医療機器の適切な廃棄方法とは?種類別の廃棄方法と業者選びのポイントを解説
目次
医療機器の廃棄は、種類や感染性の有無によって厳格に分別され、法令に基づいた適切な処理が求められます。感染性医療機器と非感染性医療機器を正しく区分しなければ、法的責任を問われる可能性があるため注意が必要です。
本記事では、感染性医療機器と非感染性医療機器の違いや具体的な廃棄方法、手続きの流れ、廃棄費用の目安などを詳しく解説します。
適切な処理を行い、安全で環境に配慮した廃棄を実現するためのポイントを押さえましょう。
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医療機器の種類別廃棄方法
医療機器の廃棄方法は、感染性の有無により「感染性医療機器」と「非感染性医療機器」に分けられます。分別を間違えてしまうと罰せられる可能性もあるため、間違えないように判別するのが大切です。
感染性医療機器の廃棄方法
感染性医療機器は、病原体が含まれている、もしくは付着している可能性があるものを指し「感染性廃棄物」として特別管理産業廃棄物の扱いを受けます。「形状」「排出場所」「感染症の種類」の3つの要素から判断します。
判断基準 | |
形状 | 血液や血清、血漿及び体液(精液を含む)が付着したもの病理廃棄物(臓器、組織、皮膚等)病原微生物に関連した試験、検査に用いられたもの血液等が付着している鋭利なもの(破損したガラスくず等を含む) |
排出場所の観点 | 感染症病床、結核病床、手術室、緊急外来室、集中治療室及び検査室において治療、検査等に使用された後、排出されたもの |
感染症の種類の観点 | 感染症法の一類、二類、三類感染症、新型インフルエンザ等感染症、指定感染症及び新感染症の治療、検査等に使用された後、排出されたもの感染症法の四類及び五類感染症の治療、検査等に使用された後、排出された医療器材、ディスポーザブル製品、衛生材料等 |
(引用:環境省|廃棄物処理法に基づく感染性廃棄物処理マニュアル p3)
上記の基準に当てはまる医療機器を廃棄する場合、特別管理産業廃棄物許可取得業者への委託が必要です。
非感染性医療機器の廃棄方法
非感染性医療機器は感染性廃棄物に該当しないものであり、産業廃棄物として処理します。産業廃棄物は、産業廃棄物収集運搬許可取得業者に依頼し、法令や地方自治体のルールを遵守して廃棄します。
非感染性医療機器に該当する物は、血液が付着していないグローブや容器、レントゲンフィルムなどです。感染性廃棄物を誤って一般廃棄物として処理すると罰則の対象となるため、慎重に確認しましょう。
医療機器廃棄の流れ
医療機器を廃棄する際は、6つのステップで進めます。
- 廃棄方法の確認
- 業者に依頼
- 契約書やマニフェスト発行
- 収集日まで保管
- 処理施設にて廃棄
- マニフェスト管理と報告
各ステップを詳しく解説します。
1.廃棄方法の確認
医療機器を廃棄する際には、廃棄する医療機器の種類や特性を確認します。医療機器は、感染性廃棄物と非感染性廃棄物に分けられ、それぞれ処理方法が異なるため、一般の廃棄物として処分することはできません。
また、自治体ごとに廃棄方法の規制が異なる場合があるため、事前に確認が必要です。そのため、機器の種類や状態を確認し、廃棄に関する法律や自治体の指針に従いましょう。
もし廃棄方法が不明な場合は、メーカーや購入元に相談して適切な廃棄方法を教えてもらいましょう。適切な確認を怠ると、法令違反や環境汚染につながる可能性があるため注意です。
2.業者に依頼
医療機器は産業廃棄物として扱われるため、産業廃棄物処理業者の許可を持つ業者を選ぶ必要があります。特に感染性廃棄物を扱う場合は、特別管理産業廃棄物の許可も必要です。また、優良認定を受けている業者は信頼できるでしょう。
許可を取得している業者は以下のサイトから調べられます。
他には、業者の実績や口コミを調べるのも大切です。医療機器の廃棄には厳格な基準が設けられているため、実際に利用した人々の体験談や意見を参考にするのも良い方法です。
3.契約書やマニフェスト発行
廃棄業者と正式に契約を結ぶ際には、契約書を取り交わし、必要に応じてマニフェスト(産業廃棄物管理票)を発行してもらいます。契約書には以下の内容を記載するのが大切です。
- 事業者と廃棄物処理業者の基本情報
- 医療機器の種類や数量
- 廃棄物の処理方法
- 責任の所在
- 法令順守の条項
- 廃棄物処理にかかる費用の内訳や支払い期日
- 委託契約の有効期間
上記の内容を明確にして、適切に廃棄しましょう。
マニフェストは、廃棄物の収集運搬や処理の流れを記録・管理するための重要な書類です。医療機器廃棄では、感染性廃棄物や有害物質を含む機器の処理状況を把握するため、マニフェストの発行が義務付けられています。廃棄物が処理されると業者からマニフェストが返送されるため、内容を確認します。
