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クリニックの平均売上は?売上2億を目指すための9つのポイントを解説

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クリニックの平均売上は?売上2億を目指すための9つのポイントを解説
クリニックの平均売上は?売上2億を目指すための9つのポイントを解説

クリニックを経営していて「自分のクリニックは平均売上に届いているのだろうか」「1億円や2億円の売上を目指したい」と考える方は多くいらっしゃるでしょう。また、具体的にどのような施策が効果的なのか、悩まれている方も多いと思います。

本記事では厚生労働省の最新データをもとに算出した診療科目別の平均売上や、効果的な売上向上の施策をわかりやすくまとめました。

これから開業を検討されている方はもちろんのこと、すでにクリニックを経営されている方にも役立つ開業戦略や経営ノウハウをご紹介します。

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個人と医療法人におけるクリニックの平均売上

厚生労働省が行った調査によると、2022年度における一般診療所の個人と医療法人の年間平均売上は下記のとおりです。

個人約9,343万円
医療法人約16,543万円

出典:第24回医療経済実態調査(医療機関等調査)の医業収益|厚生労働省

月間売上に換算すると個人のクリニックで約779万円、医療法人のクリニックで約1,379万円という計算です。

また、診療科目別の年間平均売上では、下記のような結果が出ています。

診療科目個人医療法人
歯科4,719万円11,076万円
内科8,889万円16,467万円
小児科11,235万円16,086万円
精神科5,363万円11,234万円
外科12,798万円17,139万円
整形外科10,282万円14,849万円
産婦人科13,949万円21,495万円
眼科9,887万円14,782万円
耳鼻咽喉科7,810万円11,662万円
皮膚科6,810万円11,286万円

※いずれも入院診療収益なしで無床の診療所

出典:第24回医療経済実態調査(医療機関等調査)の医業収益|厚生労働省

利益率は個人クリニックのほうが高い

医療法人は数多くの事業展開をしているケースも多いため、個人に比べて平均売上が高いのは当然のことといえます。

一方で「利益率」で比較してみると、個人クリニックのほうが3倍近く高いことがわかります。

個人医療法人
医業収益約9,343万円約16,543万円
収益差額約3,141万円約1,784万円
利益率33.6%10.8%

出典:第24回医療経済実態調査(医療機関等調査)|厚生労働省

これほどまでに利益率に差が出ているのは、支出となる「医業・介護費用」の中でも給与費の割合に大きな違いがあることも要因の一つです。

個人医療法人
給与費約2,274万円約8,210万円
「医業・介護費用」の構成比率24.6%49.0%

給与費の割合に2倍近くの差が出ているのは、個人クリニックは院長自身の収入が事業所得となり給料費には反映されていない点、さらに医療法人は事業規模が大きいことから、より多くのスタッフを雇用されていて、院長自身の収入も給与として受け取っている点が大きいと考えられます。

