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診察室の広さの基準は?クリニックの売上目標から考慮すべき広さも解説

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診察室の広さの基準は?クリニックの売上目標から考慮すべき広さも解説
診察室の広さの基準は?クリニックの売上目標から考慮すべき広さも解説

クリニックの設計ではさまざまな法令によって条件が設けられているので「診察室の広さはどれだけ必要なのか」と悩まれる方も多くいらっしゃいます。

本記事では、法令で定められた診察室の広さの基準から診療科目別で必要な広さ、クリニックの広さを決める上で重要な考え方までまとめました。

これから開業を考えている方の物件選びやレイアウトの検討に、ぜひお役立てください。

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病院やクリニックにおける診察室等の広さの基準

医療機関における診察室の広さは、各自治体の保健所によって基準が設けられています。

地域によって細かい規定は異なる場合もありますが、一般的に診察室の広さは「9.9㎡以上※」が基準とされています。

出典:診療所の構造設備基準等について|荒川区役所

保健所が設けている診療室の広さの基準は、医師が診療を行うために必要な医療機器や備品を設置し、患者の診察を安全かつ適切に行うために最低限必要とされる広さです。

実際の診療内容や想定される患者数に応じて、より広いスペースの確保を検討する必要もあります。

診察室に求められる要件

診察室には広さだけでなく、さまざまな要件も求められます。

まず、診察室は他の部屋と明確に区切られている必要があり、廊下や他の部屋への通路として使用される構造は認められません。また、待合室との間は患者のプライバシー保護のため、扉で区切ることが望ましいとされています。

診療科目に関する要件として、以下の2点が重要です。

  • 1室で複数の診療科を担当することは推奨されない
  • 小児科は感染予防の観点から、単独の診察室を設けることが望ましい

さらに、診察に必要な給水設備の設置や、処置室と兼用する場合はカーテンでの区画なども求められます。

※参考資料:医療法(病院の構造設備基準に関する関係法令)

そのほか内装で広さの基準が定められているもの

診療室以外にも、最低限必要な広さの基準が設けられている部屋があります。

広さの基準が設けられている部屋必要な広さ
待合室3.3㎡以上
手術室9.9㎡以上
調剤室6.6㎡
歯科治療室1セット:6.3㎡2セット以上:1セットにつき5.4㎡
歯科技工室6.6㎡

出典:診療所(歯科診療所)新規開設の手引き|東京都保健医療局

上記はあくまで東京都の保健所によって設けられている基準です。ほかの地域では基準が異なったり、ほかの部屋(施設)にも基準が設けられていたりする可能性もあります。

開業地域の保健所で、あらかじめ確認を取っておきましょう。

【診療科目別】クリニックで必要となる広さ(面積)の基準一覧

医療機関を開業する際、診療科目によって必要となる広さ(面積)は大きく異なります。以下に、主な診療科目ごとの標準的な広さをご紹介します。

なお、これらはあくまでも目安であり、実際の開業計画では患者数や提供するサービス内容に応じて調整が必要です。

診療科目必要な広さの目安ポイント
内科30〜40坪一般的な内科で必要な広さ
外科50〜70坪手術室や処置室の確保が必要
眼科30〜60坪検査室や処置室の広さで変動
皮膚科25〜50坪美容施術の有無で変動
耳鼻咽喉科30〜40坪検査室の確保が必要
小児科30〜45坪キッズスペースの確保が必要
婦人科35〜45坪産科を併設する場合には200坪程度が必要
精神科15坪〜30坪カウンセリングルームの確保が必要

同じ診療科目でも立地条件や想定する患者数によっても必要な広さは変わってきます。駅前などの都心部では上記の目安より小さめの面積で開業するケースもありますが、郊外では十分な駐車場を確保するために、建物外で広い面積が必要になることもあるでしょう。

