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開業医の平均引退年齢|引退時に抱えがちな問題点と対策

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開業医の平均引退年齢|引退時に抱えがちな問題点と対策

「あと何年、この診療所を続けられるだろうか」このように引退の時期を考え始めた開業医の先生も多いのではないでしょうか。開業医が考える引退予定年齢は「平均73.1歳」です。開業年齢の平均41.3歳から数えると、働く期間はおよそ32年になります。全国の診療所の開設者は、すでに6割が60歳以上になっています。

開業医に定年はないため、引退のタイミングはご自身で決めなければなりませんが、引退したいタイミングでできるとも限りません。引退後の生活資金や診療所の引き継ぎ先、診療をやめたあとの過ごし方。この3つのどれかが残っていると、引退したくても踏み切れません。

そこで本記事では引退後に必要な生活費から、診療を続けたまま経営だけ譲る方法までまとめました。

開業医は高齢化が進展している

開業医は高齢化が進展

診療所の開設者の平均年齢は62.6歳、病院では65.7歳です。診療所の開設者70,046人のうち、70歳以上が18,618人と26.6%を占めます。

▼開設者又は法人の代表者の平均年齢(2024年)

病院/診療所全体男性女性
病院65.7歳66.0歳60.4歳
診療所62.6歳63.0歳59.7歳

※病院は医育機関附属の病院を除く。

出典:令和6(2024)年医師・歯科医師・薬剤師統計の概況 統計表1|厚生労働省

調査のたびに平均年齢が上がり続けています。

▼開設者又は法人の代表者(診療所)の平均年齢推移

設者又は法人の代表者(診療所)の平均年齢推移

関連記事:【調査】医師が開業する平均年齢・勤務医との年収差

4人に1人以上が70歳を超えているということは、この先の10年で、多くの診療所が承継か閉院かの判断を迎えるということです。

開業医の平均引退年齢は?

開業医の引退年齢を調査した公的な資料はありませんが「引退を考えている年齢」はデータででています。開業医が考える引退予定年齢は平均73.1歳で「70〜75歳」が最多でした。

医療機関の種類引退予定年齢の平均
病院74.1歳
有床診療所73.1歳
無床診療所73.0歳

※2020年公表の調査による。

出典:日医総研ワーキングペーパー No.440 日本医師会 医業承継実態調査:医療機関経営者向け調査|日本医師会総合政策研究機構

ただ、実際に引退年齢を決めている開業医は全体の15.9%※にとどまります。つまり多くの先生が引退のタイミングを決めていないのが実情です。

※出典:日医総研ワーキングペーパー No.483 50代医師の将来のキャリアプラン調査|日本医師会総合政策研究機構

診療所の開設者の平均年齢は62.6歳です。多くの先生が引退予定としている73.1歳まで働くとすると、承継の準備にかけられる時間は10年ほどの計算です。

勤務医の引退は65歳以下が最多

勤務医が予定する引退年齢は、65歳以下が最も多くなっています。70歳までを合わせると74.4%です。

▼引退予定年齢(引退年齢を決めている勤務医 n=281)

65歳以下66〜70歳71〜75歳76歳以上
42.0%32.4%20.6%5.0%

※2024年公表の50代医師への調査による。 

出典:日医総研ワーキングペーパー No.483 50代医師の将来のキャリアプラン調査|日本医師会総合政策研究機構

ただし、これは引退年齢を決めている先生の回答です。50代の勤務医で引退年齢を決めているのは9.6%で、残る90.4%は時期が未定のままです。

65歳が区切りになるのは、事業主に65歳までの雇用を確保する義務があるためです。65歳から70歳までは努力義務にとどまり、制度の有無は病院ごとに分かれます。

開業医として、何年くらい働くのか

開業医として働いている期間は、およそ32年です。日本医師会の調査では「新規開業した医師の開業年齢」は平均41.3歳です。

▼新規開業した医師の開業年齢(開業後年数別)

