M&Aで引き継ぐクリニックの口コミ評価が悪いときの対処法
目次
GoogleやSNSの口コミは運営ポリシーに違反しなければ削除できないため、悪い口コミに対しては削除依頼や返信、ホームページの充実、真摯な診療など適切に対処することが求められます。口コミへの返信では事態の鎮静化を図り、建設的な意見として受け止める姿勢が大切です。委員名の変更やビジネスプロフィールの再登録も対策の一環ですが、悪い口コミを過度に恐れる必要はありません。
本記事では、医業承継で引き継ぐクリニックの悪い口コミが気になるときの対処法について解説します。
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GoogleやSNSの口コミは、運営ポリシーに違反していなければ削除してもらえない
GoogleマップやX(旧Twitter)で、承継元のクリニックに悪い口コミがついていた場合、真っ先に思い浮かぶのは「運営元に削除してもらえないだろうか」ということでしょう。
クリニックに対する口コミが書き込まれるのは、Googleビジネスプロフィールが代表的です。それぞれの運営元に対して特定の口コミの削除を依頼することは可能で、そのための手続きも公表されています。
削除依頼の手続き自体は、簡単なものです。しかし、実際に削除がおこなわれるのは、運営元が定めた投稿ガイドラインに違反する書き込みだけです。明確な違反行為が確認されないかぎり削除の措置はとられません。
では、どんな口コミが違反行為になるかといえば、Googleマップの場合、「禁止および制限されているコンテンツ」として、以下があげられています。なお「コンテンツ」とは、口コミも含めたすべての投稿内容を指しています。
- 虚偽のコンテンツ、偽装行為虚偽のエンゲージメント、なりすまし、誤った情報、不実表示
- 不適切なコンテンツまたは行為ハラスメント、ヘイトスピーチ、不適切なコンテンツ、個人情報、わいせつ、冒とく的な表現、性的描写が露骨なコンテンツ、アダルト向けコンテンツ、暴力的または残虐なコンテンツ、制限されているコンテンツ、危険なコンテンツ、違法なコンテンツ、子供の安全、テロに関するコンテンツ、関連性のないコンテンツ、宣伝と勧誘、意味不明なコンテンツ、コンテンツの繰り返し、改変、悪ふざけ
それぞれの詳細は、Googleのヘルプページに記載されています。
上記に明確に該当する口コミでなければ、削除はできないと考えましょう。
例えば、Googleマップであれば、「内容に不満がある、気に入らないという理由でクチコミを報告することはできません」と明言されています。
悪い口コミであっても、「あの院長は冷たい態度でした」「もう2度といきません」といった、単なる利用者の感想を書いた書き込みは、ガイドラインに示されている不適切なコンテンツに該当しないので、削除することはできません。
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悪い口コミに対してできること
悪い口コミに対して、クリニックが直接対応できることは、以下の3点です。
ガイドラインに基づく口コミの削除依頼をする
明らかにウソが書かれている口コミなど、運営元のガイドラインに明確に違反していると考えられるなら、まずは運営元に削除依頼をしましょう。
ただし、削除をしてもらえる場合でも、早くても数日程度の時間はかかります。また、ガイドラインに合致するかどうかは、主観的な要素もあるため、運営者との見解の相違により、削除してもらえないケースもあります。
口コミへの返信書き込みをする
Googleマップの口コミ欄などは、施設側から返信書き込みをおこなうことが可能です。クリニックを代表して院長が返信すれば効果的です。ただし、返信はすべての利用者が読むものなので、内容には十分注意する必要があります。
悪い口コミに対して非難、反論ととられる返信をすると、相手をさらに刺激してしまうだけでなく、他のユーザーにまで悪い印象を与える結果になりかねません。他のユーザーの目も気にかけつつ、事態の沈静化を目的として返信をおこなうようにしましょう。
