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チーム医療・多職種連携における医師の役割

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チーム医療・多職種連携における医師の役割
チーム医療・多職種連携における医師の役割

多職種連携とは、医療や介護など異なる専門職が協力して質の高いケアを提供することです。例えば、在宅医療の患者に対し、医師、看護師、薬剤師、ケアマネージャー、介護士が情報を共有しながら連携してサポートします。これにより、各職種が効率的に役割を果たし、患者のQOLが向上します。チーム医療は、多職種連携の一形態で、医療スタッフが協力して治療にあたり、医療費の質や安全性を向上させることを目指しています。

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多職種連携とは

多職種連携とは、一言でいえば、質の高いケアを実現するために、医療、介護、福祉などにかかわる異なる機関や異なる専門家が協働して仕事をおこなうことです。

例えば、要介護状態で在宅医療を受ける患者がいるとします。その患者に対して、訪問診療をおこなう「医師」、訪問看護をおこなう「訪問看護師」、調剤をおこなう「訪問薬剤師」、ケアプランを立てる「ケアマネージャー」、介護をおこなう「訪問介護士」など、多職種の専門家が、互いに情報の共有をしながら連携して、医療・介護のサービスを提供するといったことが、多職種連携の典型的な形態です。

このような連携によって、例えば、訪問の頻度を増やすことができない訪問診療医であっても、看護師や介護士からの日々の体調の変化の情報を確認することができるようになります。また、看護師や介護士は、医師からの病状の情報提供によって気をつけて観察するべき点や、介護上の留意点が把握できるようになります。

また、多職種連携は、治療や介護の質を向上させるだけではなく、より積極的に、患者のQOLを向上させ、生き生きと生活できるようにするためにも役立ちます。

例えば、呼吸器疾患などで在宅酸素療法を行っている人が、家族の結婚式に出席したいとき、単独の介護職の人が支えることは困難ですが、ケアマネージャーが中心となって医師と情報共有しながら、移動用に必要な酸素ボンベをレンタルし、車いすで乗降できる介護タクシーを手配して外出するなど、地域の中で多職種が連携しあいながら協力することで可能になる場合があります。

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チーム医療とは

多職種連携は、多職種の専門家がチームとなって連携して患者をサポートすることですが、それと似ている考え方に「チーム医療」があります。

チーム医療の考え方は平成22年に出された、厚生労働省「チーム医療の推進に関する検討会」報告書以降、広く知られるようになりました。

同報告書によれば、チーム医療とは以下のように定義されています。

医療に従事する多種多様な医療スタッフが、各々の高い専門性を前提に、目的と情報を共有し、業務を分担しつつも互いに連携・補完し合い、患者の状況に的確に対応した医療を提供すること」だと、一般的に理解されている

「チーム医療の推進について(チーム医療の推進に関する検討会 報告書)」平成22年3月19日 厚生労働省

以前から、そして現在でも1人の主治医が患者に大きく関与し、主治医の判断のみで診療やリハビリなどの判断がなされることが一般的です。他の専門職が関与する場合も、あくまで医師からのオーダーを受けて対処がおこなわれてきました。

それに対して、医療のテーマごとに専門家がチームを組んで、専門領域で協力し合いながら治療やリハビリに当たろうというのが、チーム医療です。

このチーム医療がもたらす具体的な効果としては、上記検討会報告書では、「①疾病の早期発見・回復促進・重症化予防など医療・生活の質の向上、②医療の効率性の向上による医療従事者の負担の軽減、③医療の標準化・組織化を通じた医療安全の向上」などが挙げられています。

チーム医療には、褥瘡対策チーム、緩和ケアチーム、糖尿病ケアチーム、栄養サポートチーム、救急医療チーム、摂食・嚥下チーム、感染対策チーム、呼吸ケアサポートチーム、認知症ケアチームなどの、さまざまなチームがあります。

例えば、褥瘡対策チームなら、医師、薬剤師、看護師、管理栄養士、理学療法士、等が、栄養サポートチームなら、医師、歯科医師、薬剤師、看護師、管理栄養士、等がチームを構成します。

多職種連携・チーム医療が必要とされる背景

多職種連携が必要とされる背景としては、急速に進む高齢化社会を背景に、高齢者あるいは高齢ではなくても病気となった人が、住み慣れた地域で安心して暮らしを続けられる仕組みとしての「地域包括ケアシステム」の構築が推進されていることがあります。増加する認知症患者や高齢者の看取りの問題は、医療や介護という枠も超えて、地域全体で対応すべきものです。そのため、地域包括ケアシステムは、医療や介護の分野に限定されたテーマでなく、街作り、住宅政策、地方創生などを含めた「地域共生社会」の一貫として位置付けられているものです。