開業後年数開業時の年齢
5年以内44.9歳
5〜10年43.5歳
10〜20年41.7歳
20〜30年39.4歳
30年超37.5歳

※2009年公表の調査による。承継開業は含まない。

出典:開業動機と開業医(開設者)の実情に関するアンケート調査|日本医師会

引退予定年齢の平均73.1歳まで働くとすると「73.1-41.3」で31.8年になります。40代前半で開業し、70代前半で引退するのが一般的な流れです。

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開業医が引退時に抱えがちな、3つの問題

開業医には定年がないため、働こうと思えば何歳まででも働くことができますが、多くの開業医は73~74歳くらいを引退年齢と考えています。その付近が開業医の平均引退年齢になっていると想定されます。

しかし、中には平均引退年齢では引退をしたくない、あるいは引退したくてもできない事情を抱えているという開業医もいます。

開業医の引退を思いとどまらせる代表的な懸念事項には、経済的な問題(リタイア後の生活資金)、医業承継の問題(後継者不在)、やりがいや充実感の喪失の問題などです。

引退時に抱えがちな問題①:リタイア後の生活資金

引退したあと、多くの先生が最初に不安になるのが生活資金です。厚生労働省の統計では、65歳まで生きた人は平均で男性が85歳、女性が90歳あたりまで生きています。

出典:令和7(2025)年簡易生命表の概況|厚生労働省

たとえば65歳から引退した場合、そのあとの20年から25年の生活費を支えるのが国民年金と厚生年金です。ただし年金で受け取れる金額は、生活費に届きません。

65歳以上の夫婦2人・無職世帯の月の収支

出典:家計調査年報(家計収支編)2025年(令和7年)家計の概要|総務省統計局

この差は、生きる年数だけ積み上がります。

▼65歳で引退した夫婦2人が自分で用意する金額

何歳まで年数金額
85歳20年約1,637万円
90歳25年約2,046万円
100歳35年約2,865万円

※2025年の物価で計算。物価が上がれば、この金額も増えます。

特に開業医の場合、一般の人よりも生活費が高い傾向にもあります。年金も何も対策していなければ国民年金のみなので、引退後のお金はより必要です。

開業医の老後資金は、比較的多く必要

開業医に必要な老後資金は、一般的な夫婦の2倍を超えます。

理由は2つあります。ひとつは、現役時代の収入の高さです。個人経営の一般診療所の収入は、税引き前で1施設あたり年約2,634万円でした。この水準で続けてきた暮らしは、引退しても大きくは変わりません。

出典:第25回医療経済実態調査(医療機関等調査)報告 p.24|厚生労働省

もうひとつは、年金の少なさです。個人事業主の開業医が受け取れるのは国民年金だけで、平均より月8万7,398円少なくなります。

▼65歳で引退した夫婦2人に必要な老後資金

何歳まで年数一般的な夫婦開業医
85歳20年約1,637万円約3,735万円
90歳25年約2,046万円約4,668万円
100歳35年約2,865万円約6,536万円

※生活費はどちらも月263,979円で計算。開業医は国民年金だけを受け取る場合の金額。

開業医の年金や退職金はどうなっている?

開業医が受け取れる年金と退職金は、個人事業主か医療法人かで変わります。

▼開業医が受け取れる年金と退職金

個人事業主医療法人
公的年金国民年金のみ国民年金+厚生年金
退職金なし役員退職金を出せる
上乗せできる制度医師年金・iDeCoなど医師年金・iDeCoなど

個人事業主が受け取れる国民年金は、40年間納めても1人あたり月70,608円です。夫婦2人で満額でも月141,216円にとどまります。

出典:令和8年4月分からの年金額等について|日本年金機構

不足する分は、日本医師会の医師年金やiDeCoを使って自分で積み上げることになります。

関連記事:医師年金のデメリットや加入率は?各種年金制度や資産形成のポイントを解説

引退時に抱えがちな問題②:医業承継・後継者不在

引退のときに直面する2つ目の問題は、後継者の不在です。帝国データバンクの2025年の調査では、医療業の後継者不在率は59.0%でした。全業種の50.1%より高く、49業種のなかで3番目に高い数字です。

