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クリニック開業で防火管理者が不要なケースは?戸建てやテナントに分けて解説

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クリニック開業で防火管理者が不要なケースは?戸建てやテナントに分けて解説
クリニック開業で防火管理者が不要なケースは?戸建てやテナントに分けて解説

防火管理者は建物や施設の火災に関する被害を防止するために、選任が必要な責任者の1人です。

すべてのクリニックで選任が必要というわけではなく、クリニックの規模や建物の大きさに合わせて配置する必要があります。

本記事ではクリニック開業時の防火管理者の選任について、戸建てやビルのテナント別で解説しています。開業予定のクリニックで必要な防火管理者の選任や手続きに活用してください。

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戸建てのクリニックは収容人数が30人未満なら防火管理者が不要

戸建てのクリニックを開業する場合、収容人数が30人未満であれば防火管理者の選任が不要です。

収容人数の算定方法は、以下の1〜3までの合算です。

  1. 医師・歯科医師・助産師・薬剤師・看護師・その他の従業者の数
  2. 病室内にある病床の数
  3. 待合室の床面積の合計を3平方メートルで除して得た数

出典:東京消防庁|防火管理実践ガイド(収容人数の算定方法)

たとえば待合室が30㎡で医師や従業員が5人いるクリニックの場合、待合室の収容人数は「30㎡÷3㎡=10人」となり、合計の収容人数は15人となるため防火管理者の選任は必要ありません。

ただし、クリニックの中でも「社会福祉施設(避難困難施設)」の場合は、収容人数が10人以上で防火管理者の選任が必要です。

クリニックの種類社会福祉施設(避難困難施設)のクリニック※併設も含む入っていないクリニック
防火管理者が必要になる収容人数10人以上30人以上

ビル内のクリニックはテナントごとに防火管理者が必要

ビル内でクリニックを開業する場合、ビル全体として収容人数が30人以上入るのであれば、各テナント(クリニック)で防火管理者を選任しなければなりません。

つまり、よほど小さなビル内で開業しない限り、基本的に防火管理者の選任が必要です。

たとえばクリニックの収容人数が20人だったとしても、他のテナントで収容人数が10人を超えていればビル全体で30人以上の収容人数になるため、各テナントで防火管理者を選任しなければなりません。

大規模な商業施設や高層ビル内の場合は「防災管理者」も必要

大規模な商業施設や高層ビルでクリニックを開業した場合には、防火管理者の選任に加えて「防災管理者」の選任も必要です。

それぞれ目的が異なり、防火管理者は火災による被害の防止や軽減、防災管理者は地震などの災害の軽減を目的にしています。

たとえば以下の条件に該当する建物の場合には、すべてのテナントで防災管理者の選任が必要です。

建物の階数(地階を除く)延べ面積
11階以上1万㎡
5〜10階2万㎡
4階以下5万㎡

ビル内でクリニックを開業する場合は、防災管理者の必要性を管轄の消防局に確認しましょう。

防火管理者の選任を怠った場合は懲役や罰金が科せられる

防火管理者や防災管理者の選任は「消防法」によって定められており、選任をしていなかったり、責務を果たしていなかった場合には罰則が科せられます。

違反に該当する内容と、罰則の例は下記のとおりです。

違反となる内容罰則
防火管理者の選任や解任の届出を怠った30万円以下の罰金または拘留
防火管理者の選任命令に従わなかった50万円以下の罰金または6か月以下の懲役
消防用設備等または特殊消防用設備などの設置維持命令に従わなかった100万円以下の罰金または1年以下の懲役
防火管理業務の適正執行命令に従わなかった100万円以下の罰金または1年以下の懲役

消防局は管轄の建物やビルに対して、消防査察(立入検査)を実施することがあります。

消防法を遵守できていなかった場合には指摘され、それでもなお是正しなかった場合には罰則が科せられます。防火管理者や防災管理者の選任は人命に関わる問題であるため、罰則の有無に関わらずしっかりと果たしましょう。

クリニックの防火管理者は誰がなるべき?

