医療モールとは?医療モールで開業するメリット・デメリット
目次
医療モールは複数のクリニックが集まり形態で、ショッピングモールや駅ビルに多く見られ、集患がしやすいです。患者は買い物や通勤時に利用できるため、便利で多様な診療科を一か所で受診できます。近年、医療費削減と病床数削減の背景から需要が増加しており、開業医に人気ですが、建物のルールやテナント料の高さ、他の医療機関との連携が必要な点がデメリットです。開業には、地域選択や設備確認、他院との協力が重要です。
医療モールとは
医療モールとは複数のクリニックが1つの場所に集まっている運営形態です。医療モールはショッピングモールや駅ビルなどに集まっていることが一般的です。認知度のある場所でクリニックを経営するためクリニック運営者にとって集患しやすいというメリットがあります。
患者さんにとっても買い物ついでや通勤通学時に寄れるといった利便性の高さやモール内の複数の医療機関にかかることができる点が魅力です。
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医療モールが増えている?
近年、医療モールは社会的な需要が高まり、増加傾向にあります。これにはどのような背景があるのでしょうか。
医療費削減のための病床数削減
医療モールの需要が高まった背景として、高齢化による医療費の増大が挙げられます。今後高齢化が続くことが予想される日本において、保険制度が維持できない可能性があるのです。
日本では医療費削減に伴い病床数が削減されています。一般病院が急性期の治療に専念できるよう、地域医療の充実が求められています。
医療モールはさまざまな診療科を専門とする医師が集合しているため、地域で包括的な医療活動ができます。
開業医の増加
開業医の増加によりクリニックの競争が激化し、以前と比べ新規開業クリニックの集患は容易ではなくなりました。医療モールはアクセスや認知度の高さ、他の診療科からの紹介が見込めるなど集患しやすい傾向にあるため、開業医からの人気も高くなっています。
医療モールの種類
医療モールには次のようにさまざまな種類があります。
- 医療ビレッジ
- 商業施設併設型
- 医療ビル
- レジデンス併設型
- オフィス併設型
- 医療ドミナント
医療ビレッジ
医療ビレッジとは、戸建てのクリニックが同じエリアに集まっているタイプです。戸建てのためクリニックのイメージを外装・内装に反映させやすい点が特徴です。
駐車場は他のクリニックと共有になることが多く、駐車場が狭い場合は満車になりやすいので注意が必要です。医療ビレッジによっては、クリニックごとに駐車場を分けている場合もあります。
商業施設併設型
ショッピングセンターや駅ビルなどにクリニックが入っているケースです。人が多く集まる場所にあることから、集患をしやすい点が大きなメリットです。周辺のイメージがクリニックに合わない可能性がある点やテナント料が高くなる点がデメリットです。
医療ビル
ビル内のテナント全てが医療関連の施設が集まっているケースです。調剤薬局もビル内に入っており、患者にとってみると1つのビル内で複数のクリニックで診療を受けて薬の受け取りまでが完結します。
また、医療関連の施設が集まっていることから、バリアフリー設計やエレベーターの設置など患者にやさしい設計であることが一般的です。
レジデンス併設型
マンションの一部分に医療関連の施設が集まっているタイプです。マンション住民が来やすい他、周辺に住んでいる人も利用しやすくすることで集患をしやすくなっています。見た目はマンションなので、クリニックがあることを看板などを出すことによってわかりやすくしましょう。
オフィス併設型
オフィスビルに入っているのがオフィス併設型です。ビル内で勤めている人以外にも、広範囲で集患をしやすいタイプです。職場と距離がごく近いことから
通院が必要な患者さんを対象にしやすい場合もあります。
医療ドミナント
すでに医療関連の施設が開業している場所の近くに、他の診療科のクリニックが開業することによって実質的に医療モールとなる場合があります。
お互いのクリニックで患者を紹介しあったり情報を交換しあったりするなど、様々なメリットがあります。
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医療モールで開業するメリット
医療モールで開業すると次のメリットがあります。
- 集患しやすい
- 設備資金を分担できる
- モール内の他の医療施設との連携
- 地域医療に貢献できる
集患しやすい
医療モールはショッピングモールや駅ビルなどアクセスが良い場所に集まっているため、患者が来やすい点が特徴です。さらに、複数のクリニックが集まっているため認知度が上がり、効率的に集患できます。
設備資金を分担できる
医療モールは建物がすでにできており、医療に必要な備品が用意されているケースが多く開業時の初期費用を抑えられます。さらに、医療モール自体に知名度があることが多く広告関連の費用削減にもつながるのです。
モール内の他の医療施設との連携
医療モールはモール内のクリニック同士で患者を紹介し合ったり情報を共有したりできます。そのため、専門分野に集中できることから診察の質を高められます。
地域医療に貢献できる
医療モールはさまざまなクリニックが集まっていることから、患者さんはさまざまな診療科を受診することが可能です。地域住民に対して総合的に医療を提供できるといった点で医療モールは重要な存在です。そのため、医療モール内で開業することは、地域医療に貢献できる場合があります。
医療モールで開業するデメリット
医療モールで開業するにあたって次のデメリットがあります。
- モールの建物のルールに従う必要がある
- モール内の人間関係
- 調剤薬局の評判に影響される
モールの建物のルールに従う必要がある