医療業界は非営利性が求められることから、利益優先の運営は行ってはいけませんが、個人と医療法人で「収益差額」に大きな差があるという事実も把握しておきましょう。

クリニックの平均売上を超えるために必要な要素

クリニックの平均売上を達成するためには、まず自院の現状を数値で把握し、具体的な目標設定を行うことが重要です。

ここでは、個人の内科クリニックが平均売上の8,889万円を達成したい場合を例にして、売上を上げるためにもあらかじめ把握しておくべき要素を解説します。

患者一人あたりの平均点数を計算する

クリニックが平均売上を達成する際には、患者一人あたりの平均点数の把握が重要です。

すでにクリニックを経営している場合は、月間の総点数と患者数から平均点数を計算しましょう。

これから開業を目指す方は、厚生労働省が都道府県別に公表している平均点数を参考にするとよいでしょう。

たとえば東京都の内科(人工透析なし・在宅以外)の場合、平均点数は1,323点※です。

※出典:令和6年度 東京都内の保険医療機関等の診療科別平均点数一覧表|厚生労働省

つまり、患者1人あたり13,230円の診療報酬となります。

必要な患者数を計算する

続いて目標売上に対して必要な患者数を計算しましょう。

ここでは、個人の内科クリニックの平均売上「8,889万円」を目指す場合を考えてみます。

月間売上に換算すると「8,889万円 ÷ 12か月 = 約740万円」が必要です。

この月間売上に対して、さきほど割り出したクリニックの平均点数から計算します。

たとえば東京都で内科を経営しているクリニックの平均点数が1,323点(13,230円)だった場合、月間で必要な患者数は約559人です。

【計算式】
740万円 ÷ 13,230円 = 約559人

クリニックの診察日数が月間22日とした場合、1日あたり約26人の患者が必要なことがわかります。

【計算式】
559人 ÷ 22日 = 約25.4人

これで、東京都内で内科を経営しているクリニックで、平均点数が1,323点だった場合、平均売上8,889万円を達成するには、1日26人の患者が必要だということがわかりました。