マニフェストの保管期間は5年間と義務付けられているため、保管中に紛失や破損がないよう注意が必要です。マニフェストの不交付や報告義務違反、保存義務違反などは、刑事処分(1年以下の懲役または100万円以下の罰金)となるため注意しましょう。
4.収集日まで保管
医療機器の廃棄を依頼した後は、収集日まで機器を適切に保管する必要があります。保管場所は安全で、周囲に悪影響を及ぼさないよう配慮が必要です。
感染性廃棄物は、漏れやすい液体や鋭利な物を含む場合、専用の密閉容器や耐貫通性のある容器に保管します。保管容器には、感染性廃棄物を識別するバイオハザードマークを貼り、関係者が容易に識別できるようにします。
保管期間中はトラブルを防ぐために、保管状況を定期的に確認し、容器の破損や漏れがないかチェックが必要です。漏れや事故が発生した場合に備え、対応マニュアルや消毒剤も準備しておきます。
5.処理施設にて廃棄
収集後、廃棄業者は医療機器を専門の処理施設へ運搬し、適切な方法で廃棄を行います。施設では、分解、焼却、リサイクルなど、それぞれの機器に適した処理が実施されます。
処理施設では、廃棄物が環境に悪影響を与えないよう、厳格な管理体制が敷かれています。たとえば、有害物質を含む機器の場合、周囲に汚染が拡大しないよう密閉処理が行われます。
この過程は、すべて法律に基づいて厳格に管理されており、安心して廃棄を任せることができます。業者によっては、処理終了後に報告書を提供してくれることもあるため、適切に処分されたか確認できます。
6.マニフェスト管理と報告
廃棄物の処理が完了した後は、発行されたマニフェストの管理が必要です。廃棄物の最終処理が完了すると、処理業者からマニフェストが返送されます。この返送を受け取ったら、内容を確認して適切に処理されたことを確認します。
マニフェストは法令に基づき、5年間の保管が義務付けられています。紙マニフェストの場合は適切に整理し、紛失や破損がないよう注意します。電子マニフェストを利用する場合は、データの保存期間を確認しておきましょう。
医療機器廃棄において、マニフェストの内容を基に行政へ報告を行うケースもあります。例えば、感染性廃棄物や特別管理産業廃棄物に該当する医療機器を廃棄する場合、年次報告、廃棄証明書の亭主があります。
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医療機器の廃棄にかかる費用
医療機器廃棄費用は、廃棄物の種類や状態によって異なります。一般的に、医療廃棄物の処理費用は1kgあたり300〜350円程度ですが、機器のサイズや感染性の有無、特別な廃棄方法の必要性などにより変動します。
感染性廃棄物の場合、処理工程が複雑になるため費用が高額になる傾向があります。また、大型医療機器や特別な素材で構成された機器の場合、分解や特殊処理が必要となり、追加料金が発生する場合があります。
医療機器を廃棄する際の注意点
医療機器を廃棄する際の注意点は、以下の5つです。
- 許可を取得している業者に依頼
- 委託契約書の締結とマニフェストの発行
- 廃棄方法や手順を確認
- 感染性廃棄物の有無を確認
- 医療機器のメーカーや販売業者による廃棄は不可
それぞれ詳しく解説します。
許可を取得している業者に依頼
医療機器の廃棄は、法令に基づき許可を取得している業者への依頼が必須です。特別管理産業廃棄物収集運搬業者や産業廃棄物収集運搬業者など、必要な許可を得た専門業者にのみ廃棄を委託できます。
許可を持たない業者への依頼は違法行為とみなされ、委託者自身が罰則を受ける可能性があります。業者を選定する際は、許可証の確認と対象機器の種類や状態に適した処理能力があるかを事前に確認するのが大切です。
委託契約書の締結とマニフェストの発行
医療機器廃棄の際は、業者との委託契約書の締結が義務付けられています。委託契約書は、廃棄処理の責任範囲を明確にするもので、5年間の保管が必要です。
また、産業廃棄物の移動状況を正確に把握するため、産業廃棄物管理票(マニフェスト)の発行が義務付けられています。マニフェストは、廃棄物が適切に処理されるまでの追跡管理を可能にする重要な書類です。収集から処分までの全過程を記録し、適切な処理が確認された後に管理を終了します。
不備がある場合、法的責任を追及される可能性があるため、マニフェストの発行と保管を徹底しましょう。
廃棄方法や手順を確認
医療機器の廃棄には、取り扱い説明書やメーカーからの指示に従う必要があります。機器の構造や材質、使用履歴に応じて特別な処理が必要な場合があるため、廃棄方法を事前に確認するのが重要です。
特に、感染性廃棄物として分類される機器は、一般的な産業廃棄物として扱えません。また、廃棄物処理に関する法令や地方自治体のルールを守らない場合、罰金や懲役などの厳しい罰則を受けるリスクがあります。
