医院継承の相場はどれくらい?コンサルタントが開業費用や譲渡価格について解説!
目次
クリニックや医院の開業や譲渡をお考えの方にとって、開業費用や譲渡価格の相場は気になるところではないでしょうか。
本記事では、エムステージマネジメントソリューションズで医業承継のコンサルティングを行う代表取締役の田中宏典が、開業費用や譲渡価格の相場について詳しく説明します。
クリニックや医院の開業費用の考え方
クリニックや医院の開業費用は、どんな物件や医療機器を選んで開業するかによって、必要な開業資金は変わってきます。また、標榜する診療科目によっても、開業資金は異なります。
ここでは、おおよその開業にかかる費用の相場をご紹介するので、目安として参考にしてください。
▼開業にかかる費用の項目別相場
費用項目 | 費用の相場 | 費用の内容 |
土地・建物 | 2,500万円~ | |
内装・設備 | 2,000~3,000万円 | 天井や床、壁、装飾、照明、空調など |
医療機器 | 2,000~3,000万円 | 電子カルテ、一般撮影装置、超音波診断装置、内視鏡、心電計、CRなど |
什器・備品 | 約200万円 | 待合ソファ、診察机や椅子、休憩室用机や椅子、電話設備、レジスター、タイムカードなど |
医師会入会金 | 100~300万円 | 費用は各医師会によって異なる |
広告宣伝 | 200~300万円 | チラシやリーフレット、HP、看板など |
消耗品・予備 | 約200万円 | 診察券などの印刷物や筆記用具などの事務用品、医薬品など |
※こちらは、あくまで目安の費用です。ケースによって異なる場合もございます。
上の表は、戸建ての場合の、開業費用の相場です。テナント開業をする場合には、土地・建物の費用の代わりに、保証金(敷金)や礼金、仲介手数料、初月の賃料などが必要になります。保証金(敷金)は家賃の6~12ヵ月分がであることが多く200~600万円程度、仲介手数料と礼金は家賃の2ヵ月分が多く60~100万円程度が相場となります。
また、テナントでの開業の場合には内装工事期間中も賃料がかかるため、およそ2ヵ月分の60~100万円程度が必要となることも考慮しておきましょう。
診療科目によって、必要な広さや設備、医療機器が異なるため、開業費用にはかなり差があります。診療科目別の土地や建物、医療機器の購入費用にかかる相場は、以下になります。
▼診療科目別の内装費用や医療機器の購入費用の相場
診療科目 | 必要面積 | 内装費用 | 医療機器の購入費用 | 医療機器の内容 |
内科 | 35~50坪 | 約3,000万円 | 約2,000万円 | 一般撮影装置やCR/PACS装置、超音波画像診断装置、電子内視鏡システムなど |
小児科 | 30~40坪 | 約2,500万円 | 約1,100万円 | 一般撮影装置やCR/PACS装置、血球計数CRP測定装置、滅菌器など |
整形外科 | 60~70坪 | 約3,500万円 | 約3,000万円 | 一般撮影装置やCR/PACS装置、骨密度測定装置(DXA式)、リハビリ機器など |
耳鼻科 | 30~40坪 | 約2,500万円 | 約1,600万円 | 診療ユニットや電動椅子、ネブライザー、電子内視鏡システムなど |
皮膚科 | 25~35坪 | 約2,000万円 | 約1,400万円 | 顕微鏡やCO2レーザー装置、Qスイッチレーザー装置、滅菌器など |
眼科 | 30~40坪 | 約2,500万円 | 約1,800万円 | 眼底カメラや眼圧計、静的視野計、液晶視力表など |
脳外科 | 60~70坪 | 約6,000万円 | 約1億1,300万円 | 一般撮影装置やMRI装置、CT装置、CR/PACS装置など |
※こちらは、あくまで目安の費用です。ケースによって異なる場合もございます。
購入する医療機器の費用は、診療科目によって異なるだけではなく、どの程度の設備を整えるのかによっても変わってきます。
また、医療機器は購入ではなくリースという方法もあるので、開業コンセプトや予算に合わせて考えましょう。
開業資金が足りない場合
開業資金が足りない場合は、資金調達を行います。
一般的に、自己資金は開業資金の1~2割用意する必要があると言われています。金額にすると、1,000~2,000万円というところでしょうか。
自己資金が0でも開業できないわけではないですが、金融機関に融資してもらう場合には、審査が相当厳しくなってしまいます。
土地や建物などを持っていない限り、診療科目によっては初期費用が1億円を超えてしまう場合もあります。
よって、開業のためには融資を受けることを検討しなくてはならないことが多いでしょう。開業資金の融資を受けられる機関には、以下のようなものがあります。
クリニックや医院開業のための資金調達先①日本政策金融公庫
政府系金融機関であり、中小事業者向けに比較的低金利で、開業資金・運転資金の貸付を行っています。
不動産や有価証券などの物的担保がある場合は、最大7,200万円までの「創業融資制度」が利用可能です。
担保を必要としない融資も始まっていて、医療法人の場合は基本的に保証人が必要ですが、個人事業主の場合には無担保・無保証人でも、最大4,800万円まで低金利で融資をしてもらうことができます。
クリニックや医院開業のための資金調達先②独立行政法人福祉医療機構
厚生労働省所管の独立行政法人であり、社会福祉事業施設や医療機関の設置に対して、必要な資金の融資・助成を行っています。
病院やクリニックの建築資金として最大7億2,000万円、土地取得資金として最大3億円までの融資を受けることが可能です。
