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医院・クリニックの売却相場|価格の考え方や計算方法を解説

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医院・クリニックの売却相場|価格の考え方や計算方法を解説
医院・クリニックの売却相場|価格の考え方や計算方法を解説

医院やクリニックの売却相場は、1,000万~4,000万円です。近年、コロナ禍や診療報酬の変動、高齢化と後継者不足によりクリニックの売却が増加しています。売却することにより利益の確保や後継者問題の解決、経営の安定化が期待できますが、売却価格を適切に設定するためには専門家のサポートを受けることが大切です。

本記事では、クリニックや医院の売却のメリットや、売却価格の考え方について詳しく説明していきます。

*出典:厚生労働省『医療施設動態調査(令和2年3月末概数)』2020年

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クリニック・医院にて、売買やM&Aが増加している背景

クリニックや医院の売却を考えた際に、まず知っておきたいのがM&Aの動向です。今、クリニックや医院のM&A件数は増えており、以下のようなことが理由として考えられます。

クリニックや医院のM&A増加理由①医療環境の変化(コロナ禍、診療報酬)による経営難

高齢化による社会保障費負担の増加や税収の減少により、国の財政状況は逼迫しています。そのため医療制度改革が行われ、度々診療報酬の切り下げが行われてきました。

また、新型コロナウイルス感染症流行の影響による、患者の受診控えや医療体制を変更も行われています。

そうした環境の変化に対応できずに、経営難に陥っているクリニックや医院も多いのです。

クリニックや医院のM&A増加理由②医療従事者による人材確保難

高齢化による診療機会の増加や都市に医師が集中する地域偏在・診療偏在などにより、多くのクリニックや医院では、医師や看護師など医療従事者の不足が深刻化しています。

特に、看護師は診療報酬の改定により、これまでのように患者に対して看護師の数が「10対1」や「13対1」だと低い診療報酬となり、「7対1」が最も高い診療報酬となった**ため、看護師の採用競争が激化しています。

また、医師も働き方改革により、2024(令和6)年から全ての勤務医に罰則付き時間外労働上限が適用される***ことになるため、勤務医の採用難となる可能性が高いです。

**出典:厚生労働省『平成30年度診療報酬改定の概要 医科Ⅰ』
***出典:厚生労働省『医師の働き方改革について』

クリニックや医院のM&A増加理由③施設の修繕や設備費用の負担が大きい

施設の老朽化や耐震対応などで、大規模な修繕が必要な個人診療所(クリニック・医院)が増加しています。

また、専門的な医療機器や設備の更新などにも多額の費用がかかり、経営の大きな負担となっています。

クリニックや医院のM&A増加理由④高齢化と後継者不足

他の業界と同じく、医療業界も経営者の高齢化により、後継者問題に悩まされています。

統計によると、医師の数は2016(平成28)年に比べ2018(平成30)年は、60代、70代以上、ともにおよそ4万人ほど増加****するなど、確実に高齢化は進んでいます。

クリニックや医院を親族に引き継ごうにも同じ医師の資格を持っている必要があり、少子化の今継ぎ手を見つけるのも難しくなっています。

****出典:厚生労働省『平成30年(2018年)医師・歯科医師・薬剤師統計の概況

クリニックや医院の売却における、開設形態の違い

医業承継‗クリニック画像

同じ個人経営のクリニックや医院でも、個人事業主として個人で経営されているか、それとも医療法人として法人化した個人が経営しているかで、売却する際に以下のような違いがあります。

個人事業主のクリニック・医院

法人化しておらず、個人で経営しているクリニックや医院のことを指します。契約や許認可などは経営者個人に紐づいており売却の際は自動的に引き継がれることがないため、買い手との契約書に譲渡の内容を細かく記載して取り決めをする必要があります。

また、病院に勤務しているスタッフもそのまま引き継がれないため、一度退職した後、引き継いだ新しい経営者と改めて雇用契約を結んでもらう必要があります。

医療法人のクリニックや医院

一方、医療法人として法人化されたクリニックや医院を売却する際には、買い手に資産や契約、許認可などをそのまま引き継がせることができます。

2007(平成19)年4月以前*****に設立された医療法人の場合には、出資持分の金銭譲渡とともに、その医療法人の社員総会と理事会のメンバーを入れ替えることによって行うことが多いです。

***** 2007(平成19)年4月以降は基金拠出型医療法人。

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クリニックや医院を売却するメリットとは

M&Aを活用してクリニックや医院を売却する、売り手側のメリットには以下の5つが挙げられます。

売却のメリット1.創業者利益の確保

売却により、クリニック・医院の創業者は利益を得ることができます。その売却益を、経営引退後の生活資金や新しい事業の資金に充てることができます。

売却のメリット2.後継者問題の解決

引き継ぐ後継者がいないなどの後継者問題を解決し、クリニック・医院を存続させることができます。通院患者など地域医療の観点からも、多くの人にメリットがあると言えるでしょう。

売却のメリット3.経営の安定

クリニックや医院が譲渡によって大企業や大手グループの傘下に入れば、大規模な資本の流入などを期待でき、経営の安定化を図れます。新しい設備や機器の導入、施設の大規模修繕なども行え、収益の向上も期待できるでしょう。

売却のメリット4.連帯保証の解消

経営者はクリニック・医院の連帯保証となる借入金も売却と同時に譲渡でき、今までの連帯保証も解消できます。

売却のメリット5.従業員の雇用確保

経営不振でクリニックや医院を廃業する場合、従業員は退職するしかありませんが、譲渡する場合には新たな経営者による雇用の継続も期待できます。

クリニックや医院の売却価格

いよいよクリニックや医院を売却したいと考えたとき、気になるのは価格です。どのように売却価格を考えればいいのでしょうか。

クリニックや医院の売却相場は?

