モンスターペイシェントとは?医療機関が取るべき対応

医療経営・診療所経営 2022/10/05

身勝手な理由によって患者が暴言や暴行をはたらくなど、モンスターペイシェントによる被害に悩む医療機関は少なくありません。いざという時冷静に対処できるよう、モンスターペイシェントの事例や発生原因、医療機関の取るべき対応をまとめました。

モンスターペイシェントとは

モンスターペイシェントとは、医療従事者に理不尽で自己中心的な要求をしたり、暴言や暴力により不満をぶつけるといった、ペイシェントハラスメントを行う患者のことをいいます。

医療機関では深刻な問題となっていて、ペイシェントハラスメントを受けて悩んでいる医療従事者は多いです。

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ペイシェント ハラスメント事例

モンスターペイシェントの行う迷惑行為(ペイシェントハラスメント)の内容はさまざまですが、主に以下のようなケースが挙げられます。

  • 事例1.執拗な対応を求め、暴力など迷惑行為を繰り返す
  • 事例2.不当な要求を行い、通らないと感情的になる
  • 事例3.些細なことまで、何かにつけ不満を言う
  • 事例4.待ち時間にいらだち、怒鳴ったり暴言を吐く
  • 事例5.診療結果に納得せず、理不尽な要求をしたり長時間居座る

株式会社エムステージが医師に実施した「ハラスメントについてのアンケート」では、実際に患者から受けたペイシェントハラスメントについて、以下の回答が寄せられました。

  • 暴言、暴行、居座り行動の患者(その他外科系/女性)
  • 患者に不必要に触られる (内分泌科/女性)
  • 患者から土下座を強要された(消化器内科/男性)
  • 患者が無許可で動画を撮る(一般外科/男性)
  • 患者から「医療はサービス業だろうが」と言われたことがある(一般内科/男性)
  • 患者の家族から良くならないのはお前のせいだ、と何度も病院にクレーム電話(一般内科/男性)

※出典:株式会社エムステージ『ハラスメントについてのアンケート』

モンスターペイシェントになってしまう原因

なぜ患者は、ペイシェントハラスメントと呼ばれるような言動をとってしまうのでしょうか。対策を講じるためにも、患者側と医療機関側の双方向から考えてみましょう。

患者側

医療機関で治療を受ければ、患者は「必ず治るもの、痛みがなくなるもの」と過度な期待を抱きがちです。しかし、必ず完治して痛みがなくなるとは限りません。そういった診療に対する期待が裏切られた際に、「病院に行ったのに治らないなんておかしい」と患者がモンスターペイシェントとなる場合があります。

また、医療従事者がお客様として丁寧に扱い過ぎたことで患者の権利意識が向上し、自分本位な要求をしていいと考え、傍若無人な振る舞いをしてしまうこともあります。

医療機関側

医師が患者側の言うことに取り合わず聞き流していたり、患者の症状や痛みに寄り添わず高圧的な態度を取っていたりすると、患者がモンスターペイシェント化してしまう場合があります。

モンスターペイシェントへ取るべき対応

このようなモンスターペイシェントには、事態を悪化させないためにも迅速かつ慎重に対応する必要があります。医療機関が取るべき対応方針を、以下にまとめました。

医師の応召義務を正しく理解しておく

医師法では、以下のような応召義務が定められています。

医師法19条1項「診療に従事する医師は、診察治療の求があつた場合には、正当な事由がなければ、これを拒んではならない。」

しかし、この医師法19条1項には「正当な事由がなければ」とあり、患者の不当な要求等により診療にあたり必要な信頼関係が結べていなければ、医師は診療を断ることも可能なのです。

実際に、モンスターペイシェントとのトラブル事例で、医師の応召義務違反を認めた裁判例はありません。

もし患者に応召義務違反と言われたとしても、ルールを守らないのであれば診療を断っても応召義務違反にはあたりません。医療機関はしっかりと理解しておきましょう。

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話をしっかり聞く(傾聴)

まずは、患者の態度が落ち着かないようであれば別室に案内するなどして、ほかの患者へ迷惑がかかることを防ぎます。

大切なのは、否定したり遮ったりせずに、医療従事者が患者の話をしっかり聞くこと。うかつに反論したりすると、患者との間に対立関係ができてしまいます。

不満に感じている点を医療従事者が聞き取って整理していくと、患者の怒りは鎮まる場合が多いです。モンスターペイシェントへの対応マニュアルをあらかじめ作成しておくと、現場で医療従事者が冷静に対応できるでしょう。

毅然とした態度で接する

患者からの暴力や暴言があったとしても、医療従事者は毅然とした態度で接するようにしましょう。そもそもモンスターペイシェントは不当な要求を行っているので、納得させようと思うと相手の言いなりになるしかなく、要求をヒートアップさせる恐れがあります。

不当な要求に対してはきっぱりと断り、患者にあきらめさせるよう心がけましょう。

複数人で連携して対応する

モンスターペイシェントに対して、医療従事者は1人ではなく必ず複数人で連携して対応にあたるようにしましょう。聞き間違いや言った言わないなどのトラブルを防ぐためです。

医療機関内での対応が困難だと感じる場合には、警察や弁護士などの外部機関とも連携が必要です。事前に、もしもの場合に相談できるような関係性を構築しておくようにしましょう。

まとめ

近年モンスターペイシェントによる被害は増加しており、医療機関を経営している以上、いつ遭遇してしまうかわかりません。事前に取るべき対応をきちんと確認し、いざという時に医療従事者全員が冷静に対応できるようにしましょう。

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