署名活動や世論形成が、企業への開発要請を後押しした事例もあります。

医院継承や承継後の地域医療を担う先生にとっても、「自分の専門領域でどの薬が日本に届いていないか」を把握し、必要に応じて声を上げることが、これからの医療を支える行動につながるといえるでしょう。

関連記事:地域医療の推進による医療の変化と開業医に求められること

ドラッグ・ロスに関するよくある質問

ドラッグ・ロスは「制度」と「市場」の両面にまたがる問題のため、現場の先生方からは細かな疑問の声も多く寄せられます。ここでは、開業医・理事長の先生方が気にされやすいポイントをQ&A形式で整理します。

Q. なぜ今「薬が来ない」状況が増えているのでしょうか?

新薬開発の主役がバイオベンチャーに移ったことと、日本の薬価水準が下がり続けたことが重なったためです。

バイオベンチャーは資金や人員が限られており、市場規模の大きい欧米を優先します。さらに日本の薬価は継続的に引き下げられ、市場としての魅力が低下しました。2つの変化が同時に起きたことで、企業が日本市場への参入を後回しにするケースが増えています。

Q. ドラッグ・ロスは医療機関の経営にも影響しますか?

直接的な経営への影響よりも、患者への医療の質に与える影響が大きいといえます。

未承認薬を必要とする患者から「自由診療で受けられないか」「海外での治療を案内してほしい」といった相談を受ける機会が増える可能性があります。専門領域によっては、診療方針や情報提供の体制を整えておくことが大切です。

Q. 国が開発を要請した場合、どのくらいで日本でも使えるようになりますか?

数年単位のタイムラグがあるとお考えください。

企業への開発要請後も、治験 → 承認申請 → 審査というプロセスが必要なためです。先駆的医薬品指定などを活用すれば審査が優先的に進む可能性はありますが、承認後も薬価収載まで一定の期間がかかります。「要請=すぐに使える」ではない点に注意が必要です。

まとめ:医師の発信もドラッグ・ロスの解消を動かす力になる

ドラッグ・ロスは、海外で承認された薬が日本では開発すら始まらない問題であり、2025年時点で86品目、2026年4月にはさらに28品目が新たに確認されています。背景にはバイオベンチャーの主役化と日本市場の収益性低下があり、希少疾病・がん領域では治療の選択肢そのものが失われている状態です。

しかし、国は薬価制度改革や先駆的医薬品指定など、解消に向けた制度整備も進めています。学会からの医療ニーズや患者会の声が国を動かしてきた実績もあるため、医療現場からの発信も重要です。

これから医院継承や承継後の診療体制を考える先生にとっても、自院の専門領域でどの薬が日本に届いていないかを把握しておくことが、患者への説明やこれからの医療提供を支える第一歩になります。

私たちエムステージマネジメントソリューションズでは、医療M&Aを通じて、地域医療を未来へつなぐ多くの先生をサポートしています。先生のこれからの選択をご一緒に考えるために、ぜひお気軽にご相談ください。

医院継承・医業承継(M&A)のご相談は、エムステージ医業承継サポートにお問い合わせください。

この記事の監修者

田中 宏典 <専門領域:医療経営>

株式会社エムステージマネジメントソリューションズ代表取締役。
医療経営士1級。医業承継士。
静岡県出身。幼少期をカリフォルニア州で過ごす。大学卒業後、医療機器メーカー、楽天を経て株式会社エムステージ入社。医師紹介事業部の事業部長を経て現職。
これまで、病院・診療所・介護施設等、累計70件以上の事業承継M&Aを支援。また、自社エムステージグループにおけるM&A戦略の推進にも従事している。
2025年3月にはプレジデント社より著書『“STORY”で学ぶ、M&A「医業承継」』を出版。医院承継の実務と現場知見をもとに、医療従事者・金融機関・支援機関等を対象とした講演・寄稿を多数行うとともに、ラジオ番組や各種メディアへの出演を通じた情報発信にも積極的に取り組んでいる。
医療機関の持続可能な経営と円滑な承継を支援する専門家として、幅広く活動している。
より詳しい実績は、メディア掲載・講演実績ページをご覧ください。

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