M&A支援機関登録制度とは?
目次
近年、後継者不在やリタイアを理由としたクリニックのM&A(医院継承)の需要が急速に高まっています。大切なクリニックやスタッフ、患者の未来を守るM&Aを成功させるには、パートナーとなる仲介会社選びが欠かせません。
数多くの業者が存在する中、信頼できる相談先を選ぶための有力な指標となるのが「M&A支援機関登録制度」です。
本記事ではM&A支援機関登録制の概要と設けられた背景、登録されている業者を選ぶメリットを解説します。あらかじめ制度を知ることで、納得できる仲介会社選びを進められます。
「安心して任せられるM&A仲介会社を探したい」と思っている先生は、この記事を読んで信頼できるパートナーを見つけましょう。
M&A支援機関登録制度とは
M&A支援機関登録制度とは中小企業庁が創設した制度で、M&Aの仲介やアドバイザリー業務を行う支援機関を登録・公表する仕組みです。
登録されるためには、国が定めた「中小M&Aガイドライン」を遵守すると宣言したうえで、手数料体系や支援内容を公開するなど、一定の要件を満たす必要があります。つまり、登録済みの業者は「国のお墨付きを得た信頼性の高い支援機関」といえます。
また登録は一度きりではなく、毎年の活動状況を事務局に報告する義務があり、問題のある業者は登録を取り消される仕組みになっています。これにより、利用者が安心して相談できる環境が整えられています。
M&A支援機関登録制度が設けられた背景
M&A支援機関登録制度が設立された背景には、中小M&A市場の急速な拡大と、それにともなって課題が浮き彫りになったことがきっかけとしてあります。主な理由を3つ紹介します。
M&A市場の急拡大にともない支援の質に差が生じたため
近年、後継者不在のクリニックや中小企業のM&Aが急速に増えています。それにともなって、マッチング支援や手続き全般をサポートするM&A専門業者の数も急増しました。
しかし参入障壁が低い業界であるため、担当者の経験やサポートの質にばらつきが生じるようになりました。とくに成約後の統合プロセス(PMI)をどこまでサポートしてくれるのかが不透明なままM&Aが進んでしまうケースも出てきたのです。
こうした状況を踏まえ、支援の質を一定基準以上に保つための仕組みとしてM&A支援機関登録制度が設けられました。登録業者にはPMIを見据えた支援内容の公表も義務付けられており、事前に確認できる環境が整えられています。
強引な営業活動や不透明な手数料体系が問題視されたため
M&A市場の拡大とともに浮き彫りになったもう一つの問題が、不透明な営業活動や手数料です。譲渡の意思がない経営者への執拗な勧誘や、契約内容が不明確なまま高額な手数料を請求する事案が多発しました。
中小M&Aガイドラインの「はじめに」には「特にM&A専門業者に関して、その契約内容や手数料のわかりにくさ、担当者によっては支援の質が十分と言えない場合があるといった声が聞かれるようになった」と記されています。
出典:中小 M&A ガイドライン(第3版)「◆ はじめに (第2版)」
こうした問題から経営者を守るため、手数料体系の公開義務や契約前の事前説明義務などが制度の要件として組み込まれました。
信頼できる業者を国が「見える化」して経営者を守るため
多くのM&A仲介業者が存在する中で、どの会社が信頼できるのかを経営者が判断するのは容易ではありません。そこで国は信頼できる業者を「見える化」する必要があると判断しました。それが本登録制度の最大の目的です。
登録済みのM&A仲介業者は国のデータベースで一般公開されており、誰でも無料で検索できます。これにより、経営者が信頼できる仲介会社を自分で確認や比較ができるようになっています。
【2026年最新】M&A支援機関制度の登録状況

2026年現在、M&A支援機関への登録数は着実に増加しています。内訳を見ると、法人だけでなく個人事業主として活動する専門家も多く登録されています。
| 区分 | 登録数 |
|---|---|
| 法人 | 2,429件 |
| 個人事業主 | 727件 |
| 合計 | 3,156件 |
業種別の登録数では、仲介を主に行うM&A専門業者が最も多く、さらにコンサルティング会社や税理士、公認会計士などの士業専門家が続いています。