規模や科目などによってリニックや医院の売却価格の算出方法はさまざまですが、相場は1,000~4,000万円程度になることが多いです。

クリニックや医院の売却価格に影響のあるポイント

売却する価格に影響のあるポイントとしては、以下のような点が挙げられます。

  • 不動産価値
  • 立地や評判(患者数)
  • 従業員の数や雇用を継続できるかどうか
  • 診療科目

それぞれ売却価格へどのように影響するのか詳しくみていきましょう。

不動産の有無

個人診療所(クリニック・医院)を売却する際に、土地や建物も含む場合には、病院の価値に不動産価値も加わってきます。築年数、内装や設備の状態なども取引価格に影響を与えます。

もし売り手が不動産を持っておらず、賃貸契約で経営している場合には、売却時にその賃貸契約も買い手側が引き継ぐことになります。売却後もこれまでと同じ賃料で良いかなど、買い手側とよく相談して賃貸契約を引き継ぐようにしましょう。

立地条件や評判(患者数)

不動産を保有していなくても、駅に近い、人通りが多いなどの立地条件は、売却価格に影響があります。

また、クリニックや医院を買収したいと思った買い手側が現地に見に行く前に、インターネット上でそこの口コミなどの評判を見てから行く人が増えています。もし悪い評判があれば、買い手もネガティブになってしまいます。

売却する前に、そのクリニックや医院の口コミなどの評判をチェックし、解消できるものは解消する努力をするようにしましょう。

従業員の数や引継ぎの有無

買い手側からすれば、クリニックや医院に勤務している医師や看護師などのスタッフをそのまま引き継げるかは、大きなポイント。

買い手が新たに医師や看護師を探すのは、採用の手間もかかる時間も大きなコストとなってしまいます。そのため、それまで勤務していた医師や看護師をそのまま引き継げるのであれば、売却価格のアップにつながるでしょう。

診療科目

診療科目も売却価格に影響します。

たとえば心療内科や精神科などは医師の能力に依存するため承継後の収益の算定が難しく、内科であれば比較的誰が引き継いでもある程度収益の安定が見込めます。

また、このコロナ禍で受診控えが起こり収益が大幅に減少した耳鼻科や小児科に比べ、内科は外部要因に影響されにくいと言えるでしょう。

買い手側の立場からすれば、そのような科目を持つクリニックや医院を引き継げれば、将来的にも安定した収益が得られると考えられ、売却価格にポジティブに働きます。

クリニックや医院における売却価格の計算方法

以下のM&Aでよく用いられている計算方法を応用して使うことができます。

①時価純資産価額法

M&Aで最も多くの場面で使われているのが、この計算方法になります。

売却価格=クリニック・医院の総資産(資産-負債)+営業権(見込利益)

営業権は、この先の実績の収益力と同じ収益が得られるとして、先取して買収対象とする考え方になります。

②DCF法(ディスカウント・キャッシュ・フロー法)

売却価格=クリニック・医院のキャッシュフロー期待値を加重平均資本コスト(WACC)で割り引いた現在価値

クリニック・医院の将来性を加味することに重心を置くので、事業計画がしっかりしていれば評価価格も高くなることも期待できます。

③取引事例法

売却予定のクリニック・医院で、過去にあった取引実績に基づき評価します。この方法で計算する場合には、過去の取引価格が妥当かどうか検討する必要もあります。

クリニックや医院の売却を成功させるコツ

クリニックや医院を売却するにあたり、以下のようなポイントに注意しましょう。

クリニックや医院売却のコツ①人材確保

クリニックや医院の評価は、良い医師や看護婦などの人材によっても左右されます。かかりつけの医師が病院を移ると、患者も一緒に病院を移ってしまうことも。

売却時に高い営業権の評価を得ていても、承継前に医師が別のクリニックや医院に移動してしまうと、営業権が下がってしまうリスクがあります。

承継決定後は医師や看護師にしっかりと説明し、人材が流出してしまわないように気を配るようにしましょう。

クリニックや医院売却のコツ②タイムスケジュールを組んでおく

一般的な企業のM&Aのスケジュールと比べ、クリニックや医院の場合には、地域地域医療構想に合わせた事業戦略策定が必要であったり、必要な手続きが多かったりと、長引いてしまう傾向があります。

そのため、あらかじめ売却したいスケジュールを立ててM&Aの仲介業者などにも共有し、多岐にわたる取引や手続きを無駄なく進めていくようにしましょう。

クリニック・医院のM&Aは一般企業と違い、医療機関特有の法律などがあるため、初めて売却を行う際には医療機関のM&Aに実績のある専門家や仲介業者に依頼した方が安心して進められます。

最近では、インターネット上でもクリニックや医院の売買情報が掲載されているのでチェックしておいて、自分の売却したいクリニックや医院の事例に合った専門家や仲介業者に相談してみましょう。

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この記事の監修者

田中 宏典 <専門領域:医療経営>

株式会社エムステージマネジメントソリューションズ代表取締役。医療経営士1級。医業承継士。医療機器メーカー、楽天を経て株式会社エムステージ入社。医師紹介事業部の事業部長を経て現職。これまで、病院2件、診療所30件、介護施設2件の事業承継M&Aをサポートしてきた。エムステージグループ内のM&A戦略も推進している。

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