セルフレジの導入費削減!クリニックが利用できる働き方改革推進支援助成金や補助金を紹介
目次
クリニックにセルフレジを導入するには、1台あたり200万〜400万円の導入費用がかかるため、助成金制度を探している先生も多いでしょう。
そこで本記事では、クリニックがセルフレジを導入する際に活用できる「働き方改革推進支援助成金」について、制度の内容や必要な条件などをわかりやすくまとめました。
またセルフレジ導入に活用できる、ほかの補助金制度についても紹介しています。
この記事を読むことで、セルフレジの導入費用を抑えるために最適な支援制度が見つかります。
病院・クリニックの承継をご検討中の方はプロに無料相談してみませんか?
エムステージグループの医業承継支援サービスについての詳細はこちら▼
働き方改革推進支援助成金とは労働環境改善で受けられる制度
働き方革新推進支援助成金とは、労働環境の改善をする際に発生した費用の一部に対して助成が受けられる制度のことです。
労働環境の改善内容は、主に労働時間の縮減や有給休暇取得の促進など、働いている人の負担を軽減するものです。
単純に労働時間を減らしたり休暇を取ったりできる環境にするのではなく「生産性を向上させることで負担を減らす」ことが最大の目的になっています。
働き方改革推進支援助成金には4つの種類があり、業種や取り組みの内容などでわけられています。
業種別課題対応コース | 建設業や運送業、医療機関など業種特有の働き方の改善に取り組む際に利用可能 |
労働時間短縮・年休促進支援コース | 時間外労働の上限規制への対応や年次有給休暇の取得促進を取り組む際に利用可能 |
勤務間インターバル導入コース | 勤務終了から次の勤務までの休息時間の確保に取り組む際に利用可能 |
団体推進コース | 傘下の事業主の労働条件改善に取り組む事業主団体が利用可能 |
支給対象はクリニックを含む中小企業
働き方改革推進支援助成金は、中小企業事業主を対象とした制度で、クリニックも以下の条件のいずれかを満たせば対象となります。
- 資本金または出資額が5,000万円以下
- 常時使用する労働者数が100人※以下
※医師が勤務する病院や診療所、介護老人保健施設、介護医療院については、常時使用する労働者数が300人以下の場合でも対象です。なお「労働者災害補償保険」の適用事業主であることも必須条件です。
クリニックもセルフレジの導入で働き方改革推進支援助成金が利用可能
セルフレジの導入は、クリニックにおける受付業務の負担軽減や生産性の向上に大きく貢献するため、働き方改革推進支援助成金を利用できます。
セルフレジ導入時に利用できる助成金は、以下の2つのコースです。
- 勤務間インターバル導入コース
- 労働時間短縮・年休促進支援コース
導入を検討する際は、各条件を確認しておきましょう。
勤務間インターバル導入コース
勤務間インターバル導入コースは、従業員の健康確保と過重労働防止を目的とした助成金制度です。
クリニックの場合、勤務終了から次の勤務までに一定時間以上の「勤務間インターバル(休息時間)」を設けることを支援します。
たとえば夜間診療の当直明けの医師に適切な休息時間を確保したり、日勤と夜勤の間隔を適切に設定したりする際の環境整備に活用できます。
セルフレジを導入することで従業員の負担を減らし生産性を向上させ、勤務間インターバルの導入や条件向上を目指すことが、この助成金の目的です。
支給対象になる条件や取り組み
クリニックが「勤務間インターバル導入コース」の支給対象になるには、以下の条件すべてに該当する必要があります。
- 労働者災害補償保険の適用事業主であること。
- 下記のa〜cのいずれかに該当すること。
- 勤務間インターバルが未導入
- すでに休息時間数が9時間以上の勤務間インターバルを導入しているクリニックで、対象となる従業員がクリニックで勤務している全体の半数以下
- すでに休息時間数が9時間未満の勤務間インターバルを導入しているクリニック
- 36協定が締結・届出されていること。