不誠実な仲介業者はM&A支援機関登録を取り消される
M&A支援機関登録は、永久的に登録され続けるというわけではありません。事務局は常に監視を行っており、不適切な対応があった場合には登録を取り消す措置をとっています。
具体的な取消事由には、以下のようなケースが含まれます。
- 顧客の利益を害する不適切な対応やクレームがあったとき
- 公募要領に定めた事項に違反したとき
- 不正な手段で登録を行ったとき
- 反社会的勢力との関係が認められたとき
登録が取り消された業者は、取り消しから2年以内は再登録ができません。さらに取り消しの事実は公表されるため、業界内での信用を大きく損なうことになります。
実際に2025年1月には、不適切な譲り受け側とのM&Aを支援したとして、下図のとおり登録取り消し処分が公表されました。

このような取り消し制度があることで、登録業者は常に国の監視下に置かれています。ただし登録はあくまで信頼性を判断する指標の一つです。最終的には手数料体系や支援実績、担当者との相性なども含めて総合的に選ぶことが大切です。
M&A支援機関に登録されている事業者を選ぶメリット
M&A支援機関に登録された業者を選ぶことで、手数料の透明性が確保されるほか、国からの補助金を活用できるなど、安心かつ有利に承継を進めるための基盤が整います。ここでは主なメリットを6つ紹介します。
中小M&Aガイドラインに基づいた適切な支援を受けられる
登録業者は、国が定めた「中小M&Aガイドライン」の遵守が義務付けられています。このガイドラインには健全なM&Aを実現するため、下記の基準が詳しく定められています。
- 顧客の利益を最優先にした支援の進め方
- 情報管理の徹底
- 利益相反への適切な対応
また登録後も遵守事項を履行することを誓約した業者だけが登録を維持できるため、一定水準以上のサービスが期待できます。
守秘義務契約にかかわらず公的窓口に相談できる
M&Aを進める際には、業者との間で秘密保持契約(NDA)を締結するのが一般的です。しかし「契約中に業者への不満や疑問が生じても、秘密保持契約があるから外部に相談できない」と誤解している経営者も少なくありません。
登録業者との契約では、守秘義務条項の内容にかかわらず、中小企業庁(事務局)の公的窓口への相談は例外とされています。
“④ 登録を希望する FA・仲介業者は、秘密保持義務条項の規定内容に関わらず、顧客となる中
小企業者等による情報提供窓口への相談等の行動を制約しないこと。”
つまり「この業者の手数料は高すぎないか」「強引な勧誘を受けて困っている」と感じたとき、契約書を気にせずいつでも公的な窓口に相談できるのが、大きな安心材料です。
手数料体系や支援内容が透明化されている
登録業者は、手数料体系や成約後の統合プロセス(PMI)を見据えた支援内容を、国のデータベースで公表しなければなりません。また自社のホームページを持っている場合は、そこでも手数料体系を公開することが望ましいという記載があります。
”仲介者・FA は、手数料の算定基準を自社のホームページ等において公表することが望ましい”
私たちエムステージコミュニケーションズでも、自社ホームページにてM&Aに関する手数料を公表しております。