立地条件や経営計画によっては、限られた広さの中で工夫する必要も出てきます。

クリニックの広さは開業エリアや売上目標から逆算する

クリニックに必要な広さは、診療科目によっても大きく異なります。

しかし、単に診療科目だけで判断するのではなく、開業エリアの特性や目標とする売上高から必要な患者数を割り出し、それに合わせた広さを検討することも重要です。

ここではクリニックの広さを決める上でも重要な、開業エリアの選定や売上目標の設定などを解説します。

開業エリアの人口動態や競合を調べる

クリニックの広さを検討する前に、まずは開業予定地域の状況を調査する必要があります。

開業エリアの調査では、日本医師会が運営している「地域医療情報システム(JMap)」が非常に便利です。

地域医療情報システムでは、国勢調査などをもとに算出された以下のような情報がわかります。

  • 高齢化率
  • 人口増減率
  • 年齢別の人口比率
  • 診療科目ごとの医療機関数
  • 人口10万人あたりの医師の数

出典:東京都 区中央部医療圏|地域医療情報システム

たとえば小児科の開業を考えている場合、地域の年少人口や既存の小児科の数を確認することで、適切な診療圏も見えてきます。また、その地域で必要とされている診療科目や、競合の少ない分野を見極めることも可能です。

こうした情報をもとに、その地域で必要とされるクリニックの規模や必要な設備が見えてきます。

売上目標から必要な患者数を把握する

開業エリアの選定後は、目標とする売上高を設定し、そこから必要な患者数を算出します。

厚生労働省が公表している2022年度のデータによると、個人が経営している内科の医業収益は、約8,889万円※(1か月あたり約740万円)となっています。

※出典:第24回医療経済実態調査|厚生労働省

また、各診療科目ごとの平均の医療費に関しては、下記のような結果が出ています。

診療科目1日当たり医療費
内科9,994円
小児科8,303円
外科8,310円
整形外科4,663円
皮膚科3,992円
泌尿器科11,918円
産婦人科9,589円
眼科8,810円
耳鼻咽喉科5,671円

出典:令和4年度 医科診療所の主たる診療科別の医療費等の状況|厚生労働省保険局調査課

たとえば上記の表を参考にして、内科で月740万円の売上目標を立てた場合、1日あたり約37人の患者が必要になることがわかります。

【月20日間診療した場合の計算】

  • 1日あたりの目標売上:740万円 ÷ 20日 = 37万円
  • 1人あたりの診療報酬:9,994円
  • 1日に必要な患者数:370,000円 ÷ 9,994円 ≒ 37人

この患者数をもとに、待合室や診察室など、必要なスペースの広さを具体的に検討していきましょう。

なお、この計算はあくまでも単純な目安であり、実際の経営では保険診療以外の収入や、地域性、診療内容による違いなども考慮する必要があります。

クリニックに必要な広さを割り出す

1日あたりに必要な患者数が計算できたら、それを実現できる具体的な広さを考えていきます。

内科で1日約37人の患者を診療するとした場合、1時間あたり約6人の患者を診療しなければなりません。

  • 1日あたりの診療時間を6時間とした場合(午前3時間、午後3時間)
  • 1時間あたり約6人(37人÷ 6時間)の診察

このように1時間あたりの診療数がわかれば、必要な待合室や診療室の広さやレイアウトが

次第に見えてきます。

たとえば待合室には、常時5〜6人はゆとりを持って座れるスペースを確保したり、効率よく診察を行うために診察室を2部屋にしたりなどの検討も必要です。

クリニックの設計は、開業エリアの選定から患者数の予測、導線の確保などさまざまな要素をふまえて判断しなければならないため、専門家のサポートを受けることをおすすめします。

関連記事:診療所の開業相談できる機関まとめ!後悔や失敗しないコツも紹介

クリニックの設計や施工時に守らなければならない法令

クリニックの設計や施工時には、医療施設としての安全性と機能性を確保するために、以下4つの法令を守らなければなりません。

法令主な内容
医療法病室の床面積に関する規制病室の設置箇所に関する規制階段や廊下幅の規制
建築基準法建物の構造や強度に関する基準非常口や階段の設置建物の広さや高さに関する基準
消防法消防設備の設置基準避難経路の確保
バリアフリー法出入り口の幅の確保段差の基準多目的トイレの設置基準

また上記以外に、各地域の保健所によってもさまざまな規制が設けられています。

これらの法令を一つひとつ確認しながら設計しなければならないため、所轄の保健所に相談しながら、医療施設に関する知識が豊富な設計・施工会社に依頼することをおすすめします。

ベッドのあるクリニックは特殊建築物としての規則が適用

クリニックの開業において、ベッド(病床)の有無は建築基準に大きな影響を与えます。19床以下のベッドを有するクリニックは「特殊建築物」として扱われ、一般の診療所よりも厳しい建築規制があるためです。

