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クリニックが成功するスタッフ教育とは?「やってはいけないこと」や重要なポイントを解説

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クリニックが成功するスタッフ教育は?「やってはいけないこと」や重要なポイントを解説
クリニックが成功するスタッフ教育は?「やってはいけないこと」や重要なポイントを解説

クリニックのスタッフ教育は、患者の評価を大きく左右するため、経営の観点からも重要なポイントです。

しかし、具体的な教育方法や内容についてはクリニックや教育者によって大きく異なります。そのため本記事では、スタッフ教育を成功させるためのポイントや失敗例などをまとめました。

患者が安心してクリニックに通い、スタッフも円滑に業務を進めるためにも、本記事を参考にしながらスタッフ教育を実践してください。

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【事例で見る】クリニックにおけるスタッフ教育の重要性

クリニックのスタッフ教育の目的は、業務の知識やスキルを身につけ、患者に質の高い医療を提供することです。

来院する患者の心境は、ポジティブではないことがほとんどでしょう。身体に何らかの不調を抱えているため、スタッフの言動や行動などにも敏感になっていることが多いです。

スタッフ教育が徹底されていなければ、クリニックの印象を悪くするだけでなく、スタッフ同士の関係性も悪化する場合があります。

ここでは、スタッフ教育を徹底できていなかったために起きたトラブル事例を紹介します。

スタッフの接客態度が原因で患者が離れる

スタッフ教育の不徹底による最も大きな悪影響は、患者離れです。特に受付スタッフに対するクレームは多い傾向があるため、注意しなければなりません。

たとえば、美容クリニックの受付スタッフの電話対応や来院時の応対が悪く、院内ですれ違っても挨拶しないことで、クレームになった事例があります。

医師の対応が良かったとしても、スタッフの言動や雰囲気が良くなければ患者が離れることにつながりかねません。

スタッフ同士の関係が原因で離職者が増える

スタッフ教育において、スタッフ同士の信頼関係を構築することも非常に重要です。

「チームワーク」や「院内環境整備」など快適な職場環境作りに関する教育も行わなければ、離職の原因にもなります。上司や先輩の態度に悩み、退職を検討するケースは少なくありません。

スタッフ同士の関係を良好にし、円滑にクリニックを運営するためにもスタッフ教育は欠かせないでしょう。

クリニックのスタッフ教育で伝えるべきこと

スタッフ教育を行ったとしても、ポイントが抑えられていなければあまり効果は期待できません。特に重要なものは以下の5つです。

  • クリニックの経営理念を共有する
  • スタッフそれぞれの役割を認識する
  • 医療に関する新しい情報や知識を共有する
  • スタッフ同士のチームワークの重要性を伝える
  • 接遇マナーの重要性を共有してトレーニングをする

それぞれ解説します。

クリニックの経営理念を共有する

スタッフ教育において、クリニックの経営理念を共有することは最も重要といっても過言ではありません。クリニックの使命や目的、将来のビジョンなどを共有すると、同じ目標に向かうことができるようになるためです。

また、経営理念の共有はスタッフ教育だけではなく採用段階でも行い、共感する人材を採用することも重要でしょう。

スタッフそれぞれの役割を認識する

クリニックの経営理念を達成するためには、各スタッフに自身の役割を認識してもらうことが重要です。

クリニックでのポジションや勤続年数なども踏まえながら、各自の課題や目標を理解してもらいましょう。その際、ポジション別の具体的な業務内容を丁寧に洗い出すことも必要です。

役職やポジションによる単純な分担だけでなく、スタッフごとの強みや課題なども考慮すると、さらに円滑な運営ができるでしょう。

医療に関する新しい情報や知識を共有する

医療は日々発展しているため、新しい情報や知識の共有も必要です。

たとえば2年に1度の診療報酬改定や最新医療の技術などをスタッフ全員で共有すると良いでしょう。定期的な勉強会や、外部のセミナーへの参加など、最新情報を学べる機会を設けることも大切です。

