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株式会社が医療法人を買収することはできるのか?経営に関わる3つの方法を解説

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株式会社が医療法人を買収することはできるのか?

医療法人は非営利性が求められるため、株式会社が直接経営することは原則禁止されており、株式会社が医療法人を直接買収し、経営権を持つことはできません。医療法人の経営方針は社員総会で決まりますが、株式会社は営利法人のため、社員総会で議決権を持つ「社員」になれないためです。

ただし、株式会社の関係者を社員に入れて出資持分を買い取る方法や、MS法人・一般社団法人を通じて関わる方法を使えば、医療法人の経営に関われます。

そこで本記事では、株式会社が医療法人を直接買収できない理由から、経営に関わる3つの方法、それぞれで行政から確認を受けるポイントまでまとめました。

株式会社が医療法人を直接買収できない理由は非営利性の原則

株式会社が医療法人を直接買収できないのは、医療法が医療機関の経営に非営利を求めているためです。医療法は、営利を目的として医療機関を開設しようとする者に、都道府県知事が開設の許可を出さなくてよいと定めています。

“営利を目的として、病院、診療所又は助産所を開設しようとする者に対しては、第四項の規定にかかわらず、第一項の許可を与えないことができる。”

出典:医療法第7条第7項|e-Gov法令検索

この非営利性の原則のもとで、株式会社には次の2つのルールがあります。

  • 株式会社は医療法人の社員になれない
  • 株式会社は出資持分を買い取っても議決権は得られない

2つのルールによって、株式会社は医療法人の経営を決める立場に立てません。それぞれの中身を確認しておきましょう。

株式会社は医療法人の社員になれない

株式会社が医療法人の社員になれないのは、社員が医療法人の経営を決める立場にあり、国が営利を目的とする法人をこの立場から外しているためです。

社員とは、医療法人の最高意思決定機関である社員総会で議決権を持つ人で、従業員とは別の立場です。株式会社でいえば株主にあたり、理事の選任や定款の変更を決めます。厚生労働省は、社員になれる者を次のように示しています。

“③ 社団たる医療法人の社員には、自然人だけでなく法人(営利を目的とする法人を除く。)もなることができること。”

出典:医療法人の機関について(平成28年3月25日医政発0325第3号)|厚生労働省

個人や一般社団法人などの非営利の法人は、社員になれます。一方で、社員総会の議決権を持てない株式会社は、理事を選ぶことも、医療法人の方針を決めることもできません。

株式会社は医療法人に出資しても議決権は得られない

株式会社が医療法人に出資しても議決権を得られないのは、持分あり医療法人では議決権を持つ「社員」と、財産の権利を持つ「出資者」が別の立場として扱われるためです。社員総会の議決権は出資額にかかわらず、社員1人につき1個と決まっています。

“社員は、各一個の議決権を有する。”

出典:医療法第46条の3の3第1項|e-Gov法令検索

株式会社がいくら出資しても、社員になれない以上、議決権は1個も生まれません。厚生省もこの点について株式会社は医療法人に出資できる一方で、出資によって社員総会の議決権を得たり、役員として経営に加わったりはできないと回答しています。

出典:医療法人に対する出資又は寄附について(平成3年1月17日指第1号)|厚生労働省

▼株式会社が医療法人に対してできること

項目株式会社根拠
社員総会の議決権を持つできない医政発0325第3号
役員として経営に加わるできない平成3年指第1号
医療法人に出資するできる平成3年指第1号

▶売却・買収を含めた医業承継(M&A)の全体像はこちら

株式会社が医療法人の経営に関わる3つの方法

株式会社が医療法人の経営に関わる3つの方法

株式会社は医療法人を直接買収できませんが、経営に関わる方法は次の3つがあります。

  1. 社員交代+出資スキーム
  2. MS法人を設立し関わる
  3. 一般社団法人を設立し医療法人の社員にする

どの方法でも、医療法人の利益が株式会社へ流れていないかを行政が確認します。それぞれの仕組みと、行政が確認するポイントを解説します。

①社員交代+出資スキーム

社員交代+出資スキームは、医療法人のM&Aで広く使われている方法です。譲り受ける側が株式会社や投資ファンドでも使えます。このスキームでは、次の2つを組み合わせます。

  • 株式会社の関係者を社員にして、経営を決める権限を移す
  • 今の出資者から出資持分を買い取って、財産の権利を移す

出資持分が関係するのは持分あり医療法人だけですが、令和8年3月31日時点でも35,104法人あり、社団医療法人の59.0%を占めています。

社団医療法人に占める持分あり医療法人の割合

出典:医療法人数の推移(令和8年3月31日現在)|厚生労働省

なお、持分なし医療法人には出資持分がないため、社員と役員の交代だけで経営権が移ります。

関連記事:医療法人は売却できる?出資持分ありとなしの場合の譲渡スキームやしくみ

2つを、それぞれ解説します。

株式会社の関係者が社員になる

株式会社の役員や従業員だった人が個人として医療法人の社員になれば、株式会社は間接的に医療法人の経営権を得られます。社員総会の議決権は、出資額にかかわらず社員1人につき1個と決まっているためです。

