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医師が知るべきプライマリ・ケアのあり方をわかりやすく解説

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医師が知るべきプライマリ・ケアのあり方
医師が知るべきプライマリ・ケアのあり方

プライマリ・ケアとは、病気やけがの最初の診察を行う医療のことです。かかりつけ医や総合内科医が担当します。患者に継続的なパートナーシップを提供し、地域の医療機関と連携し包括的なヘルスケアを行うことが目的です。特に高齢化が進む日本では、軽症患者をプライマリケアで対応し、重傷者を高度医療機関に紹介することで、医療資源の効率的な利用が期待されています。

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プライマリ・ケアとは

最初に、プライマリ・ケアの基本を確認しましょう。

プライマリ・ケアの定義

プライマリは、英語の「primary」で、日本語では「最初の、主要な、基礎的な」といった意味です。そこで、「プライマリ・ケア」は、人が病気やケガをしたときに最初に受ける医療のことを主に指します。

例えば、熱があって風邪っぽい、蕁麻疹できた、腰痛になったなど、緊急に重大な事態に結びつくとは考えられない程度の異常が発生した場合に最初に診てもらう、診療所の「かかりつけ医」、あるいは病院であれば「総合内科」の総合医などがおこなう医療が、プライマリ・ケアの典型です。

一般社団法人日本プライマリ・ケア連合学会では、プライマリ・ケアは多義的あるとしながらも、米国国立科学アカデミー(National Academy of Sciences, NAS)による次の定義を紹介しています。

プライマリ・ケアとは、患者の抱える問題の大部分に対処でき、かつ継続的なパートナーシップを築き、家族及び地域という枠組みの中で責任を持って診療する臨床医によって提供される、総合性と受診のしやすさを特徴とするヘルスケアサービスである

一般社団法人 プライマリ・ケア連合学会

この定義からわかるように、最初に診察を受けるという点はもちろん、「継続的なパートナー」となることが、プライマリ・ケアを提供する医師の役割となります。例えば、明確な病気ではなくても、健康診断で要注意項目があった場合などに、気軽に相談できるといったことも、プライマリ・ケアに含まれるでしょう。

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プライマリ・ケアの5つの理念

上述のように、プライマリ・ケアの概念は多義的で、人によって使い方が異なる場合もあるのですが、日本プライマリ・ケア連合学会では、プライマリ・ケアの特徴を表す5つの理念について、以下のようにまとめています。これらの理念をすべて含んでいるのが理想的なプライマリ・ケアだといえるでしょう。

(1)Accessibility(近接性)

近接制とは、いわゆる「かかりやすさ」のことです。これは、

「1.地理的、2.経済的、3.時間的、4.精神的」の4つの側面で表されています。中でも、地理的な近接性、つまり、自宅の近所にあってすぐに通院できることは、もっとも重要だといえるでしょう。

(2)Comprehensiveness(包括性)

包括制とは、患者の性別や年齢などを問わず、どんな訴えにも対応するということです。また、診療だけではなく、ワクチン接種などの予防的取り組み、あるいはリハビリテーションや生活援助などに対するアドバイスなどもおこなうのが、プライマリ・ケアです。

(3)Coordination(協調性)

協調性とは、地域の中で、他の医療機関や介護専門職などとの連携を取ることです。(2)の包括性について、かかりつけ医がすべて自分で対応することは、当然できません。そこで、ネットワークを活用して、対応することが求められます。必要に応じて、大病院の専門医を紹介することも当然必要です。他の専門職の手を借りたチーム医療が必要なる場合もあります。また、地域のケアマネージャー、訪問看護機関などの多職種連携や、場合によっては、地域住民の協力も得ながら、地域全体でのケアが必要なることもあります。これは地域包括ケアシステム構想において示されている方向性とも合致しています。

さらに、プライマリ・ケアにおいてこれらの協調、連携が実施されることは、社会全体としての医療資源の最適配分、効率的活用にもつながるでしょう。

(4)Continuity(継続性)