地域包括ケアシステムを実現していくためには、地域において医療・介護を中心とした幅広い専門職の連携が欠かせません

チーム医療については、社会の高齢化進展による医療需要の増大、医療の高度化と専門知識、技能の細分化、医療従事者不足や医師の働き方改革などを背景として、主治医制における主治医の負担がかなり大きくなることがかねてより指摘されてきました。また、内科と外科など、複数の診療科にまたがった治療をしなければならない患者への対応が必要な場合の連携がスムーズにいかないケースもありました。

そのため、現在の病院の現場では、主治医が患者一人一人の病状に応じたきめ細かいサポートまで目を行き渡らせることが困難な状況も生まれていることが、その必要性の背景としてありました。

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チーム医療のメリット

チーム医療におけるメリットには、以下のようなものがあります。

医療の質、患者のQOLの向上

チーム医療がうまく機能すれば、医師が1人で患者を診察するよりもきめ細かいケアができるようになり、医療の質、および患者の生活の質の向上が期待できます。例えば、管理栄養士からは食事の指導、薬剤師からは薬のアドバイスなど、さまざまな専門職から的確なアドバイスを受けられるようになり、早期回復にもつながります。

医療従事者の負担軽減

チーム医療で連携することにより、医療スタッフはそれぞれの専門領域に関わる仕事に集中でき、1人ごとの業務負担が軽減されます。例えば、従来、医師が薬の副作用のチェックや管理業務を担っていたとすると、チーム医療により薬剤師がそうした役割を担当すれば、医師の負担軽減につながります。

医療安全の向上

医療やケアについて主治医が1人で判断するのではなく、複数の専門家の知見をもとに判断できるため、医療の安全が今まで以上に確保されやすくなります。患者の状態に合わせて必要な時期に必要な医療やリハビリを提供しやすくなります。

チーム医療のデメリット

チーム医療はメリットばかりではなく、デメリットが出る場合もあります。チーム医療では、基本的にチームのサジェストを聞いて、主治医がどうするか判断するように規定されています。チームは患者の治療に対し栄養チームなら栄養のみ、感染チームなら感染のみを判断するといったように縦割りで介入することになります。主治医の横断的な判断とは異なるサジェストを受けた際に主治医は判断に迷う恐れもあります。

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多職種連携において医師が心がけるべきこと

多職種によるチームでサービスを提供する際には、それぞれの専門職のもつ価値観に相違があり、解決策を検討する場合であっても、ときに職種間での対立が起こる場合もあります。また、対立を避けたいという思いや相手の立場への配慮や遠慮から、発言や提案を控えてしまうこともありえます。

そこで、多職種連携を進めるには、自らと異なる専門職の専門性を理解し、お互いに尊重し合ってその専門性を発揮することが必要になってきます。例えば、医師は病院での治療においてはチームの中心的な役割を担うことが多いですが、在宅患者の療養の場面においては看護師や介護士が中心になって力を発揮しているケースが多いのです。

医師は他職種の連携メンバーが意見を出しやすいように心がけ、連携内の情報がスムーズに交換できるように配慮しながら関わる必要があるでしょう。

チーム医療において医師が心がけるべきこと

医師はチーム医療の中ではリーダー的存在として、各部門のメンバーとコミュニケーションを図りながら適切な診療方針の指示を出します。

チーム医療がうまく機能するためには、それぞれの専門性を尊重し、各職種の意見を取り入れながらチームとしてのサジェストを決定していく必要があります。

さらに、厚労省の報告書では、一部の医療スタッフへの負担集中や、安全性が損なわれたりすることのないよう注意が必要である点も指摘されています。

まとめ

チーム医療の推進は、我が国の医療・介護のあり方を変えていくことにつながります。しかし、医療機関間の役割分担や連携の推進、必要な医療スタッフの確保、いわゆる総合医を含む専門医制度の確立、さらには医療と介護の多職種連携といった、より広い視座での改革を進めることが欠かせないといえるでしょう。

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この記事の監修者

田中 宏典 <専門領域:医療経営>

株式会社エムステージマネジメントソリューションズ代表取締役。医療経営士1級。医業承継士。医療機器メーカー、楽天を経て株式会社エムステージ入社。医師紹介事業部の事業部長を経て現職。これまで、病院2件、診療所30件、介護施設2件の事業承継M&Aをサポートしてきた。エムステージグループ内のM&A戦略も推進している。

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