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院長が急逝したら閉院?手続きの流れやよくあるトラブルと解決法を紹介

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院長が急逝したら閉院?手続きの流れやよくあるトラブルと解決法を紹介
院長が急逝したら閉院?手続きの流れやよくあるトラブルと解決法を紹介

院長の突然の急逝は、医療スタッフや遺族にとって衝撃的な出来事ですが、今後の経営やスタッフの雇用、患者の対応など、早急に対応しなければならない問題は山積みです。

本記事では、院長の急逝後に直面するさまざまな課題と、その対処法を詳しく解説します。院長が急逝したあとにやるべきことを、個人経営の病院・診療所と医療法人それぞれで紹介しますので、ぜひ参考にしてください。

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個人経営の病院・診療所の院長が急逝した場合の手順

個人経営の病院・診療所の院長が急逝した場合、まずは廃業に関する手続きを行う必要があります。これは院長の死亡によって、許可や届出の効力が失われるためです。後継者がいる場合は、廃業の手続き後に開業手続きを行います。

個人経営の病院・診療所の院長が急逝した場合の後継者がいるケース、いないケースそれぞれの手順を詳しく解説します。

後継者がいるケース

後継者が決まっている場合は、後継者が廃止届と同時に後継者の新規開設届を提出すれば経営の継続が可能です。主な流れとしては、以下のとおりです。

  1. 院長が急逝したことが原因による「病院(診療所)廃止届」を管轄の保健所に提出する
  2. 診療所廃止届の提出と同時に「新規開設届」を院長が急逝した翌日付にして、管轄の保健所に提出する
  3. 地方厚生局に「保険医療機関廃止届」の提出と新たに「指定申請」を提出する

ほかにもスタッフとの新たな雇用契約の締結、医療機器のリース業者などの取引先企業との契約に関する名義変更なども必要です。

上記の手続きを完了すれば、病院の診療を継続できます。

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後継者不在のケース

後継者不在のまま院長が急逝した場合は、基本的に閉院となるため廃業の手続きを行います。

まずは管轄の保健所などに、廃業に関する書類を相続人が提出します。

提出書類届出先提出期限
病院(診療所)廃止届管轄の保健所10日以内
病院(診療所)開設者死亡届管轄の保健所10日以内
医籍登録抹消申請書管轄の保健所急逝した日の翌日から30日以内
医療用X線装置廃止届管轄の保健所10日以内
保険医療機関廃止届管轄の地方厚生局急逝後すみやかに提出

続いて、急逝した院長の税務上の手続きをしなければなりません。

提出書類届出先提出期限
個人事業の廃業等届出書税務署1か月以内
個人事業者の死亡届出書税務署急逝後すみやかに提出
給与支払事務所等の廃止届出書税務署1か月以内
事業廃止等申告書税務署および都道府県税事務所急逝後すみやかに提出

最後に医療スタッフの解雇に関する行政手続きが必要です。

スタッフへの解雇通知は、30日前までに行わなければならない点に注意してください。30日前までに通知ができない場合は、別途解雇予告手当を支払う義務が発生します。

提出書類届出先提出期限
健康保険・厚生年金保険適用事業所全喪届年金事務所廃止する日から5日以内
健康保険・厚生年金保険被保険者資格者喪失届年金事務所廃止する日から5日以内
雇用保険適用事業所廃止届公共職業安定所廃止する日から10日以内
雇用保険被保険者資格喪失届公共職業安定所資格喪失の翌日から10日以内
雇用保険被保険者離職証明書公共職業安定所資格喪失の翌日から10日以内
労働保険料確定保険申告書・労働保険料還付請求書労働基準監督所廃止から50日以内

上記の主な行政手続き以外にも、患者に対して閉院の通知や転院先の紹介や医療機器の処分、賃貸物件であれば原状回復などが必要です。

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医療法人の院長が急逝した場合の手順

医療法人の院長が急逝した場合の、後継者がいるケースと不在のケースを解説します。

特に医療法人の場合、後継者不在のまま院長が急逝しても、すぐには解散(廃業)できない点が、個人経営の病院・診療所のケースと大きく異なります。

後継者がいるケース

院長急逝後の後継者が決まっている場合、医療法人の役員の変更手続きを行うことで診療を継続できます。役員変更に関する主な行政手続きは、下記のとおりです。

提出書類届出先
役員変更届出法務局
理事長変更登記法務局
診療所管理者変更届出保健所
保険医療機関変更届出管轄の地方厚生局

個人経営の病院・診療所との大きな違いは、役員の変更の手続きだけで引き継ぎが完了することです。

後継者不在のケース

医療法人の院長が後継者不在のまま急逝してもすぐに廃業できない理由は、医療法人そのものが「医業の永続性」を目的として設立されているためです。手続きの手順は以下のとおりです。

