現代の病院経営者に必要な視点と実践すべきこと

病院経営をめぐる環境が激しく変化し、経営状況も年々厳しくなっている現代において、病院経営者に必要な視点や実践すべきこともまた、変わってきた部分があります。本記事では、病院経営の現状と将来を見据えて、現代の病院経営者に必要な視座と考え方を概括します。

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日本の病院経営の現状

最初に、一般社団法人日本病院会、公益社団法人全日本病院協会、一般社団法人日本医療法人協会の3団体が合同で実施した、「医療機関経営状況調査」(調査期間:2023年3月29日~4月5日)に基づいて、病院経営の現状を確認しましょう。

同調査は、日本病院会、全日本病院協会及び日本医療法人協会に加盟する4,051病院に対して調査協力を依頼し、有効回答が得られた630病院の調査結果をまとめたものです。

病院の7割は赤字経営

まず、「医業利益」について見ると、2022年度は77%の病院が赤字(2021年度調査では73.5%)、また、医業以外の活動による損益も加味した「経常利益」について見ると、51.6%の病院が赤字(同43.3%)となっています。

さらに、経常利益から、コロナ対策、物価高対策等により支給された補助金等を除くと、72.2%(同67.8%)の病院が経常利益の赤字に陥っています。

※出典:「医療機関経営状況調査」一般社団法人日本病院会、公益社団法人全日本病院協会、一般社団法人日本医療法人協会

なお、本調査の対象には、民間の医療法人が運営する病院以外に、国立、自治体立、その他公的な病院も含まれています。公的病院はその役割の性格から、赤字経営となっているケースが多く、民間病院だけで見ればもう少し赤字割合は少なくなると思いますが、少なくない病院が赤字経営に陥っていることがわかります。

費用増が重くのしかかる

2021年調査と比較して、医業利益、経常利益ともに、赤字の割合が増えています。この点について、一病院あたりの平均データをもう少し詳しく見ていきましょう。

まず、医業収益については、前年比で3.5%の増加となっています。これは、2020年~2021年にかけて広がった、新型コロナウイルス感染症流行を背景とした「診療控え」の動きが落ち着いたこともあるでしょう。

しかし、医業費用は全体で4.1%の増加と、収益を上回る増加となり、これが赤字増加の1つの要因となっています。

医業費用について詳しく見ると、材料費(前年比4.4%増)や給与費(同3.5%増)などの費目は、上昇割合はさほど大きくないもの、費用全体に占める構成割合が高いため、大きな影響を与えています。

また、水道光熱費が44.4%、中でも電気料金は59.7%と、約6割も増加していることが目をひきます。これらの費目は、費用全体に占める割合は大きくないものの、大幅な上昇となっており、また構造的な問題(円安、ウクライナ戦争、原発再稼働停止)などが背景にあることから、今後もその趨勢は続くものと思われ、病院経営に与える影響は決して過小評価できません。

一方、医業外の収益については、新型コロナウイルス感染症、物価高騰関連補助金収益が、マイナス45%と、大幅に減少したことが目立ちます。経常損益の赤字増加には、この要因が大きく影響を与えているでしょう。

新型コロナウイルス感染症の5類移行にともない、今後は補助金等についても平時となることが見込まれるだけではなく、いわゆる「ゼロゼロ融資」の返済が始まることから、今後、赤字病院においては、財務状況のチェックと、可能な支出抑制策を採るなど、慎重な対応が必要になるでしょう。

※出典:「医療機関経営状況調査」一般社団法人日本病院会、公益社団法人全日本病院協会、一般社団法人日本医療法人協会

病院経営を揺るがす要因

2022年の日本国内の年間出生数が80万人を切ったという報道が先ごろ話題になりました。我が国の少子化、高齢化の進行はかつて予想された以上に加速しています。この構造的な背景が、様々な面で病院経営を揺るがしています。

診療報酬マイナス改定

少子高齢化、人口減少は、国の歳入減に直結しています。増大する一方の、医療費を含めた社会保障費を適正化することが不可欠だという点は、政府・行政の共通した認識です。

上に見た「医療機関経営状況調査」においては、病院の収支状況を踏まえて、「経常利益においても補助金がなければ殆どの病院が赤字経営となる異常な状態にあり、現在の診療報酬について構造的な問題があると言わざるを得ない。安定的な医療提供体制を確保するためには大幅な入院基本料の引き上げが必要である」と述べられています。

