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医療法人内の1つの医院を譲渡する際のスキーム・注意点

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医療法人内の1つの医院を譲渡する際のスキーム・注意点
医療法人内の1つの医院を譲渡する際のスキーム・注意点

医療法人の一部の委員を譲渡する際、資産や負債を個別に契約し、現金で取引されます。これを事業所とと呼び、包括的譲渡契約はできません。譲渡手続きは煩雑で、譲渡先に承継される債権・債務を明確にし、名義変更などの手続きが必要です。また、許認可の引継ぎやカルテ管理に注意が必要です。管理医師不在の医院の譲渡は困難であり、事前に後任を確保することが重要です。現勤務医師の契約も事前に確認が必要です。

本記事では、医療法人内の1つの医院を譲渡するための方法について解説するとともに、譲渡の際に起きやすいトラブルや注意点などについても説明します。

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医療法人内の1つの医院を譲渡する際のスキーム

医業承継により医療法人を第三者に譲渡するM&Aの場合、医療法人全体を譲渡する方法と、その中の一部の資産、例えば、1つの医院だけを譲渡する方法があります。後者を「事業譲渡」といいます。

事業譲渡の基本

事業譲渡は、基本的には医療機器などのモノの売買と同様の売買取引となるため、資産や負債(債権・債務関係)のひとつずつにつき個別に契約を結び、現金等を対価として売り手から買い手へ譲渡されます。

ただし、これらは、「病院まるごと譲ります」といった、包括的な譲渡契約とすることはできず、事業譲渡契約の中で譲受人に承継される債権・債務の範囲を具体的に明確にする必要があります。

したがって、1つ1つの資産・負債や契約等のすべてに、名義変更や届け出などの手続きをおこなわなければならず、手続きが大変煩雑になってしまう点が、事業譲渡のデメリットです。

医療法人譲渡の場合は、その中身は包括的に譲渡されることとなり、個別の手続きは不要です。

譲渡する主体の違い

例えば、持分ありの医療法人自体を、出資持分譲渡によって譲渡する場合、譲渡される対象が医療法人であり、譲渡する主体(譲渡人)は理事長などの出資者です。譲渡対価は譲渡人である理事長等が譲受人から直接受け取ることが原則的な形です。

一方、医療法人内の1つの医院が譲渡される対象となる場合は、譲渡する主体(譲渡人)は、医療法人になります。譲渡対価を受け取るのも、医療法人です。この契約主体の違いも押さえておきましょう。

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医療法人内の1つの医院を譲渡する際に起きやすいトラブル・注意点

医療法人内の1つの医院を譲渡する際に起きやすいトラブルや注意点は、主に以下の4つです。

  1. 譲渡のための事務手続きにかなりの時間と労力が必要となる
  2. 病床の引き継ぎに関して問題が生じる可能性がある
  3. カルテの引き継ぎに注意しなければならない
  4. 古い建物の場合現在の基準に合わない場合がある

1.譲渡のための事務手続きにかなりの時間と労力が必要となる

医療法人内の1つの医院を譲渡する場合は、事業譲渡によって医業承継が行われます。このスキームは、上述のように、資産・負債や事業に関する契約などを個別にひとつずつ移転手続きを実施しなければなりません。

例えば、以下のようなものが移転手続きの対象となります。

  • 売掛金などの債権、金融機関からの借入金や医療機器リース契約などの債務
  • 不動産の賃貸借契約
  • 従業員の雇用契約(各従業員から個別に同意を得た上で雇用契約を結び直すのが原則)
  • 病院の入院患者や老健施設の入所者との契約

譲渡する債権・債務や各種契約については、これらに関する契約を個別に結び直す必要があります。病院の規模が大きくなればなるほど事務手続きにかかる労力と時間が増えるだけに、その点には注意が必要です。

2.病床の引き継ぎに関して問題が生じる可能性がある

医療法人内の1つの医院を第三者に事業譲渡する場合、その医院に与えられていた許認可は譲受人に承継されません。

そのため、譲渡対象となった医院については廃止届を提出して廃院し、譲受人は譲り受けた医院について新設届を提出して新規開院する必要があります。保険診療適用の手続きなども必要です。

譲渡の対象が病院や有床診療所の場合、既存の病床数が基準病床数を超えている地域などでは、行政当局から新たな病床の取得が認められないケースがあります。

したがって、事業譲渡をおこなう際には、医業承継に精通した専門家のサポートを受けながら、事前に行政との間で折衝を進めておくことが一般的です。

3.カルテの引き継ぎに注意しなければならない

患者の個人情報が記載されたカルテは、医業承継によって譲渡されたとしても、個人情報保護法第23条5項2号の例外規定(「合併その他の事由による事業の承継に伴って個人データが提供される場合」)に該当するため個人情報保護法違反に問われることはありません。

