レーマン方式の計算方法とは?M&Aの成功報酬の特徴をわかりやすく解説
目次
事業承継や会社売却を考えるとき、多くの経営者が最初に気にかけるのが仲介会社への手数料の金額です。
現在、多数の仲介会社が採用している「レーマン方式」という計算の仕組みは、取引の規模によって手数料の割合が変わっていく点が特徴です。
特にクリニックの承継では医療設備や建物など、大きな資産を含むケースが多く、手数料の仕組みを事前に把握しておく必要があります。
本記事ではレーマン方式の考え方や長所・短所、この方式を採用している仲介会社と契約する際のポイントについて、わかりやすく説明します。
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M&Aの手数料計算「レーマン方式」の由来と意味とは?
レーマン方式は、事業の売却や承継における仲介会社の報酬計算を定めた代表的な手法の一つです。
名前の由来については、2つの説があります。
ひとつはアメリカの大手金融機関リーマン・ブラザーズからとった説、もうひとつはドイツ経営学者「レーマン博士」からとった説です。
レーマン方式の最大の特徴は、取引の金額が大きくなるにつれて適用される計算率が下がっていくことです。わかりやすさと公平さが評価され、世界中でも広く使われています。
実際、経済産業省が行った調査によると、国内の案件の84.1%がこの方式を採用しているとの結果も出ています。
※出典:M&A支援機関登録制度 実績報告等について|経済産業省
特に医療分野の医院継承においても多くの仲介会社で採用しており、一般的な計算方式です。
レーマン方式で行う成功報酬の計算方法
レーマン方式による成功報酬は、M&Aにおける報酬基準額を5つの区分に分けて、それぞれの区分ごとに異なる料率を適用して計算します。
基本的な計算式は「報酬基準額 × 報酬料率」です。
レーマン方式は報酬基準額が大きくなるほど、適用される報酬料率が段階的に下がっていきます。
また、レーマン方式は「成功報酬」なので、M&A取引が成立した場合のみ発生する点も大きなメリットです。
続いて、報酬基準額に対する報酬料率の早見表を解説します。
レーマン方式の早見法
レーマン方式の早見法を使えば、簡単に仲介会社に支払う手数料がわかります。
報酬基準額 | 報酬料率 |
5億円以下 | 5% |
5億円超〜10億円以下 | 4% |
10億円超〜50億円以下 | 3% |
50億円超〜100億円以下 | 2% |
100億円超 | 1% |
※上記の報酬料率は一般的な例で、仲介会社によって異なる場合があります。
たとえばM&Aの取引が6億円だった場合、手数料は2,900万円です。
対象となる取引額 | 計算式 | 手数料 |
5億円以下に対して5% | 5億円 × 5%=2,500万円 | 2,500万円 |
5億円超〜10億円以下に対して4% | 1億円 × 4%=400万円 | 400万円 |
合計 | 2,900万円 |
レーマン方式以外の成功報酬
仲介会社の報酬体系には、レーマン方式以外にもいくつかの種類があります。
ここでは代表的な「固定報酬方式」と「タイムチャージ方式」について解説します。
固定報酬方式
固定報酬方式は、取引金額に関係なく、最初に決めた一定額を報酬として支払う方式です。
最大の特徴は、費用が前もって確定するため予算管理がしやすいことです。特に小規模なクリニックの承継では、レーマン方式と比べて総額を抑えられる可能性があります。
ただし、取引が不成立だったとしても報酬が発生する点はデメリットです。
また、案件の規模や複雑さに関わらず報酬が変わらないため、仲介会社のサービス品質に影響が出る可能性もあります。
タイムチャージ方式
タイムチャージ方式は、実際の作業時間に応じて報酬が決まる方式です。
この方式は特に、法律事務所などが取引仲介を行う際によく採用されています。担当者の実働時間に基づいて報酬が決まるため、無駄のない透明性の高い方式といえるでしょう。
