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【2026改定】通院精神療法の非指定医減算(4割減)とは?要件とクリニックの対策

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【2026改定】通院精神療法の非指定医減算(4割減)とは?要件とクリニックの対策

2026年6月の診療報酬改定で、精神保健指定医を持たない医師が通院精神療法を行った場合の点数が約4割下がるルールが加わりました。

そこで「うちのクリニック、非指定医の先生に外来を任せているけど大丈夫だろうか」と感じている先生もいるのではないでしょうか。

外来中心の精神科クリニックにとって、通院精神療法は収益の柱です。この減算は、クリニック経営に直接影響します。

本記事では、この減算の仕組みから、回避するための条件、そして経営と医院承継を守るための対策まで解説します。

2026年の診療報酬改定で通院精神療法の点数構造が変わった

令和8年度(2026年)の診療報酬改定では、通院精神療法(I002)の点数体系に2つの大きな変更が加えられました。指定医の点数引き上げと、非指定医に対する新たな減算規定の追加です。

それぞれの内容を確認しておきましょう。

指定医の初診精神療法の点数が引き上げられた

2026年改定後の通院精神療法(I002)の点数は、以下のとおりです。

通院精神療法指定医と非指定医の点数比較

出典:令和8年度診療報酬改定の概要(精神医療)p.13|厚生労働省

初診では、指定医のほうが非指定医より100点(1,000円)高く設定されています。令和6年改定時の差50点から倍増しており、国が指定医による診療をより高く評価する方向に動いていることがわかります。

非指定医は条件を満たさないと4割減になる注13が追加された

今回の改定で最も影響が大きいのが、通院精神療法(I002)に新設された「注13」です。非指定医が通院精神療法を行う場合、「施設要件」か「医師要件」のいずれかを満たさなければ、所定点数の100分の60で算定されます。

I002の告示(注13)では、以下のように定められています。

“非精神保健指定医による通院・在宅精神療法において、別に厚生労働大臣が定める施設基準に適合しているものとして地方厚生局長等に届け出た保険医療機関以外の保険医療機関において行われる場合は、所定点数の100分の60に相当する点数を算定する。”

出典:令和8年度診療報酬改定の概要(精神医療)p.13|厚生労働省

たとえば30分以上の再診を行った場合の、診療報酬の違いは下記のとおりです。

  • 通常の非指定医:390点(3,900円)
  • 減算適用後:390 × 60/100 = 234点(2,340円)
  • 1回の診察あたり156点(1,560円)の減収

「施設要件」と「医師要件」のどちらか一方を満たしていれば減算は回避できますが、両方とも満たさない場合に100分の60が適用されます。

指定医と非指定医の点数差が設けられた背景

国が指定医と非指定医の間にこれほどの点数差を設けた背景には、精神医療の「質」を政策的に担保しようとする2つの意図があります。

国が指定医を精神科の専門性を持つ医師として位置づけているため

令和8年度診療報酬改定の基本方針では「質の高い精神医療の評価」が掲げられ、中医協の審議資料でも「指定医による診療をより評価する」構造が示されています。

国は精神保健指定医を「精神科の専門性を公的に証明された医師」と位置づけ、その専門性に対してより高い報酬を設定する方針を明確にしたといえるでしょう。

精神科外来の患者数が急増したため

もう一つの背景が、精神科を受診する患者数の急増です。中医協の審議資料には、以下のデータが示されています。

  • 外来精神疾患患者数:平成14年 223.9万人 → 令和5年 576.4万人(約2.6倍)
  • 精神科標榜診療所数:平成14年 1,878施設 → 令和5年 3,848施設(約2倍) 

出典:中医協 個別事項(その13)精神医療②|厚生労働省

患者数が約2.6倍に膨らむなかで、診療所も倍増しました。診療の「数」が急速に増えた結果、「質」を一定以上に保つ仕組みとして、指定医の有無で点数に差をつける方針が取られたといえるでしょう。

