【関東×内科】多額の債務を抱えて余命宣告を受けるも譲渡に成功した事例
【関東×内科】多額の債務を抱えて余命宣告を受けるも譲渡に成功した事例
エリア | 首都圏 |
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診療科目 | 内科、脳神経外科 |
運営組織 | 医療法人 |
譲渡理由 | 健康問題 |
運営年数 | 20年 |
クリニックの承継において、債務超過や借入金の存在は大きな課題となります。
今回紹介する売り手のクリニックも1億5,000万円もの借入金があり、その連帯保証人となることが条件でした。
一般的には、このような条件になると後継者探しが非常に難しくなります。
さらに本事例では売り手の理事長が余命宣告を受けたことで、短期間による承継が求められました。
しかし、余命宣告を受けた理事長は闘病生活を続けながらも最期まで診療を行い、その結果良い院長との出会いにつながりました。
点滴を受けながら診療を続けた60代の理事長と、その想いに応えた40代の院長、さらに遺族からの支援もあって、すべての関係者にとって望ましい形で承継が実現した事例をご紹介します。
【売り手側】現役を続けるつもりで約2億円の融資を受けていた60代の理事長
医療法人清和会(仮称)の理事長であり清和内科脳神経外科クリニックの院長も務める高橋先生(仮名)は、60代後半ながら精力的に診療を続けていました。
理事長の高橋先生には医師の息子がいましたが、大学病院で先端医療に携わることを希望しており「クリニックの承継はしない」と話されていたそうです。
理事長の高橋先生自身も、まだまだ現役で診療を続けられるという自信があったため、クリニックの承継についてそこまで真剣に考えることもありませんでした。
むしろ、より充実した医療を提供するため、2億円近い融資を受けてクリニックの建物を新築、さらにはMRIやCTなどの高額な検査機器を導入して、地域住民のニーズに幅広く応えられる体制を整備していました。
約1億5,000万円が残った状態で突然の余命宣告
そのような中、理事長の高橋先生は突然の余命宣告を受けることになります。
その時点で融資の返済残高は約1億5,000万円で、理事長の高橋先生と家族はクリニックの今後について頭を悩ませることになりました。
クリニックの建物は所有していましたが土地は借地だったため、売却を検討しても建物の資産価値が大幅に目減りしてしまい、多額の借金が残ることは避けられない状況でした。
また、廃院する場合でも建物の解体費用が新たにかかり、やはり借金は残ってしまいます。
このような状況から、理事長の高橋先生は連帯保証人となって診療を続けながら借金を返済してくれる後継者を探すことを決意します。
その代わりとして、クリニックを無償で譲渡するという条件にされました。
すぐに候補者が見つかるものの経営状況や連帯保証人が要因でまとまらず
無償譲渡という条件もあり、すぐに候補者候補の先生が見つかりました。
しかし、清和内科脳神経外科クリニックの経営状況を精査すると、多くの課題が見つかります。
医師1名のクリニックとしては過剰な人員を抱えており、親族や友人などを雇っていることから、一般的な給与よりもかなり良い条件で雇用していました。
また、最新鋭の医療機器を導入していたものの稼働率は低く、高額なメンテナンス費用も経営を圧迫する要因となっていたのです。
このような経営状況に加えて、残債約1億5,000万円の連帯保証人となることへの懸念から、最初の候補者との話し合いは進展しませんでした。
クリニックの年間売上は1億円ほどあるので将来性は十分にありましたが、大幅な経営改革が必要な状況で連帯保証人になることが、後継者候補の先生にとっては大きなリスクと捉えられたのです。
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【買い手側】将来的にクリニック開業を検討していた40代の院長
最終的に買い手となったのは、東京都内のクリニックで雇われて院長を務めていた40代の林先生(仮名)です。
将来は自分のクリニックを開業したいという思いを持っていたため、私たちの会社「エムステージマネジメントソリューションズ」で案件の情報を集めていました。
開業予定のエリアは院長の林先生の地元が東北だったこともあり、関東から福島の間で承継できるクリニックを探していたのです。
ただ、まだ40代という年齢だったこともあり「急ぐ必要はない」と考え、良い案件が出てくるのをゆっくりと待っている状態でした。
そこで私たちは、院長の林先生に「清和内科脳神経外科クリニック」が早急に承継者を探していること、多額の負債があるものの売上はしっかりとあるので将来性があり、クリニックそのものは無償で譲渡されることを紹介しました。
アルバイトとして診療を行ったことで承継を決意
院長の林先生も当初、1億5,000万円の連帯保証人になって借金を負うことに懸念点を示されていました。
しかし前向きに承継を検討するため、まずはアルバイトとして清和内科脳神経外科クリニックで診療を行い、内情を知ろうと決意されます。
院長の林先生が診療を始めた頃には、理事長の高橋先生の病状はすでに深刻化しており、週末は緩和病棟に入院しつつ、平日は点滴を受けながらの診療を続けている状態でした。
そして、院長の林先生が承継を決断される前に、理事長の高橋先生は他界されてしまいました。
