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医療法人の理事・監事とは?役割や選任方法、報酬、リスクを解説

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医療法人の理事・監事とは?役割や選任方法、報酬、リスクを解説
医療法人の理事・監事とは?役割や選任方法、報酬、リスクを解説

クリニックや診療所の開業を目指す人の中には、経営の安定を図るために医療法人化を検討する方もいるでしょう。

医療法人を設立するには、さまざまな条件や手続きが必要です。また、組織そのものを構築するプロセスも重要です。

そこで今回は、医療法人を構成する役職である「理事」と「監事」について、役割や選任方法、報酬といった基礎知識を解説します。

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医療法人の組織構造

医療法人の組織構造は、主に理事会と監事によって構成されています。

理事会は法人の経営を担う中心的な機関であり、複数の理事で構成されます。理事の中から選出される理事長は、医療法人の代表者として経営全般を統括しますが、最終的な方針決定はあくまで理事会の多数決によって行われます。

一方、監事は理事会から独立した立場で、業務執行や財務状況を監査する役割を担います。監事には理事会での議決権はありませんが、法人の透明性と健全性を保つ上で重要なポジションです。

理事会は経営戦略の立案と、決議に基づく業務執行を担当し、監事はその活動が適正に行われているかを確認するという役割分担になっています。

この仕組みにより、医療法人は迅速な意思決定と適切なチェック機能のバランスを保つことができます。こうした体制は、医療法人が公益性の高い事業を行い、社会的信頼を得るために不可欠です。

なお、医療法人の設立には、最低でも理事3人と監事1人を集める必要があり、さらに親族関係にある役員の割合を3分の1以下に抑えなければなりません。

参考:厚生労働省「医療法人の基礎知識」

医療法人における理事と監事とは

まずは医療法人の組織構造、および「理事」「理事長」「監事」の3つの役職について概要を説明します。

医療法人の理事とは

医療法人の理事は、株式会社における取締役に相当する役職で、意思決定機関である理事会で発案や投票を行う立場です。

理事は、社員総会または評議員会によって選任され、その後、医療法人との委任契約に基づき、法人の日常業務の運営や重要な意思決定に参加します。

個々の理事が理事長を上回る権限を持つわけではありませんが、理事の過半数による賛成で理事長を解任することができます。この点を踏まえると、理事会は法人内で最も大きな権限を持つ集団と言えるでしょう。

医療法人の理事長は、法人を代表する最高責任者として、意思決定や業務執行の中心的な役割を担う重要な存在です。

株式会社における代表取締役に相当するこの役職には、原則として医師または歯科医師が就かなければなりません(例外的に、厚生労働大臣の認可を受ければ、医師・歯科医師以外が理事長に就任することも可能です)。

理事会が存在するため、すべての決定を単独で行うことはできませんが、契約の締結や職員の採用・解雇などにおいては最終決定権を持ちます。

参考:厚生労働省「医師、歯科医師以外の者を理事長とする認可」

医療法人の監事とは

医療法人の監事は、理事会から独立した立場で、法人の業務執行や財務状況の監査・報告を担う重要な役職です。

監事は理事会に出席し意見を表明できますが、主に監査結果の報告やそれに基づく助言を行います。

監事の選任方法は理事と同様に、社員総会または評議員会によって行われます。ただし、理事の中から監事を選任することは認められていません。

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医療法人における理事の役割と責任

医療法人の理事および理事長は、法人運営の先頭に立ち、その方向性を示す役割を担います。理事は経営方針や財務計画を立案する際に理事会を招集して議論を行い、決定した業務をそれぞれの管轄範囲で実行します。

また、採用計画や人材育成計画の策定、給与体系の決定といった人事管理も理事の重要な職務です。さらに、医療安全対策の強化や患者満足度向上施策の実施など、医療サービスの質を高める取り組みも欠かせません。

このように、理事は医療法人の総合的な運営と発展に深く関与しており、その責任範囲は法人の業務全般に及びます。

また、医療過誤や個人情報漏洩といった単純な業務ミスでも、対応次第では法的責任を問われる場合があります。そのため、理事は業務遂行において細心の注意を払い、リスク管理を徹底する必要があります。