特殊建築物に指定されると不特定多数の利用者の安全を守るため、防火設備の設置や避難経路の確保など、さまざまな基準を満たす必要があります。これは火災などの緊急時における患者の安全確保が最優先されるためです。

一方で無床診療所(ベッド数ゼロ)は「一般建築物」として扱われ、比較的基準はゆるやかで、開業場所の選定やコスト面において自由度も高くなります。

特にベッドのあるクリニックを開業する場合には、立地条件や建物に求められるさまざまな要件を満たさなければならないため、新規開業には多くの時間と労力がかかります。

医院継承であれば、すでに特殊建築物の基準をクリアした有床クリニックを引き継ぐことができるため、設計や建築の費用負担を軽減し、スムーズな開業が可能です。

開業方法の候補として、医院継承の検討もおすすめします。

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クリニックの内装を考える上で重要なポイント

クリニックの内装設計は法令を遵守しつつも、スムーズな診療を行うための工夫、患者の利便性やプライバシーなどの配慮も必要です。

また、清潔感や信頼感を損なわず、患者がリラックスできる環境を作るためにも空間デザインの工夫も欠かせません。

ここではクリニックの内装を考える上で、重要なポイントを4つ解説します。

患者と医療スタッフの導線

クリニックの内装を考える上でもっとも重要な点は、患者とスタッフの動線の設計です。

患者の動線は、来院後の受付、待合室での待機、診察後に会計をして退出するまでの一連の流れをスムーズにすることが大切です。診療科目によっては、ほかの患者の視線を気にしないで済むようなレイアウトが望ましいでしょう。

一方で医療スタッフの動線は、診療に関わる設備や機器へのアクセスがしやすく、緊急時にも素早く対応できる設計がポイントです。たとえば薬剤や医療材料の保管場所は、診察室や処置室から取り出しやすい配置が適しています。

患者と医療スタッフの動線が交差すると、診療の遅れや事故のリスクにつながるため、可能であれば別々の導線にするための設計が最適です。

適切な環境設備の完備

クリニックにおいて電気・空調・水道などの環境設備は、診療の質に直接関わる重要な要素です。

特に医療機器の使用には安定した電力供給が欠かせません。CTやMRIなどの大型医療機器を導入する場合には、十分な電力容量の確保が必要です。

院内感染予防の観点から、清潔な空気環境を保つことも重要です。待合室や診察室では、患者が快適に過ごせるように温度管理を徹底しつつ、換気システムなどで院内の空気を循環させる必要もあります。

また、手洗い場やトイレの設置はもちろんのこと、診察室や処置室にも給水設備が必要です。

特に給排水の設備は保健所から指導を受けやすい要素なので、あらかじめ所轄の保健所と相談をしながら設計することをおすすめします。

リラックスできる空間デザイン

患者にとってクリニックは、緊張したり不安を感じたりする場所です。そのため、内装デザインにも工夫を加えて、少しでもリラックスできる環境づくりを心がけましょう。

たとえば壁や床の色使いは、白をベースにしつつ木目調の素材も取り入れると、清潔感と温かみのある空間が仕上がります。

待合室の天井を高めにしたり、大きな窓を設けたりすることで開放感が出て、診察を待ってている患者の居心地も良くなるでしょう。また、座席の配置を工夫したり、パーテーションで適度に区切ったりなど患者のプライバシーに配慮した工夫も必要です。

患者層に合わせた配慮

クリニックの内装は、主に利用される患者層に合わせて設計することが大切です。

たとえば小児科であれば、待合室にキッズスペースを設けたり、壁紙やサインボードに明るい色使いやかわいらしいキャラクターを取り入れたりして、子どもたちの不安を和らげる工夫が必要です。

高齢者が多い診療科では通路を広めに確保し、適切に手すりを配置するなど安全面のサポートが欠かせません。また床材は滑りにくいものを選び、段差をできるだけ少なくするなどの配慮も必要です。