しかし、カルテを引き継いだ医師が診療等の医療行為の目的を超えて個人情報を使う場合には、個人情報保護法に抵触する恐れがあります。したがって、患者の個人情報を扱う場合は、情報の取り扱いに注意しなければなりません。

それに関連して、患者さんからすると、突然、病院の運営主体が変わり、医師も変わってしまうとすると、やはり不安が生じるでしょう。病院の状況にもより一概にはいえませんが、患者さんが安心して通院、治療を継続できるように、丁寧な説明が必要となる場合もあります。

4.古い建物の場合現在の基準に合わない場合がある

事業承継によって医院の建物や施設を譲渡する場合、築年数などによっては譲渡後に法律上使用できない場合があることに注意する必要があります。

建築時には行政の施設基準を満たし適法であった医院の建物等が、その後の法令の改正により、現行の基準では、不適格となってしまう場合があります。ですが、現行の基準に適合しないからといって、医院や施設をこのまま使い続けたとしても、それ自体が違法となることはありません。

しかし、譲渡によって名義を変更する際には、現行の基準に適合しなければ、速やかに基準に適合させるための改築等をしなければ使用することができません。

こうした点については、譲渡前に十分に調べておく必要があります。

管理医師が不在の場合の譲渡は可能なのか

診療行為をおこなっていない医院の場合

管理医師が不在の病院は、診察行為ができません。管理医師が不在の場合は、ただちに休業届を保健所に提出する必要があります。

ですが、このように管理医師不在により休業中の医院であったとしても、事業譲渡による医業承継は資産負債や各種契約の売買ですから、譲渡すること自体は可能です。

ただし、問題は譲り受ける側が見つかるかどうかです。上述のように管理医師が不在であれば、診療行為は行っていないはずです。したがって、これまで通院していた患者などは、すでに他の医院に移っていることでしょう。

また、診察を行っていないわけですから、看護師をはじめとする医療従事者すら雇用していない場合も十分に考えられます。このように、患者も医療従事者もいない医院の譲受先を探すのは、極めて困難であるといっても差し支えないでしょう。

したがって、「管理医師が退職予定だが後任の医師が見つからない」等の理由で医院の譲渡を考えている場合は、管理医師が不在の状態を作らないように、できるだけ早い段階で医業承継をおこなうM&A仲介会社等に相談し、管理医師が不在となる前に譲渡先が見つかるように準備しておいた方がよいでしょう。

診療行為をおこなっている医院の場合

一方、現に診療がおこなわれている医院を事業譲渡の対象とする場合、譲渡後のスムーズな事業運営の観点から、現在勤務している医師を「管理医師」として承継させたいというニーズを譲受側が持つこともあります。

しかし、管理医師の労働契約は現在の医療法人と結ばれたものです。そのため、医療常人同士の事業譲渡契約によって、管理医師との契約を自動的に譲受人に譲渡することはできません。

現在の医院で勤務している管理医師に、新しい譲受人の下で働いてもらうためには、本人に事前に相談して、以下の手続きをとる必要があります。

  • 労働組合等との事前の協議
  • 承継予定労働者との事前協議
  • 労働契約の承継についての承継予定労働者の承諾
  • 事業譲渡の効力発生・労働契約の承継

厚生労働省「会社分割・事業譲渡・合併における労働者保護のための手続に関するQ&A」より)

医院の譲渡後も、管理医師は当然そのまま勤務すると考えて、適正な手続きをとっていないと、譲渡後に管理医師が退職してしまって困ることもありえます。手続きについては、事前に十分に理解しておきましょう。

医業承継は専門家のサポートを受ける

このように、医業承継のプロセスは専門的なものが多いため、医業承継に詳しい専門家のサポートを積極的に受けるとよいでしょう。

医業承継のご相談なら、ぜひ医業承継専門の仲介会社エムステージマネジメントソリューションズにお問い合わせください。専門のコンサルタントが、徹底サポートいたします。承継も視野に入れているという先生は、まずは無料相談・資料請求から検討されてみてはいかがでしょうか。

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この記事の監修者

田中 宏典 <専門領域:医療経営>

株式会社エムステージマネジメントソリューションズ代表取締役。医療経営士1級。医業承継士。医療機器メーカー、楽天を経て株式会社エムステージ入社。医師紹介事業部の事業部長を経て現職。これまで、病院2件、診療所30件、介護施設2件の事業承継M&Aをサポートしてきた。エムステージグループ内のM&A戦略も推進している。

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