一方で、M&Aの取引完了までに予想以上の時間がかかると、当初の見込みを超えた費用が必要になる可能性があります。
そのため予算の見通しを立てにくい報酬体系といえるでしょう。
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レーマン方式での報酬基準額の種類
レーマン方式で算出される手数料は「報酬基準額として何が含まれるのか」という点が、大きく左右されます。
そこでレーマン方式では、報酬基準額の対象となるものを大きく4種類に分けています。
基本となるのは「株価レーマン方式」で、そこから計算に含める項目が順次増えていく形です。
それぞれの特徴を詳しく見ていきましょう。
株価レーマン方式
最もシンプルな計算方法で、株式や出資持分の価値に基づいて手数料を算出します。
株式レーマン方式による報酬基準額 = 株式の譲渡額 |
たとえば、売り手側企業の株価が1株あたり10万円で、発行済みの株式が1,000株だった場合、報酬基準額は1億円となり、この金額に対して報酬料率をかけて手数料を算出します。
クリニックの場合には株価がありませんので、時価純資産や出資持分などをベースに算出します。
オーナー受取額レーマン方式
経営者や役員からの借入金がある場合、その金額も計算の基準に加える方式です。
オーナー受取額レーマン方式の報酬基準額 = 株式譲渡額 + 親族などの借入金 |
たとえば、売り手側のオーナーが債権者の場合、M&A成立時には取引価格の受け取りと同時に借入金の返済もできます。
買い手側にとっては手数料が高くなる可能性があるため、事前に売り手の財務状況も十分に確認する必要があります。
企業価値レーマン方式
金融機関からの借入金など、利息の発生する負債全般を計算に加えます。
企業価値レーマン方式の報酬基準額 = 株式譲渡額 + 純有利子負債(親族などの借入金や銀行などの借入金) |
売り手側は株式譲渡の対価が得られて、すべての有利子負債からも解放されます。
移動総資産レーマン方式
売り手側のすべての負債総額を加算する方式です。
金融機関からの借入金やオーナーからの借入金といった有利子負債にくわえて、買掛金や未払金などのすべての負債が対象です。
移動総資産レーマン方式の報酬基準額 = 株式譲渡額 + すべての負債の総額(親族などの借入金や銀行の借入金にくわえて買掛金や未払金など) |
すべての負債が対象になるため、成功報酬は最も高額になります。
レーマン方式のメリット
レーマン方式は利用者の負担がわかりやすいなどのメリットがあることから、多くの仲介会社で採用されています。
ここでは、レーマン方式の主なメリットを3つ詳しく解説します。
- 大まかなM&Aの費用を把握しやすい
- M&Aが成立するまで費用が発生しない
- 取引金額が大きいほど手数料が軽減される
大まかなM&Aの費用を把握しやすい
レーマン方式の大きなメリットとして、M&Aの取引にかかる費用を事前に把握しやすい点が挙げられます。
取引額に応じて報酬率が段階的に定められているため、想定される取引の規模から必要な費用をある程度予測できます。
M&A仲介会社によっては、レーマン方式の報酬料率が異なる場合があるものの、ホームページなどで報酬料率を公開しているところもあるため、費用の比較も可能です。
M&Aが成立するまで費用が発生しない
レーマン方式の最大の魅力は、取引が成立するまで報酬が発生しないという点です。
つまり、M&A取引に着手してから最終的な成立まで時間がかかっても、取引が不成立で終わった場合には報酬が一切発生しません。
このリスクの少ない報酬体系は、M&Aを検討している経営者にとって、大きな安心材料といえるでしょう。ただし、ここで注意が必要なのは、M&A仲介会社によっては以下のような別途費用が設定されている場合があることです。
- 初回相談料
- 着手金
- 中間金
- 月間報酬
これらの費用は成功報酬とは異なり、M&Aの成立に関わらず発生する可能性があるため、M&A仲介会社と契約を結ぶ前に、成功報酬以外の費用の有無も確認しておきましょう。