医療法人における監事の役割と責任

医療法人の監事の主な業務は、会計監査と業務監査の2種類です。

まず会計監査では、予算設定や資金運用状況の監査に加え、財務諸表の作成や実際の会計処理が法令に従っているかもチェックします。

一方、業務監査においては、理事の職務執行状況や内部統制システムの有効性など、法人の業務全般が法令や定款に従って行われているかを調査します。

もちろん、医療上の安全管理体制や個人情報の保護体制も監査の対象です。

監事は、これらの監査結果を迅速かつ正確に報告し、必要に応じて改善提案を行うことで、法人の健全性維持に大きな責任を持っています。

医療法人における理事・監事の選任について

ここからは、医療法人において理事や監事を選任する流れ、および法人運営に適した人材の選び方を解説します。

医療法人における理事と監事の選任方法

医療法人における理事と監事の選任は、原則として社員総会で行われます。

理事会とは異なり、社員総会は社員全員で構成される集会であり、役員人事や定款変更などの重要事項を決定する際にのみ招集されます。一般的には年に1回しか開催されません。

社員総会では原則として理事長が議長を務めますが、理事長の解任動議など一部のケースでは、社員間の推薦や立候補で議長が選出されることもあります。

その後、理事会や指名委員会による役員候補者の紹介および候補者に対する質疑応答を経て、多数決により信任決議が行われるのが一般的な流れです。

参考:厚生労働省「第2章 医療法人の適正な運営に関するチェックリスト(組織・運営)」

医療法人における理事と監事の適任者の条件

医療法人の理事と監事には、医療サービスに関する豊富な知識が求められるとともに、それぞれの役割に応じた適任者であることが必要です。

まず、理事の任命基準となるスキルは、経営管理能力とリーダーシップです。

経営に関しては、業界の動向や地域のニーズを調査・分析する能力、さらにそれに基づいて医療体制を適宜改善していく実行力が求められます。また、医療スタッフとの緊密なコミュニケーションを通じて、法人の理念や方向性を組織内に効率的に浸透させていくことが、理事に求められるリーダーシップです。

次に、監事に求められる主なスキルは、財務や会計をはじめとした法知識、そして批判的思考に基づくきめ細かな分析力です。

また、監査結果の報告義務がある以上、身近な人間のミスや不正を随時指摘する必要があるため、職務を続けるには強い精神力が欠かせません。

医療法人における理事と監事の選任における注意点

理事や監事の選任においては、役員間で利益相反関係を生じさせないこと、および監事の独立性の確保に重点を置きましょう。

利益相反とは、当事者間での行為が一方にとって利益、他方にとって損失となる状態を指し、議論の停滞や監査の阻害につながる恐れがあります。

監事の選定にあたっては、理事の親族関係者はもちろん、いずれかの理事と業務上密接な関係があった人物も候補から除外するなど、組織内の癒着を避ける人選が重要です。

もちろん、社員総会をはじめとした選任プロセス自体が、法令や定款を遵守しているかの確認も欠かせません。

医療法人における理事・監事の解任

医療法人において理事や監事を解任する際は、条件や手続きが選任時と微妙に異なる点、および解任の正当性が認められない場合の法的リスクに注意が必要です。

以下で詳しく見ていきましょう。

理事・監事の解任の条件や手続き

理事・監事を解任する主な条件としては、法令や定款への違反、職務怠慢などの資質不足が挙げられます。理事が法人の利益に反する行為を行った場合や、監事が適切な監査を怠った場合などが分かりやすい例です。