産婦人科では、ベビーカーでの来院にも対応できるように広いスペースを確保し、授乳室やおむつ替えスペースの設置が必要です。

ほかにも美容皮膚科では、プライバシーに配慮するために個室の待合スペースを作るなど、患者層のニーズに合わせた空間づくりを心がけましょう。

クリニックの広さ別に必要となる内装費の目安

クリニックが開業する際の立地は、大きくわけて3種類あります。

  • テナントビル
  • 医療モール
  • ロードサイド

ここでは、それぞれ必要となる内装費の目安を紹介します。

また、診療科目別で必要な開業資金をまとめた記事も合わせて参考にしてください。

関連記事:クリニックの開業資金はいくら必要?診療科目別でわかる費用や調達方法を紹介

テナントビル

20坪クラスのテナントビルの場合、内装費用の相場は1,400~2,000万円程度となります。

駅前や繁華街などの人口密度の高いエリアでは、テナントビル内によるクリニックの開業が一般的です。

一般のテナントビルをクリニックとして利用する際は、電気容量の増強や給排水設備の拡充など、追加工事が必要になることもあるので注意しましょう。追加の工事費用は物件によっても大きく異なるため、開業前に専門家による現地調査が欠かせません。

テナントビルのメリットは、駅前など好立地での開業が可能で、初期費用を抑えられる点です。一方で階数によっては集患への影響を受けたり、ほかのテナントとの共有部分の使用制限があったりなど、テナントビル特有の制約を受けやすい点はデメリットです。

医療モール

30坪クラスの医療モールの、内装費用相場は2,100~3,000万円です。

異なる診療科のクリニックが集まる医療モールは患者にとっても利便性が高く、集患の面においても有効的な開業方法です。

医療モールはクリニックの利用を前提に設計されているため、電気や給排水設備が充実しており、一般のテナントビルに比べて大規模な追加工事は少なくて済みます。

ただし、医療モール側が内装に関する規定を定めている場合もあり、外観や内装デザインに関して自由に行えない可能性がある点は注意です。

医療モールのメリットとして、複数の診療科がお互いに患者を紹介できる点や、建物全体として集患のプロモーションが行われる点が挙げられます。デメリットは、一般のテナントビルに比べると賃料が割高になりやすい点です。

ロードサイド

40坪クラスのロードサイドクリニックの内装工事費用は2,600~3,800万円が相場です。

ロードサイド物件(車の交通が多い道路に面した物件)でのクリニック開業では、比較的広い面積を確保しやすい点が特徴です。建物を新築する場合は、建築費用(1坪あたり80~110万円)も別途必要となり、内装工事の費用と合わせると5,800~8,200万円程度になります。

ロードサイドによるクリニック開業のメリットは、駐車場の確保がしやすく、車での来院を想定した集患が可能な点です。デメリットは、物件によっては初期投資が大きくなりやすい点です。また、外観のデザインや看板など、視認性を高めるための工夫も重要になります。

初期投資がもっとも大きくなる開業方法ですので、特に診療圏の人口動態や競合状況を十分に調査し、投資の回収計画をしっかりと立てた上での物件選びが重要です。

診察室等の広さの基準をベースに適切なクリニックの設計を行いましょう

クリニックの診察室の広さや全体の内装は、法令で定められた基準を満たすことはもちろんのこと、患者の快適性やプライバシー、医療スタッフの業務効率化も両立させる工夫が重要です。

また、診療科目や想定する患者数によって必要なスペースは大きく変わってきます。開業エリアの特性や導入予定の医療機器なども考慮しながら、理想的な医療空間を設計していきましょう。

新規開業の場合、さまざまな法的要件を満たした物件を探すために時間や手間がかかる場合も多くあります。すでに診療しているクリニックを引き継ぐ医院継承なら、内装に関して大きなトラブルが発生する可能性も低く、スムーズな開業が可能です。

「エムステージマネジメントソリューションズ」では、医療経営士の資格を持ったコンサルタントが最適な開業エリアやクリニックのご提案を行うのはもちろんのこと、開業後の経営サポートも行っております。

クリニックの開業に関して不安なことがあれば、まずはお気軽にご相談ください。
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この記事の監修者

田中 宏典 <専門領域:医療経営>

株式会社エムステージマネジメントソリューションズ代表取締役。医療経営士1級。医業承継士。医療機器メーカー、楽天を経て株式会社エムステージ入社。医師紹介事業部の事業部長を経て現職。これまで、病院2件、診療所30件、介護施設2件の事業承継M&Aをサポートしてきた。エムステージグループ内のM&A戦略も推進している。プレジデント社より著書『”STORY”で学ぶ、М&A「医業承継」』を上梓。

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