  1. 休止の手続き
  2. 後継者を探す
  3. 医院継承(医業承継)を活用する
  4. 医療法人の解散手続き

それぞれ順番に解説します。

1. 休止の手続き

後継者がすぐに見つからない場合には、手続きをすれば一時的に病院の休止が可能です。具体的には、保健所に「診療所休止届」、地方厚生局に「保険医療機関休止届」を提出する必要があります。

ただし、休止期間が1年以上に及んだ場合は、医療法人の認可が取り消されてしまうため注意しなければなりません。また休止に伴い、患者の転院のサポートやスタッフの雇用についても考慮が必要です。

2. 後継者を探す

休止の手続きが完了したら、まずは後継者を探さなければなりません。医師の資格を持った後継者が見つからない場合、例外として一時的に医師ではない方が理事長になれる可能性があります。

同項ただし書の規定に基づく都道府県知事の認可は、理事長が死亡し、又は重度の傷病により理事長の職務を継続することが不可能となった際に、その子女が、医科又は歯科大学(医学部又は歯学部)在学中か、又は卒業後、臨床研修その他の研修を終えるまでの間、医師又は歯科医師でない配偶者等が理事長に就任しようとするような場合には、行われるものであること。
出典:医療法人制度の改正及び都道府県医療審議会について|厚生労働省

あくまで都道府県知事の認可が必要になるため、詳しい条件などは各都道府県にお問い合わせください。

3. 医院継承(医業承継)を活用する

後継者が見つからない場合は、閉院の前に第三者への医院継承も検討しましょう。

医療機関は地域医療の活性化においても欠かせない存在であるため、医院継承によって存続させることは、患者にとってもメリットがあります。医院継承を考えている方は、一度こちらから専門家にご相談ください。

また、医院継承の詳細は、本記事の「後継者不在での医院継承(医業承継)を成功させるポイント」でも解説しています。

4. 医療法人の解散手続き

後継者が見つからない場合は、以下のような医療法人の解散(廃業)手続きが必要です。

提出書類届出先
医療法人解散認可申請法人事務所管轄の都道府県
医療法人解散・清算人就任登記申請法人事務所管轄の法務局
解散広告官報に2か月で3回以上
税務申告・納税税務署
精算結了登記法人事務所管轄の法務局
登記事項届出法人事務所管轄の都道府県

後継者不在のまま院長が急逝した場合によくあるトラブルと解決法

後継者を見つけようとしている最中に、予想もせず院長が急逝してしまうことが実際によくあります。

ここでは後継者が不在のまま院長が急逝した場合に、よく発生するトラブルと解決法を紹介します。

従業員の雇用継続や給料の支払いが滞る

院長が急逝すると、一緒に働いていた従業員は雇用の継続や給与の支払いに関する不安を抱きます。そのため、今後の雇用や給与についてできるだけ早く告知することが大切です。

後継者がいて医院継承される場合は、従業員とも新たに雇用契約を結ぶ必要があります。また、閉院の場合は事実上解雇となり、30日前の告知が必要です。

院長が急逝したあとの業務を円滑にするためにも、従業員への素早いフォローを忘れないようにしましょう。

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遺族だけでは手続きや対応が追いつかない場合がある

急逝した院長の遺族が医療関係者ではなかった場合、患者や取引先、管轄する自治体等からの度重なる問い合わせによって病院の手続きが進まなくなる場合があります。

後継者に引き継ぐのか否かが不明、必要な書類が見つからない、問い合わせに対する回答内容がわからないなど、急逝後の基本的な手続きに加えて病院関係の手続きも重なると、遺族も疲弊します。

トラブルを防ぐためにも、あらかじめ緊急時のマニュアルの作成や重要書類の保管場所を周囲の人が把握する(院長が伝えておく)ことも重要です。

継続治療が必要な患者に対する転院手続きが遅れる

院長が急逝して閉院となった場合、継続治療が必要な患者に対しては早急に転院先を紹介しなければなりません。

後継者がいた場合でも、急逝した院長が直接診ていた患者は担当が変わるため、新しい院長による丁寧な説明と患者の同意が必要不可欠です。

院長が急逝した際は、できる限り早急に対応をしましょう。

自由診療で前金を受領していた場合の返金対応が遅れる

患者の自由診療で長期的な治療が必要になった際には、前金を受け取っているケースも多いでしょう。

院長の急逝により治療の継続ができなくなった場合には、行っていない治療分の返金をしなければなりません。

受け取った前金に対して残っている治療内容と返金額などを丁寧に説明し、患者に納得してもらう必要があります。場合によっては、残りの治療を行える病院も紹介しましょう。

高額な相続税やマイナスの財産に関するトラブル

病院の建物や土地、高額な医療機器などは資産価値が高い分、相続税も高額です。相続税は原則、現金で一括納付しなければならないため、納付が困難になる方もいます。そのような場合には、以下の制度を活用しましょう。

