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クリニックの収益を改善する方法とは?注意点やポイントも解説!

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クリニックの収益を改善する方法とは?注意点やポイントも解説!
クリニックの収益を改善する方法とは?注意点やポイントも解説!

クリニックの収益が伸び悩む主な原因は、患者満足度やリピート率の低下、コスト管理の不備、業務効率の低下などがあります。改善するためには、現状に合った施策を実行することが大切です。

本記事では、上記のような課題を解決し、収益を改善する具体的な方法を解説します。マーケティングやサービスの質向上、業務効率化を進め、効果的な収益改善を目指しましょう。

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クリニックの平均収益

クリニックの平均収益は、厚生労働省の令和5年実施「第24回医療経済実態調査(医療機関等調査)報告」によると、入院診療収益のない個人診療所の場合、医業収益(平均売上)は年間9,343万9千円、損益差額(平均利益)は年間3,141万1千円です。各診療科のデータを抜粋して以下の表にまとめています。

内科精神科外科整形外科皮膚科
医業収益8,889万6千円5,363万8千円1億2797万8千円1億0282万5千円6,810万5千円
損益差額2,942万1千円2,184万7千円3,174万5千円2,836万5千円2,804万5千円
引用:第24回医療経済実態調査(医療機関等調査)報告p149-151|厚生労働省

外科や整形外科では医業収益が多いものの、損益差額が少なく多額のコストがかかります。一方、精神科では比較的コストがかからずに運営しやすいと考えられます。

上記の通り、医業収益と損益差額は診療科によっても額が異なるため、収益の目安としてクリニックの運営に活用しましょう。

クリニックの収益が伸び悩む原因

クリニックの収益が停滞する要因は、3つあります。

  • 患者満足度やリピート率の低下
  • コスト管理が不十分
  • 業務効率の低下

詳しく解説します。

患者満足度やリピート率の低下

患者満足度が低下するとリピート率にも悪影響を及ぼします。

満足度低下の要因の例として、診療の待ち時間が長い、スタッフの対応が不親切などが挙げられます。このような出来事が続くと次第に満足度は低下し、リピート率にも悪影響を及ぼすでしょう。

結果として、クリニックの収益は大きく減少していきます。

コスト管理が不十分

コスト管理が不十分であることもクリニックの収益に大きな影響を与えます。

人件費や医療機器の維持費が適切にコントロールできていない場合、収益が圧迫されるでしょう。たとえば、スタッフのシフト管理がうまくできなければ過剰な人件費が発生し、利益率が低下します。

また、新しい医療機器を導入した際にその効果とコストのバランスを十分に考慮しなければ、収益改善の期待に反して負担が増加する結果を招く可能性があります。収益を安定させるためには、コストを適切に見直し、改善することが必要です。

業務効率の低下

業務効率の悪化も、収益低下の要因です。業務フローが効率的でなかったり、スタッフの役割分担が不明確だったりすると、診療スケジュールが乱れ1日に対応できる患者数が減少します。

また、電子カルテやオンライン予約システムの未導入および活用不足は、業務の効率を下げてしまうでしょう。紙ベースの管理では、データの検索や共有に時間がかかり、医師やスタッフの作業負担が大きいです。

非効率な状況は、患者の満足度を下げるだけでなく、スタッフの負担が増え、職場環境の悪化にもつながりかねません。

クリニックの収益を改善する7つの方法

クリニックが収益を改善する方法は7つあります。

  • デジタルマーケティングによる集患
  • サービスの質向上
  • コスト管理の徹底
  • システム導入による業務効率化
  • 診療科の拡充
  • 地域連携の強化
  • 専門的な経営コンサルタントの活用

詳しく解説します。

デジタルマーケティングによる集患

収益を改善するためには、デジタルマーケティングによる集患が有効です。

ホームページの課題を洗い出し改善することで、患者が必要な情報にアクセスしやすくなり、診療予約へつなげられます。また、SNSを活用すると、クリニックの日常や医療に関する情報を発信し、患者との信頼関係構築が期待できます。

ただし、医療広告ガイドラインに沿った誠実な宣伝が求められるため、誇大広告や強引なマーケティングは避けましょう。不信感を抱かれないように施策を展開することが重要です。

サービスの質向上

サービスの質を向上させると患者満足度が高まり、リピート率や口コミによる新規患者の獲得につながります。具体的には、診療環境の整備、待ち時間の短縮、口コミやレビューの活用などが挙げられます。

また、スタッフの接遇力を高めることも患者満足度の向上につながります。医療現場では、スタッフ間の連携が欠如すると業務効率が低下し、患者対応の質が下がる可能性があります。そのため、接遇研修や患者対応のロールプレイなどを導入し、患者対応の質を向上させるのが重要です。