業者任せにせず、医療施設側でも廃棄手順や規則を把握し、正しい手続きが行われるよう管理する必要があります。
感染性廃棄物の有無を確認
医療機器を廃棄する際には、感染性廃棄物に該当するかの確認が必要です。感染性廃棄物は「形状」「排出場所」「感染症の種類」の3項目から判断されます。判断を誤ると、感染拡大や法令違反の原因となるため注意しましょう。
感染性廃棄物として認定された場合、特別管理産業廃棄物に分類され、処理には適切な管理体制がある業者への委託が必要です。非感染性と判定された場合も、産業廃棄物として廃棄する必要があります。
医療機器のメーカーや販売業者による廃棄は不可
医療機器の廃棄をメーカーや販売業者に依頼するのは不可能です。各業者は、廃棄物の収集運搬や処分に必要な許可を有していないため、法的に廃棄処理が認められていません。そのため、医療機器の廃棄は施設側で責任を持って実施しなければなりません。
一方で、リース物件の場合は、リース会社への返却が基本です。リース契約書を確認し、機器の返却や使用終了後の処理についての規定を把握する必要があります。
無許可の業者に廃棄を依頼した場合、依頼者自身も法的責任を問われる可能性があるため、注意しましょう。
信頼できる医療機器廃棄業者の選び方
信頼できる医療機器廃棄業者を選ぶ際は、以下の3点を確認しておきましょう。
- 許可を取得している業者に依頼する
- マニフェストの取り扱いを確認する
- 優良認定の有無を確認する
それぞれ解説します。
許可を取得している業者に依頼する
医療廃棄物の処理を委託する際には、特別管理産業廃棄物収集運搬業者や産業廃棄物収集運搬業者など、必要な許可を得ている業者に依頼するのが重要です。各業者は、法律に基づいた厳格な基準を満たす必要があり、医療廃棄物の適正な処理を行う責任があります。
無許可の業者への依頼は、排出事業者の医療機関自身の法的責任にもつながります。廃棄物処理法に違反した場合、排出事業者にも連帯責任が生じ、懲役や罰金刑を科される恐れがあるでしょう。
そのため、依頼前には業者が適切な許可を有しているか、自治体を通じて確認が必須です。許可番号、優良認定の有無をチェックし、不安がある場合は自治体に相談しましょう。
マニフェストの取り扱いを確認する
医療廃棄物処理を委託する場合、必ず産業廃棄物管理票(マニフェスト)を利用する必要があります。マニフェストは、医療廃棄物が適切に処理されたのを確認するために重要な書類であり、排出事業者、運搬業者、処分業者の間で情報を共有する役割を果たします。
委託先の業者を選定する際には、マニフェストの作成や管理に対応しているかどうかの確認が不可欠です。特に電子マニフェストを導入している業者では、過去の記録も容易に検索・閲覧でき、情報伝達が迅速に行えます。
また、マニフェストの記載内容に不備がある場合、排出事業者にも法的責任が及ぶ可能性があるため、業者の運用実績や説明能力をチェックするのも大切です。事前に業者の対応力を十分に確認し、法令遵守を徹底しましょう。
優良認定の有無を確認する
優良認定制度とは、通常の許可基準よりも厳しい条件を満たした産業廃棄物処理業者を認定する仕組みです。認定は都道府県や政令指定都市によって審査されています。
認定を受けた業者は「遵法性」「事業の透明性」「環境配慮の取り組み」「財務体質の健全性」「電子マニフェストの活用」など、合計5つの基準をクリアしています。優良認定業者を選ぶと、医療廃棄物の処理をより安全に処理が可能です。
また、優良認定を受けた業者は、行政からの指導や監視が適切に行われているため、トラブル発生のリスクも低下します。業者選定の際は、優良認定の有無を確認すると安心して依頼できます。
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医療機器は廃棄方法に注意して処分しましょう
医療機器を廃棄する際は、感染性の有無に応じて感染性医療機器と非感染性医療機器に分類し、法令に基づいて適切に処理する必要があります。処理方法を誤ると罰則を受ける可能性があるため注意が必要です。
業者を選ぶ際には、特別管理産業廃棄物や産業廃棄物の資格を取得しているか、優良認定を受けているか確認しましょう。また、委託契約書の内容やマニフェストの管理、違反時の罰則を理解しておくのも大切です。
廃院時には、大量の医療機器の処理が必要であるため、処理方法やマニフェストを理解して、法令を遵守した廃棄をしましょう。
この記事の監修者
田中 宏典 <専門領域:医療経営>
株式会社エムステージマネジメントソリューションズ代表取締役。医療経営士1級。医業承継士。医療機器メーカー、楽天を経て株式会社エムステージ入社。医師紹介事業部の事業部長を経て現職。これまで、病院2件、診療所30件、介護施設2件の事業承継M&Aをサポートしてきた。エムステージグループ内のM&A戦略も推進している。