医師会に入らない開業医の理由と医師会に入るメリット
目次
医師会は、医療活動支援や地域医療推進を目的とする学術団体で、日本医師会、都道府県医師会、地区医師会の3つが独立して運営されています。医師会に入るメリットには、健診・予防接種による収入、最新医療情報の入手、他院との連携、賠償責任保険、医師年金制度があります。一方で、入会金・会費の高額さや診療以外の仕事が増える、人間関係の煩わしさなどの理由で加入しない医師もいます。加入は義務ではなく、事前に医師会に連絡し、先輩医師の声を参考にすることが重要です。
医師会とは
医師会に入るか入らないかを考える前に、そもそも医師会が何か、改めて存在意義を知っておきましょう。
医師会とは、医療活動の支援や地域医療の推進などを目的としている学術団体のことです。
日本医師会の公式サイトでは、以下の項目を目的として運営しているとあります。
- 医道の高揚
- 医学・医術の発達
- 公衆衛生の向上
- 社会福祉の増進
医師会には、「日本医師会」と47の「都道府県医師会」、約890の「地区医師会」があります。
日本医師会は、行政に対し諮問や提言を行うことができます。
都道府県医師会は、都道府県民の方々の健康維持を目的に各種協議会、啓発活動などをメインで行っています。また地区医師会は、地域医療を担います。予防接種や学校医、園医の活動、休日夜間患者センターなどの一次救急の運営を行っています。
日本医師会・都道府県医師会・地区医師会はそれぞれが組織として独立しています。
地区医師会の会員にならないと都道府県医師会には入会することができません。また、都道府県医師会の会員にならないと日本医師会には入会することができないというルールがあります。
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診療所開業医は95%が医師会に加入
医師会の会員総数は、令和4年12月1日現在17万4千人です。
※参照:日本医師会
巨大団体組織であるため当然入るべきものだという認識を持たれる方々も多くいますが、加入自体義務化されている訳ではありません。
厚生労働省の統計によれば、令和2年12月31日現在診療所の開設者また法人代表数は72,586人。病院(医育機関附属の病院を除く)の開設者また法人の代表者は5,142人です。
令和4年度日本医師会会員数調査における病院の開設者が3,860人、診療所の開設者が69,323 です。
統計年度が異なるため正確な数字ではありませんが、概ね病院開設者の75%、診療所開設者は95%が医師会に加入しているといえます。
医師会に入らない開業医の理由
診療所開業医の医師会加入率は95%にも及びますが、医師会に入らないという選択肢もあります。
医師会に入らない方々には以下の理由があるようです。
- 入会金・会費が高額
- 自院の診療以外での仕事が増える
- 人間関係に悩みたくない
それぞれを解説します。
入会金・会費が高額
医師会に入らない開業医の大きな理由には、入会金、年会費の高さにあります。
地区医師会・都道府県医師会・日本医師会それぞれに対して、入会金であったり年会費が発生します。
日本医師会では開業医の年会費が126,000円。入会金はありません。
※参照:日本医師会入会のご案内
地区医師会・都道府県医師会の年会費と入会金は新規開業で10万~100万程度を支払う必要があります。地域によって差があるため開業予定地の医師会のHPを確認してみるとよいでしょう。
いずれにしても相当高い費用が発生することがわかります。
自院の診療以外での仕事が増える
開業医は自院の運営・診療だけで手一杯な方々もいらっしゃることでしょう。
医師会に入ることで休日当番医や夜間診療を請け負うこととなり、さらに、介護保険の審査、市民公開講座の委員などと言った仕事が増えてしまう可能性があります。
このように自院以外での負担が増えること医師会に入らない理由のひとつとなっているようです。
人間関係に悩みたくない
医師会に入ってしまうことで、人間関係がわずらわしいものになってしまうかもしれません。
医師会に入会すれば、おつきあいしなければならない人の数も増えます。人付き合いに苦手意識のある医師にとってはストレスになってしまうことでしょう。
良い人間関係が構築できる医師会もあれば人間関係のぎこちない医師会もあり、様々な違いがあります。
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医師会に入るメリット
ここまで医師会に入らない理由を紹介してきましたが、一方でもちろん医師会に入るメリットもあります。こちらもしっかりと確認しておきましょう。
医師会に入ることで以下のようなメリットがもたらされることになります。
- 健診・予防接種による収入を得られる
- 集患・増患につながる
- 医療に関する最新の情報を得られる
- 他院との連携のきっかけになる
- 賠償責任保険に加入できる
- 医師年金制度がある
健診・予防接種による収入を得られる
医師会に入ることで、医師会受託事業に参加することができるようになります。
- 健診事業
- 予防接種事業