つまり、株式会社側の人が社員の過半数を占めれば、社員総会で理事を選び直し、医療法人の経営方針を決められます。過半数を押さえるには、今の社員の退社と、社員総会の承認を受けた株式会社側の人の入社が必要です。

ただし非営利性の観点から、厚生労働省は、医療法人と関係のある営利法人の役員が医療法人の役員を兼ねることは適当ではないとしています。そのため、株式会社側の人が医療法人の理事や監事に就く場合は、株式会社の役員を離れてから就任します。

出典:医療法人運営管理指導要綱 p.2, p.6|厚生労働省

株式会社が医療法人の出資持分を取得する

社員交代+出資スキームのもう1つの取引は、株式会社による出資持分の取得です。持分あり医療法人では、社員を入れ替えても、財産の権利を表す出資持分は今の出資者の手元に残ります。そこで株式会社が、理事長を中心とした出資者から出資持分を買い取ります。

今の社員が持つ出資持分を株式会社が買い取り、社員には退社してもらい、代わりに株式会社の関係者が新しい社員に就く。これが、このスキームの全体像です。

なお、基金拠出型医療法人など持分なし医療法人には、買い取る出資持分がありません。その場合は、基金を買い取ったり、医療法人から退職金を支払ったりする形をとるのが一般的です。

関連記事:医院・クリニックの売却相場|価格の考え方や計算方法を解説

②MS法人を設立し経営に関わる

株式会社は、MS法人を通じて医療法人の収益の一部を受け取ることで、医療法人の経営に関われます。MS法人とは、医療法人から売店の運営や医薬品の購入、経理などの周辺業務を請け負う株式会社や合同会社です。

株式会社がMS法人を設立するか、すでにあるMS法人をM&Aで譲り受ければ、医療法人が支払う業務委託料や賃料を、MS法人を通じて受け取れます。医療法人の経営権は持てないものの、実質的に医療法人を経営しているのに近い状態です。

ただし、医療法人は、役員やその親族が関わるMS法人との一定規模以上の取引を、毎年都道府県知事に届け出ます(医療法第51条第1項・第52条第1項)。

関連記事:MS法人とは|設立のメリット・デメリットと活用上の注意点

③一般社団法人を設立し医療法人の社員にする

株式会社は一般社団法人を設立し、その一般社団法人を医療法人の社員にすることで医療法人の経営に関われます。一般社団法人とは「一般社団法人及び一般財団法人に関する法律」にもとづいて、登記だけで設立できる非営利法人のことです。

非営利法人なので、株式会社と違い医療法人の社員になれます。

ただし、厚生労働省は、医療法人の社員になった法人が出資持分を持つことを適当ではないとしています。そのため、社員になった一般社団法人は出資持分を持たないのが原則です。持分あり医療法人でこの方法を使う場合は、出資持分の扱いを別に決めておく必要があります。

関連記事:クリニック譲渡時の課税とは?一般社団法人を活用する際の注意点を解説

まとめ:株式会社が関わる医療法人のM&Aは非営利性への配慮が必須

株式会社は医療法人を直接買収できませんが、社員交代+出資スキーム、MS法人、一般社団法人を通じて、医療法人の経営に関われます。

ただし、医療法人の経営は非営利が前提です。営利を優先した運営をすれば、都道府県などの行政から指摘や指導を受けるおそれがあります。株式会社が関わる医療法人のM&Aは、医療法人の制度とM&Aの両方に詳しいアドバイザーに相談しながら進めるのが安心です。

私たちエムステージマネジメントソリューションズでは、医院継承専門のコンサルタントがサポートします。株式会社が関わる医療法人のM&Aをお考えの先生は、ぜひお気軽にご相談ください。

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この記事の監修者

田中 宏典(医業承継M&Aアドバイザー/医療経営士1級/医業承継士/ファイナンシャルプランナー

田中 宏典 <専門領域:医療経営>

株式会社エムステージマネジメントソリューションズ代表取締役。
医療経営士1級。医業承継士。
静岡県出身。幼少期をカリフォルニア州で過ごす。大学卒業後、医療機器メーカー、楽天を経て株式会社エムステージ入社。医師紹介事業部の事業部長を経て現職。
これまで、病院・診療所・介護施設等、累計70件以上の事業承継M&Aを支援。また、自社エムステージグループにおけるM&A戦略の推進にも従事している。
2025年3月にはプレジデント社より著書『“STORY”で学ぶ、M&A「医業承継」』を出版。医院承継の実務と現場知見をもとに、医療従事者・金融機関・支援機関等を対象とした講演・寄稿を多数行うとともに、ラジオ番組や各種メディアへの出演を通じた情報発信にも積極的に取り組んでいる。
医療機関の持続可能な経営と円滑な承継を支援する専門家として、幅広く活動している。
より詳しい実績は、メディア掲載・講演実績ページをご覧ください。

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