ショッピングモールや駅ビルなど医療モールは、デザインや設備などに建物の基準があり、自分で決められないことが少なくはありません。営業時間も建物に合わせる必要があったりと、自由度が低い場合があります。医療モールに入る前に、自分で考えているイメージと合うかどうかを確認するようにしましょう。
モール内の人間関係
医療モールには複数のクリニックが入っていますが、医師同士で意見が合わない可能性があります。
しかし、そのような状況においても協力し合えるような人間関係を構築することが求められます。同じモール内のクリニックと信頼関係を作ることで他のクリニックからの紹介を得やすくなるのです。
調剤薬局の評判に影響される
医療モールはモール内もしくは近隣に調剤薬局があることがほとんどであり、患者にとっては利便性の高い点がメリットです。しかし対象となる調剤薬局の評判が悪い場合は、医療モール内のクリニックにも悪い影響が出る可能性があります。
そのため、医療モールに入る前に調剤薬局と経営方針や患者に対する方針などを十分に確認した上で開業することが重要です。仮にクリニックで十分な待ち時間対策をしていても、調剤薬局内で長い時間待たせるようであれば結果的にクリニックの評判が落ちる可能性もあります。
医療モールで開業する際に注意すべき点
医療モールで開業する際に、次の点に注意をするようにしましょう。
- モール自体の評判が悪い可能性がある
- モールとクリニックが合わない可能性がある
- モール内に存在する競合
モール自体の評判が悪い可能性がある
モールそのものの評判が悪ければ、悪い影響を受ける場合があります。例えば、モール全体で集患をできていないようだと、患者を集めることが難しくなる場合があるのです。医療モールを選ぶ際に、医療モール自体の評判や口コミを確認するようにしましょう。
逆にモール自体の評判が良ければ集患をスムーズにできます。クリニックの対応がしっかりしていれば、リピーター患者を集めやすくなるでしょう。また評判の良い医療モールは、クリニック同士が足りない部分をサポートし合う関係になってることも多くさまざまなメリットが得られます。
モールとクリニックが合わない可能性がある
モールの雰囲気や方向性とクリニックが必ずしも合うとは限りません。
また、できるだけシンプルな内容や設備でまずは運営したいと思っていても医療モールにはさまざまな設備が揃っていることが多くテナント料が高くなる場合があります。特に開業したばっかりの時はテナント料の負担が大きすぎて、経営に影響がでる場合もあるのです。
モール内に存在する競合
医療モール内にはさまざまな診療科のクリニックが入っています。自院と同じ診療科のクリニックが既にある場合、競合となり集患しにくくなる可能性が高いです。競合となるクリニックがないかどうかは必ず確認しましょう。
医療モール開業において成功するためのコツ
医療モール開業において成功するためのコツは、以下の4つです。
的確な事業計画書を準備する
医療モールに限りませんが、的確な事業計画書を準備することが重要です。
開業前だけでなく開業後も損益計算書や賃貸対照表などの財務諸表を確認しながら、経営状況を定期的に把握することが求められます。
医療モールでの開業は初期費用を抑えられたり集患しやすいというメリットはあるものの、開業医である以上は経営スキルが求められます。
モール内で十分なコミュニケーションをとる
医療モール内の他院の医師や調剤薬局などと十分なコミュニケーションをとることが重要です。常に連携をとれていると、お互いに患者を紹介し合ったり情報交換ができる等のメリットがあります。
トラブル防止という意味でも日頃から十分にコミュニケーションをとることが重要です。
内装や設備を確認する
医療モールによって内装や設備に制限がある場合があります。モールの方針が自院のコンセプトに合うのかどうかを確認するようにしましょう。
十分な駐車場を確保する
医療モールはショッピングセンターや駅ビルなどアクセスの良い場所にあることが一般的です。しかし、他の施設と駐車場を共有していることから満車になりやすく患者が駐車できない可能性があります。
駐車できるかわからない状態であれば、遠くからの患者が来にくくなり集患に影響が出ます。そのためあらかじめ専用の駐車場を確保するなど、患者が駐車しやすいような環境づくりが重要です。他にも、同じ医療モールに入っているクリニックと休診日や診療時間をずらすなどさまざまな工夫するようにしましょう。
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開業地の選択は慎重に
開業する地域や周辺の環境などによって、集患に大きな影響があります。そのため、人口やアクセスの良さなどを十分に把握した上で開業地を選ぶことが重要です。
クリニックや医院の開業であれば、0から構築していく「新規開業」ではなく、既存のクリニックや医院を引き継ぐ「承継開業」という方法もあります。
エムステージマネジメントソリューションズのコンサルタントは医療経営士の資格を保持しているため、経営に関するアドバイスなどのサポートも行います。また、「事業計画書の作成」や「資金調達コンサルティング及び金融機関等との融資交渉」なども開業支援の業務内なので、安心して依頼できるでしょう。
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▼エムステージの医業承継支援サービスについて
この記事の監修者
田中 宏典 <専門領域:医療経営>
株式会社エムステージマネジメントソリューションズ代表取締役。医療経営士1級。医業承継士。医療機器メーカー、楽天を経て株式会社エムステージ入社。医師紹介事業部の事業部長を経て現職。これまで、病院2件、診療所30件、介護施設2件の事業承継M&Aをサポートしてきた。エムステージグループ内のM&A戦略も推進している。