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〈コンサルタント解説〉療養病院の売却。買い手が見つかりやすくするには

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コンサルタント解説_療養病院の売却について

近年、療養病院のニーズが高まってきています。今回はエムステージマネジメントソリューションズ医業承継のコンサルティングを行う代表取締役の田中宏典が、療養病院の売却において、相場や買い手が見つかりやすくする方法について解説します。

療養病院は売却できる

療養病院は社会的なニーズも高まっているため売却することは可能ですが、個人病院の場合は注意が必要です。

ニーズの高まる療養病院

2025年問題に向け医療費を適正化するため、「地域医療構想」という取り組みがあります。二次医療圏ごとに将来推計人口から高度急性期、急性期、回復期、慢性期の機能ごとに必要な病床数を算出しているものです。

地域医療構想の計画では2015年から2025年までに慢性期・介護施設等を20万床増やす必要があるとされています。

高齢化が進む現代において療養病院はニーズが高まる領域であるといえるでしょう。療養病院は一般病院と比べ設備投資や職員の人数、患者数が安定する傾向があり、慢性期医療への展開を考えている医療法人も少なくありません。

療養病院のM&Aにおけるスキーム

医療法人の療養病院の場合は、理事長や社員を入れ替えて経営権を渡すことによって売却が可能です。また、譲渡対価としては持分譲渡や役員退職金慰労金として受け取ることが一般的となっています。

売却する予定の病院が個人開設だった場合は、一度閉業してから新たに開業届けを提出する必要があり、二次医療圏で病床過剰な場合や現在の施設基準に満たない場合は許可が降りないことがあり注意が必要です。医療法人化すれば閉業・開業の必要はなく、自治体には理事長交代を報告するだけで済みます。

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療養病院を売却するメリット

療養病院を売却するメリットは、地域医療を継続できることと職員の雇用を守れることです。特に高齢化が進んでいる日本において療養型病院の役割は重要となってきています。

療養病院を閉院する場合は、入院中の患者さんはほかの病院に転院しなければなりません。諸々の手続きがある上、環境が変わることは患者さんにとって負担となってしまうのではないでしょうか。スタッフも解雇することとなります。

承継した場合、患者さんは転院の必要がありません。スタッフも働き続けることができます。

病院には病院長はもちろん患者さんや地域にお住まいの方、働いてきた人、関わりのあった様々な人にとって少なからず思い入れがあるものです。承継により病院を残すことで地域医療や職員の雇用の継続はもちろん、そのような思いも守ることができるのです。

療養病院の売却相場

療養病院の売却価格の目安は、一概には言えませんが、大体1年の利益の5年~7年分の価格設定になります。

理由は、買収資金を金融機関で融資を受ける際に、5年から7年で回収を求められる事が大きなポイントとなるためです。価格設定の考え方に関しては一般病院も療養病院も大きく変わりは無いと考えています。

収益に加え、資産(土地や建物、医療機器など)を所有している場合は、時価で上乗せされた金額が売却価格になります。

医業承継においては診療科も売却価格に影響するポイントですが、療養病院は外部要因に収益が左右されにくく、承継後も安定した収益を上げられるため良い方向に作用することが多いです。また、立地や職員が働き続けるかどうか、地域の方からの評判によっても売却価格は左右されていきます。

買い手が見つかりやすいようにするには

療養病院には特有の雰囲気があり、悪いイメージを持たれがちかもしれません。しかしそこを解決しイメージがアップするよう努めれば、買い手がつく、また売却価格が上がる可能性があります。

具体的には蛍光灯からLEDに変えたりカーテンを開けておくようにするなど物理的に明るくすること、患者さんや家族、スタッフへの声掛けを院長が率先して行うなどで空気感を明るくすることが挙げられます。インターネット上の口コミを確認し、改善していくことも大切です。

患者さんやご家族の満足度だけでなく職員の満足度も意識していきましょう。働きやすい制度にしてあるか、職員を採用しやすい環境になっているかどうかの見直しをすると良いでしょう。

また、一般病院の承継時と同様に、引き継いだ後にも安定して経営ができるか、妥当な金額で査定してもらえるのか、問題なく引き継げるかも重要な視点となります。

承継後の運営に困らないよう、紹介元の医療機関との連携や一時的に治療が必要になった際の搬送先の病院との連携がスムーズにとれるよう体制を整えておきましょう。

はやめに専門の業者に相談を

病院の承継は買い手が見つかるまでに時間がかかったり、手続きが多かったりするため、年単位で時間がかかります。

いずれ売却を考えているのであれば、はやめに売却価格を調べ、買い手が見つかるように経営課題を解決していくと良いでしょう。

また、医療機関のM&Aには医療機関特有の法律があり、一般企業のM&Aとは異なる知識が必要です。医療機関専門の仲介業者に相談した方が安心です。

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この記事の監修者

医療経営士1級 田中宏典

田中 宏典 <専門領域:医療経営>

株式会社エムステージマネジメントソリューションズ代表取締役。医療経営士1級。医業承継士。医療機器メーカー、楽天を経て株式会社エムステージ入社。医師紹介事業部の事業部長を経て現職。これまで、病院2件、診療所30件、介護施設2件の事業承継M&Aをサポートしてきた。エムステージグループ内のM&A戦略も推進している。


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