解任の一般的な手順としては、まず総社員の5分の1以上の連名で臨時社員総会の招集を請求し、その請求日から20日以内に総会が開かれます。

社員総会では、解任提案理由の説明や当該理事への質疑応答などが行われ、その後、選任時と同様に決議が取られます。

なお、理事に関しては選任決議と同じく過半数の賛成で解任できますが、監事の解任には総社員の3分の2以上の賛成を要する「特別決議」が必要です。

最終的に解任が決まった場合、その旨を当該理事・監事に通知した後、法務局での変更登記や重要書類の引き継ぎなど、諸々の事後手続きを行ってください。

参考:大阪府「医療法人の会議(社員総会、理事会、評議員会)」

解任に関する法的な注意点

医療法人における理事・監事の解任に際しては、解任事由や決議のプロセスが法的かつ客観的に正当でなければなりません。

手続き上の瑕疵があるだけでも、決議の有効性が問われる可能性があるため、決議に至るまでの過程は文書で詳細に記録しておきましょう。

また、私怨をはじめとする恣意的な解任は後々の訴訟リスクを高めるため、動議にあたっては経営上の合理的な動機と客観的な証拠の提示が重要です。さらに、当該役員には弁明の機会を十分に与えることが求められます。

最後に、法的なリスクとは異なりますが、役員解任というニュースによる法人の評判の下落にも注意が必要です。これを最小限にとどめるためには、今後の方針を明確化した上で想定される質問への回答を事前に用意し、なるべく早期に説明の場を設けることが求められます。

医療法人における理事・監事の報酬

最後に、医療法人において理事・監事の報酬が決まる流れを簡単に説明します。

報酬の決定方法

医療法人における理事・監事の報酬は、定款に定められていない場合、法人の透明性と公正性を確保するために社員総会の決議に基づいて決定されます。

社員総会では、理事・監事の職務内容、責任の重さ、法人の財務状況、同規模の他の医療法人の報酬水準などを総合的に考慮し、適切な報酬額を決定します。

決議の際には、個々の理事・監事の報酬額ではなく、理事全員の報酬総額の上限を定めるのが一般的です。この上限の範囲内で、各理事・監事の具体的な報酬額を決定する権限を理事会に委任することもあります。

報酬の決定プロセスでは、利益相反を避けるため、当該理事・監事は決議に参加しないことが望ましいとされています。

また、報酬決定の根拠や過程を明確に記録し、必要に応じて説明できるようにしておくことも重要です。

医療法人における理事・監事の報酬の上限額に明確な決まりはない

医療法人における理事・監事の報酬の上限額については、法令上の明確な規定はありません。

しかし、適正な報酬水準を設定することは、法人の健全な運営にとって極めて重要です。

医療法人における理事・監事の報酬の上限を決める際には、まず法人の財務状況を十分に考慮する必要があります。過度に高額な報酬は、法人の財務を圧迫し、本来の医療サービス提供に支障をきたす可能性があります。

また、法人の規模や業績、地域の経済状況なども重要な考慮要素となります。同時に、理事・監事の職務の複雑さ、責任の重さ、必要とされる専門性なども適切に評価されるべきです。

さらに、公益性の高い医療法人の性質上、社会的な観点からも適切と判断される水準であることが求められます。

過度に高額な報酬は、法人の社会的信頼を損なう可能性があります。一方で、あまりに低い報酬では、有能な人材の確保が難しくなる可能性もあります。

バランスの取れた適正な報酬水準を設定することが、医療法人の持続的な発展につながります。

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医療法人における理事・監事の選任は適切な人物を

医療法人における理事と監事の役割、および選任・解任に必要な手続きや条件について解説しました。

診療所やクリニックの医療法人化には様々なプロセスを踏む必要がありますが、法人化には社会的信用度の向上や税制優遇など、経営上の多くのメリットがあります。

医療法人の設立に関心がある方は、税理士や医療経営コンサルタントなどの専門家にまずは一度無料でご相談ください。

この記事の監修者

田中 宏典 <専門領域:医療経営>

株式会社エムステージマネジメントソリューションズ代表取締役。医療経営士1級。医業承継士。医療機器メーカー、楽天を経て株式会社エムステージ入社。医師紹介事業部の事業部長を経て現職。これまで、病院2件、診療所30件、介護施設2件の事業承継M&Aをサポートしてきた。エムステージグループ内のM&A戦略も推進している。

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