運転資金に関しても、最大1億円まで融資を受けることができます。クリニックが融資を受ける場合には、主にへき地での開業が条件となります。
クリニックや医院開業のための資金調達先③民間金融機関
メガバンクや地方銀行、信用組合などで、開業医ローンとして融資を受け付けています。
- メガバンク:(例)借入金額最大5,000万円、融資期間最長10年、担保・保証人は不要など
- 地方銀行 :(例)借入金額最大1億円、融資期間最長10年、個人の場合は担保・保証人は原則不要など
- 信用組合 :(例)借入金額最大2億円、融資期間最長35年、要保証人。地元の医師会に入会予定、または入会済であることが要件など
クリニックや医院開業のための資金調達先④リース会社
医療機器を購入し医療機関に貸し出しを行うリース会社で、開業資金の融資も行っているところがあります。
新規開業にあたって医療機器をリースしようと考えている方には、同じ会社を利用することで手間が省けることも。リースの発注と併せることによって、融資に対して融通が利くこともあります。
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医院継承と新規開業の相場の違い
クリニックや医院を開業する際に、新規開業と承継開業ではどのくらい費用に差が出るのでしょうか。
具体的な金額や差が出る項目なども、詳しく伺いました。
なるべく開業にかかる費用を節約したい場合は、承継(継承)開業であれば、新規開業より開業費用が4,000万円ほど抑えられます。
▼新規開業と承継開業での開業費用の差異
新規開業 | 承継開業 | |
開業費用の相場 | 7,000万円前後 | 3,000万円前後 |
費用の差異内訳 | ||
建物代 | 2,500~4,000万円 | |
内装費 | 2,000~5,000万円 | 0円(施設をそのまま使用) |
医療機器代 | 1,000~5,000万円(新品で購入) | 200~500万円(中古で購入) |
広告費 | 約300万円(HPの新設、看板、チラシ) | 約50万円(HPの改修) |
採用費 | 約100万円(紹介・採用サイト) | 0円(スタッフも引き継ぐ) |
のれん代 | 0円 | 1,000~3,000万円 |
※こちらは、あくまで目安の費用です。ケースによって異なる場合もございます。
承継開業しやすい診療科目としては、精神科以外はどの科目でも問題なくできるでしょう。
精神科は先生と患者との結びつきが強いことが多いので、いざ承継しても前の先生の移動先に患者が一緒に移ってしまい、うまく引き継げないことも多いです。
医院継承の譲渡価格の相場
最後に、第三者承継を行う際の譲渡価格の相場は、ケースによって異なりますが、「1年分の営業利益+承継できる建物や医療機器の簿価(時価)」なので、およそ1,000~4,000万円程度になることが多いです。
クリニックや医院の譲渡価格は、診療科目やエリアによってというよりも、どれだけ利益を出しているのかであったり、建物や医療機器がどれだけ高額であるかによって変わってきます。
また、その際に計算する建物や医療機器の値段は、その時の簿価(もしくは時価)で計算します。
利益が出ていないクリニックや医院でも売却は可能ですが、売りづらくなります。
実際の価格の事例
これまでに成立した実際の価格としては、以下のような案件がありました。
・クリニックの建物と医療機器の簿価=1,000万円
・クリニックの年間の営業利益=2,000万円
このクリニックにおける譲渡が成立した価格は、2,000万円でした。
先ほど、譲渡価格の相場は、1年分の営業利益+承継できる建物や医療機器の簿価(時価)というお話をしました。
それをもとに計算すると、譲渡価格の相場は営業利益1年分2,000万円+建物と医療機器の簿価(時価)1,000万円=3,000万円ということになるので、買い手からするとかなりお買い得な案件だったといえるでしょう。
利益も十分出ているのに、なぜそんな価格で譲渡したかというと、売り手側に理由があります。
売り手は元々弊社に相談に来る前に、別のM&A仲介会社で買い手を募集していたそうですが、1年ほど買い手が現れませんでした。
売却を急いでいた売り手は、契約し直し譲渡希望価格より値下げして再度買い手を探したところ、弊社が全国に豊富な医師ネットワークを持っていたこともあり、スムーズに買い手を見つけることができました。
このように、譲渡価格の相場というものはあるものの、売り手や買い手の状況にもよるので考慮が必要です。
ただ、おおよその相場を知っておくことは、譲渡価格の設定や承継の交渉の際に役立つでしょう。
医院継承の相場はケースによるので専門家への相談が必須
今回は、開業や譲渡を考えた際に気になる費用の相場について、医業承継のコンサルティングを行う田中宏典が解説しました。
状況やケースによって異なってはきますが、価格の考え方や費用のイメージはつかめたのではないでしょうか。
エムステージマネジメントソリューションズでは、承継開業したい方や、クリニックや医院を譲渡したい方のご相談を承っております。
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この記事の監修者
田中 宏典 <専門領域:医療経営>
株式会社エムステージマネジメントソリューションズ代表取締役。医療経営士1級。医業承継士。医療機器メーカー、楽天を経て株式会社エムステージ入社。医師紹介事業部の事業部長を経て現職。これまで、病院2件、診療所30件、介護施設2件の事業承継M&Aをサポートしてきた。エムステージグループ内のM&A戦略も推進している。