- 原則過去2年間のうち、1か月で45時間を超える時間外労働の実態があったこと。
- 交付申請時点で、年5日の年次有給休暇の取得に向けた就業規則の整備などをしていること。
上記の条件に該当すれば、クリニックはセルフレジを導入する際に「労働能率の増進に資する設備・機器等の導入・更新」の取り組みに該当するため、助成金を受けられます。
目指すべき成果目標の実施項目
助成金が支給される金額は、勤務間インターバルが導入されたり条件が改善されたりと、実際の成果に応じて変動します。
成果目標として、以下のような条件が設定されています。
- 9時間以上11時間未満の休息時間の確保
- 11時間以上の休息時間の確保
セルフレジ導入で上記いずれかの成果が達成できるように、クリニックは具体的な取り組みを行わなければなりません。
助成金の支給額や支給条件などの詳細は、厚生労働省のホームページで確認してください。
また、申請は各都道府県の労働局の窓口や郵送で行います。
労働時間短縮・年休促進支援コース
労働時間短縮・年休促進支援コースは、従業員の時間外労働の削減や年次有給休暇の取得促進に向けた環境整備を支援する助成金制度です。
クリニックの場合、待ち時間の短縮や会計業務の効率化によって残業時間を減らしたり、スタッフが休暇を取りやすい環境を整備したりする際に活用できます。
セルフレジの導入で受付会計業務の負担を軽減し、時間外労働の削減や計画的な休暇取得を実現することが、この助成金の目的です。
支給対象になる条件や取り組み
クリニックが「労働時間短縮・年休促進支援コース」の支給対象になるには、以下の条件すべてに該当する必要があります。
- 労働者災害補償保険の適用事業主であること。
- 交付申請する時点で「成果目標」の1〜3の設定に向けた条件が満たされていること。
- 交付申請する時点で、年5日の年次有給休暇の取得に向けた就業規則等が整備されていること。
上記の条件に該当すれば、セルフレジを導入する際に「労働能率の増進に資する設備・機器等の導入・更新」の取り組みとして、助成金を受けられます。
目指すべき成果目標の実施項目
助成金の支給額は、以下1〜3の成果目標の達成状況に応じて決まります。
- 時間外労働の上限規制を以下の2ついずれかに設定して届け出をする。
- 月60時間以下
- 月60時間超80時間以下
- 年次有給休暇の計画的付与制度を新規導入する。
- 時間単位での年次有給休暇制度を新規導入し、特別休暇も導入する。
セルフレジ導入で、上記の成果目標達成に向けた業務効率化を実現する必要があります。
助成金の詳細な支給額や申請手続きについては、厚生労働省のホームページでご確認ください。
申請は各都道府県の労働局で行います。
■■■関連記事■■■
クリニックがセルフレジを導入する際のポイント
セルフレジには、さまざまな機能や特徴があるため、診療科目や地域性なども考慮しながら選ぶことが必要です。
セルフレジを導入する際にクリニックが押さえておくポイントは、以下の3つです。
- キャッシュレス決済機能も視野に入れる
- 電子カルテやレセコンと連携可能なものを選ぶ
- クリニックの科目や地域に合ったセルフレジを選ぶ
それぞれくわしく解説しましょう。
キャッシュレス決済機能も視野に入れる
セルフレジを導入する際は、キャッシュレス決済にも対応できる機器を検討しましょう。
キャッシュレス化が進み現金を持ち歩かない人も増えていることから、特にターゲットが若い方であるほど、キャッシュレス対応は利用者の満足度向上につながります。
セルフレジ導入時は、以下の決済手段に対応できる機種がおすすめです。
- クレジットカード決済
- 電子マネー決済
- QRコード決済
- その他モバイル決済
電子カルテやレセコンと連携可能なものを選ぶ
セルフレジを導入する際に一番重要な点は、電子カルテやレセコンとの連携機能です。
連携方式には主に「データ連携」と「バーコード連携」の2種類があるので、導入時にはそれぞれの機能を把握しておきましょう。