  1. 延納制度
  2. 物納制度

「延納制度」は、条件を満たせば最長20年まで相続税を分割納付できる制度です。相続税額が10万円を超えていて、納付が困難な場合に利用できます。

ただし、条件のひとつに「相当な担保を提供すること」とされており、具体的には以下の3つが該当します。

  • 売却できるもの
  • 抵当権が設定できること
  • 相続税を支払えるほどの価値があるもの

上記の条件を満たす担保を保有しているのか確認するためにも、税務署に直接相談してみることがおすすめです。延納制度を活用して分割納付をする際には「利子税」が発生します。

「物納制度」は、延納制度を活用しても納付が難しい場合に限って利用できる制度で、相続した不動産などの財産を、そのまま相続税として収める制度です。

ただし、物納できる財産が限られていることもあり、物納制度を実際に利用できるケースは極稀です。相続税の納付が困難な場合には、顧問税理士や税務署に相談しましょう。

そして相続はプラスの資産だけでなく、借金などのマイナスの資産も引き継ぐことになります。

マイナスの資産のほうが多い場合には、借金だけが残ります。そのような場合には「相続放棄」の手続きを行いましょう。相続の権利を放棄することで、マイナスの資産を引き継ぐことがなくなります。

ただし、院長が急逝した日から3か月以内に家庭裁判所へ手続きしなければならない点に注意です。期限が過ぎてしまうと、相続放棄ができません。また「借金などマイナスの資産のみ放棄」ということもできません。

プラスの資産を含めた、一切の相続の権利を放棄することになるため、しっかりと資産を把握することが大切です。

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病院の原状回復など廃業に関して必要な費用が発生する

後継者不在で閉院となった場合、以下のような費用が必要になります。

  • 建物の原状回復費用
  • 医療機器の処分費用
  • リース品の精算費用
  • 従業員の退職金などの費用

病院の規模にもよりますが、廃業には数百万円から数千万円規模の費用がかかります。

閉院に伴う費用を捻出できるのか、まずは財務状況を把握してから支払いの優先順位をつけましょう。支払いが難しい場合には、相続した資産の売却などを行います。

院長が生命保険に加入していた場合には、保険金で補うことも検討しましょう。

前述した相続税などの支払いも発生するため、閉院に伴う費用の捻出は税理士などの専門家に相談しながら行うのが最適です。

後継者不在での医院継承(医業承継)を成功させるポイント

後継者不在のまま医療法人の院長が急逝したあと、医院継承を成功させる重要なポイントが大きく2つあります。

まずは病院やクリニックを休止した場合、1年以内に継承先を探さなければならない点です。

都道府県知事は、医療法人が、成立した後又は全ての病院、診療所、介護老人保健施設及び介護医療院を休止若しくは廃止した後一年以内に正当な理由がなく病院、診療所、介護老人保健施設又は介護医療院を開設しないとき、又は再開しないときは、設立の認可を取り消すことができる。
引用:医療法(第六十五条)|e-Gov法令検索

次に、可能であれば病院の営業を継続しながら譲渡先を探すことです。

医院継承の買い手の大きなメリットに、患者を引き継ぐことができる点が挙げられます。

病院を休止した場合、患者は別の病院に行ってしまうため、病院の営業を再開した際に戻ってくる可能性は低いでしょう。買い手としては医院継承のメリットが少なくなってしまうため、必然的に買い手の候補者が見つかりにくくなります。

「2. 後継者を探す」の項目で解説しているように、医師以外の方でも一時的に理事長になれるケースもあります。各都道府県によって認められる条件などが異なるので、詳しくは管轄の都道府県に問い合わせましょう。