指定医と非指定医の点数差は改定ごとに拡大してきた

指定医を優遇する流れは、今回突然始まったわけではありません。過去の改定を振り返ると、点数差は段階的に広がってきたことがわかります。

改定年指定医(初診60分以上)非指定医(初診60分以上)明示的な減算規定
令和2年(2020年)540点540点(区別なし)なし
令和4年(2022年)600点550点(差50点・初めて差が設けられた)なし
令和6年(2024年)600点550点(差50点)なし
令和8年(2026年)650点550点(差100点)非指定医4割減算の新設

出典:中医協 個別事項(その13)精神医療②|厚生労働省

2020年には指定医・非指定医の区別すらなかったものが、わずか6年で100点の差と4割減算が同時に導入されました。

4回連続で指定医優遇が強化されてきたこの流れを踏まえると、次の改定でさらに差が広がる可能性は十分にあります。

通院精神療法の改定が精神科クリニックに与える影響

非指定医の4割減算は、非指定医を抱えるクリニック全体の年間収益に影響します。経営面での具体的な影響を確認しておきましょう。

非指定医比率が高いほど年間収益が落ちる

非指定医が施設要件・医師要件のいずれも満たせない場合、30分以上の再診では1回あたり156点(1,560円)の減収になります。

たとえば非指定医が1日15人の患者を30分以上診察し、月20日稼働しているケースで試算すると、次のとおりです。

非指定医の4割減産による年間減収シミュレーション

非指定医が複数在籍しているクリニックでは、この金額が医師の人数分だけ積み上がります。非指定医2名体制なら年間1,000万円超の減収も現実的な数字です。

東京保険医協会は今回の制度改定に対して「指定医は本来、措置入院・行動制限の判断のための資格であり、外来の評価に使うのは制度の趣旨と異なる」※と指摘しています。

※出典:東京保険医協会

こうした声が今後の改定に影響を与える可能性はありますが、現時点で減算が撤回される見通しは立っていません。

関連記事:病院における赤字経営の実態と黒字化させる対策・改善事例

心理支援加算も算定できなくなるケースがある

2026年の改定では通院精神療法の減算に加えて、心理支援加算の算定要件も変更されました。これまでは公認心理師がいれば算定できていた加算が、常勤の指定医の配置や勤務実績など、より厳しい体制を求められるようになっています。

通院精神療法の減算と心理支援加算の算定不可が重なると、外来収益がダブルで削られます。非指定医の減算への対応とあわせて、加算の要件も確認しておきましょう。

外来クリニックは通院精神療法の非指定医減算を避けにくい

外来専門のクリニックがこの減算を避けにくいのには、「施設要件」と「医師要件」それぞれに理由があります。要件ごとのハードルを確認しておきましょう。

施設要件が「入院機能のある病院」限定だから

施設基準通知(令和8年度)によると、施設要件を満たせる医療機関は以下の4種類に限られています。

  1. 身体合併症救急医療確保事業の指定医療機関
  2. 常時対応型または病院群輪番型施設
  3. 精神病床を有する特定機能病院
  4. 急性期病院精神病棟入院基本料を届け出ている病院

出典:施設基準通知(令和8年度)p.13|厚生労働省

いずれも入院機能を持つ病院が前提のため、外来専門のクリニックはこの要件を満たせません。

医師の要件が経験年数だけではないから

減算の回避条件の一つに「医師要件」がありますが、経験年数だけでは満たせません。施設基準通知では、以下の2つを両方満たす必要があると定められています。

“要件①:令和8年5月31日時点で精神医療に20年以上従事していること 

要件②:過去1年間に医療観察法対象者の診察、または保健所嘱託医・児童相談所嘱託医等の行政機関業務を行っていること”

出典:施設基準通知(令和8年度)p.13|厚生労働省

行政機関との業務実績も求められます。精神科で20年以上のキャリアがあっても、要件②の行政機関業務実績がなければ減算を回避できません。

結果として、多くの非指定医がこの条件をクリアできない構造になっています。

精神保健指定医の取得要件

非指定医の減算を根本から解消するには、精神保健指定医の資格を取得するのが最も確実な方法です。厚生労働省の公式ページでは、取得に必要な要件として以下が示されています。

