売却

透析クリニックの承継方法と注意点!事業承継に必要な手続きや流れを解説

公開日
更新日
透析クリニックの承継方法と注意点!事業承継に必要な手続きや流れを解説
透析クリニックの承継方法と注意点!事業承継に必要な手続きや流れを解説

透析クリニックは人工透析療法に特化した医療機関であり、事業承継の際には注意すべき点がいくつも存在します。

スムーズな事業承継を実現するためには、具体的な流れを事前に把握し、適切なタイミングで専門家のアドバイスを受けることが重要です。

本記事では、透析クリニックの事業承継にあたり検討すべきポイント、承継の具体的な流れ、必要な費用、そして注意すべき点について解説します。

病院・クリニックの承継をご検討中の方はプロに無料相談してみませんか?
エムステージグループの医業承継支援サービスについての詳細はこちら▼

透析クリニックの事業承継とは?

透析クリニックの事業承継は、患者様の生活を支える重要な医療機関を引き継ぐプロセスであり、慎重に進める必要があります。そのため、透析クリニックの特徴や役割を理解した上で、承継に向けた具体的なアプローチを考えることが求められます。

まずは、透析クリニックがどのような施設であるのか、そして現在の事業承継の状況について確認していきましょう。

透析クリニックとは?

透析クリニックとは、腎臓の機能を機械で代行する人工透析療法を行うクリニックのことです。

一般的な診療科を取り扱うクリニックよりも、設備費が多くかかる点が特徴ですが、透析が必要な患者は2022年末時点で34万7,474人に達しており、全国的に需要のあるクリニックと言えるでしょう。

透析が必要となる病気には、糖尿病性腎症や高血圧性腎障害があり、慢性的な透析患者数は増加傾向にあります。

高齢者や生活習慣病の罹患者の増加が背景にあり、超高齢社会の日本において、透析を必要とする患者は今後も一定数を維持する見込みです。国内での透析クリニックの需要は、引き続き高いと予測されています。

ただし、透析クリニックは一般的なクリニックと比べて、人工透析機器や透析ベッドなど専門機材が必要となるため、開業や運営コストが高くなる特徴があります。また、ベッドを設置するためには一定以上のスペースが必要な点も、透析クリニックの特徴の一つです。

参考:全国腎臓病協議会出典

透析クリニックの事業承継の現状

透析クリニックの事業承継は、一般的なクリニックの事業承継と比較すると、考慮すべき点が多いと言えるでしょう。

透析クリニックは、透析ベッドなどの専門機材が不可欠であり、さらにベッドを設置するための床面積も必要なため、開業コストが高くなる傾向があります。そのため、透析クリニックを開業したいが資金面に不安があるドクターにとって、事業承継は設備面でもメリットがあると言えます。

しかし、医療業界全体に共通する課題として、クリニックの事業承継は依然として大きな問題です。

全国各地のクリニックで院長の高齢化や後継者不足などが原因で廃業が相次いでおり、2023年度には709件の医療機関が休廃業または解散となり、過去最多を記録しました。事業承継がうまくいかずに事業を断念したクリニックも多く、今後も廃業するクリニックの数が増加する可能性があります。

また、地域に特化したクリニックは、周辺の地域医療に与える影響が大きいため、事業承継がうまくいかず廃業した場合、かかりつけ医の喪失など地域医療への悪影響が予測されます。したがって、事業承継はクリニックだけでなく、地域住民にとっても重要な課題と言えるでしょう。

参考:帝国データバンク「医療機関の「休廃業・解散」 動向調査(2023年度)」

透析クリニックの承継での課題

透析クリニックの事業承継を考える際には、クリニック自体を複数の視点から客観的に検討する必要があります。具体的には、以下の項目について事前に考慮しておくことが重要です。

  • 立地の問題
  • 周辺クリニックとの連携
  • 地域との連携
  • 設備の問題
  • 技術の問題

一般的なクリニックの事業承継でも検討すべき項目に加え、透析クリニック特有のポイントもチェックすべきです。これらの項目を確認することで、第三者への事業承継がしやすいクリニックかどうかを判断する材料にもなります。

それぞれの項目について、具体的に解説していきます。

立地の問題

人工透析を必要とする患者は、週に3回程度の通院を行うため、患者が通いやすい立地かどうかはクリニックの集客に大きく影響します。

透析クリニックには一定の需要がありますが、日本透析医学会では、2021年をピークに透析が必要な患者数が減少すると予測しており、実際に2022年には前年比2,226人の減少が報告されています。

