医業承継(医院継承)における譲渡が成立するまでの期間
目次
医業承継(医院継承)で譲渡が成立するまでの期間は、売り手と買い手が多くのポイントwお慎重に確認しながら進めるため、検討からクロージングまで一定の期間が必要です。1~2か月の検討期間を経て1年以内に準備し、交渉・デューデリジェンスとクロージングにそれぞれ1~2か月ほどかかります。全体では半年~1年が一般的で、長い場合は2~3年かかることあります。迅速な成約には、収益基盤の安定、準備の整備、柔軟な対応が求められます。
本記事では、医業承継の譲渡成立までにかかる期間について、一般的な目安を示すとともに、なるべく早く成約させるためのコツについても紹介します。
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医業承継(医院継承)の一般的なプロセスとスケジュール
事業という形のないものを相対で譲渡し、しかも高額な金銭のやり取りが生じる医業承継では、売り手も買い手も多くのポイントを1つ1つ確認しながら、慎重に取引が進められます。
そのために、検討段階から最終的な契約締結(クロージング)までは、どうしても一定の期間が必要となります。
まず、医業承継にはどのようなプロセスがあってどのくらいの時間がかかるのか、概略を把握しておきましょう。
段階 | 期間の目安 | 内容 |
医業承継の検討 | 1~2か月 | 医業承継の検討 |
仲介会社との面談・選定 | ||
仲介会社への正式依頼 | ||
医業承継の基本方針の決定 | ||
医業承継に向けた準備 | 3か月~1年 | 企業価値評価の算定 |
資料の作成 | ||
買い手候補探し | ||
機密保持契約書締結 | ||
トップ面談 | ||
買い手候補との交渉デューデリジェンス | 1~2か月 | 条件交渉 |
基本合意書締結 | ||
デューデリジェンス | ||
クロージング | 1~2か月 | 最終条件交渉 |
最終契約締結・決済 |
以下、段階ごとに、もう少し詳しく見ていきましょう。
1.医業承継(医院継承)の検討
最初は、承継の検討からはじまります。具体的には、M&A仲介会社を選定・連絡して、相談しながら医業承継に向けた初期的検討事項を整理して、基本方針を決定します。
相談したM&A仲介会社にもよりますが、この検討プロセスは、おおよそ1~2か月ほどになります。
2.医業承継(医院継承)に向けた準備
次に、譲渡する病院、クリニックなどの譲渡価額の見積もりを算定し、おおよその希望譲渡額や譲渡条件を決めます。また、買い手候補に提案する資料を作成します。この資料をもとにM&A仲介会社が買い手候補探しをおこない、見つかればトップ面談をおこないます。
最初に紹介された買い手候補とスムーズに話が進めば、2~3か月程度でまとまることもありますが、買い手がなかなか見つからない場合や、複数の買い手候補とトップ面談をするなどの状況になると、半年~1年程度、あるいはそれ以上かかることもあります。
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3.買い手候補との交渉
次におこなうのが、買い手候補との交渉です。ここでは、譲渡価格や条件など、医業承継に向けた基本条件の交渉をします。交渉が進んで、お互いに成約の意思が確認できた段階で基本合意(中間合意)を締結し、その後、デューデリジェンス(買収監査)をおこないます。デューデリジェンスとは、買い手が、公認会計士や弁護士などの専門家を用いながら、売り手について詳細に調査することです。
デューデリジェンスの実施期間は、売り手の医療機関の規模などによります。小規模なクリニックの譲渡なら、1、2日の簡易的なデューデリジェンスだけで済ませることもあります。
このプロセス全体で1~2か月は必要でしょう。
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4.クロージング
最後はクロージングと呼ばれる、契約締結段階です。デューデリジェンスによって発見された事項をお互いに話し合って、最終的な条件を調整し、合意できた段階で最終契約書を交わして成約を迎えます。
このプロセスは、デューデリジェンスで発見された問題の内容や深刻度などによっても変わってきますが、通常は1~2か月程度でしょう。
以上をトータルして、譲渡成立までには半年から1年程度の期間となるケースが一般的です。短い場合なら4~5か月程度で譲渡成立となることもあります。逆に、長ければ2~3年かかることもあります。
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譲渡成約までの期間が短いケース
M&Aで医業承継をおこなうと決めた売り手としては、できるだけ早く成約したいと願うでしょう。
短期間で成約まで進むケースには、共通する以下の3つの特徴があります。
- 収益基盤が安定している
- 譲渡する側の準備が整っている
- 条件を柔軟に変更できる
収益基盤が安定している
患者来院数が一定以上で安定しており、内装や医療機器がそのまま使用できるなどの条件が整っていると、買い手から見て「収益基盤が安定している」とみなされ、短期間での成約が実現する可能性が高くなります。