  • 5年以上診断又は治療に従事した経験を有すること(うち3年以上は精神障害の診断又は治療に従事した経験)
  • 厚生労働大臣が定める精神障害につき厚生労働大臣が定める程度の診断又は治療に従事した経験を有すること
  • 精神保健指定医研修会の課程を修了していること

出典:精神保健指定医|厚生労働省

実務面では、精神科での勤務が週4日以上・1日8時間以上であることも条件です。

最短ルートは初期研修2年修了後に精神科で3年以上勤務し、医師免許取得後5年目で申請する方法です。

精神保健指定医の申請スケジュール

指定医の取得には、書類審査と口頭試問を含む審査があります。申請手続きは全国共通で、都道府県経由で厚生労働省に提出します。

愛媛県が公表しているQ&A資料によると、申請手順は以下の通りです。

  1. 5分野5症例のケースレポートを作成する
  2. 都道府県経由で厚生労働省に提出する
  3. 口頭試問を受ける
  4. 結果通知(提出から約1年)

出典:精神保健指定医の新規申請に関するQ&A(令和6年11月時点)|愛媛県

実務経験年数が揃っていても、ケースレポート作成から口頭試問を経て取得まで最短でも1〜2年はかかります。

「いずれ取ろう」と先送りするほど、減算を受け続ける期間が長くなってしまいます。経営状況に大きく影響するため、指定医の取得を検討されているのであれば、早めの行動が重要です。

2026年の診療報酬改定で非指定医クリニックが取れる対策

非指定医の4割減算への対応は、早く動くほど選択肢が広がります。検討すべき3つの対策を整理します。

指定医取得のスケジュールを立てる

最も根本的な対策は、院長自身または常勤医が精神保健指定医を取得することです。

申請から取得まで最短でも1〜2年かかります。申請の要件を今すぐ確認し、取得までのスケジュールを逆算しましょう。

指定医を取得すれば、4割減算が解消されるだけでなく、初診60分以上で650点(非指定医との差100点)を算定できるようになり、収益面でもプラスに転じます。

多剤処方の適正化を院内で進める

自院で多剤処方を行っている場合は、今のうちに処方内容を整理しておきましょう。4割減算が適用される医療機関で3種類以上の抗うつ薬または抗精神病薬を処方すると、通院精神療法が算定できず、該当患者の診療報酬がゼロになるためです。

“ただし、当該患者に対して、1回の処方において、3種類以上の抗うつ薬又は3種類以上の抗精神病薬を投与した場合には、算定できない。”

出典:令和8年度診療報酬改定の概要(精神医療)p.13|厚生労働省

この多剤処方の減算(注6)は4割減算とは別の仕組みで、4割減算と注6の両方に該当すると算定不可になります。

ただし、以下の条件をすべて満たす場合は注6の減算は免除されます。

  • 施設全体で3種類以上の抗うつ薬または抗精神病薬を処方された患者の割合が1割未満、またはその数が20名未満であること
  • 過去3か月以内に、患者への効果・副作用の説明、服薬状況の聴取、減薬の検討と患者説明を行い、診療録に記載していること

出典:診療報酬の算定方法の一部改正に伴う実施上の留意事項について I002 通知(20)|厚生労働省

該当する処方がないか、今のうちに院内で確認しておきましょう。

医院承継(M&A)を視野に入れる

指定医の取得が難しい場合は、クリニックの価値が高いうちに医院承継(M&A)の視野にいれてみましょう。

2020年以降、指定医優遇の流れは4回連続で強化されており、次の改定でさらに差が広がる可能性があります。

指定医と非指定医の点数差推移

M&Aの評価額は現時点の収益水準がベースになるため、収益が落ちてからでは評価額も下がってしまいます。

無料相談などを活用して、まずは自院の評価ラインを把握しておきましょう。

関連記事:医院・クリニックの売却相場|価格の考え方や計算方法を解説

非指定医の減算でよくある質問

通院精神療法の非指定医減算について、先生からよく寄せられる質問をまとめました。

Q1. オンラインで診察した場合も点数は取れますか?

