テール条項とは?契約終了後の義務とリスク管理方法を解説
目次
テール条項とは、業務委託や仲介契約などの終了後も一定の義務が継続する条項です。契約終了後も、競業避止や機密保持、紹介手数料の支払いなどの義務が発生するため、自由なビジネス活動が阻害されるリスクがあります。
この記事では、テール条項で生じる義務や持続期間、リスク管理方法について詳しく解説します。テール条項を理解し、契約に伴うトラブルを防ぎましょう。
病院・クリニックの承継をご検討中の方はプロに無料相談してみませんか?
エムステージグループの医業承継支援サービスについての詳細はこちら▼
テール条項とは
テール条項とは、仲介会社と医療機関が契約期間満了などに伴ってM&Aに関する契約が終了になったとしても、一定期間(テール期間)がすぎる前にM&Aを実行した場合、元々契約していた仲介会社に報酬を支払うという契約条項です。
医院継承においては、複数の仲介会社とやり取りしている場合に使用する可能性が高まります。譲渡を急いでいたり、期限が明確に決まっている場合などは複数の仲介会社とやり取りを進めることがあるでしょう。
しかし、元々予定していた仲介会社とは別のルートで譲渡が決まった場合、テール条項に関する内容が契約書のわかりにくい場所に記載があったり、テール期間が過度に長かったりなどしてトラブルに発展するケースがあります。
そのため、M&A手続きやトラブル発生時の対応などを詳細に定めた中小M&Aガイドラインを遵守している会社かどうかをあらかじめ確認することが大切です。弊社では、中小M&Aガイドラインの遵守宣言をしており、安心してお任せいただけます。
テール条項によって契約終了後に生じる義務
契約が終了した後も、テール条項によって発生する主な義務は以下の通りです。
- 競業避止義務の継続
- 顧客情報の取り扱いに関する制約
- 機密保持義務の持続
- 紹介手数料や報酬の支払い義務
- 知的財産権の帰属や使用の制限
- 債務の履行義務
上記の義務は、関係者の信頼関係を守るとともに、ビジネスの安定性を支えるために必要です。それぞれ解説します。
競業避止義務の継続
競業避止義務とは、契約終了後も一定期間、元契約相手と競合するビジネスへの関与を禁止する規定です。競業避止義務により、業務で得た知識や顧客情報を利用して元契約相手に不利益を与えるのを防ぎます。
特に、同業種での新規事業の立ち上げや競合会社への転職などが制限されます。競業避止義務の期間や範囲は契約によって異なりますが、適切な内容で合意するのは双方の利益を守るために重要です。
顧客情報の取り扱いに関する制約
テール条項は、契約終了後でも一定期間、契約中に得た顧客情報や取引先の情報を活用した商談や契約を制限する条項です。顧客情報の取り扱いに関する制約は、顧客リストや商談情報などを契約者が独自に使用し、元契約相手の利益を保護するものです。
たとえば、契約終了後も紹介先との契約により、売上の一部が仲介業者に支払われる場合、テール条項に基づき新たな取引先との直接取引が制限される場合があります。
制約に違反した場合、損害賠償を請求される可能性があるため、契約締結時にはテール条項の内容と顧客情報の取り扱いに関する制限を理解し、情報の取り扱いに注意が必要です。
機密保持義務の持続
テール条項の機密保持義務は、契約終了後も一定期間持続するのが一般的です。なぜなら、契約締結時に得た非公開情報を第三者に漏らさないようにするためです。
具体的には、契約が終了しても、契約当事者が取引を通じて知り得た情報や、取引対象の商業機密、経営上の重要事項が引き続き保護されます。
テール条項の機密保持義務の期間は、情報漏洩リスクやビジネスの性質を考慮して慎重に決める必要があり、期間の設定は契約交渉時の重要なポイントです。
紹介手数料や報酬の支払い義務