継続性を端的に表す言葉は「ゆりかごから墓場まで」でしょう。出産時、乳幼児のときから、老齢、死亡まで、同じ医療機関で相談できれば、患者にとっては理想的です。また、病気になったときだけではなく、健康なときから、予防指導などをおこなうこと、外来から病棟、そして在宅ケアなどへとスムーズに連携させることなども、継続性の理想に含まれます。

(5)Accountability(責任性)

例えば、医療内容の質をチェック、見直しできる監査のシステムを設けること、最新の医療知識を吸収し、技術を向上させることなどが、医療従事者としての責任に含まれます。また、患者に対して十分な説明をすることも、当然、医療従事者の責任になります。これらの責任制は、医療機関、医療従事者に広く求められることで、特にプライマリ・ケアだけに求められるものではありませんが、プライマリ・ケアにおいても重要であることには変わりありません。

プライマリ・ケアとかかりつけ医の違い

厚生労働省では、かかりつけ医を以下のように定義しています。

健康に関することをなんでも相談できる上、最新の医療情報を熟知して、必要があれば専門医、専門医療機関を紹介してくれる、身近で頼りになる地域医療、保健、福祉を担う総合的な能力を有する医師

厚生労働省「上手な医療のかかり方.jp」

このかかりつけ医がおこなう医療の定義は、プライマリ・ケアとかなり似ています。

プライマリ・ケアとかかりつけ医の違いは何を主眼に表現しているかの違いです。端的にプライマリ・ケアは、医療の内容について説明する概念であり、かかりつけ医は“身近な医師”のことです。実際には、かかりつけ医がプライマリ・ケアを担うことが多くなりますが、必ずしもかかりつけ医だけがプライマリ・ケアを担うわけではありません。

病院であれば、総合診療科の総合医がプライマリ・ケアを担うこともあります。また逆に、すべての診療所の開業医がプライマリ・ケアを行うわけでもありません。

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なぜいま、プライマリ・ケアが重要視されるのか

日本は急速に高齢化が進んでいます。高齢者は持病を持っている方が多く、ある疾患に対処する際も基礎疾患、介護度、家族構成など多くの背景を考慮しながら治療法を決定していかなければなりません。

その際に大規模で高度な医療を提供できる病院がすべての患者の情報を把握しながら治療を進めていては医療提供の効率が悪くなります。そこで軽症の患者はかかりつけ医がプライマリ・ケアを行い、軽症の様々な疾患に対応し、そこで対処しきれない重症患者を高度な医療を担う病院へ紹介するというゲートキーパーの役割を担っています。こうすることによって医療資源を効率的に提供する役割を果たしています。

地域医療に携わる医師に、今後求められていくこと

プライマリ・ケア医と専門医には、それぞれ異なる役割が期待されています。当然ですが、専門医のほうがプライマリ・ケア医や総合医よりも格上といった序列関係があるわけではありません。プライマリ・ケア医には、専門以外の疾患についても患者を横断的に診療できる能力を身に着けることや、地域の各機関などと適切に協力できる知識や能力などが求められます

日本プライマリ・ケア連合学会は、プライマリ・ケア認定医制度や新・家庭医療専門医の認定制度を実施しています。プライマリ・ケア医としての役割を正しく果たすために、これらの認定を受けることもよい方法でしょう。

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まとめ

地域医療の問題は地域の過疎化と密接に結びついており、効率的な医療の供給体制を作る必要があります。人口の少ない地域の患者を医療の網から漏れないようにするためには少なくとも地域でプライマリ・ケアにアクセスできる体制を作ることが肝要です。

地域医療構想においては、適切な病診連携により、医療費の増大を抑制し、適切に医療リソースを配分して、持続可能な医療供給体制を構築することが掲げられています。そのためにも、今後、地域医療において、プライマリ・ケア医の活躍に対する期待がますます強まっていくでしょう。

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この記事の監修者

田中 宏典 <専門領域:医療経営>

株式会社エムステージマネジメントソリューションズ代表取締役。医療経営士1級。医業承継士。医療機器メーカー、楽天を経て株式会社エムステージ入社。医師紹介事業部の事業部長を経て現職。これまで、病院2件、診療所30件、介護施設2件の事業承継M&Aをサポートしてきた。エムステージグループ内のM&A戦略も推進している。

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