見落としがちな諸費用について、事前に詳細を把握しておくことで予期せぬ出費を防げます。
取引金額が大きいほど手数料が軽減される
レーマン方式のメリットとして、取引規模が拡大するにつれて手数料率が段階的に軽減される点が挙げられます。特に大規模なM&A案件に取り組む経営者にとっては、大きな魅力です。
一般的には取引規模が大きくなれば、それに比例して手数料も増加するのが通常です。
しかしレーマン方式なら、取引の規模が大きくなっていくごとに手数料が低減されるので、利用者の負担が抑えられます。
レーマン方式のデメリット
レーマン方式は多くのM&A取引で採用されている標準的な報酬体系ですが、いくつかデメリットも存在します。
ここでは、主なデメリットを2つ解説します。
利益優先の仲介を行われる可能性がある
レーマン方式は、M&Aが成立するまで仲介会社に報酬が入らない仕組みです。
このため、一部の仲介会社では自社の利益を優先し、以下のような状況が発生する可能性があります。
- 報酬額の大きな取引を優先的に扱い、小規模な案件は後回しにする
- 売り手の要望に合った買い手が見つかっても、より高額な買い手が現れるのを待つ
- 双方の条件が十分に整っていない段階でも、強引に成約につなげようとする
M&Aの仲介は本来、最適な売り手と買い手をつなげる架け橋とならなければなりません。
しかし成功報酬型の場合、仲介会社も収益を確保する必要があるため、時として適切とはいえないマッチングが行われることがあります。
このような事態にならないためにも、M&Aの仲介会社を選ぶ際にはホームページでM&Aの実績を確認したり、その業界に精通している専門家の有無を確認したりすることも重要です。
特に医療機関においては、一般的なM&Aとは異なる手続きが数多くあることから、医療業界に精通した専門家が担当しないとトラブルが発生することも多くあります。
クリニックのM&Aを検討している場合には、医療業界に特化し、実績も豊富なM&A仲介会社を選びましょう。
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小規模な取引の場合は手数料の負担が大きい
レーマン方式は、大規模なM&A取引になるほど利用者のメリットが大きくなる報酬体系です。
これを逆の視点から見ると、取引額が少額の場合にはレーマン方式のメリットを十分に享受できず、手数料の負担が相対的に大きくなってしまいます。
一般的なレーマン方式では、報酬基準額が5億円を下回る場合、最大料率である5%が適用されます。
つまり取引規模が小さいほど、総額に対する手数料の割合が大きくなるわけです。
小規模な取引においては、このレーマン方式の段階的な低減のメリットを活かしきれない可能性があります。
とはいえ、M&Aが成立した場合にしか費用は発生しないため、リスクのない報酬体系といえます。
レーマン方式の仲介会社にクリニックのM&Aを依頼する際のチェックポイント
クリニックのM&Aで仲介会社を選ぶ際は、レーマン方式を採用しているかどうかだけでなく、具体的な手数料の条件を細かく確認する必要があります。
事前の確認を怠ると、想定以上の費用が発生する可能性があるためです。
M&A仲介会社に依頼する前に、これから紹介する5つのポイントをしっかりとチェックしておきましょう。
成功報酬以外の費用を確認する
仲介会社によっては、成功報酬とは別に様々な費用が発生することがあります。
レーマン方式を採用しているからといって、必ずしも費用がM&A成立時のみとは限りません。
初回相談料や着手金が必要なケースもあり、これらの費用は事前支払いが必要で、M&Aが不成立の場合でも返金されないことがほとんどです。
費用を抑えたい場合には、着手金などの追加費用が発生しない「完全成功報酬型」の仲介会社を選びましょう。
消費税も含めた費用を把握する
あらかじめM&Aの予算を把握する際には、消費税も含めた計算を行っておきましょう。
仲介会社に支払う報酬料にも当然、消費税が10%(※)発生します。(※2025年現在の消費税率)