患者がクリニックに入った時から診療を終えて出る時まで気分よく過ごせるように、細かい部分まで気を配りましょう。

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診療科の拡充

クリニックが収益を改善するために、診療科の拡充を検討するのがポイントです。特に専門性の高い診療科を導入すると、他の医療機関との差別化を図り、患者の信頼を得られます。診療科の拡充を検討する際、地域住民がどのような医療サービスを求めているかの調査が大切です。

たとえば、ペインクリニックのような専門的な診療科は、特定のニーズに応えており収益を高められます。他のクリニックと差別化ができる診療科を追加し、新規患者を獲得しましょう。

地域連携の強化

地域の病院や他のクリニックと連携し、患者を相互に紹介できる体制を整えるのが重要です。他の医療機関や専門施設との連携により、患者に適切な医療を提供できる体制を構築できます。

たとえば、クリニックでは軽症患者の対応を行い、重症患者は病院に紹介するなどの役割分担を明確にするなどがあります。その結果、地域住民や他医療機関からの信頼が高まり、長期的な集患につながります。

連携が整うことで地域全体の医療の質が向上し、他の医療機関や患者からの信頼を得られやすいです。その結果、新規患者の紹介が増え、長期的な集患や収益向上に繋がる効果が期待できます。

コスト管理の徹底

クリニックの収益を向上させるためにはコスト管理の徹底が必要です。

まずは運営にかかる固定費(賃料、光熱費、人件費)を削減できないか検討しましょう。賃料は交渉し、光熱費は効率的な設備の導入を検討します。人件費はより良いスタッフの配置を再検討し、業務に応じた適切な人数を確保することが大切です。

また、医療機器の維持費を最小限に抑えるためには、消耗しにくい部品に交換したり、現在ある備品を使えなくなるまで使用したりなど、すぐに始められる対策から取り組むと良いでしょう。

システム導入による業務効率化

業務効率化を進めるには、電子カルテやオンライン予約システムなどのITツールを活用することが効果的です。会計や在庫管理など、日常業務を自動化するとスタッフの負担も軽減されます。

たとえば、電子カルテを導入すると参照したい患者のデータを瞬時に見つけることができます。紙媒体では時間がかかることも、ITツールを活用すれば大幅に時間を短縮できます。

患者の情報を効率的に管理できるようになると、診療の効率が向上し、患者満足度向上にもつながるでしょう。

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専門的な経営コンサルタントの活用

収益を改善するために、専門的な経営コンサルタントを活用することも効果的です。

コンサルタントによって解決できる課題の例としては、診療効率の低下、患者満足度の低下、またはコスト管理の甘さなどです。また、医療広告規制を遵守しつつ、地域特性やターゲット層に合った集患施策の提案もしてもらえるでしょう。

専門家の支援を受けると、独自の視点では気付けない課題の解決や、新たな収益拡大のチャンスを見出すことができます。

クリニック集患の注意点

クリニックの集患では、患者の信頼を確保しつつ効果的な戦略を実行することが必要です。

  • 誇大広告や強引な宣伝は避ける
  • 患者のニーズに沿った施策を行う

詳しく解説します。

誇大広告や強引な宣伝は避ける

過剰な宣伝は、患者に不快感を与え、逆効果を生む可能性があります。

「必ず治る」「完全に安全」といった誇大な表現や、客観的根拠のない治療効果の記載は違法です。違反すると罰則を受けるだけでなく、クリニックの信頼を大きく損なう可能性があります。そのため、医療広告ガイドラインに基づいた表現が大切です。

誇大広告によって過剰な期待を抱いた患者が来院すると、治療結果が期待に届かない場合にクレームや悪評につながるリスクもあります。

信頼されるクリニックとしての基盤を築くために、医療広告ガイドラインを守り分かりやすい広告を心がけましょう。

患者のニーズに沿った施策を行う

クリニックが効果的な集患を行うには、患者のニーズに沿った施策を展開することが重要です。患者に合ったサービスや施策を提供すると満足度を向上させ、リピートや口コミによる新規患者の獲得にもつなげられます。

たとえば、若年層向けのSNS広告を展開しても、実際のターゲット層が高齢者であれば集患効果は低下します。

効果的な施策を行うためには、まず患者層の特徴をしっかり分析することが大切です。年齢層、性別、生活スタイル、関心のある診療分野などを把握し、必要な施策を計画しましょう。

クリニックの収益を改善するポイント

収益改善には、コスト管理と患者満足度の向上が重要です。次のような施策が役立ちます。

  • 承継前の経営状況を分析する
  • 好立地の場所に開業する
  • オンライン診療を導入する

詳しく解説します。

承継前の経営状況を分析する

クリニックを承継する際、現状の経営状況を正確に把握するのがポイントです。具体的には、診療科目ごとの収益構造、患者数の推移、経費の内訳、スタッフの人員配置や稼働率などを詳細に分析する必要があります。