そのため、集客を考慮する上で、駅から近い立地や住宅街の中に位置することなど、通いやすさが重要です。また、診療圏内にどれほどの患者がいるかを事前に検討することも大切だと言えるでしょう。

参考:2022 年日本透析医学会統計調査報告書「調査結果と考察」

周辺クリニックとの連携

透析クリニックにおいて、周辺のクリニックとの連携があるかどうかは、クリニックの価値を評価する上で重要な要素です。

周辺クリニックとの連携があれば、患者が紹介で来院する可能性が高まり、結果としてクリニックの収益にも大きな影響を与えるでしょう。特に透析クリニックでは、継続的に通院する患者が多いため、患者数が重要な要素となります。

また、自身のクリニックで対応しきれない病状を、設備の整った大きな病院で診てもらえることは、クリニックのみならず、患者にとっても大きなメリットとなるでしょう。

地域との連携

透析クリニックでは、地域との連携があるかどうかも重要なチェック項目です。診療圏内の介護施設や介護サービスを提供している施設、ケアマネージャーとの連携があれば、患者を紹介してもらうことが可能です。

慢性透析患者は、2021年の日本透析医学会の調査によると、全体の平均年齢は69.67歳であり、ボリュームゾーンは男女ともに70〜74歳の高齢者が中心です。さらに、平均年齢は年々高齢化しています。

クリニックの利用者を増加させるだけでなく、高齢患者が適切な医療サービスに繋がりやすくするためにも、地域との連携は非常に重要です。

参考:日本透析医学会「わが国の慢性透析療法の現況(2021 年 12 月 31 日現在)」

設備の問題

透析に必要な装置は定期的なメンテナンスが必要です。また、老朽化した設備の場合、故障のリスクが高いだけでなく、近い将来に多額の設備更新費用がかかる可能性もあります。

透析クリニックの事業承継においては、新たな設備を揃える必要がないため、初期コストを抑えられる点が大きなメリットの一つです。しかし、設備の早急な入れ替えが必要な場合、コスト節約のメリットは大きく減少します。

設備更新は事業承継時の大きな負担となる可能性が高いため、設備の残りの耐用年数や入れ替え時の費用、具体的なメリットなどを事前に検討しておくことが重要です。

技術の問題

透析クリニックの場合、引き継ぐ側のドクターの技術にも課題があると言えます。

透析クリニックは透析装置を使用するため、患者への負担を減らすために最新技術へのアクセスが欠かせません。承継する側が最新の医療知識や技術を理解し、適切にクリニック内で診療や治療に活かせるかどうかは、非常に重要なチェックポイントです。

また、ドクターの個人の能力だけでなく、技術面について継続的にアップデートできる学習環境が確保されているかも大切です。経営に時間を割きすぎると、環境面が整っていないこともありますので、学びの場が整備されていることも確認しておくべきでしょう。

■■■関連記事■■■

透析クリニックを承継する具体的な流れ

透析クリニックを承継する場合の具体的な流れについて解説します。承継する側とされる側が流れを把握しておくことで、スムーズな承継が実現できます。

事前に流れを理解しておくことで、効率的な透析クリニック承継の準備が整います。

また、すでに存在するクリニックを承継する場合、設備や立地、スタッフなども引き継ぐことが多いため、承継開業ならではの注意すべきポイントもあります。流れを丁寧に追い、必要な準備をしっかり整えておくことが重要です。

承継計画の策定

承継するクリニックや診療所の現状を把握することが重要です。現在の経営状況や患者数、診療内容などを詳しく確認し、これをもとに将来的な経営計画を策定します。

現在、経営がうまくいっているからといって、今後も順調に運営できるとは限りません。周辺環境や診療内容、設備の更新の有無など、さまざまな要因によって集客数や収益額は変動する可能性があります。

承継するクリニックの診療実績や透析患者数、現在のベッド数や透析設備、院長以外の非常勤医師やナース、その他スタッフの状況を詳細に把握することが重要です。

データが揃った後に、承継後の体制や設備導入など、長期的な視野で経営計画を立てていきましょう。

売り手側と買い手側のマッチング

クリニックの承継においては、売り手と買い手双方が条件をすり合わせ、相互に納得のいく形で進めるマッチングが重要です。

マッチングの際には、売り手側が提示する条件(買収価格、スタッフの処遇、経営方針の引き継ぎ方法など)と、買い手側の希望(事業規模、投資額、運営方針など)を調整していきます。