悪い口コミが何らかの「事実」(医師・スタッフの態度、衛生対策の不備など)を挙げて非難しているケースでは、まずは事実関係の確認をおこないます。事実が確認できた場合、クリニック側に非があった点を具体的に挙げ、その点について謝罪し、改善に向けた意思や方針を提示します。
事実が確認できなかった場合、「一応謝罪して、改善に努める意思を示す」ことで事態がうまく収まるケースもありますが、このやり方には以下のような問題点があります。
- 口コミをした人が、いわゆる「モンスターペイシェント」と呼ばれるようなクレーマー気質の人の場合、言い分を認められたと思い、態度を強め、要求をエスカレートさせてくることがある
- クレームがすぐ受けいれるクリニックだと思われて、クレームが増える恐れがある
- 他のユーザーに「口コミの内容は事実」だと思われてしまい、評判低下につながる恐れがある
この場合、悪い口コミを「建設的な意見」として読み替えた上で、「ご意見ありがとうございます。医師、スタッフともども、至らない点を再確認して、よりよい診療に努めて参ります」といった一般的な文言での返信にとどめておくのが無難といえます。
一切の返信をしないという手も
悪い口コミへの対処は非常に気を使うものであり、また、対応を間違うといわゆる「炎上」状態にもなりかねません。また、返信には時間も取られます。
それなら、最初から「すべての口コミに返信をしない」という方針を貫くのも、1つの手です。
大切なのは、返信をするなら、基本的にすべての口コミに、平等な態度で返信をするということです。恣意的にコメントを選んで返信するのでは、利用者の印象が悪くなります。
口コミ対策のNG行為
良かれと思った口コミ対策がかえって、悪影響を与えることもあります。
不適切な返信
上の項目でも触れましたが、「口コミを書いた人に反論や非難をする」「恣意的な選別で返信をする」といったことはNGです。
また、それ以外に、すべての口コミに同じ文言、いわゆる「テンプレート」のような返信をするというのも、決してよい印象は与えません。基本的な返信の「型」は作っておくにしても、多少は個別にカスタイズした文章で返信するのがよいでしょう。
サクラ・やらせ行為
病院関係者、あるいは、知り合いなどに頼んで、良い口コミを書いてもらう「サクラ」や「やらせ」は、NGです。こういった行為は、Googleマップなどのガイドライン違反です。また、どこか不自然さが表れるので、慣れた人が見ればすぐにわかります。
「違反行為を平気でするようなクリニックなのか」と思われては、信用を失います。
なお、厳密に言えば、実際に自院を受診した患者に、肯定的な口コミの投稿を促すこともガイドライン違反となります
悪質な「口コミ対策業者」の利用
以下のような方法で口コミ対策を代行するとうたっている「口コミ対策業者」からの営業を受けることもあるでしょう。これらはガイドライン違反・不法行為に当たるか、無意味な内容です。
①よい口コミの代行(業者が患者を装って肯定的な口コミを投稿)
②悪い口コミの削除
③現在のGoogleビジネスプロフィールを閉鎖・削除し同一名で再作成
①は、すでに述べた「サクラ・やらせ行為」であり、ガイドラインに違反します。
②は詐欺行為が疑われます。自分で書いた口コミなら簡単に削除できるので、業者が、自分たちで悪いクリニックに口コミを書き込んでおいてから、そのクリニックに営業をかけて、「私たちは口コミを削除する特別なノウハウを持っています」などといい、それから、自分の書き込みを削除して、さもノウハウがあるように偽装して、院長を信じ込ませるという悪質な手口が用いられます。
また、「特別なノウハウ」といって、高額な手数料を取っておきながら、普通に運営元に削除依頼を出すだけだったり、弁護士に取り次ぐだけだったりするケースもあります。
③は、後で解説しますが、うまくいきません。一時的にはプロフィールの再作成が成功したように見えるかもしれませんが、やがてはGoogleによって同一ビジネスの重複として処理されます。口コミの消失やプロフィールの重複状態がユーザーに疑念を抱かせ、さらなる悪評を呼びこむ恐れもあります。
クリニックに対し、悪い口コミの影響を誇張して不安をあおり、即効性や確実性をうたってこういった悪質なサービスを売り込もうとする業者が少なからず存在します。そうした業者の営業は一切断りましょう。
