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〈行政書士の解説〉前編「医療法人を譲渡契約する場合の注意点とは」

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医療法人を譲渡契約する場合の注意点_行政書士解説

都道府県への行政手続きなど、病院やクリニックなどの医業承継(事業譲渡)でさまざまなサポートを行ってくれる、行政書士の先生。

今回は、株式会社エムステージマネージメントソリューションズのコンサルタントと医業承継に取り組んでいる行政書士・K先生に、病院やクリニックの事業譲渡契約で気をつけるべきことについてお話を伺いました。

前編の今回は、「医療法人を譲渡契約する場合の注意点」をご紹介します。

行政書士・K先生

医業を専門とする行政書士。神奈川県行政書士会所属。医療法人の設立やクリニック・歯科医院の開業、診療所の移転、分院の開設、定款の変更、議事録作成などの仕事を手掛ける。これまでの仕事で警察官、医業M&A専門コンサルタントを経ているという異色の経歴の持ち主。

はじめに、医療法人のガバナンスを理解しておくことが重要

医療法人を譲渡契約する際は、医療法人における「社員」や「理事」の関係性や違いをよく確認しておきましょう。

▼医療法人のガバナンス

医業承継‗行政書士解説記事の画像3

医療法人のガバナンス、すなわち統治の仕組みを理解しておくことは、事業譲渡を行う上で重要です。実は、運営中の医療法人でも、「社員」と「理事」の違いをはっきり理解されていないところも多いんです。

社員と理事は兼務できますが、それらが構成する「社員総会」と「理事会」はそれぞれ役割が異なります。理事は社員総会で選出されるので、上の図のように理事会よりも社員総会の方が統治の仕組みでは上位に位置します。

社団医療法人は株式会社と比較されることがよくありますが、株式会社では株主は持ち株数が多くなるにつれ発言権も大きくなるのに対し、医療法人は出資持分をいくら持っていても1人の社員につき1議決権しかありません。

医療法人の譲渡契約を締結する上で、そこがミソであり最大の障壁になります。よって、医療法人の譲渡を行う際は、譲渡を行う医療法人の院長に対して「しっかり社員の過半数を押さえてください」とお話しています。そこが、医療法人の譲渡契約で1番重要な点と言えるでしょう。

また、社員は3名以上が望ましいとされているのに対し、理事は3名以上いなければならないと、医療法で決められています。そのことも、留意する必要があります。

小さなクリニックで医療法人を運営しているところだと、「理事=社員=出資持分者」となっているところが多いのですが、これは同じでなくても構いません。
社員は必ず理事にならなくてはならない、理事は必ず社員にならなければいけない、と思われている方も多いのですが、とくに決まりはないので必ずしもそうである必要はありません。

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医療法人における、出資持分の取り扱い

「出資持分の払い戻し請求権」は、個人のみが持つ権利です。

▼法人と個人における、医療法人への出資や入社、財産権

医業承継‗行政書士解説記事の画像4

この辺りは少し分かりづらいので、まとめた上の表を参照していただければと思います。

出資持分は、営利法人・非営利法人・個人全て持つことが可能です。出資持分を持たなくても社員になること、社員にならなくても出資持分だけを持つことも、ともに法人・個人ともにできます。

退職時の「出資持分の払い戻し請求権」は個人のみが持っており、法人解散時の「残余財産分配請求権」は法人・個人ともに持っています。

譲渡手続きでの行政のチェックポイント

医療法人の譲渡手続きでは、行政は主に“医療法人の非営利性”という観点からチェックしています。

行政としては、理事の方もしくは社員になっている方が別会社の役員なども兼務している場合、そこの会社と取引することは基本的にはNGです。

たとえば、理事を務めている医療法人をA病院で、取引先をB社とします。
もし、行政の担当者が「A病院は、数ある業者の中でなぜB社と取引をしているのか」と感じ、B社の役員を調べた際にA病院の理事と重複していることが発覚すれば、利益供与ということで違法扱いをされてしまうでしょう。

また、社員が途中で全て変わっている場合なども、行政から確認が入る場合があります。

承継で気をつけたい、隠れた債権債務

これまで説明したこと以外に注意するべき点としては、従業員もそのまま引き継ぐ場合に、隠れた債権債務がないか確認する必要がある点です。

よくトラブルになったりするのが、債務となってしまうケースです。

たとえば、承継後に引き継いだ従業員の方が「経営体制が変わったので辞めます」と辞めてしまう場合に、過去の未払い給与が発覚することがあります。
そのようなことにならないためには、「今まで従業員に対して未払い給与はないか、残業代も払っていたのか」などを売り手に確認しておく必要があります。

とくに、小さなクリニックなどでは従業員と法にのっとった契約を結んでないところも結構あるので、承継を行う場合には社会保険労務士の方を入れて雇用契約関連の安定化を図っておくことも大切です。

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