専門機関を利用する場合、初めは「ノンネーム」(匿名)の状態でクリニック情報が共有されます。その後、買い手が詳細情報を知りたい場合には「ネームクリア」という手続きが行われ、双方の具体的な条件をすり合わせる段階に移ります。

マッチングが進む中で、内見や面談を通じて直接の話し合いを重ねることが一般的です。このプロセスにより、売り手と買い手の双方が合意に達し、承継に向けた準備が進められます。

法務・財務のデューデリジェンス

マッチングが進み、承継の段階に入ると、法務・財務のデューデリジェンスが必要となります。

デューデリジェンスとは、承継する透析クリニックが法務や財務の面で問題を抱えていないかを慎重に調査することで、買収監査とも呼ばれます。これはクリニックの承継において非常に重要なプロセスであり、承継時の買収額の妥当性を検討するためにも欠かせません。

デューデリジェンスでは、具体的にクリニックの財務状況や金融機関への借入金、リース契約やスタッフとの契約関係、法的リスク、患者数の推移などをチェックします。

また、簿外債務やキャッシュフローなどの確認も行います。デューデリジェンスは、公認会計士、税理士、弁護士、社会保険労務士といった専門家に依頼して実施することが一般的です。

承継契約の締結

デューデリジェンスの結果に双方が納得したら、最終的な承継契約を締結します。

調査結果をもとに、透析クリニックの承継に関する条件や買収価格、支払い方法、スタッフの処遇などについて詳細に合意を得ましょう。その後、契約書を作成し、法的な専門家である弁護士によるチェックを経て、契約を締結します。

承継契約では、リスクを多く負う承継側が契約書を作成するのが一般的です。契約締結後は、資金を決済してクロージングを行います。

透析クリニックを承継する際の注意点

透析クリニックを承継する際に注意したい点が大きく分けて3つあります。

注意すべき点を疎かにしてしまうと、後々法的トラブルや診療をする上での障害となる可能性があります。

特に、透析クリニックでは透析のための専用設備が必要であり、リース契約の設備が含まれる場合が多いです。リース契約は再度の契約が必要になるパターンが多いため、先にチェックしておくと効率的です。

承継の手続きを進めていく中で、以下の注意点に注意を払うことでスムーズに承継後の業務が開始できるでしょう。

資産や設備の引き継ぎに関する法務的な事項

透析クリニックで使用する機材は専門的であり、高額な設備が多いため、リース契約の設備が含まれることが一般的です。

リース契約では、契約者が変更される場合、貸与側であるリース会社の承諾が必要となることが多いため、クリニック内でリース契約をしている場合は、契約内容の確認が必要です。

また、自社株式や事業用資産を承継する場合、弁護士や司法書士に相談し、手続き面や法務面でトラブルが起こらないように進めることが大切です。

従業員や患者さんの信頼維持

透析クリニックでは、長期間勤務し、患者に寄り添い続けることで、患者からの信頼を得ていることが多いです。

従業員の信頼を得ることは、患者からの信頼を維持するためにも重要です。そのため、従業員への説明やケアは十分に丁寧に行うようにしましょう。

具体的には、承継が成立し、実際に承継後の業務が開始する前後に、患者や患者の家族への説明会を実施することが対策として挙げられます。

新しい経営者だけでなく、経営に関わる者も紹介し、これまでの治療方針に変更がないことを説明することが大切です。

■■■関連記事■■■

税務・会計面での考慮事項

透析クリニックを承継する際には、相続税や贈与税が課税される場合があるため、税務面の確認が重要です。

クリニックの譲渡価格は、設備や土地、建物のほか、実際に通院している透析患者数や診療報酬による収益力も評価対象となります。そのため、整合性の取れた適正な価格を算出する必要があります。

また、医療法人の株式や資産を承継する場合、税負担を軽減するための対策が欠かせません。

税務面での対策は長期的な視点で計画を立てる必要があるため、専門知識を持つ税理士や公認会計士に相談することをおすすめします。

透析クリニックの事業承継の相談先

透析クリニックの事業を承継する場合、承継の流れに合わせて最適な相談先にアドバイスを求めることで、効率よく、安心して手続きを進めることができます。

また、相談しなければ自分自身で進めるのが難しい手続きもあるため、タイミングを見て専門家の力を借りるようにしましょう。クリニックの承継に特化したサービスを利用すれば、透析クリニックの承継についてほとんどワンストップでサポートを受けられる場合もあります。