クリニックの防火管理者は、院長が務めることが一般的です。従業員が務めることも可能ですが「管理的、監督的地位」のあるポジションの方が行う必要があります。

防火管理業務を適切に遂行することができる「管理的、監督的地位」にあること

引用:一般財団法人 日本防火・防災協会|防火管理講習

防火管理者は消防訓練の実施や防火計画の作成など、責任を伴う業務を行うため、できる限り権限を持っている人が適任です。

クリニックの場合は院長、または従業員の場合は管理職的なポジションの方を選任しましょう。

防火管理者が必要かどうかが判断できない場合は消防署に相談

クリニックの開業に際して、防火管理者の選任が必要かどうか判断できない場合には、消防署に直接相談することが必要です。

開業時には、必ず管轄の消防署に「防火対象物使用開始届出書」を提出しなければならないため、その際に防火管理者や防災管理者の選任の必要性と、取得するべき資格の種類を確認しましょう。

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クリニックにおける防火管理者の甲種と乙種の選び方

防火管理者の資格には「甲種」と「乙種」の2種類があり、建物の規模や用途に応じて必要な資格が異なります。

ここでは戸建てとテナントにおいて、それぞれ「甲種」と「乙種」どちらが必要か解説します。

甲種は乙種が必要なケースでも選任できるため、迷った場合は甲種を取得しておくと良いでしょう。

戸建てで開業する場合

戸建てクリニックで開業をする場合は、延べ面積が300㎡未満と300㎡以上で必要な資格が異なります。

戸建てクリニックの延べ面積必要な資格
300㎡未満甲種または乙種の防火管理者
300㎡以上甲種の防火管理者

ただし「社会福祉施設(避難困難施設)」で防火管理者の選任が必要な場合は、延べ面積に関係なく甲種の防火管理者が必要です。

ビルのテナントで開業する場合

ビル内のテナントでクリニックを開業する場合は、収容人数によって必要な資格が異なります。

収容人数必要な資格
30人未満甲種または乙種の防火管理者
30人以上甲種の防火管理者

「社会福祉施設(避難困難施設)」の開業の場合は、下記のように収容人数の基準が異なります。

収容人数必要な資格
10人未満甲種または乙種の防火管理者
10人以上甲種の防火管理者

防火管理者講習と防災管理者の費用と受講方法

防火管理者講習と防災管理者の講習は、各都道府県の消防署や「日本防火・防災協会」などが開催しています。

資格はクリニックの開業地域に関係なく、日本全国どこでも取得および使用が可能で、費用は以下の通りです。

防火管理者講習防災管理者講習
甲種乙種
8,000円7,000円7,000円

※2024年11月時点の費用

上記は「日本防火・防災協会」が開催している講習費用ですので、消防署などの開催によっては若干費用が異なる場合があります。

受講方法はオンラインと対面の2種類

講習の受講方法は、講習会場で受講をする「対面」と自宅から受講できる「オンライン」の2種類があります。

それぞれ必要な受講時間は同じですが、オンラインの場合は講習日に縛られることなく好きなタイミングで受講できる点が大きなメリットです。

受講方法必要な受講時間(甲種の場合)
対面概ね10時間(2日間講習)
オンライン概ね10時間(12日間以内にいつでも受講可能)

対面とオンラインで費用も同じなので、わざわざ講習会場に行かなくて良いオンライン講習がおすすめです。オンライン講習は「日本防火・防災協会」が開催しています。

防火管理者取得後は再講習の義務もある

防火管理者は、資格を取得したあと一定期間内に再講習を受けなければなりません。

再講習を受けなければならない期限は「講習を修了した日」から「防火・防災管理者として選任された日」までの期間によって定められています。

講習修了日から防災・防火管理者として選任された日までの期間再受講の期限
4年を超えている場合選任日から1年以内
4年以内の場合講習修了後の最初の4月1日から5年以内