▼後継者不在率の推移

後継者不在率の推移

※後継者が「いない」と「未定」の合計。全国約27万社が対象。

出典:全国「後継者不在率」動向調査(2025年)|帝国データバンク

5年で12.2ポイント下がりましたが、それでも6割近くで引き継ぐ相手が決まっていません。

後継者がいない場合、残る選択肢は閉院か第三者への承継です。通院している患者への診療継続を考えると、第三者への医院承継は有力な選択肢の一つとなります。

関連記事:病院の後継者不在の実態|院内継承・第三者継承(M&A)のメリット・デメリット

引退時に抱えがちな問題③:やりがいや充実感の喪失

医師の仕事は人の命や健康を支え、患者からも感謝される、やりがいのある仕事です。また、社会的評価も高く、地域では名士扱いされることもよくあります。

そのため、医師として働くことを自らの生きがいとし、仕事に人生を捧げようと考えている医師も少なくありません。そのような先生は、高齢になってもできる限り診療業務を続けたいと願います。後継者不在とは違った意味で、体が動くうちは働き続けようと思うのです。しかし、高齢になれば誰でも体力は衰えます。

とくに開業医の場合、医師としての診療業務に加えて、経営者としてのマネジメント業務も自分で対応しなければならず、一般的には勤務医よりも身体的にも精神的にもハードな仕事になります。

そのため、医師の仕事を続けて地域住民への貢献を続けたいと思っても、体力に限界を感じてあきらめざるを得ないということになりがちです。

開業医が引退時に抱えがちな問題に対する解決策

引退時に医師が抱えがちな問題は、解決できないものではありません。それぞれの対応策をみていきましょう。

①リタイア後の生活資金の解決策

リタイア後の生活資金の準備については、「必要になると予測される資金」と、「予定される年金受給額」を試算した上で、不足額がある場合、それをどのように補えば良いのかを考えます。

平均的な引退年齢まで10年以上の期間があるのなら、iDeCo(個人型確定拠出年金)や、日本医師会が運営している医師年金など、公的年金に上乗せできる私的年金に加入したり、民間の年金保険商品を購入したりして備えることも有効です。

必要な老後資金には、毎月の経常的な支出以外に家の修繕費、介護施設への入居費など、まとまった金額となるものもあります。

現役時代に考えている以上に資金が必要となることもあるので、開業医の生活実態に詳しいFP(ファイナンシャル・プランナー)などに、一度相談してみるとよいでしょう。

もし、平均的な引退年齢時点で必要と推測される老後資金の準備が不足するなら、そのまま開業医を続けるという方法もあります。

また、M&Aにより自院を譲渡することで、数千万円以上のまとまった譲渡対価が得られる場合もあります。そのような見通しが立つのであれば、自院を譲渡して退職し、退職金代わりとなる譲渡対価を得て老後資金にプラスするという考え方もできます。 M&Aにより、退職金代わりとなるような対価が得られるかどうかは、M&A仲介会社に相談すれば調べてもらえます。その見通しが立ちそうならM&Aを検討しても良いでしょう。

②医業承継・後継者不在への解決策

地域住民のために診療所、病院を残したいけれども後継者がいないのであれば、M&Aを利用した第三者承継が有力な選択肢になります。

第三者承継にもさまざまな形があり、買い手候補となるのは、大手医療法人グループ、近隣の医療法人、個人医師などです。また、最近では、医療周辺事業を営む企業が買い手となるケースも増えています。

いずれにしても、M&Aをしなければ廃業を選ばざるをえない診療所、病院が、M&Aにより承継されて残されれば、地域住民の医療アクセスが残されることになります。 医療機関を地域に残すことは、医療機関経営者としての最後の重要な仕事になり、それを首尾良く達成できれば、安心してリタイア生活に入ることができるでしょう。