外部のセミナーで得た新しい知識や技術を院内で共有し実践すれば、医療の質も向上します。

スタッフ同士のチームワークの重要性を伝える

スタッフ同士のチームワークは、業務を円滑に進めるうえで欠かせない要素といえます。

教育を行う際には、チームワークの重要性を伝えるだけでなく、それらを構築できる業務の流れを作ることも大切です。

具体的には、定期的に意見交換会を開き、判断に迷ったことや業務の改善ポイントを共有することで、チームとしての一体感を作ることができます。業務が改善すれば、スタッフの働きやすさも向上し、離職率も下げられるでしょう。

接遇マナーの重要性を共有してトレーニングをする

患者と接するうえで必要不可欠な「接遇マナー」の重要性を伝え、トレーニングも行いましょう。

スタッフが接遇マナーを徹底的に身に付ければ、患者離れが起きる可能性は大きく下がります。クリニック内でロールプレイングを実施したり、セミナーなどで接遇マナーを詳しく学ぶこともおすすめです。

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クリニック経営者が抱くスタッフ教育の課題と解決方法

スタッフ教育を実践してみると、主に以下のような課題に直面することが多いでしょう。

  • スタッフによって理解度が異なる
  • 教育内容の進捗を把握しにくい
  • スタッフ間の信頼関係の構築が難しい
  • モチベーションにバラツキがある
  • 教育者によってスタッフの成長が左右される

ここではスタッフ教育を行う上で、クリニック経営者が直面する課題と解決方法をそれぞれ解説します。

スタッフによって理解度が異なる

元々持っている経験や知識はスタッフによって異なり、教育進度の違いによっても理解度の差が生じることがあります。

この課題を解決するためには、テンプレート化した教育の実施だけではなく、個々のスタッフの状況を把握し、理解度に合わせた教育が必要です。

スタッフ教育の進捗を把握しにくい

スタッフ教育を受ける人数や状況によっては、進捗の把握が難しくなることがありますが、同じ教育を受けているスタッフ間でスキルの差が出ることは避けたいものです。

まずはスタッフ教育全体を段階的に区切り、段階が変わるタイミングで理解度を把握できる評価シートなどを作成すると良いでしょう。

理解度が低かった場合には個別に勉強会に参加してもらうなど、スタッフの状況に応じた対応が可能になります。

スタッフ間の信頼関係の構築が難しい

スタッフ教育の最中で、スタッフ同士の信頼関係の構築が難しい場合があります。

特に厳しいトレーニングを行う際は、スタッフが抵抗感を抱くことが少なくありません。また、教育方針と教育者の言動に一貫性がなければ不信感につながることもあるでしょう。

そのような状況を防ぐためにも、一人ひとりのスタッフとコミュニケーションを取って信頼関係を構築し、教育する側は「やってはいけないこと」を理解することも大切です。

また、後述するスタッフ教育をするうえで「やってはいけないこと」も把握しましょう。

スタッフのモチベーションにバラツキがある

スタッフ教育に対して、スタッフごとに意欲の差を感じることもあるでしょう。モチベーションが低い状態が続くと、チームワークの乱れの原因になったり、やる気のなさが他のスタッフに伝染したりすることも考えられます。

モチベーションを維持させる方法のひとつとして、教育内容が身に付いていないことによる「スタッフ自身のデメリット(リスク)」を伝えるのもおすすめです。自身に及ぶ影響を理解できれば、モチベーションもある程度は維持できるでしょう。

教育者によってスタッフの成長が左右される

専任した教育者の能力や教え方によっても、スタッフの成長が左右される傾向もあります。また、教育者の人柄や相性によっても、スタッフの理解度や関係性に影響が出てくるでしょう。

