ねばり強く買い手探しを続け、理事長の希望通りのリタイアメントを実現。首都圏・小児科クリニックの承継事例

会計事務所様からご紹介の個人内科クリニック。クリニックの土地・建物も含めて売却希望。
エリア 東京都
診療科目 小児科
運営組織 個人経営
譲渡理由 後継者不在
運営年数 30年

クリニックの医業承継は、診療科によって難易度に大きな差があります。小児科や産婦人科などの単科クリニックは、相対的に譲受の需要が少なく、買い手探しのハードルが比較的高いのが実情です。その状況の中で、売り手院長の希望に見合った条件で承継ができた事例をご紹介します。

【売り手側】65歳でのリタイアをメドに、数年前からクリニック譲渡を準備

今回、売り手となったのは、小児科専門のAクリニックを経営していたA院長です。Aクリニックは、首都圏の新興住宅地にあるメディカルビルの1フロアで運営されており、医師はA院長のみで、他に数名の看護師と事務員が在籍していました。なお、クリニックの運営は個人ではなく、A院長が理事長となっている医療法人A会で運営していました。

Aクリニックの業績は、もともと悪くありませんでしたが、コロナ禍以降はワクチン接種による診療報酬もあり、この規模のクリニックにしてはかなりの実質利益を残していました。

業績は好調だったものの、子どものいないA院長は、60歳を過ぎたころから、65歳ごろを目処にクリニックを第三者承継して経営からリタイアすることを考えはじめます。

そして、ネット検索で私たちを知ってコンタクトしてくださったのです。

マッチングが難しかった理由

実は、私たちにご相談をいただく以前から、A院長は複数のM&A仲介会社に承継相手探しを依頼なさっていました。しかし、A院長の希望条件に沿う相手がなかなか見つからなかったそうです。

その理由として、下記のようなことが考えられました。

  • ・小児科の専門クリニックであることから、買い手候補が少ないこと。
  • ・メディカルビルに入居している関係で、診療科の変更が難しいこと。
  • ・A院長の希望する譲渡価格目線が、やや高かったこと。

3番目の理由については、一時的なものであると考えられるコロナワクチン接種での利益向上も含めた譲渡価格目線であると判明したので、調整していただく必要があると思われました。

【買い手側】非医師の医療法人経営者が小児科医をアテンド

私たちは3件の買い手候補をご紹介して、面談をしていただきました。最終的に買い手となったのは、Aクリニックの隣県で複数のクリニックを展開している、医療法人I会のB氏でした。

I会の経営者であるB氏は医師ではないのですが、別の大手病院グループの事務長出身で、その後、I会をM&Aで譲り受けて、経営者となった方です(I会の理事長はB氏以外の医師が就かれています)。

以前、私たちの人材紹介事業部門で、I会とお取引いただいたことがあり、そのときから関係が続いていました。

A氏からの依頼があったあと、買い手候補の1社としてB氏に連絡を取ったところ、B氏の人的ネットワークの中に、独立を考えている小児科医師のC氏がいるということで、前向きに検討していただけることになりました

譲受資金はB氏が出資し、C氏が理事長に就く形で、医療法人A会を譲り受ける意向を表明してもらえたのです。

譲渡価格の調整、M&Aのスキーム設定など

ただし、M&Aの実行に際しては、解決しなければならない問題もいくつかありました。

譲渡対価の目線合わせ

もっとも大きかったのは、譲渡価格の目線合わせでした。

新型コロナウイルス感染症の5類移行後の状況を踏まえた、Aクリニックの正常収益をベースとした収益シミュレーションの結果、B氏の想定する投資回収期間から算出される譲渡対価と、A院長が希望する譲渡対価には、かなりの開きがあったのです。

そこで、私たちは、シミュレーション結果や、現在の小児科クリニックの一般的なM&A状況などを丁寧にご説明して、B氏と折り合うレベルまでの譲渡価格調整を、A院長に納得していただきました。

譲渡対価+退職金のスキームを採用

次に、譲渡対価支払いのスキームも問題となりました。

医療法人A会は、出資持分の定めがある医療法人でした。そのため、スキームとしては出資持分譲渡となります。また、A会には1億円以上の時価純資産が内部留保されていました。

当初、売り手のA院長は譲渡価格のすべてを、持分譲渡の対価として受け取ることを希望しました。これは、A院長個人の課税関係を考慮してのことです。

一方、買い手のB氏からすると、小児科単科クリニックの譲り受けで1億円以上のキャッシュの支払うことは高すぎて困難です。そこで、医療法人A会が内部留保していたキャッシュの大半を、A院長、および、理事を務めていたA院長の奥様に退職金としてA会から支給し、その分、出資持分の譲渡対価を減額するスキームを提案し、了承を得ました。

これにより、A院長が受け取るキャッシュの総額はほぼ変わらないまま、B氏が支払う譲渡対価を引き下げることができました。

M&A後の状況

Aクリニックを引き継いだC院長は、医師としての熱意が高く、診療時間を以前より延長したり、看護師、事務員などのスタッフの待遇を改善してモチベーションアップに取り組んだり、また、ホームページをわかりやすくリニューアルするなど、患者本位のクリニック運営体制を心がけました。

そういった経営改善の結果、子どもを連れてくる親御さんたちの間で良い口コミが広がり、早々に患者さんが増え、収益もすぐに譲渡前より増加していきました。

結果として、当初立てていたシミュレーションよりも、かなり短い期間で譲受け対価の回収が実現する見込みとなっています。

成約のポイント

複数のM&A仲介会社に依頼をなさっていながら、なかなかマッチングに至らないということで、弊社にご相談をいただいたAクリニックの譲渡。最終的には、私たちにご相談いただいてから、1年強で承継が実現し、A院長は当初考えていたとおり、65歳でリタイアすることができました。また、B氏にとっても、早期の投資金額回収が実現できそうであり、成功したクリニック事業承継だったといえるでしょう。

無事に承継を成功させることができたポイントは、以下の3点になります。

①医療業界における幅広いネットワークの活用

現在、小児科クリニックは、他の診療科と比べると譲り受けニーズが比較的少ないのが状況です。しかし、医療人材紹介事業も展開する私たちの幅広い顧客ネットワークを活用し、あらきめずに買い手の探索を続けたことで、B氏、C医師と出会うことができました。

②時間をかけた丁寧な調整で、条件面での隔たりを埋めたこと

譲渡価格や譲渡対価支払い方法について、当初は売り手と買い手との間で隔たりがありました。しかし、明確な根拠を示しながら時間をかけて両者に丁寧にご説明をしてご納得いただきながら、最終的に両者の納得する水準、方法について、合意を得ることができました。

③トラブル発生の際に、粘り強くコミュニケーションを続けたこと

実は、契約の最終段階で、買い手側金融機関の事務手続きミスにより、契約の実行が遅れるという、想定外のトラブルが発生しました。これにより感情面でのもつれが生じてしまい、一時は破談しかけたのですが、間に入った私たちが密なコミュニケーションを取り続けてなんとか破談を回避することができました。M&Aのプロセスでは、想定しなかった大小のトラブルが生じることはよくありますが、それを乗り越えるには仲介会社の粘り強い関与がポイントとなります。

まとめ

内科や整形外科などと比べると、小児科や産婦人科などは、院長のなり手となりたがる医師が少なく、比較的、第三者承継のハードルは高くなります。このような診療科クリニックの譲渡には時間がかかるケースが多いので、早めにM&A仲介会社に相談するなどの準備を進めておくことをおすすめします。

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