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病院における赤字経営の実態と黒字化させる対策・改善事例

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病院における赤字経営の実態|黒字化させる対策・改善事例
病院における赤字経営の実態|黒字化させる対策・改善事例

コロナ禍で病院経営が悪化し、特に重点医療機関や協力医療機関などで損益差額が悪化しました。コロナ患者受入病床がある病院は若干改善しましたが、依然として赤字です。コロナ前から病院の収益性は低下傾向にあり、2020年には多くの病院が赤字経営に陥りました。赤字から脱却するための方策として、地域連携の強化、介護事業への参入、専門分野の特化、業務のIT化などが挙げられます。

本記事では具体的な事例も含めて対策について詳しく解説します。

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コロナ禍で厳しさを増した病院経営

コロナ禍で、医療従事者が大きな負担を強いられたことは、たびたび報道されてきました。

病院の経営に関しても厳しい現実があります。

「第23回医療経済実態調査報告」(中央社会保険医療協議会)によると、国公立・公的一般病院の100床あたりの損益状況は下記のようになっています。
なお「損益差額」は医業収益と介護収益から医業・介護費用を引いたものであり、下記データは100床あたりの損益差額です。

▼一般病院100床あたりの損益差額(千円)

令和元年6月令和2年6月令和3年6月
医療法人1,696-1,570963
国立病院-5,009-19,615-7,793
公立病院-17,833-27,459-33,113
公的病院236-9,363-2,090

(データ出所:「第23回医療経済実態調査報告」中央社会保険医療協議会 588ページ記載のデータを元に作成)

いずれの種類の病院においても、コロナ流行前の令和元年と比べて、令和3年時点の損益差額は悪化していることがわかります。

同じ資料から、コロナへの対応類型による違いも確認してみましょう。

▼病院の損益状況(一般病院(医療法人)1施設当たりの損益差額(※)の推移(千円))

令和元年6月令和2年6月令和3年6月
重点医療機関6,72510,142-8,711
協力医療機関-11,220-21,240-14,545
上記以外の病院(コロナ患者受入病床割当あり)-3,850-8,150-1,189
同(コロナ患者受入割当なし)45983224,079

(データ出所:「第23回医療経済実態調査報告」中央社会保険医療協議会 753ページ記載のデータを元に作成)

「重点医療機関」は、都道府県が新型コロナウイルス感染症患者専用の病床や病棟を設置する医療機関として指定した病院、「協力医療機関」は、新型コロナウイルス感染症疑いの患者専用の個室や病床を設置するように指定された病院です。

また、上記以外の病院は、コロナ患者受入病床割当ありとなしにわけて集計されています。

重点医療機関、協力医療機関、上記以外の病院(コロナ患者受入割当なし)においては、コロナ発生前の令和元年6月調査に比べて、損益状況が悪化しています。
上記以外の病院(コロナ患者受入病床割当あり)においては、損益状況は改善していますが、赤字であることには変わりありません。

コロナ禍が、多くの病院の収益に打撃を与えている状況がわかります。

赤字経営の病院が多い現状

実は、コロナ禍以前から病院の収益性の低減傾向はあり、構造的な問題が指摘されてきました。

独立行政法人福祉医療機構が公表しているデータによると、一般病院、療養型病院、精神科病院のいずれも医業利益率の漸減傾向が続いていますが、特に、一般病院の平均では、2020年に医業利益率がマイナスに落ち込んでいます。

(出所:「2020年度(令和2年度)病院・診療所の経営状況(速報)」独立行政法人福祉医療機構 )

また、同データによると、2020年の時点で、一般病院のうち、4割以上、療養型病院や精神科病院でも、約3割が赤字経営になっていることが示されています。

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赤字経営から脱却するためにとれる病院の打ち手は何か

では、病院が構造的な赤字状態から脱却するためには、どのような方法があるでしょうか。ここでは、厚生労働省が公表している「中小病院における経営改善事例について」を参考に考察してみたいと思います。