概要 | データ連携 | バーコード連携 |
会計情報の読み込み方 | 電子カルテやレセコンから自動的に会計データを読み込む | レセコンから出力される領収書のバーコードを読み取る |
業務負担の軽減効果 | 手入力が不要になるため、軽減効果が大きい | バーコードを読み込ませる必要があるため、軽減効果は小さい |
セルフレジを導入する際には上記の特徴を把握しつつ、現状使用している電子カルテやレセコンとの互換性の確認が必要です。
クリニックの科目や地域に合ったセルフレジを選ぶ
セルフレジ選びは、患者のニーズに合わせることも重要です。
たとえばデータ連携できるセルフレジを導入すれば従業員による会計業務が必要なくなるため、内科や小児科などの1日の来院数が多いクリニックは、業務効率の向上に大きく貢献するでしょう。
一方で高齢者にとっては、セルフレジの操作そのものが難しい可能性があるため、メインの患者層が高齢者の場合はシンプルな操作性のタイプを選び、会計業務を行う従業員も配置しておいたほうが良い可能性があります。
来院される患者層も想定したうえでの、セルフレジ選びも欠かせません。
セルフレジの導入に利用できる補助金制度
働き方改革推進支援助成金以外にも、セルフレジを導入する際にクリニックが利用できる補助金制度が2つあります。
- IT導入補助金
- ものづくり補助金
セルフレジの価格相場は200万〜400万円程度となっており、電子カルテやレセコンの連携方法や機能性によっては、さらに高額になることもあります。
導入時の費用負担を軽減するためにも、活用できる補助金制度を把握しておきましょう。
IT導入補助金
IT導入補助金とは中小企業や小規模事業者がITツールを導入する際に利用できる支援制度のことです。
複数の補助対象枠があり、セルフレジの導入時には「通常枠」または「インボイス枠」での補助を受けられます。
通常枠 | インボイス枠 | |
補助の内容 | セルフレジ導入費用の1/2以内が補助される。 | インボイス制度に対応したセルフレジや券売機等のハードウェア導入費用の1/2以内が補助される。 |
補助額の上限 | 450万円 | 350万円 |
申請にはIT導入支援事業者とパートナーシップを組む必要があり、gBizIDプライムアカウントの取得やSECURITY ACTION宣言の実施なども必要です。
また、通常枠を申請する場合は「みらデジ経営チェック」の実施も必要です。
それぞれの枠の申請締切日は毎年異なるため、くわしくはIT導入補助金の公式ホームページで確認しましょう。
▶関連記事:IT導入補助金2024とは?医療機関向けに活用術をわかりやすく解説!
ものづくり補助金
ものづくり補助金は、中小企業や小規模事業者の生産性向上を目的とした支援制度のことです。
セルフレジは業務効率化や生産性向上につながるデジタル機器に該当するため、ものづくり補助金を利用できます。
補助金額は従業員数に合わせて100万〜8,000万円が支給されます。申請する際には、以下3つの要件を満たすための3〜5年の事業計画を策定しなければなりません。
- 給与の支給総額を年間平均1.5%以上増加させる
- 最低賃金をその地域の最低賃金よりも30円以上引き上げる
- 付加価値額を年平均3%以上増加させる
また「gBizIDプライムアカウント」の取得も必要です。
毎年公募があるため、開始時期やくわしい要項については「ものづくり補助事業公式ホームページ」で確認してください。
働き方改革推進支援助成金や補助金を申請する際の注意点
働き方革新推進支援助成金や補助金を申請する際には、下記のような注意点があります。
- 助成金や補助金の併用は原則不可
- 受理通知を受け取る前に取り組みを始めない
- 申請の手続きから実際に入金されるまで多くの時間が必要
導入を成功させるためにも、あらかじめ注意点についての対策をしましょう。
助成金や補助金の併用は原則不可