テール条項は、契約終了後も一定期間、紹介手数料や報酬の支払い義務が発生します。具体的な支払い義務の期間は契約によりますが、多くは数か月から1年程度です。期間内に取引が成立すれば、紹介者は手数料を受け取る権利があります。
上記のような仕組みは、契約終了直後の取引成立を回避し、紹介者への報酬支払いを免れる不当行為を防止します。契約時には適用期間や条件を明確にし、双方が納得したうえで締結するのが重要です。
知的財産権の帰属や使用の制限
テール条項の知的財産権の帰属や使用制限は、契約終了後の権利・使用条件に関する重要な要素です。契約終了後も元契約相手が知的財産を利用できるかどうかは、事前に取り決めを行うのが大切です。
たとえば、開発した技術やコンテンツが企業に帰属する場合、元契約相手の使用が制限され、再利用や他企業との共有が制限されます。一方、一定の条件下で再利用が許される場合もあり、テール条項の内容によって異なります。
知的財産権の帰属や使用条件を明確に取り決めておくのは、将来的なトラブルを防ぎ、権利の侵害や無断利用を避けるために大切です。
債務の履行義務
債務の履行義務は、契約終了後も一定期間、契約当事者に課される義務です。契約期間中に作成・共有された著作物やノウハウなどの知的財産権は、契約終了後も守秘義務や使用制限が課せられます。
債務の履行義務には、報酬支払いや顧客対応が含まれ、違反があれば法的なトラブルに発展する可能性があります。テール条項の適用範囲や期間は契約内容により異なりますが、リスクを抑えるためにも、契約前に条項内容を明確にするのが重要です。
また、商標や著作権が関わる場合、契約時の取り決めが後々まで影響するため、契約書に明確な条項があるかを確認しましょう。
■■■よく読まれている記事■■■
テール条項による義務の持続期間
テール条項による義務の持続期間は、契約内容に応じて異なります。競業避止義務や機密保持義務など、特に影響が大きいものは明確に期間が定められているのが一般的です。
期間は業種や契約内容に応じて異なりますが、最長でも2〜3年が目安になります。義務の持続期間を設定すると、双方が必要な保護を受けながらビジネス活動を行える仕組みが整います。
持続期間は契約終了後も義務が続くため、契約前に期間設定が適切かどうかを確認するのが重要です。
テール条項に伴うリスク
テール条項にはいくつかのリスクがともないます。
- ビジネス活動の自由が制限されるリスク
- 法的責任や違約金のリスク
- 未払いや利益分配に関するリスク
それぞれ解説します。
ビジネス活動の自由が制限されるリスク
テール条項には、契約終了後もビジネス活動が制限されるリスクがあります。特に、競業避止義務が含まれる場合、契約終了後も一定期間、競合する事業への関与や取引が制限され、自社のビジネス展開や戦略に影響が出やすいです。
たとえば、同業他社との契約や新たなプロジェクトの開始が難しくなり、機会損失のリスクがあります。また、他企業との関係構築や市場開拓の妨げにもなります。
そのため、テール条項の適用期間や範囲を契約前に確認し、自社の活動に与える影響を考慮するのが大切です。適切な制限になるよう交渉し、活動の幅を狭めないようリスク管理を行う必要があります。
法的責任や違約金のリスク
テール条項に伴う法的責任や違約金のリスクは、義務の未履行や違反によって発生する可能性が高いです。契約終了後も適用される義務を守らなかった場合、契約違反とみなされ、違約金の支払いや法的措置の対象となります。
たとえば、競業避止義務や機密保持義務に違反した場合、高額な違約金を請求され、信頼や評判も損なわれるでしょう。また、違約に対する法的な対応が必要となり、訴訟や調停などの手続きにコストがかかります。
上記のリスクを抑えるため、契約内容を明確にし、テール条項に基づく義務を確実に履行する必要があります。
未払いや利益分配に関するリスク