再受講の期限が過ぎると、防火管理者や防災管理者として選任されていないものと扱われるので注意しましょう。

クリニック開業時に必要な消防関連の届け出の流れ

クリニックの開業時には防火管理者の選任だけでなく、消防に関するさまざまな届け出が必要です。

ここでは開業時に必要な消防の手続きを3つにわけて解説します。

1. 管轄の消防署に確認

消防関連で必要になる書類や資格を、管轄の消防署へ確認します。

あらかじめ、クリニック内の図面や想定される従業員の人数、ビルのテナントの場合は建物全体の情報などを準備しておくとスムーズです。

また、同時に防火管理者や防災管理者の必要性も確認しておきましょう。

2. 各種届出の提出

消防署で確認した必要書類や資格を用意して、届け出します。

主に、以下の書類が必要です。

  • 防火対象物使用開始届出書
  • 消防用設備等または特殊消防用設備等の設置届出
  • 防火(防災)管理者の選任届出書
  • 消防計画作成届出書

書類の中には消防署とクリニック両方の保管用として、2部必要なものもあるため注意しましょう。消防署によっては電子や郵送での申請が可能なところもあります。

3. 消防検査

必要な書類を提出したあとは消防職員が後日、クリニックを訪れて調査を行います。

建物の構造や設備などが消防法令を遵守しているか確認し、問題なければ届出書の副本が返却されます。

防火管理者がクリニックでやるべきこと

防火管理者は患者と従業員の安全を守るために、消防法施行令第3条の2で責務が定められています。

ここでは防火管理者の責務として、以下の4つを具体的に解説します。

  • 「防火管理に係る消防計画」の届出
  • 消火・避難・通報訓練の実施
  • 消化器を含む消防設備の点検や整備
  • その他の管理や監督業務

防火管理者としての業務をそれぞれ把握しておきましょう。

「防火管理に係る消防計画」の届出

防火管理者に選任されたら「防火管理に係る消防計画」を作成し、管轄の消防署に届け出る必要があります。消防計画には、主に以下の内容を記載します。

概要主な記載内容
消火管理体制自衛消防隊の組織と任務分担火気の使用や取り扱いの監督者避難誘導の体制
防火対策日常の火気管理や建物・消防用設備等の点検方法検査結果の記録や報告の方法消防用設備等の整備や点検計画
災害時の対応方法通報連絡や避難誘導の手順消火活動の手順救護の方法

特にクリニックの場合は、患者の避難誘導方法や医療機器の電源確保など、医療施設特有の対策も盛り込む必要があります。

消防計画書は2部作成して1部を消防署に提出、もう1部をクリニックで保管します。

各地域の消防署や自治体のホームページに、消防計画書のテンプレートが用意されているのでチェックしておきましょう。

消火・避難・通報訓練の実施

防火管理者は提出した消防計画書をもとに、クリニックで消火や避難、通報訓練を実施しなければなりません。

クリニックの場合は消火・避難訓練を年2回以上、通報訓練を消防計画に定めた回数以上実施する必要があります。

具体的には以下の訓練を行います。

概要主な訓練内容
消火訓練消火器の使用方法消火栓の操作方法初期消火の手順
避難訓練患者さんの避難誘導方法避難経路の確認車椅子やストレッチャーを使用した避難方法重症患者の搬送手順
通報訓練119番通報の手順院内緊急放送の方法関係機関への連絡体制

また、消火・避難訓練を実施する際には、事前に消防署に連絡しなければなりません。

【消防法施行規則第3条の11項】
前項の防火管理者は、同項の消火訓練及び避難訓練を実施する場合には、あらかじめ、その旨を消防機関に通報しなければならない。

引用元:e-Gov法令検索|消防法施行規則

各種訓練を行ったあとは、その記録を作成して3年間は保管する必要があります。

消化器を含む消防設備の点検や整備

防火管理者は、消防法で定められている消防用設備の点検や整備を実施しなければなりません。

機器の点検は6か月ごとに1回、総合点検は年に1回は実施する必要があります。

主な消火用設備と点検内容は、以下のとおりです。

概要点検や整備の内容
消化器設置場所の確認使用期限の確認破損や腐食の有無
自動火災報知機感知器の作動確認受信機の動作確認警報音の確認
誘導灯点灯確認バッテリーの状態確認標識の汚れや破損確認
避難器具設置状態の確認使用時の支障物の有無確認