- がん検診
などがそれにあたります。
開業医の方々は、健診・予防接種による収入を得ることができるようになりますし、医院の存在を知ってもらうきっかけとすることができます。
集患・増患につながる
医師会に入り検診や予防接種を行うことで、それを受けた人たちやその家族から自院を認知してもらう機会を得ることができます。
患者さんにとっても一度会ったことがあって信頼できる医師に診てもらえるという安心感があります。
医療に関する最新の情報を得られる
医師会に入ることで、
- 講習会や研修会に参加
- 実地研修に参加
- 日本医師会が発刊している『日本医師会雑誌』『日本医師会雑誌特別号』『日医ニュース』を読むことができる
- 日本医師会医学図書館の利用が可能
など様々な方法で最新の医療情報を収集することができます。
他院との連携のきっかけになる
医師会に入ることで、医師との交流の機会を得ることができます。
開業医同士で情報交換をすることができますし、交流を深めることで患者さんを紹介し合える候補先を見つけることができるなどのメリットがあります。
賠償責任保険に加入できる
医師会に入ることで、日本医師会が運営している医師賠償責任保険(医賠責)に加入することができるようになります。
医療事故はいつ起こるかわからない問題であり、経済的にも精神的にも負担のかかる問題です。日頃から患者やご家族とのコミュニケーションをしっかりとっておくことも対策のひとつですが、万が一のため保険に入っておくと安心につながります。
医賠責に加入すれば賠償や紛争が起きた際、保険会社、日本医師会、都道府県医師会に支援してもらうことができます。
医師年金制度がある
医師会には、医師の方々の老後が安定するための医師年金制度があります。
基本年金保険料は、月額:12,000円、年払:138,000円。満65歳まで支払いをします。希望すれば75歳まで払い込みができます。
また任意で、月額1口6,000円(上限なし)、随時払い1口10万円(回数・金額上限なし)をプラスし保険料として支払いすれば、加算年金を受け取ることができます。
※参照:日本医師会 医師年金
医師会加入を検討中の開業医が注意すべき点
医師会に入ることを現在検討しているという開業医の方々は以下のことに注意してください。
- 国保や賠償責任保険の検討
- 検討中の医師会には事前に連絡を
- 会費の準備
国保や賠償責任保険の検討
医師会に入ることで医師国民健康保険組合に加入することができます。
医師国民健康保険組合のメリットは、収入に関係なくそれぞれ組合員の保険料が決まっているため国民健康保険と比較して保険料が安くなる場合が多いことです。
医師会にこれから入る方々は、医師国民健康保険組合と他の健康保険の比較も必要ですし、賠償責任保険についてもよく検討してみましょう。
検討中の医師会には事前に連絡を
地区の医師会それぞれでルールが存在することがあります。ついうっかりルール違反をしてしまうことで、入会を拒否されてしまうこともあります。
入りたい医師会がある場合は事前に連絡をとってルールを確認しておき、それに則って開業準備を進めていきましょう。
会費の準備
開業したばかりの時期は収入が安定していないことが多くあります。医師会に入る際の入会金や会費などの支払いは大きな負担となってしまうでしょう。
医師会に入るつもりであれば、開業資金の一部に医師会の入会金・年会費を組み入れて用意しましょう。
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先輩開業医の声も聞いて判断を
開業医が医師会に入るメリット、医師会に入らない理由などについて解説しました。
開業医のほとんどの方々が医師会に入っていますが、医師会に入ることは義務ではありません。 まずは、医師会に入ることでどのようなメリットがもたらされるのかしっかり内容を確認することが大事です。
ローカルルールや医師会の人間関係は実際に所属している・所属していた先輩医師から話を聞くのが最も参考になるでしょう。
クリニックや医院の開業であれば、0から構築していく「新規開業」ではなく、既存のクリニックや医院を引き継ぐ「承継開業」という方法もあります。
エムステージマネジメントソリューションズのコンサルタントは医療経営士の資格を保持しているため、経営に関するアドバイスなどのサポートも行います。また、「事業計画書の作成」や「資金調達コンサルティング及び金融機関等との融資交渉」なども開業支援の業務内なので、安心して依頼できるでしょう。
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▼エムステージの医業承継支援サービスについて
この記事の監修者
田中 宏典 <専門領域:医療経営>
株式会社エムステージマネジメントソリューションズ代表取締役。医療経営士1級。医業承継士。医療機器メーカー、楽天を経て株式会社エムステージ入社。医師紹介事業部の事業部長を経て現職。これまで、病院2件、診療所30件、介護施設2件の事業承継M&Aをサポートしてきた。エムステージグループ内のM&A戦略も推進している。