M&A支援機関に登録されている事業者なら、あらかじめ具体的な費用やサポート範囲を確認できるため、不透明な高額請求を受けるリスクを低減できます。
関連記事:医院継承のM&A手数料の種類と相場は?費用を抑えるポイントも解説
国が用意している補助金が利用できる
登録機関を利用することで、国の補助金制度を活用できるメリットもあります。「事業承継・M&A補助金(専門家活用枠)」は、M&Aにかかる仲介手数料やFA(フィナンシャル・アドバイザー)費用の一部を国が補助する制度です。
M&Aにともなうコスト負担を軽減できるため、特に費用面を気にしている売り手や買い手にとって活用しやすい制度といえます。
この補助金において、仲介手数料やFA費用が補助対象となるには、あらかじめM&A支援機関登録制度に登録された機関を利用することが必須要件となっています。つまり、未登録の業者を通じたM&Aでは補助金が受け取れません。
契約前にガイドライン遵守に関する説明を受けられる
登録業者には、契約締結前にガイドラインの遵守状況について、資料を用いた事前説明を行う義務があります。
説明の内容は「どのようなルールに基づいてサポートするか」だけにとどまりません。たとえば、仲介会社が売り手・買い手の両方と契約する「両手仲介」の場合は、その構造と利益相反リスクについても事前に説明しなければなりません。
また成約を急かすような営業が禁じられていること、途中で相談をやめても不当な費用を請求されないことなど、経営者が知っておくべき権利についても確認できます。
M&Aは大きな決断です。「契約書を渡されたままサインした」「後から知らなかった条件が出てきた」といったトラブルを防ぐための仕組みが、登録制度によってあらかじめ整えられています。
事前説明を受けたうえで納得して手続きを進められるため、特にはじめてM&Aに取り組む経営者にとって、安心して利用できる環境が整っているといえます。
健全で誠実な運営を期待できる
登録業者は前年度の支援実績や活動状況を、毎年事務局へ報告しなければなりません。つまり登録を取得して終わりではなく、登録後も継続的に国のチェックを受け続ける仕組みです。
この継続的な監視体制があることで、一時的に基準を満たして登録を得たものの、その後は質を落とすといった対応が起こりにくくなっています。もし不誠実な行為が確認されれば登録を取り消されて、その事実も公表されるため、業者側も長期的に誠実な運営を維持していく姿勢が求められています。
クリニックや医療法人のM&Aは、交渉から成約まで数か月から1年以上かかることも珍しくありません。長期にわたる支援を安心して任せるためにも、こうした継続的な管理体制のもとに置かれている登録業者を選ぶことが重要です。
M&A支援機関制度に登録されている仲介会社の確認方法
検討している仲介会社がM&A支援機関制度に登録されているかどうかは、2つの方法で簡単に確認できます。
仲介会社のホームページを確認する
登録業者は、中小M&Aガイドラインに遵守していることを自社ホームページに掲載しなければなりません。たとえば、エムステージマネジメントソリューションズのサイトでは、トップページの下図に登録制度への対応と遵守宣言を明示しています。

ホームページに登録状況の記載がない業者や、遵守宣言が確認できない業者は注意しなければなりません。
登録支援機関データベースで検索をする
中小企業庁が運営している「登録支援機関データベース」でも、登録業者を無料で検索できます。業者名を入力するだけで、登録状況・所在地・専従者数・手数料体系などの基本情報を確認できます。