③やりがいや充実感の喪失への解決策

やりがいのある医師の仕事を続けたい気持ちはあるけれども、開業医としてフルタイムで働くことに体力的な限界を感じる場合は、働き方を変えるという選択肢もあります。

すでに述べたように、高年齢者雇用安定法改正や働き方改革などがあり、高齢でも勤務医としての働き口を探すことは、以前より容易になっています。

しかし、今まで長く開業医をしてきた経営者が他の病院で一から働くとなると、心理的なハードルを感じる方もいるでしょう。

そのような場合は、M&Aによって診療所や病院を譲渡して、その経営は他の人に委ねつつ、自分はそのまま医師としてそこで勤務するという方法を検討されてはいかがでしょうか。他院に勤めるのと違って、勝手を知った自院で働き続けることができ、体力に応じて週に1~2日だけ診療するなど、働き方も柔軟に決められます。

M&Aの買い手側も、承継後にすべての診療業務をバトンタッチされるより、元院長に当面在籍してもらい、部分的であっても診療を続けてもらうほうが助かると感じるケースも多いものです。また、通院中の患者にとっても、担当医が替わらないことはメリットになるでしょう。

このような希望があるのなら、M&Aの交渉過程において条件として提示すれば問題ありません。

関連記事:個人診療所を譲渡したい!医療法人との違いや注意点は?

クリニックのM&A譲渡後に、勤務医となった事例

北海道で皮膚科クリニックを経営していた江川先生(仮名)は、経営者としてのマネジメント業務への負担感から、クリニックを売却し、勤務医へと転身することを希望されていました。しかし、クリニックをM&Aで売却した後も、そのまま勤務医として残る方法があるということを私たちからお伝えしたところ、その方法を希望され、M&Aの条件としました。

一方、買い手となった医療法人も、新しい医師を招聘する手間や時間を考えると、江川先生にそのまま勤務していただくほうがありがたいとして、その条件を受け入れ、無事にM&Aが成約しました。

成約実績:【北海道×皮膚科】医院継承した売り手院長が同じクリニックで勤務医となり診療を継続

おわりに:引退を想定した準備は早めの実施を

開業医が考える引退予定年齢は、平均73.1歳です。ただ老後資金を用意できたとしても、引き継ぐ相手がいなければ引退もできません。親族や院内に後継者がいない場合、第三者への承継が選択肢になります。買い手を探して条件を詰めて、実際に引き継ぐまでには時間がかかります。

私たちエムステージマネジメントソリューションズでは病院・診療所・介護施設の承継を支援してきました。

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この記事の監修者

田中 宏典 <専門領域:医療経営>

株式会社エムステージマネジメントソリューションズ代表取締役。
医療経営士1級。医業承継士。
静岡県出身。幼少期をカリフォルニア州で過ごす。大学卒業後、医療機器メーカー、楽天を経て株式会社エムステージ入社。医師紹介事業部の事業部長を経て現職。
これまで、病院・診療所・介護施設等、累計70件以上の事業承継M&Aを支援。また、自社エムステージグループにおけるM&A戦略の推進にも従事している。
2025年3月にはプレジデント社より著書『“STORY”で学ぶ、M&A「医業承継」』を出版。医院承継の実務と現場知見をもとに、医療従事者・金融機関・支援機関等を対象とした講演・寄稿を多数行うとともに、ラジオ番組や各種メディアへの出演を通じた情報発信にも積極的に取り組んでいる。
医療機関の持続可能な経営と円滑な承継を支援する専門家として、幅広く活動している。
より詳しい実績は、メディア掲載・講演実績ページをご覧ください。

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本コラムは一般的な情報提供を目的としたものであり、特定の取引や個別の状況に対する税務・法務・労務・行政手続き等の専門的なアドバイスを提供するものではありません。個別案件については必ず専門家にご相談ください。