セルフレジ導入時に活用できる補助金制度は複数ありますが、原則1つのクリニックで複数の補助金の併用はできません。
たとえばセルフレジ導入に関する業務改善の取り組みとして、働き方改革推進支援助成金とIT導入補助金に同時申請はできません。
“国の他の助成金・補助金との併用が可能ですか。
国及び中小機構の他の助成金・補助金との併用はできません。ただし、補助対象となる事業内容(サービス・ソフトウェア、経費等)が重複しない場合は申請が可能です。”
ただし「補助対象となる事業内容が重複しない場合には申請可能」と記載されているため、セルフレジの導入以外の取り組みを行えば併用が認められるケースも考えられます。
また、働き方革新推進支援補助金制度のコース内の併用については「異なる年度に申請をすれば可能」と記載があります。
”例えば昨年度、勤務間インターバル導入コースを受給した事業主が、今年度、労働時間短縮・年休促進支援コースを受給することは可能。ただし、各コースの受給は1 事業主1 回までとなる。”
引用元:厚生労働省|R05 働き方改革推進支援助成金Q&A 問11
このように、条件によっては一部併給が可能なケースもあるため、各補助金の事務局や行政書士などの専門家に相談することがおすすめです。
受理通知を受け取る前に取り組みを始めない
補助金を活用する際の重要な注意点は、交付決定通知を受け取る前に機器の発注や契約、支払いなどの取り組みを始めないことです。
補助金制度は、交付が決定した日から提出した計画に沿って取り組みを行う必要があるためです。
交付が決定する前にセルフレジ導入の契約や支払いを行うと、補助の対象外になる可能性があります。
申請の手続きから実際に入金されるまで多くの時間が必要
セルフレジ導入に補助金を活用する場合、申請から実際に入金されるまでには長い期間がかかります。たとえばIT導入補助金の場合、申請締切日から交付決定日までは1か月以上の期間が空きます。
交付決定日から約2か月後に実績報告を行い、成果に応じた補助金が入金される流れです。
実績報告から実際に入金されるまでの期間は公表されていませんが、申請から入金までの期間は3〜4か月以上はかかると見込んでおいたほうが良いでしょう。
このため新規開業時にセルフレジの導入を検討している場合は、開業予定日から逆算して早めに申請の準備をすることが重要です。
また、すでにセルフレジが導入されている医療機関を承継し、セルフレジ導入費用や開業費用を抑える方法もあります。
■■■よく読まれている記事■■■
働き方改革推進支援助成金や補助金でセルフレジの導入費用を抑えましょう
セルフレジは1台200万〜400万円ほどかかるため、クリニックが導入する際の負担は大きいものです。
そのため、働き方改革推進支援助成金やIT導入補助金、ものづくり補助金などの支援制度を積極的に活用しましょう。
ただし各制度には申請条件や期限があり、補助金の併用も原則として認められないため、クリニックの状況に応じて最適な制度を選ぶ必要があります。支援制度を有効活用するためにも、申請要件や手続きの流れを十分に確認し、計画的に導入を進めていきましょう。
なお、クリニック開業におけるセルフレジ導入を検討している方は、医院継承での開業もおすすめです。
医院継承ならセルフレジのような、クリニック運営に必要な設備が最初から整った状態で開業できるため、高額な初期費用を抑えられるだけでなく、システムの導入や申請手続きの手間も省けます。
また、すでに集患できているので、新規開業に比べて開業後の売上が安定しているのも魅力です。
▶医院継承でスムーズな開業を実現!実績豊富な私たちにご相談ください。
この記事の監修者
田中 宏典 <専門領域:医療経営>
株式会社エムステージマネジメントソリューションズ代表取締役。医療経営士1級。医業承継士。医療機器メーカー、楽天を経て株式会社エムステージ入社。医師紹介事業部の事業部長を経て現職。これまで、病院2件、診療所30件、介護施設2件の事業承継M&Aをサポートしてきた。エムステージグループ内のM&A戦略も推進している。