たとえば、成功報酬が税抜き2,000万円だった場合の消費税は200万円です。
M&Aの報酬料は高額なため、消費税も考慮しておかないと想定よりも高額な費用になります。
また、買い手側は消費税以外にも所得税や住民税、医療法人であれば法人税などさまざまな税金が必要になることも把握しておきましょう。
報酬の対象となる基準額を確認する
報酬の対象となる基準額はM&A仲介会社によって異なるので、確認をしておきましょう。
たとえばクリニックの譲渡価格のみを基準とする場合もあれば、医療機器などの設備投資額や借入金なども含める場合もあります。
基準額に含まれる範囲が広がれば、それだけ支払う手数料も高額になっていきます。
特に診療科目によっては非常に高額な医療機器が設置されている場合もあるので、報酬の対象に含まれるかどうかが手数料の金額に大きく関わってくる要因です。
報酬料率を確認する
レーマン方式の報酬料率は、一般的に最も報酬基準額の小さな取引で5億円以下の5%という基準がありますが、M&A仲介会社によって異なる場合があるため確認しておきましょう。
たとえば、最も小さい報酬基準額として1億円以下から利率の設定があったり、段階ごとの利率が異なったりします。
特にクリニックにおけるM&Aの取引では、報酬基準額として該当するのは5億円以下のケースがほとんどです。
そのため費用に大きく影響してくるのは、最初に設定されている報酬料率ということも把握しておきましょう。
最低報酬額の確認をする
M&A仲介会社によっては、レーマン方式による報酬計算以外に「最低報酬額」が設定されている場合もあるので注意しましょう。
たとえば、譲渡価格が5,000万円のクリニックの場合、レーマン方式の5%で計算すると手数料は250万円となりますが、最低報酬額が500万円と設定されていれば、実際の手数料は500万円になります。
最低報酬額に設定された金額によっては、想定よりも費用の負担が大きくなるケースもあります。
特に、設備投資が少なく譲渡価格が低めとなりそうなクリニックの場合には、最低報酬額の有無を確認しておきましょう。
M&A取引の際に「想定よりも手数料の負担が大きかった」とならないためにも、これまで紹介した5つのチェックポイントをしっかりと考慮した上で、M&A仲介会社を選ぶことが大切です。
「エムステージマネジメントソリューションズ」では、経済産業省の「中小M&Aガイドライン」に準拠しており、M&A支援機関登録制度にも登録されています。
手数料は「完全成功報酬型」になっているので成功報酬以外の費用は発生しません。
クリニックのM&Aに関しても豊富な実績を持っておりますので、まずは気軽にご相談ください。
M&Aはあらかじめレーマン方式の種類や費用を確認しましょう
クリニックのM&Aにおいて、レーマン方式は最も一般的な手数料の計算方法です。
仲介会社によって報酬基準額の範囲や報酬料率、最低報酬額の設定が異なることもあるため、あらかじめ確認しておくことをおすすめします。
クリニックは医療機器や設備など高額な資産を含むことが多く、それに応じて手数料も高額になりやすいため、消費税なども含めた総額をあらかじめ把握しておくことが重要です。
クリニックのM&Aにおける仲介会社を選ぶ際は手数料の条件だけでなく、医療業界における専門知識や実績も重要な判断基準となります。
「エムステージマネジメントソリューションズ」は、医療業界を専門としたM&Aで豊富な実績があり、完全成功報酬型のため安心してご相談いただけます。
クリニックの譲渡や承継開業をお考えの方は、ぜひ無料相談でお気軽にお問い合わせください。
この記事の監修者
田中 宏典 <専門領域:医療経営>
株式会社エムステージマネジメントソリューションズ代表取締役。医療経営士1級。医業承継士。医療機器メーカー、楽天を経て株式会社エムステージ入社。医師紹介事業部の事業部長を経て現職。これまで、病院2件、診療所30件、介護施設2件の事業承継M&Aをサポートしてきた。エムステージグループ内のM&A戦略も推進している。