情報収集の段階であっても相談できることがあるため、まずは専門家の意見を聞いてみることをおすすめします。

税理士や弁護士、公認会計士

透析クリニックの事業承継のとき、株式や不動産を含めた資産なども承継する可能性があり、その場合税務に詳しい税理士や公認会計士といった専門家へ相談するとよいでしょう。

今後の経営計画を考える上でも、税務や財務について初期の段階から見立てを立てておくことは大切です。

税理士であれば、承継するクリニックの財務状況の調査の依頼もでき、効果的なデューデリジェンスが可能です。専門家の視点から検討してもらえる点は、相談する大きなメリットといえるでしょう。

また、契約を結び直す、法的な取り決めをする場合、弁護士といった法的専門家にアドバイスをもらって作成すると安心です。

代理して書面作成や手続きを進行してもらえるよう依頼すれば、自身で準備するよりも効率的かつスムーズに行えます。

ただし、専門分野の知識となるため、医療法人の事業承継に詳しい専門家を選ぶようにしましょう。

金融機関

透析クリニックの事業承継において、金融機関は適切な相談先の一つです。特に融資を考えている場合は、早めに相談することをおすすめします。

金融機関は財務の専門家であり、欠かせない財務面での手続きについて最適なアドバイスを提供してくれます。財務面の事務処理では、多くの書類を準備する必要があり、手続きが煩雑になりがちです。そのため、滞りなく手続きを完了させるために、専門家の力を借りることが推奨されます。

融資を受ける際は、リスクに対する対策を講じ、今後の経営で得られる収益について説得力を持たせられるよう、事業計画書を作成することが重要です。

事業承継・引継ぎ支援センター

事業承継・引継ぎ支援センターは、日本全国の各都道府県に設置されている、事業承継のための国が運営する公的機関です。産業競争力強化法に基づき、開設されています。

事業承継・引継ぎ支援センターの相談相手となるスタッフは、事業承継やM&A案件の経験がある民間出向者などが配置されており、専門的なアドバイスを受けることができます。

また、事業承継に関する国の施策として、事業承継補助金などの補助金給付制度がありますが、医療法人は対象外となり、利用することはできません。ただし、個人開業医の場合は利用可能です。

M&A仲介会社

M&A仲介会社は、承継を希望する透析クリニックと、承継開業を目指す経営者を繋げてくれる専門会社であり、事業承継に必要なプロセスや交渉のノウハウを持っているだけでなく、条件に合った最適なマッチング先を紹介してくれます。

特に、医療分野に特化したM&A仲介会社では、医療法人やクリニックの事業承継に特有の課題やチェックポイントに精通しているため、安心して相談できます。

なお、M&A仲介会社は、費用形態や相談方法が会社ごとに異なるため、自分に合った会社を見つけて相談することが大切です。

透析クリニックの事業承継対策は早めが良い

M&A仲介会社は、承継を希望する透析クリニックと、承継開業を目指す経営者を繋げてくれる専門会社であり、事業承継に必要なプロセスや交渉のノウハウを持っているだけでなく、条件に合った最適なマッチング先を紹介してくれます。

特に、医療分野に特化したM&A仲介会社では、医療法人やクリニックの事業承継に特有の課題やチェックポイントに精通しているため、安心して相談できます。
なお、M&A仲介会社は、費用形態や相談方法が会社ごとに異なるため、自分に合った会社を見つけて相談することが大切です。透析クリニックの事業承継対策に興味をお持ちの方は、ぜひ一度私たちに無料でご相談ください。

この記事の監修者

田中 宏典 <専門領域:医療経営>

株式会社エムステージマネジメントソリューションズ代表取締役。医療経営士1級。医業承継士。医療機器メーカー、楽天を経て株式会社エムステージ入社。医師紹介事業部の事業部長を経て現職。これまで、病院2件、診療所30件、介護施設2件の事業承継M&Aをサポートしてきた。エムステージグループ内のM&A戦略も推進している。

医業承継バナー_売却_1 医業承継バナー_買収_1
▼おすすめの買収・売却案件はコチラ!▼

最新のニュース&コラム

ニュース&コラム一覧に戻る