葬儀から参列した院長の林先生は、この時点でクリニックの内情も把握し、通院する患者さんとの関係も築いていました。
清和内科脳神経外科クリニックが住宅地の中にあり、周辺に他の医療機関がないため、閉院となれば困ってしまう患者が大勢出てくる状況になることも容易に想像できたのです。
そこで、院長の林先生は「私がやるしかない」と承継を決意されます。
1億5,000万円の借金は、理事長の高橋先生の保険金5,000万円が債務の返済に充てられたことで、残る借金は1億円になりました。
また、承継後の投資や運転資金として遺族から2,000万円の貸付、3,000万円が医療法人への寄付として提供されました。
今回の承継によって、遺族は相続放棄をすることなく遺産を受け取れることになったのです。
院長の林先生も、承継後から自由に使える運転資金がある状態でクリニックの経営をスタートできました。
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本事例のポイント
本事例は多額の負債があり余命も半年と、早急に後継者を見つけなければならない状態でのご依頼でした。
理事長の高橋先生がご存命の間に承継は叶いませんでしたが、買い手となった院長の林先生も遺族の方も、すべての人にとって最良の承継となりました。
ここでは多額の負債があり、時間も限られていた中で承継が成功したポイントを紹介します。
余命宣告を受けたあとも診療を継続したことで後継者が見つかった
医業承継において、売り手の先生の体調不良は大きな課題となります。
多くの場合、体調悪化により診療時間を短くしたり休業したりなどで患者数を減らしてしまいます。
その結果、クリニックの価値が大きく下がってしまい、売り手を見つけることが困難になるケースが少なくありません。
しかし、理事長の高橋先生は闘病生活を送りながらも、クリニックで診療を継続されました。
ときには自身に点滴を投与しながら診療をされていたのです。
理事長の高橋先生が診療体制を維持し続けたことで、クリニックの価値が下がることもありませんでした。
最終的に院長の林先生と共に診療をしたことで、承継が実現したと言っても過言ではありません。
地方でタイムリミットも短い案件でも素早いマッチングが実現
医業承継において、地方のクリニックの場合「このような場所のクリニックで買い手の先生は現れるだろうか」と心配される医師の方もいらっしゃいます。
特に本事例は余命宣告を受けた状況での承継であり、時間的な制約も厳しいものでした。
私たちはネットワークを活かし、地方であってもクリニックの価値を見出していただける院長の林先生と素早いマッチングを実現しました。
東北出身の院長の林先生にとって関東から福島の間のエリアは、将来の開業候補地として視野に入れていた地域だったため最適だったのです。
地方という立地や時間的制約という課題がありながらも、クリニックと医師の希望する条件を丁寧にマッチングし、スピーディーな承継を実現いたしました。
遺族も含めて三方良しとなったマッチング
本事例での医業承継は売り手と買い手、そして遺族も含めたすべての関係者にとって望ましい結果となりました。
理事長の高橋先生の遺族は相続放棄を避けられただけでなく、生命保険金を有効に活用できました。
保険金5,000万円を債務返済に充て、さらに2,000万円を院長の林先生への貸付、3,000万円を医療法人への寄付という形で活用することで、遺産を受け取れたのです。
最後まで地域医療に貢献した理事長の高橋先生の意思を引き継ぎ、クリニックを維持できたことに関しても、遺族の方は大変喜ばれていました。
買い手の院長の林先生にとっても、自己資金をほとんど必要とせずに開業の夢を実現し、すでに地域に根付いたクリニックを引き継ぐことができました。
債務は残るものの収益改善の見通しも立っており、現在では順調な経営を続けられています。
そして長年地域医療を支えてきたクリニックが存続できたことで、地域住民の医療環境も維持されました。
本事例は関わるすべての人にとって、最良の結果となった承継です。
承継後のクリニック経営に関するサポートも対応
買い手の先生にとっては、医業承継はゴールではなく始まりです。
そのため、承継までの手続きやサポートだけでなく、継承後の経営改善なども重要です。
特に本事例では、過剰になっていた従業員のコストが大きな課題でした。
ただ人員削減は非常にデリケートな問題であり、長年クリニックを支えてきた従業員への配慮は欠かせません。
早期退職の交渉は感情的になりやすく、適切な対応を誤れば労働基準法違反などの法的リスクも発生するためです。
そこで私たちは、大手企業で退職のサポート経験のある社会保険労務士、企業法務に長けた弁護士を紹介しました。
承継後は患者数が一時的に減少する傾向にあり、収益を確保するためにもコスト削減が必要なケースもあります。
しかし、単純な人員削減は大きな心理的負担を生むだけでなく、さまざまなリスクを伴います。
買い手となった院長の林先生は、私たちが紹介した専門家によるサポートを受けることで、大きな問題が発生することもなく人件費のスリム化を実現しました。
私たちは、売り手と買い手のマッチングだけでなく、承継後の経営改善まで一貫したサポートを提供しています。
人員体制の見直しなどデリケートな課題も、専門家との連携により適切な対応が可能ですので、医院継承でお悩みの方は、ぜひご相談ください。