譲渡する側の準備が整っている
売り手側の譲渡条件に関する具体的な内容が定まっていて、契約までに必要となる各種書類などもすでに準備されていれば、事務的なプロセスに必要な時間を短縮できます。
医業承継の準備は、多くの場合、日々の診察の合間や診察後などにおこなわれます。仲介会社との打ち合わせも、資料作成や書類の準備もこうした時間内でおこなわれるため、実際には思った以上に時間がかかることもあります。
たとえば、財務関係の資料や社員名簿(医療法上の社員。医療法人の場合)など、普段はあまり使わない資料も必要となります。あらかじめ整理して、求めに応じてすぐに提出できるようにしておくとよいでしょう。
条件を柔軟に変更できる
医業承継の譲渡価格などの条件は、相対での交渉で決められるものです。交渉ごとなので、相手が特に重要だと考えている点については、相手にあわせて条件を柔軟に変更することができれば、短期で成約に結びつくでしょう。
譲渡成約までに長い期間がかかるケース
反対に、譲渡成約までに長い期間がかかるケースもあります。こうした場合に共通する特徴としては、以下の3点が挙げられます。
- 相対的に需要が少ない診療科目である
- 譲渡条件が見合っていない
- 売り手の方向性や譲渡内容が定まっていない
相対的に需要が少ない診療科目である
小児科や産婦人科などの単科クリニックは、相対的に譲り受けニーズが少なく、買い手候補が見つかるまでに時間がかかる傾向にあります。
譲渡条件が見合っていない
譲渡する病院やクリニックの収益力や資産内容と比べ、売り手が求める譲渡価格などの条件が高すぎると、買い手候補が見つかるまでにどうしても時間がかかります。
また、買い手候補が見つかっても、売り手と買い手の希望条件がかけ離れていると、条件交渉に時間がかかります。
売り手の方向性や譲渡内容が定まっていない
意外と多いのが、譲渡をしようかやめようか迷っていたり、譲渡条件を定め切れていなかったりするケースです。
医業承継に向けた売り手側の方向性や譲渡内容が明確に定まっていない状態だと、M&A仲介会社が資料を作成したり買い手候補を探したりすることが困難になります。また、交渉過程で売り手の方針がぶれると、買い手から「この人は本当に譲渡をする気があるのか」と、不信感を持たれることにもなります。結果として、譲渡成立までの時間が長引く可能性が高くなります。
譲渡成約を急ぎたい院長が考えるとよいこと
ここまでの内容を踏まえた上で、譲渡成約を急ぎたい院長が押さえておくべきポイントは、主に以下の3点です。
- 譲渡内容に見合った条件を設定する
- 収益力を確保しておく
- 状況に合わせて柔軟に対応する
譲渡内容に見合った条件を設定する
上述のように、譲渡する病院やクリニックの状況に見合った条件でなければ、買い手候補が表れるのは難しくなります。売り手が「できれば高く売りたい」と思うのは当然ですが、買い手側としては「できれば安く買いたい」と考えています。
高く売りたい売り手と、安く買いたい買い手が納得して成約するためには、客観的に見て譲渡条件が内容と見合っていることが必要です。つまり、“相場”に見合っているということです。
自院の譲渡価格の相場感を知るには、経験が豊富なM&A仲介会社に率直にたずねてみるのがよいでしょう。
収益力を高めておく
収益力を確保しておくことも、短期間での成約を目指すためには大切です。収益力を高めることは一朝一夕でできるものではなく、無駄な支出を抑え、集患に役立つ施策を地道に実施していくしかありません。
少なくとも、承継を意識しはじめたら、あわせて収益力の改善も意識するべきでしょう。
状況に合わせて柔軟に対応する
病院やクリニックの状況を整え、譲渡条件も適正なものにしたとしても、最後は買い手候補との話し合いによって成約するかどうかが決まります。
相手の意見も聞いた上で、ある程度は状況に合わせて柔軟に対応する姿勢も大切です。何もかも相手の意見を聞く必要はありませんが、ある程度は譲歩したり妥協したりしなければ、短期で交渉を成立させることは難しくなります。
「どの点なら妥協できるのか」「どこまでなら譲歩できるのか」といった点を、あらかじめ想定しておくとよいでしょう。
まとめ
医業承継における譲渡が成約するまでの期間は、譲渡する病院やクリニックの状況によってかなり違いますが、一般的には半年から1年程度です。
なるべく早く譲渡をしたいのであれば、本記事で紹介したポイントを踏まえた上で準備を進め、M&A仲介会社のコンサルタントなどにもアドバイスを求めてみるのもよいでしょう。
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▼エムステージの医業承継支援サービスについて
この記事の監修者
田中 宏典 <専門領域:医療経営>
株式会社エムステージマネジメントソリューションズ代表取締役。医療経営士1級。医業承継士。医療機器メーカー、楽天を経て株式会社エムステージ入社。医師紹介事業部の事業部長を経て現職。これまで、病院2件、診療所30件、介護施設2件の事業承継M&Aをサポートしてきた。エムステージグループ内のM&A戦略も推進している。