しかし、病院経営において主たる収入源となる診療報酬について、近年マイナス改定が続いていることは周知のとおりです。2022年改定でも、新型コロナウイルス感染症への対応が盛り込まれ、本体部分0.43%のプラス改定となったものの、コロナ状況下にあっては、全体として厳しい内容であったという評価の声が出されていました。

次回、2024年には、診療報酬・介護報酬のダブル改定が予定されています。まだ時間はありますが、厳しい経営環境に直面している病院サイドの意見が中央社会保険医療協議会にどの程度汲まれていくのか、注目されるところです。

地域における医療・介護ニーズの変化

団塊の世代がすべて後期高齢者となる2025年が目前に迫り、国民の4人に1人が高齢者となる時代が目前にきています。このことは2つの面で病院経営を揺るがします。

1つは、当面増加する高齢者の医療需要に対して、地域医療機関としてどのように対応するのかという点においてです。この点に関しては、地域ごとに偏在もある医療リソースを適切に配分するため、地域医療構想による病床機能報告・病床機能再編が徐々に進められています。また、地域において、医療・介護をスムーズに連携させながら、一体として最適化された形で地域住民に提供するための、地域包括ケアシステムの推進も図られています。自院としてどのように対応していくのか検討の必要があるでしょう。

働き手の不足

少子高齢化が経営に対してもたらすもう1つの大きな影響は、働き手の減少です。医師、看護師、技師などの医療スタッフについては、地方病院では、従来から採用難が常態化していました。コロナ禍以降、事務スタッフや清掃スタップなど、非医療スタッフの雇用状況も、年々困難になっています。

そもそも1996年以降、我が国の労働人口(15歳以上64歳以下の人)は、一貫して減少しています。従来、労働参加していなかった高齢者や女性の労働参加も進みましたが、その増加はここ数年頭打ちになっています。

人員配置基準を満たすことが求められる病院経営において、採用難は給与費の上昇を通じて、医療経営を悪化させることにつながります。

これから病院経営はどう変わっていくのか

地域での人口減少、高齢化が進む中で、医療事業の収益性は低下しています。これからの病院経営は、地域の実情にあわせた、地域に必要とされる医療、住民から求められる医療の提供を追求しなければ生き残りが難しくなるかもしれません。

多くの地域の病院において、急性期病棟の縮小・廃止、サブアキュート、ポストアキュート、在宅復帰支援の役割を担う地域包括ケア病棟などへの転換、介護医療院の新設などの構造転換が図られています。

地域医療構想で示される4機能(高度急性期、急性期、回復期、慢性期)について、国の政策として目指す配分の意思は、診療報酬改定によっても見て取れます。それを踏まえた上で、医療経営者は、自院として、現在提供している医療を継続するのか、変更するのか、目指すべき機能を選択していかなければなりません。

また、構造転換とあわせて求められているのが、経営適正化です。かつての高度成長期から、1990年代まで、多くの病院経営者は、病院数の増加、病床数の増加など経営拡大を目指してきました。しかし、医療需要が減退に向かい、医業の収益性が低下している中で、かつて拡大路線で増やしてきた病院、診療科、病床の数を、今後もそのまま維持することがよいかどうか、長期的な視座での経営判断が求められます。

例えば、一部診療科の廃止や転換が必要となることもあるでしょう。あるいは、複数病院を運営していたり、病院以外に老健などの福祉施設を運営している医療法人であれば、その一部を統廃合したり、場合によってはM&Aなどで譲渡して撤退することも考えられます。

病院経営に必要な視点・実践すべきこと

以前は、病院は開院すれば患者が自然と集まり、経営努力をする必要はほぼありませんでした。その中で、医療経営者は、自分が「やりたい医療」を追求し、提供していくことが可能でした。

しかしこれからは、地域の医療需要を踏まえた上での、適正な経営が強く求められます。

それを推進する前提となるのが、経営人材の確保・強化です。経営的な知識と視点を持つスタッフを配した事務部門が、病院経営者の右腕となり、様々な経営上の指針を提示する、あるいは、その前提となるデータの分析をおこなうことは、これからの病院経営において不可欠となるでしょう。

例えば、「地域の医療ニーズを把握する」「将来の医療需要を予測する」といっても、DPCデータをはじめとしたデータを、具体的にどのように分析するのかという知見がなければ絵に描いた餅です。そのような役割を担える経営人材を、確保して育成することは、これからの医療経営には不可欠の重要施策となるはずです。

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