上記の点検を行ったあとは点検記録を保管し、クリニックの場合は消防署に1年に1回の報告が必要です。

その他の管理や監督業務

クリニックの防火管理者は、定期的な消防訓練や点検以外だけでなく、日常的に管理や監督をしなければなりません。

具体的には、以下のような業務を行います。

概要点検や整備の内容
火気の管理・監督医療機器の使用状況の確認給湯室やスタッフルームの火気使用の確認喫煙場所の管理(設置している場合)
避難経路の維持管理非常口や避難通路の障害物のチェック避難経路図の更新や掲示防火戸や防火シャッターの周辺状況の確認
収容人数の管理待合室の混雑状況の確認診察室や処置室の人数の把握

防火管理者は万が一の場合を想定し、安全が確保できているか日常的にチェックする義務があります。

クリニック開業に向けて防火管理者を受講する際の注意点

防火管理者の資格を取得する際には、次のポイントに注意する必要があります。

  • 受講する防火管理者の種類に注意する
  • 防火管理者講習の日程に注意する
  • 防災管理者と防火管理者は同一人物が受講する必要がある

取得した防火管理者の資格を有効に使用するためにも、あらかじめ把握しておきましょう。

受講する防火管理者の種類に注意する

防火管理者の資格を取得する際には、甲種と乙種のどちらを取得するべきか事前に確認しましょう。

消防署に相談をすれば、開業予定のクリニックにて、必要な防火管理者の種類や消防関連の書類を教えてもらえます。

また、甲種の防火管理者を取得しておけば、すべてのケースに対応できるので安心です。

防火管理者講習の日程に注意する

クリニック開業までに防火管理者講習が受講できない可能性もあるため、あらかじめ開催日のチェックをしておきましょう。

講習は各地域の消防本部や日本防火・防災協会で実施されているものの、頻繁に開催されているものではありません。

会場で受講する場合、タイミングによってはクリニック開業までに間に合わない可能性があるため、オンライン講習がおすすめです。

防災管理者と防火管理者は同一人物が受講する必要がある

防火管理者に加えて防災管理者の選任も必要になった場合、この2つの資格は同一人物が取得する必要があると消防法で定められています。

統括防災管理者に、第八条の二第一項の統括防火管理者の行うべき当該防火対象物の全体についての防火管理上必要な業務を行わせなければならない。

引用元:e-Gov法令検索|消防法第36条3項

上記には「防災管理者には防火管理者の業務も行う必要がある」と明記しているので、バラバラの人を選任するのではなく、1人に対して防火管理者と防災管理者の選任をしなければなりません。

開業したいクリニックの規模に合う防火管理者を取得しましょう

防火管理者の選任が不要なケースは、基本的に収容人数が30人未満の戸建てクリニックのみです。

収容人数が30人以上の戸建てやテナントでの開業をする場合は、防火管理者を選任しなければなりません。また、大規模な商業施設や高層ビルの場合には、防火管理者の選任も必要です。

消防に関する書類の提出も必要になるため、まずは管轄の消防署に相談することをおすすめします。

新規開業の場合、消防法を遵守した構造や設備を考慮しなければならず、消防計画なども新たに作成しなければなりません。しかし、医院継承であれば消防法が遵守されている建物や、すでに防火管理体制ができているものを引き継ぐので、新規開業よりも不安や手間が少なくなります。

私たちエムステージマネジメントソリューションズは、医院継承後の防火管理体制の移行から各種届け出まで、医療経営士の資格を持った専門家がトータルでサポートいたします。

新規開業に比べて医院継承は開業資金を抑えられるため、開業後の資金的な余裕にもつながる点がメリットです。

クリニック開業をお考えの先生は、まずは無料相談をご利用ください。

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この記事の監修者

田中 宏典 <専門領域:医療経営>

株式会社エムステージマネジメントソリューションズ代表取締役。医療経営士1級。医業承継士。医療機器メーカー、楽天を経て株式会社エムステージ入社。医師紹介事業部の事業部長を経て現職。これまで、病院2件、診療所30件、介護施設2件の事業承継M&Aをサポートしてきた。エムステージグループ内のM&A戦略も推進している。

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