施策を行う

必要な患者数がわかったら、自院の現状と照らし合わせて必要な施策を行います。

たとえば、先ほど計算した内科クリニックの例(目標8,889万円)では、1日26人の患者数が必要でした。

現状の来院数がこれを下回っている場合、集患に関する施策を優先的に検討する必要があります。

一方で集患しようとしても、現状で1日あたりの診察数に限界を感じている場合には、オペレーション上で改善できる点がないか考えて、回転率を上げる施策が必要でしょう。

クリニックが売上を上げるには、シンプルに考えると以下3つの施策が必要です。

  • 集患をする
  • 平均点数を上げる
  • 回転率を上げる

計算結果と現状を比較することで、自院にもっとも必要な施策が明確になります。

具体的な施策の実施方法については、次の章で詳しく解説していきます。 

クリニックで1億〜2億円の売上を目指すための9つのポイント

クリニックで年間1億から2億円の売上を目指すには、クリニックを開業する前から実際に開業したあとの運営方法まで、さまざまな戦略が必要です。

ここでは、クリニックが売上を上げるために欠かせない、9つのポイントを紹介します。

開業エリアの調査を徹底する

開業エリアは、クリニックの売上に最も影響する要素といっても過言ではありません。

そのためクリニックの開業時には、開業エリアの調査が非常に重要です。

具体的には、その地域の人口動態(年齢層や人口増減)、競合となるクリニックの数、最寄り駅や大型商業施設からの距離などを詳しく調べる必要があります。

たとえば人口が減少傾向にある地域では、将来的に患者数の確保が難しくなる可能性があります。

また、同じ診療科のクリニックが近隣に多く存在する場合、患者の獲得競争が起こってしまうでしょう。

理想的なのは人口が増加傾向にあり、かつ競合も少ないエリアです。

ただし、これらの要因を分析したり考察したりするのは容易なことではありません。

専門的な知識が必要になるため、専門家のサポートも受けながら開業エリアの選定をすることをおすすめします。

関連記事:診療所の開業相談できる機関まとめ!後悔や失敗しないコツも紹介

SEOやMEOなどのネット運用を行う

今は患者がクリニックの利用を検討した際に、ほとんどがインターネットで情報を探します。

そのため患者がGoogleなどの検索エンジンを活用した際に、自院が上位表示されるような施策(これをSEOといいます)を行うことが重要です。

また、患者はGoogleマップで周辺のクリニックを探されるケースも多くあります。

このような場面でも、Googleマップ上などで自医が表示されるように施策(これをMEOといいます)をしておきましょう。

特にMEOについては、Googleの「グーグルビジネスプロフィール」を作成をするだけで、自院がGoogleマップ上に表示されます。

無料で利用できる機能ですので、クリニックが集患する際には必須の施策といえます。

広告運用を活用する

広告運用は、集患にもっとも直結しやすい施策といえます。

広告運用には、新聞や駅構内などに掲載する「オフライン広告」とWeb上に掲載する「オンライン広告」の2種類にわけられます。

特にオンライン広告のほうが、すぐに広告を掲載できて効果測定も可能なのでおすすめです。

主なオンライン広告広告運用の媒体
Web広告Google検索
SNS広告X(旧Twitter)やインスタグラムなど
動画広告YouTubeやTikTokなど

ただし医療法によって、広告での表現に規制がある点には注意しましょう。

たとえば、ほかのクリニックと比較をするような内容や、そのクリニックの治療を受けた体験談(事実かどうかが判断できない内容)を広告で発信することは禁止されています。

出典:医療法における広告規制の現状について|厚生労働省

クリニックに対する口コミに注意する

Googleマップやクリニックの情報まとめサイト、ホームページなどに掲載された口コミは、しっかりとチェックしておきましょう。

今は多くの人がクリニックを選ぶ際に、インターネット上の口コミをチェックする時代であり、マイナスな口コミは印象に残りやすくなるためです。

SNSでの拡散に注意しながら、良い口コミにも悪い口コミにもしっかりと返信をして、丁寧な対応を心がけましょう。

患者の利便性の向上を行う

クリニックの売上を伸ばすためには、患者にとっての「通いやすさ」が重要です。

たとえば予約システムを導入することで、患者は24時間いつでもスマホから予約が可能になります。クリニック側としても、スタッフのヒューマンエラーによる予約管理ミスが無くなるメリットもあります。

また、自動会計機を導入したり、診察時間が近づいたらスマホに通知が届くシステムを導入したりと、患者の待ち時間を減らす工夫も重要です。

患者が通院できる地域内に、待ち時間が長いクリニックと短いクリニックがあった場合、患者がどちらを選ぶかは明白といえるでしょう。

医療スタッフの教育を徹底する

クリニックの評判を左右する大きな要因の一つが、医療スタッフの対応です。

医師がいくら優れた診療を行っても、受付や看護師の対応が悪ければ患者さんの満足度は下がってしまうためです。リピートにつながらないだけでなく、悪い口コミが広がる可能性も大いにあります。

一般的な「接客」とは異なり、クリニックの医療スタッフに求められるのは、患者の体調や心境に応じた配慮ができる「接遇マナー」です。

電話対応はもちろんのこと、患者と接する際の態度なども十分に配慮しなければなりません。

関連記事:クリニックが成功するスタッフ教育とは?「やってはいけないこと」や重要なポイントを解説

診療に対応できる時間を増やす

クリニックの売上を増やすための確実な方法の一つが、診療時間の拡大です。

たとえば、土曜や祝日に診療することで、平日の来院が難しい患者が利用される可能性が高くなります。夜間診療や早朝診療を実施すると、会社帰りや出勤前に利用したい患者にとって便利になるでしょう。

また、追加で医師を採用して2診制にすることで、スムーズな診察が可能になり受け入れられる患者数も増加します。

集患を行いながら体制も変えていけば、クリニックの売上も大きく向上していくことでしょう。

自費診療にも注力する

売上1億や2億を目指す場合、患者あたりの単価(平均点数)も重要な要素になってくるので、自費診療にも注力しましょう。

保険診療に比べると、自費診療のほうが圧倒的に収益性が高いためです。

ただし、利益優先で患者に自費診療をすすめるのは、信頼を失ってしまうだけなので注意しなければなりません。自費診療に注力する際には、保険診療に比べて患者のメリットが大きいことが大前提です。

地域の属性やターゲットとなる患者のニーズなどを考慮しながら、最新の医療機器の導入など、クリニックの特色(強み)となる自費診療を検討しましょう。

分院開業も視野に入れる

クリニックの売上は、その地域の人口や競合状況も大きく影響を受けます。

そもそも人口が少ない地域で開業していたり、同じ診療科のクリニックが多い地域では、売上アップに限界がある場合もあります。

そのような状況で1億円や2億円の売上を目指す場合には、分院開業も効果的です。

たとえば一つのクリニックの売上が月500万円程度で頭打ちになっている場合でも、別の地域に開業することで事業全体として月1,000万円以上の売上を達成し、年間1億円の売上も現実的です。