ここからは医院継承を行った場合のメリット・デメリットを紹介します。

医院継承(医業承継)のメリット

医院継承によって得られるメリットは主に下記の3つです。

  • 譲渡益が得られる
  • 患者やスタッフも引き継げる
  • 閉院(廃業)に伴う手間や費用がかからない

病院を閉院する際は、病院の原状回復費用などさまざまな費用や手続きが必要です。

自己所有物件の売却時に高額な相続税が発生したり、想定よりも資産価値が低かったりすることもあるでしょう。

医院継承なら閉院にかかる費用を抑えられるだけでなく、さらに譲渡益を得られる可能性があります。また、前院長が持っている地域住民との関係性を維持しながら診療を開始できることも大きなメリットです。

医院継承(医業承継)のデメリット

医院継承はメリットが大きく重要な選択肢といえますが、一方で以下のようなデメリットもあります。

  • M&A仲介業者への費用がかかる
  • すぐには見つからない可能性がある
  • 希望通りの譲渡先が見つかるとは限らない

M&A仲介業者を活用した場合、売却が成立した際には手数料が必要です。

また、完全に希望通りのマッチング先が見つかるとは限りません。条件が多いほどマッチング先も限定されていくので、条件の緩和が必要なケースもあります。

継承先が見つかり成約が決まるまで、一般的に数か月〜1年以上かかるため、状況を考慮しつつ余裕をもって検討しておくことが必要です。

万が一院長が急逝した場合に備えておくべきこと

病院にとって院長の急逝は最大の危機ともいえます。

今後の病院の経営方針はもちろんのこと、患者への対応や従業員に対する雇用の手続き、各種行政への手続きなど、やるべきことは山積みです。このような事態に備えおくためにも、できれば事前に準備しておくことが大切です。

ここでは、院長が急逝した場合に備えておくべきことを2つ紹介します。

相続について専門家などに相談をしておく

院長に万が一の事態があったときに備えて、医療関係に強い専門家に相続の相談をしておきましょう。

現状の資産や負債をしっかりと把握し、閉院となった場合に必要な金額を準備しておくことも重要です。

また、配偶者などの相続予定の身内も同席したうえで、税理士や行政書士に相談することも良いでしょう。専門家からアドバイスをもらうことで、院長が急逝した場合でも落ち着いて相続の手続きをスムーズに行えます。

緊急用のマニュアルなどを作成しておく

万が一院長が急逝したあと、その後の手続きや対応がスムーズに進むように緊急用のマニュアルなどを用意しておきましょう。手続きが滞った場合、スタッフや患者とのトラブルに発展するケースもあります。

たとえば閉院の手続きに必要な書類と、顧問弁護士や税理士、行政書士の連絡先などをまとめておくと安心です。

【緊急用マニュアルとして含めておくと良いもの】

従業員の役割分担診療担当
事務担当
患者の転院先などへの対応担当など
緊急時の連絡先のリスト医師会
転院先の候補
M&A仲介業者
顧問の弁護士や税理士、行政書士
従業員への対応退職金や給与の支払いについての流れを記載
紹介できる病院のリストなど
重要書類について診療許可証
税務関係書類
従業員の雇用契約書
患者のカルテ情報
リースの契約書
借入金の書類
緊急時の資金について生命保険の会社や請求手順
緊急用の口座情報
患者対応について転院先の紹介に関する記載
前金を受け取っているケースの対応方法など

上記のようなマニュアルを作成しておくことで、万が一の事態でも従業員や家族が路頭に迷うことはないでしょう。

院長が急逝した場合は医院継承(医業承継)を検討しましょう

院長が急逝すると、残された方々は非常に多くの手続きや対応に追われます。

患者の問い合わせから転院対応、スタッフの今後の雇用や給料の支払いなど、残された方だけでは解決できないことも多いため、まずは顧問弁護士や行政書士などに相談しながら、準備すべきことを整理しましょう。

患者やスタッフが行き先に困らないようにするためは、医院継承がベストな判断と言えるでしょう。医療法人であれば、閉院せずに医院継承をすることが可能です。すでに院長が急逝していて病院や診療所を休止している場合は、1年以内に再開もしくは医院継承を済まさなければなりません。

早急に継承先を見つけるためには、M&Aの専門家に依頼するのが最適です。一度相談してみたい方は、こちらからお問い合わせください。

この記事の監修者

田中 宏典 <専門領域:医療経営>

株式会社エムステージマネジメントソリューションズ代表取締役。医療経営士1級。医業承継士。医療機器メーカー、楽天を経て株式会社エムステージ入社。医師紹介事業部の事業部長を経て現職。これまで、病院2件、診療所30件、介護施設2件の事業承継M&Aをサポートしてきた。エムステージグループ内のM&A戦略も推進している。

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