教育者が「教えるスキル」を身に付けるためにも、教育者向けのトレーニングやマニュアルなどの導入も検討しなければなりません。

クリニックがスタッフ教育を行う方法

クリニックがスタッフ教育を行う方法は「自身のクリニックで研修をする」または「外部のセミナーや研修に参加する」のどちらかです。

手軽さという観点でみると圧倒的に自身のクリニックでの研修ですが、レベルの高いスタッフ教育を行いたいのであれば、外部のセミナーや研修のほうが効果的と言えます。

それぞれのメリット・デメリットを詳しく解説しましょう。

自身のクリニックで研修をする

自身のクリニックで研修をする場合は、以下のメリット・デメリットがあります。

メリットデメリット
・コストが抑えられる
・状況に合ったプログラムが作れる
・スケジュールを調整しやすい
・教育者との人間関係が悪くなる可能性がある
・教育の知識やスキルが足りない可能性がある
・教育者の専任が必要

自身のクリニックで研修を行う大きなメリットは、クリニックの状況に合わせて教育内容をカスタマイズできることでしょう。講師を呼ぶ必要も無いため、コストも抑えられます。

しかし一方で、教育者とスタッフとの人間関係が悪化するリスクが考えられます。

たとえば少し厳しめの指導をした際、スタッフが疎外感を抱く可能性もあるでしょう。また、根本的にスタッフ教育の知識やスキルを熟知している教育者がいない場合には、教育の質を担保できません。

このことから、自身のクリニックでの研修は、経営歴の長いクリニックや、ある程度教育体制が整っているクリニック向きと言えるでしょう。

外部のセミナーや研修に参加する

外部のセミナーや研修を活用する方法の場合、以下のメリット・デメリットがあります。

メリットデメリット
・レベルの高い教育を受けられる
・他のクリニックのトレーニングやトラブル事例が学べる
・費用が高い
・開催期間が限定されていることがある

最大のメリットは、高いレベルのスタッフ教育を受けられる点でしょう。実際に起きたトラブルの事例なども学べるため、自身のクリニックでは得られない貴重な情報を得ることができます。

しかし、費用は決して安いものではなく、開催期間が限定されていることもあるため、スケジュールなどの調整が必要です。

新規開業したクリニックは、スタッフ同士の信頼関係が構築されておらず教育者の専任も難しいことが多いので、外部のセミナーや研修の活用が効果的と言えるでしょう。

ただし、スタッフにセミナーや研修に参加してもらう場合には、就業時間内に行う必要があります。休日に行う場合は時間外労働になるため、残業手当の支払いが必要です。

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クリニックのスタッフ教育を成功させるためのポイント5選

クリニックのスタッフ教育を成功させるためには、業務内容の把握や教育プログラムの構築が欠かせません。

具体的には、以下の5つのポイントを理解しましょう。

  • 業務フローを見える化する
  • 業務マニュアルを作成する
  • スタッフの教育担当者を決める
  • スタッフに対して目標を設定する
  • 相談しやすい職場環境づくりをする

それぞれ詳しく解説します。

業務フローを見える化する

スタッフ教育を成功させるためには、まずクリニックの業務フローを明確にして可視化することが必要です。

たとえば受付から診察、会計までの一連の業務内容を図で表すと、スタッフ全員が業務全体を俯瞰できます。結果として負担の多いポジションや業務の無駄を見つけ、改善へとつなげられるでしょう。

業務マニュアルを作成する

クリニックの業務を安定化させるためにも、業務マニュアルの作成は必須です。

スタッフが入れ替わったとしても、丁寧な業務マニュアルがあれば業務を円滑に引き継ぐことができます。

また、スタッフが業務内容を理解して行動できているかの評価項目としても使用できるでしょう。

スタッフの教育担当者を決める

安定したスタッフ教育を実現するには、教育担当者を決めることも重要です。

経験豊富で指導力のある教育担当者がいることで、スタッフの強みや弱みを把握してそれぞれに合った指導が行えるでしょう。

ただし、教育担当者ばかりに任せると負担が大きくなってしまうため、クリニック全体で新人育成に取り組む雰囲気づくりも大切です。教育担当者を中心に、全スタッフが協力して教育に携わる体制づくりが理想的と言えます。