ただし、分院開業をすれば必ず売上が上がるものでもありません。

開業エリアの立地選定や資金調達、人材の確保なども必要ですし、新規開業に必要な多額の資金調達が難しい場合もあるでしょう。

そのため、開業に関する初期投資が抑えられ、患者基盤を引き継ぐことで早期の売上向上も見込める「医院継承」による開業の検討もおすすめします。

平均売上だけではなく損益分岐点の把握も重要

クリニックの経営において重要なのは売上の向上を目指すだけでなく、自院の採算ラインとなる「損益分岐点」を正確に把握することです。

損益分岐点とは、総収入と総費用が等しくなる売上高のことで、赤字と黒字の境界線がわかるラインです。

いくらクリニックの売上が上がったとしても、この損益分岐点を下回っていると持続可能な経営とはいえません。損益分岐点を把握するには、まず月々の固定費の把握が必要です。

人件費や家賃、リース料、広告宣伝費など、患者数に関係なく毎月発生する「固定費」を合計します。

次に、医療材料費や医薬品費など、患者数に応じて変動する「変動費」を合計して、売上に対する割合を計算します。

たとえば月の変動費が100万円、売上が500万円だった場合、変動費率は20%(100万 ÷ 500万  × 100)という計算です。

これらの数字をもとに、下記の計算式を用いて損益分岐点となる売上高を割り出します。

「損益分岐点となる売上高 = 固定費 ÷ (1 – 変動費率)」

たとえば、固定費が月300万円で変動費率が20%だった場合「300万円 ÷ (1 – 0.2)= 375万円」で、利益を出すためには最低でも375万円必要ということがわかります。

仮に、変動費率を1%抑えられて19%にできた場合には、損益分岐点は約370.4万円になり、月々必要な売上が約4.6万円少なくて済みます。

損益分岐点を知ることで「売上を伸ばすべきか」「固定費や変動費の見直しをすべきか」という優先順位の判断が可能です。

より現実的な売上目標を設定するためにも、損益分岐点も把握しておきましょう。

クリニックの売上に関するよくある質問

クリニックが売上向上を目指すにあたって、多くの医師から疑問や質問が寄せられます。

ここでは、特に開業医の方々が気になっている売上に関する質問について、具体的な数字とともに解説していきます。

一番儲かるクリニックはどこですか?

「入院診療報酬なし(無床)」の個人クリニックの場合、売上(医業収益)がもっとも高いのは13,949万円の産婦人科です。

ただ、一般的に産婦人科は有床のクリニックが多いと考えられます。

そこで「入院診療報酬あり(有床)」で見てみると、産婦人科の売上は8,217万円となり、一般的に無床のクリニックが多いと考えられる小児科が11,235万円と、もっとも売上の高いクリニックです。

産婦人科小児科精神科
医業収益13,949万円11,235万円5,363万円
収益差額4,898万円3,310万円2,847万円
利益率35.11%29.46%53.09%

出典:第24回医療経済実態調査(医療機関等調査)|厚生労働省

また利益率で「儲かる・儲からない」を考えた場合、精神科が53.09%でもっとも利益率が高い計算です。

関連記事:開業医は儲からない?診療科目別の平均年収ランキングや儲けるポイントを紹介

内科クリニックの1日の売上はいくらですか?

内科クリニックの1日の平均売上は約24万円です。

年間売上月間売上1日平均売上
内科クリニック約8,889万円約741万円24万円

出典:第24回医療経済実態調査(医療機関等調査)厚生労働省

クリニックの平均売上を上回るためには開業時の条件も重要

クリニックの売上を伸ばすには、開業時の立地選定から運営方法まで、さまざまな要素が重要です。

特に開業エリアの選定は、その後の経営を大きく左右する重要な判断となります。

たとえば人口が減少している地域や競合の多いエリアでは、売上向上に関する施策を講じても限界がある場合もあるためです。

そのような時は新規開業ではなく、すでに患者基盤のあるクリニックを承継することで、初期投資を抑えながら安定した経営が目指せます。

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この記事の監修者

田中 宏典 <専門領域:医療経営>
株式会社エムステージマネジメントソリューションズ代表取締役。医療経営士1級。医業承継士。医療機器メーカー、楽天を経て株式会社エムステージ入社。医師紹介事業部の事業部長を経て現職。これまで、病院2件、診療所30件、介護施設2件の事業承継M&Aをサポートしてきた。エムステージグループ内のM&A戦略も推進している。プレジデント社より著書『”STORY”で学ぶ、М&A「医業承継」』を上梓。

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