患者数が減少している場合、その原因が立地条件なのか、医師やスタッフの対応力なのか、診療科目の競争力不足なのかを見極めるのが大切です。また、固定費が過剰で利益を圧迫しているケースもあるため、無駄な経費を見直すポイントを見つけるのも大切です。

承継前にクリニックの経営状況を分析し、収益改善のための戦略を設計しましょう。

好立地の場所に開業する

クリニックの収益改善には、開業場所の選定も重要な要素です。好立地に開業することで患者数を増やし、安定した収益を確保することが期待できます。

医療ニーズやアクセスの良さを考慮するのが大切です。例えば、駅やバス停の近く、ショッピングモール内などは多くの人が集まりやすいため、集患におすすめの立地です。

また、ターゲット層のニーズに合った地域を選びましょう。診療科目に応じてターゲット層が異なるため、地域の人口特性を考慮する必要があります。たとえば、子育て世帯が多い地域では小児科や産婦人科、高齢者が多い地域では内科や整形外科のニーズが高いと考えられます。ただし、好立地は競争も激しいため、差別化するための戦略が必要です。

オンライン診療を導入する

オンライン診療の導入は、クリニックの収益改善で重要なポイントです。オンライン診療を導入すると、通院が困難な患者も受診しやすく、診療の幅を広げられます。特に高齢者や遠方に住む患者など、通院が難しい層にとって利便性が高く、新たな患者層の獲得につながります。

また、オンライン診療の導入は、予約管理や問診表の記入などで診療の効率化が可能です。そのため、院内の混雑を緩和し、患者の負担を軽減できます。結果的に、収益の改善に関与します。

医業承継(医業承継)後のクリニック経営を安定させるには

医業承継後のクリニック経営を安定させるためには、3つのポイントがあります。

  • 患者の引き継ぎを徹底する
  • 現状の設備を活用する
  • 持続的な収益計画の立案

詳しく解説します。

患者の引き継ぎを徹底する

医業承継後のクリニック経営を安定させるためには、患者の引き継ぎを徹底するのが大切です。いきなり院長が交代すると患者さんは困惑してしまうでしょう。そのため、事前に引き継ぎ期間を設定、新しい医師の紹介など患者さんを不安にさせない対応が大切です。また、前院長と新院長が一緒に診察する期間を設けると患者さんが慣れる時間を確保できます。

カルテの引き継ぎでは、個人情報保護法に基づき適切に行う必要があります。法律上、医業承継に伴うカルテの引き継ぎは患者の同意がなくても可能ですが、患者に事前に説明しておくと、安心感を与えられるでしょう。

現状の設備を活用する

すでにある設備を活用するとコスト削減が可能です。医療機器の種類や年式、メンテナンス履歴などを確認し、有効活用することで初期費用が抑えられます。

専門的な医療機器の購入は必要でも、エアコン、照明、流し台などの設備がそのまま使用可能であれば、内装工事費を大幅に削減できるでしょう。現状の設備を活かす工夫は、承継後のクリニック経営において重要なポイントです。

持続可能な収益計画を立案する

医業承継後の収益性を確保するためには、現状に合った収益計画を立てることが大切です。特に承継直後は患者数の減少や運営コストの増加が課題となりがちです。そのため、まず現状の収支を分析し、無駄があれば削減する施策を始めましょう。

経費の見直しと並行して、新規患者を獲得しさらに収益を増やす施策を進めることも大切です。適切な価格設定や診療メニューの多様化を行い、患者のニーズに応える体制も整えましょう。

上記の施策を計画的に実行して、医業承継後のクリニック経営を安定させると、長期的な成長が可能となります。しっかりとした戦略をもとに、持続可能な収益計画を構築していきましょう。

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効果的な戦略でクリニックの収益を改善しましょう

クリニックの収益が停滞する要因には、患者満足度やリピート率の低下、コスト管理の不備、業務効率の低下があります。改善するためには、デジタルマーケティングやサービスの質向上、コスト管理の徹底、システム導入による効率化やコンサルタントへの相談が有効です。

たとえば、患者の待ち時間短縮やスタッフ対応の改善、電子カルテや予約システムの導入により効率を高められます。また、コンサルタントのサポートにより課題の特定、より効果的な集患施策の実施が可能です。
いくら施策を実行しても収益が伸びない場合は、クリニックの売却を検討することも選択肢の一つです。売却することで新たな形で経営できる可能性が広がります。最適な方法でクリニックの収益を改善したいと考えている方は、こちらからお気軽にご相談ください。

この記事の監修者

田中 宏典 <専門領域:医療経営>

株式会社エムステージマネジメントソリューションズ代表取締役。医療経営士1級。医業承継士。医療機器メーカー、楽天を経て株式会社エムステージ入社。医師紹介事業部の事業部長を経て現職。これまで、病院2件、診療所30件、介護施設2件の事業承継M&Aをサポートしてきた。エムステージグループ内のM&A戦略も推進している。

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