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口コミが悪くても対処法はある
口コミが悪いクリニックの承継でも、対処法はあります。
よい口コミにつながるような真摯な診療を地道に続ける
いうまでもなく、医療機関の基本は良い診療です。以前のクリニックの評判が芳しくなかったとしても、地道に誠実な診療行為を続けていれば、やがてよい口コミが増えるでしょう。
よい口コミを多数獲得することで、多少の悪い口コミが書かれても動じない評判を築き上げることができます。
クリニック経営者としては悪い口コミが少しでもあると気になるかもしれませんが、医療機関は「クレーム産業」的な側面があり、悪い口コミは必ずどこにでも発生します。しかし、よい口コミの方が多ければ、ユーザーは案外気にしないものです。悪い口コミを書いた人の方を問題がある人=クレーマーと見なすこともよくあります。
また、客観的に見て悪い口コミに根拠があり、クリニック側に問題があったと認められる場合には、むしろ有り難く受け止めて、クリニック改善の糧にすればよいのです。
クリニックのホームページを充実させる
口コミは、クリニック選びで参考にされる情報源のひとつに過ぎません。他の情報を充実させることで、悪い口コミの影響力を低下させることができます。とくに重要なのが、クリニックのホームページです。
利用者としては、クリニックの「内側」が事前に見えていた方が、安心して受診できます。ホームページにおいて、新院長の人柄・考え方、新体制での診療の内容・方針、スタッフの雰囲気、受付・待合室・診療室・設備の様子など、クリニックの「内側」をユーザー目線で発信していくことが効果的です。
医院名の変更と新しいビジネスプロフィールの登録
M&Aによる事業承継後であれば、医院名を変更すれば、Googleを初めとするサービスに別の医院として登録し、利用者にも別の医院として認識してもらうことで、両医院の口コミを分断することができます。
この方法では悪い口コミとともによい口コミも切り捨てることになるため、よい口コミを引き継ぎたい場合には適しません。
Googleマップ・Google検索に表示されるビジネスプロフィールの場合、売り手医院のビジネスプロフィールを閉鎖・削除し、買い手側で新たにビジネスプロフィールを追加します。閉鎖・削除されたビジネスプロフィールは、「閉業」と記された状態で、当分の間ネット上に表示され続けます。
この手続き自体は医院名を変えなくてもおこなえますが、新・旧のクリニックが同じ名称だと、Googleに「同一ビジネスの重複」と判断され、新プロフィールと旧プロフィールが(口コミも含め)統合されてしまったり、旧プロフィールの方が優先されてしまったりしますので、避けたほうが無難でしょう。
口コミへの返信で、院長、運営体制が替わったことをアピールする
M&Aによりクリニックの承継後なら、新院長が、事業承継をしたことや今後の診療体制・方針に関する報告なども含めて、悪い口コミを含めたすべての口コミに返信をしていくという手があります。
悪い口コミへの対応と、新体制のアピールを両方おこなえる方法です。
まとめ
悪い口コミの存在はクリニック経営者にとって気になるところですが、どんな経営をしていても悪い口コミは発生するものであり、過度に恐れる必要はありません。
運営元への削除依頼や院長による返信、ホームページの充実、真摯な診療の継続など、適切な対処をとっていれば、悪い口コミの影響を十分に抑えることができます。
不安にかられて悪質業者のサービスに手を出したりしないよう気をつけてください。
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この記事の監修者
田中 宏典 <専門領域:医療経営>
株式会社エムステージマネジメントソリューションズ代表取締役。医療経営士1級。医業承継士。医療機器メーカー、楽天を経て株式会社エムステージ入社。医師紹介事業部の事業部長を経て現職。これまで、病院2件、診療所30件、介護施設2件の事業承継M&Aをサポートしてきた。エムステージグループ内のM&A戦略も推進している。