スタッフに対して目標を設定する

新たに入ったスタッフに明確な目標を設定すると、モチベーションやスキルの向上につながります。

たとえば「1か月以内に新しい医療機器の操作を習得する」といった具体的な目標を設定することで、スタッフ自身もスキルを習得するまでのスケジュールを立てやすいでしょう。

目標は個々のスタッフの経験やスキルに応じて設定し、定期的に進捗を確認することも大切です。比較的クリアしやすい目標にしておけば、成功体験になりやすく自信につながるでしょう。

相談しやすい職場環境づくりをする

日頃から気兼ねなく相談できる職場環境づくりが大切ですが、教育期間中のスタッフをフォローする担当者を別途配置することも有効です。

スタッフは教育者の指導方法が合わず理解が追いつかなければ、不安を感じます。そのようなときでもすぐ相談できる体制づくりが求められるでしょう。

そのためには、次の章で紹介する「やってはいけないこと」をスタッフ同士で共有し、信頼関係を作ることが大切です。

クリニックがスタッフ教育をするうえで「やってはいけないこと」

綿密な教育プログラムを作成し、質の高いスタッフ教育を実施したとしても、すべてを台無しにしてしまう行為があります。それは、次に挙げる3つの「やってはいけないこと」です。

  • スタッフの陰口を言う
  • 暴言や高圧的な態度を取る
  • スタッフに価値観を押し付ける

それぞれの注意点や改善策を解説します。

スタッフの陰口を言う

陰口は職場環境を悪化させ、信頼関係やチームワークが損なわれる最大の要因です。バレないだろうと思っていても、陰口を言われている側は日常の言動から不和を感じることがあります。

まずは院長や医師、主任など主軸となるポジションのメンバーが、ネガティブな発言をしないように徹底することが重要です。上の立場にある人の発言や態度は、職場の雰囲気づくりにもっとも大きな影響を与えるため、特に注意しなければなりません。

暴言や高圧的な態度を取る

先輩スタッフや医師などの暴言や高圧的な態度に他のスタッフが疲弊してしまうケースがあります。

暴言はただ単に声を荒げて注意することではなく、冷静な口調でも言葉遣いによっては暴言と捉えられるため注意しなければなりません。

「こんなこともできないの?」
「これぐらいのこと、少し考えたらわかるよね?」

このようなことを言われたスタッフは萎縮してしまい、相談しにくい状況で失敗し、再び怒られる…という悪循環に陥ってしまいます。

スタッフ教育が成功しない原因は、プログラムや教育者の指導力にある場合が多いことを忘れてはなりません。

スタッフに価値観を押し付ける

スタッフ教育では、クリニックや教育担当者の価値観を押し付ける行為は避けましょう。

スタッフがこれまで学んできたことや経験から培われた価値観を尊重し、受け入れることでさらにスタッフの質を高められる可能性もあります。

たとえば業務の流れや職場環境を改善をする際、院長が間違った認識を持って現場スタッフの意見を受け入れられなければ、改善は望めないでしょう。

クリニックの理念や目標を共有しながらスタッフの価値観も尊重し、柔軟に意見を取り入れることも大切です。

スタッフ教育を徹底してクリニックの運営を円滑にしましょう

クリニック全体で質の高い医療を提供するためには、要点を抑えた教育プログラムを実施することが大切です。スタッフ教育が効果を発揮すれば、患者離れや離職者の増加を防ぐことができます。

本記事で紹介したスタッフ教育のポイントを参考にしながら、患者が安心して利用できるクリニックを作り上げましょう。

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この記事の監修者

田中 宏典 <専門領域:医療経営>

株式会社エムステージマネジメントソリューションズ代表取締役。医療経営士1級。医業承継士。医療機器メーカー、楽天を経て株式会社エムステージ入社。医師紹介事業部の事業部長を経て現職。これまで、病院2件、診療所30件、介護施設2件の事業承継M&Aをサポートしてきた。エムステージグループ内のM&A戦略も推進している。

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