契約を検討している仲介会社の名前をデータベースで検索し、登録されているかどうかを必ず事前に確認しましょう。
安心して任せられるM&A仲介会社の選び方
M&A支援機関登録制度は、あくまで最低限の基準を満たしているかどうかの確認にすぎません。登録業者は現在3,000件以上存在しており、支援の質や専門性、費用体系はそれぞれ大きく異なります。
登録の有無以外に、信頼できる業者を見極めるポイントを確認していきましょう。
協会や団体への加盟状況を確認する
M&A支援機関登録制度以外にも、M&Aに関連するさまざまな業界団体があります。それぞれの団体は独自の加入要件や倫理規定を設けており、加盟状況は業者の信頼性を判断する重要な材料の一つです。
たとえば、エムステージマネジメントソリューションズでは、以下の団体に加盟・登録しています。
| 団体名 | 特徴 |
|---|---|
| M&A支援機関登録制度 | 中小企業庁が認定中小M&Aガイドラインの遵守が義務 |
| 一般社団法人 日本医療経営実践協会(JMMP) | 医療経営に特化した専門家団体 |
| 一般社団法人 医業承継士協会 | 医業承継の専門的知識を持つ士業や専門家の協会 |
| 一般社団法人 M&A支援機関協会 | 健全なM&A市場の発展を目的とした業界団体 |
複数の団体に加盟している業者は、それだけ高い基準をクリアしているといえます。仲介会社を選ぶ際は、加盟・登録団体の数と内容も参考にしてみてください。
手数料に関する記載・説明があるか確認する
仲介会社のホームページや提案資料に、手数料体系が明確に記載されているかを確認することも大切です。着手金・月額固定費・成功報酬の有無と計算方式が明示されていない場合は、契約前に必ず書面で確認しましょう。
手数料の体系は業者によって大きく異なります。たとえば着手金や月額固定費が発生する場合、M&Aが成立しなかったときにも費用が発生するので、事前に総額の目安を把握しておくことが重要です。
また成功報酬の計算方式についても、譲渡額に対する一定の割合で算出するレーマン方式を採用しているか、独自の計算式を用いているかによって、最終的な費用に大きな差が生じることがあります。
「思っていたより高額だった」「途中解約したら費用が戻ってこなかった」といったトラブルは、事前の確認不足から起こるケースがほとんどです。費用の透明性が高い業者を選ぶことが、安心してM&Aを進めるための基本といえます。
関連記事:医院継承のM&A手数料の種類と相場は?費用を抑えるポイントも解説
医療機関の場合は医療業界を専門とした仲介会社から選ぶ
医療機関のM&Aは、一般的な中小企業のM&Aとは異なる専門知識が必要です。たとえば医療法人の場合は出資持分の扱い、個人クリニックの場合は廃院から開設届の手続き、さらには保健所や厚生局への各種申請など、医療業界特有のルールが数多く存在します。
こうした専門的な手続きに不慣れな業者が担当した場合、手続きの遅延や予期しないトラブルが生じるリスクがあります。
契約後の支援範囲を具体的に提示してくれる仲介会社を選ぶ
M&Aは、契約が成立した時点で終わりではありません。成約後のスタッフの引き継ぎ、患者への告知、電子カルテの移行、レセプト請求の切り替えなど、実際の運営を軌道に乗せるまでには多くの作業が伴います。この成約後の統合プロセスをPMI(Post Merger Integration)と呼びます。
M&A支援機関登録制度の要件には「PMIを見据えた支援内容の公表」も含まれています。契約前に、成約後どこまでサポートしてもらえるのかを具体的に確認しておくことが重要です。
特に医療機関では、スタッフの雇用継続や患者の引き継ぎが承継後の運営の安定に直結します。サポート範囲が明確な業者を選ぶことで、M&A後のリスクを大きく減らせます。
まとめ:M&A支援機関登録制度は安心できる承継の実現に必須
M&A支援機関登録制度は、国が信頼できる業者を「見える化」した仕組みです。登録業者は中小M&Aガイドラインの遵守が義務付けられており、手数料体系の公開や補助金の活用、公的窓口への相談など、利用者にとって多くのメリットがあります。
ただし登録の有無は、あくまで仲介業者選びの入口にすぎません。医療機関のM&Aでは、登録の有無に加えて、医療業界の専門知識や成約後の支援体制まで含めて総合的に判断することが大切です。
エムステージマネジメントソリューションズは、M&A支援機関登録制度をはじめ複数の医療・M&A関連団体に加盟しており、医療業界のM&Aに特化した豊富な実績があります。医院継承(医業承継)に関するご相談は、ぜひお気軽にお問い合わせください。
▶医院継承・医業承継(M&A)のご相談は、エムステージ医業承継サポートにお問い合わせください。
この記事の監修者

田中 宏典 <専門領域:医療経営>
株式会社エムステージマネジメントソリューションズ代表取締役。
医療経営士1級。医業承継士。
静岡県出身。幼少期をカリフォルニア州で過ごす。大学卒業後、医療機器メーカー、楽天を経て株式会社エムステージ入社。医師紹介事業部の事業部長を経て現職。
これまで、病院・診療所・介護施設等、累計50件以上の事業承継M&Aを支援。また、自社エムステージグループにおけるM&A戦略の推進にも従事している。
2025年3月にはプレジデント社より著書『“STORY”で学ぶ、M&A「医業承継」』を出版。医院承継の実務と現場知見をもとに、医療従事者・金融機関・支援機関等を対象とした講演・寄稿を多数行うとともに、ラジオ番組や各種メディアへの出演を通じた情報発信にも積極的に取り組んでいる。
医療機関の持続可能な経営と円滑な承継を支援する専門家として、幅広く活動している。
より詳しい実績は、メディア掲載・講演実績ページをご覧ください。
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