非指定医の場合、オンラインでの通院精神療法は算定できません。

オンライン算定の対象区分は以下のように限定されています。

“1のロの(1)の①若しくは(2)又はハの(1)の①若しくは(2)の①については、(中略)情報通信機器を用いて行った場合は、所定点数に代えて、それぞれ566点、479点、357点又は274点を算定する。”

出典:医科診療報酬点数表 I002 注12|厚生労働省

ここで参照されている区分はすべて精神保健指定医(①)の点数です。非指定医(②)の区分は注12のどこにも含まれていないため、制度上、非指定医にはオンラインでの算定規定自体が存在しません。

非指定医にオンライン外来を任せて対面の負担を減らす、という運用はできないため、診療体制を組む際は注意が必要です。

Q2. 複数の向精神薬を処方すると点数が下がりますか?

はい、下がります。

“抗うつ薬又は抗精神病薬を3種類以上処方した場合には、所定点数の100分の50に相当する点数により算定する。”

出典:医科診療報酬点数表 I002 注6|厚生労働省

ただし、施設全体の多剤投与割合や医学管理の状況によっては減算を免れる条件もあります。

Q3. 2026年の報酬改定でデイケアの点数も変わりましたか?

今回の「非指定医による4割減算」はデイケアには適用されません。ただし、デイケアにも別の減算規定があります。

精神科デイケア(I009)では、利用期間が3年を超え、かつ週3日を超えて利用する長期入院歴のない患者に対して、点数が1割減算(100分の90)されます。また、長期利用者ほど回数制限も厳しくなるため、デイケアの売上を伸ばしにくい構造です。

通院精神療法の4割減算をデイケアの売上でカバーしようとしても、デイケア側にも減算があるため、補填策としては期待できません。

クリニックの収益が落ちる前に、医院承継(M&A)も検討しておきましょう。

まとめ|非指定医減算への早期対応がクリニック経営と承継を守る

令和8年度の診療報酬改定によって、通院精神療法は非指定医が算定する場合、原則として所定点数の100分の60に減算されます。施設要件(入院機能を持つ病院限定)か医師要件(精神科20年以上の経験+行政機関業務実績の両方)のいずれかを満たせば回避できますが、外来専門クリニックにはどちらも高いハードルです。

この減算が適用される状態で多剤処方を行うと、通院精神療法そのものが算定できなくなる点にも注意が必要です。

対策としては「指定医の取得」「多剤処方の適正化」「医院承継(M&A)の検討」があります。M&Aの評価額は現時点の収益水準がベースになるため、収益が落ちる前に動くことが大切です。

まずは自院の状況を確認し、どの対策から取り組むか検討しておきましょう。

私たちエムステージマネジメントソリューションズでは、精神科クリニックの医院承継について多くの先生をサポートしています。非指定医減算の影響が気になる先生は、ぜひお気軽にご相談ください。

医院継承・医業承継(M&A)のご相談は、エムステージ医業承継サポートにお問い合わせください。

この記事の監修者

田中 宏典(医業承継M&Aアドバイザー/医療経営士1級/医業承継士/ファイナンシャルプランナー)

田中 宏典 <専門領域:医療経営>

株式会社エムステージマネジメントソリューションズ代表取締役。
医療経営士1級。医業承継士。
静岡県出身。幼少期をカリフォルニア州で過ごす。大学卒業後、医療機器メーカー、楽天を経て株式会社エムステージ入社。医師紹介事業部の事業部長を経て現職。
これまで、病院・診療所・介護施設等、累計70件以上の事業承継M&Aを支援。また、自社エムステージグループにおけるM&A戦略の推進にも従事している。
2025年3月にはプレジデント社より著書『“STORY”で学ぶ、M&A「医業承継」』を出版。医院承継の実務と現場知見をもとに、医療従事者・金融機関・支援機関等を対象とした講演・寄稿を多数行うとともに、ラジオ番組や各種メディアへの出演を通じた情報発信にも積極的に取り組んでいる。
医療機関の持続可能な経営と円滑な承継を支援する専門家として、幅広く活動している。
より詳しい実績は、メディア掲載・講演実績ページをご覧ください。

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本コラムは一般的な情報提供を目的としたものであり、特定の取引や個別の状況に対する税務・法務・労務・行政手続き等の専門的なアドバイスを提供するものではありません。個別案件については必ず専門家にご相談ください。