病院の経営改善のためには、大きく次のような打ち手があることがわかります。

  1. 地域において他院との連携を強化する
  2. 介護など関連事業への取り組み
  3. 専門分野に特化して差別化を図る
  4. 業務システムをIT化して効率化

それぞれ、次のような事例があります。

競争の厳しい地域で、他院と連携を強化した事例

T病院は、周囲に大学病院など大型の急性期病院がいくつもあり、受け皿となる病院の競争が激しいエリアに立地しています。

他院とソーシャルワーカー同士の勉強会を開き、交流を広げたところ、連携がスムースになり、急性期医療からリハビリテーション、在宅医療までの一連を地域で取り組むことにつながりました。

さらに、地域の機関病院が急性期に集中できるようになって在院日数がへり、同院が患者を早く引き受けることでリハビリテーションを早期に開始できることになったのです。それにより同院での在院日数も減り、在宅サービスの利用が増える結果になりました。

病床をダウンサイジングする一方で、介護事業者と連携を図った事例

K病院は50年ほど前に診療所から病院になり、長年、地域医療に貢献してきました。しかし、約150床ある病床の稼働率が低く、病院自体も老朽化していることが問題となってきました。

そこで、まず150床から3分の1の50床までダウンサイジングし、急性期病院としての機能を高めたところ、看護配置も改善されて、職員のモチベーションも上がりました。

さらに病床を削減したことにより空いた土地に特別養護老人ホームを建て、介護福祉の事業にも着手しました。それ以後、介護事業者が提供する土地や建物に診療所を併設するなどして、介護事業者との連携を進め、収益性を改善しました。

専門分野に特化して差別化した事例

医療法人M病院は、数十年続く全国有数の糖尿病専門病院で、現在は血液透析センターや眼科も併設する糖尿病センターです。職員にも糖尿病療養指導士(CDE)の資格取得を推奨する、患者教育にも力を入れる、糖尿病新薬の治験にも協力するなど、専門病院としての質を高める努力を続けてきました。

その結果、紹介患者の比率が60%を超えるようになりました。さらに、治療の質を高めたことにより、平均在院日数を短縮することができ、経営状態が安定しました。

業務システムをIT化して効率化を実現した事例

Y病院は患者数が減り、スタッフも定着せず経営が悪化していました。そこでまず、民間企業でのマネジメント経験がある理事を招聘し、ITシステムの導入やスタッフの服務マニュアルの作成など、マネジメントの革新を進めます。

その後、理事やマネージャーが職員の業務報告書を閲覧し、コメントできるイントラネット、病院の指示と記録が同時に確認できる双方向性の電子カルテなどを導入。医療の効率化を図り、その分、スタッフが患者に接する時間を長く取れるようにしました。

さらに、インターネットを利用した外来予約システムやインフォームドコンセントシステム、病院連携システムを構築したところ、コミュニケーションコストを大きく減らしています。

業務の見直しによる効率化が医療の質を高め、経営が改善した事例です。

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まとめ

多くの地域で住民人口が減少していく中、現状で赤字経営の病院が経営改善の手を打たなければ、今後ますます苦しくなっていくでしょう。

病院は営利企業ではありませんから、収益を第一に考えることは邪道だと思われるかもしれません。患者さんの健康と生命を守るために良質な医療を提供することが最優先されるのはいうまでもありません。

しかし、そのためにこそ、一定の収益を確保して、病院を維持していく必要があるのではないでしょうか。

また、赤字経営にお困りの場合は医業承継という手段もあります。医業承継専門の仲介会社エムステージマネジメントソリューションズにお問い合わせください。専門のコンサルタントが、徹底サポートいたします。まずは資料をチェックされてみてはいかがでしょうか。

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この記事の監修者

田中 宏典 <専門領域:医療経営>

株式会社エムステージマネジメントソリューションズ代表取締役。医療経営士1級。医業承継士。医療機器メーカー、楽天を経て株式会社エムステージ入社。医師紹介事業部の事業部長を経て現職。これまで、病院2件、診療所30件、介護施設2件の事業承継M&Aをサポートしてきた。エムステージグループ内のM&A戦略も推進している。

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