テール条項によって、契約終了後に報酬や利益の分配が求められる場合、未払いや分配額の計算でトラブルが発生するリスクもあります。テール条項の適用期間内に、紹介された顧客や取引先との成約があれば、報酬の支払いが必要です。
しかし、支払いが遅延したり金額に誤りがあったりする場合は問題が生じます。特に、利益の分配率や報酬額の基準が契約内で明確でない場合、解釈の違いから相手方とトラブルになってしまうでしょう。
そのため、契約終了後の報酬や利益分配に関する条件を明確に定め、トラブルを防ぐための管理体制を整えるのが大切です。契約終了後も誠実な対応を行うと、信頼関係の維持とリスク回避が可能となります。
トラブル回避のためのリスク管理方法
トラブルを回避するために、適切なリスク管理が求められます。具体的には、以下の3つを確認しておきましょう。
- テール条項の適用期間を短縮
- テール条項の範囲と条件を明確化
- テール条項の義務発生時に手続きや報告を確認
事前に契約内容を明確にしておき、義務の発生条件や期間を詳細に設定すると、トラブルを防止できます。具体的な方法を解説します。
テール条項の適用期間を短縮
テール条項の適用期間を短縮するのは、ビジネス活動の柔軟性を高め、リスクを軽減するために大切です。テール条項は、契約終了後も特定の義務が一定期間続くため、ビジネスの自由が制限されます。
競業避止義務や利益分配義務などの制約が長期間に及ぶと、新たな取引先との関係構築や事業拡大が難しくなる可能性があるため、適用期間をできる限り短縮しましょう。
そのためには、契約締結前に相手方と適用期間の交渉を行い、自社の事業戦略に応じた適用期間を確保するのが大切です。
テール条項の範囲と条件を明確化
テール条項の範囲と条件を明確化し、契約終了後に生じる義務を正確に把握すると、予期せぬリスクやトラブルを防げます。
義務の範囲に関して顧客の定義や適用条件が曖昧な場合、相手方と認識のズレが生じ、利益分配や報酬支払いで問題が発生しやすいです。そのため、契約前にテール条項の適用対象や義務発生条件を具体的にし、契約書に記載するのが大切です。
条件を詳細に規定できると、義務の範囲が限定され、事業活動が円滑に進むようになるでしょう。
テール条項の義務発生時に手続きや報告を確認
テール条項に基づく義務が発生した際には、適切な手続きや報告の確認が大切です。確認すると、義務の円滑な履行とトラブル防止に役立ちます。また、手続きに沿った報告を行うと、契約終了後も信頼関係が維持できるでしょう。
たとえば、成約報告や支払いに関する通知手続きが定められていないと、必要な義務を履行し損ねる可能性があり、トラブルの原因になります。
そのため、契約締結時にテール条項の義務発生時の手続きや報告義務の具体的な方法を定め、書面に明記しておくのが望ましいです。
テール条項を理解してトラブルを回避しましょう
テール条項は、M&Aを検討している医療機関と仲介会社の間において、譲渡成立前に契約を終了した場合に有効になるものです。医院継承においては、元々予定していた仲介会社ではない会社経由で決定した場合に、選ばれなかった仲介会社側が成果報酬を得るために使われることがあります。
契約終了後にトラブルになるケースが増えていますが、本来のテール条項に正しく則るなら、契約終了後に報酬が発生するのは仲介会社が候補先として紹介した医療機関とのM&Aに限定すべきであり、テール期間も約1年が妥当といえます。
トラブルを防ぐためには、契約締結時に適用期間や条項の範囲と条件を確認し、問題がある場合は契約前に交渉して解決することが大切です。
医院継承のプロフェッショナルである「エムステージマネジメントソリューションズ」では、20年以上の実績と1.7万件以上の医療機関とのネットワークを活かし、あなたの理想とするクリニック開業に向けた無料相談を承っています。
この記事の監修者
田中 宏典 <専門領域:医療経営>
株式会社エムステージマネジメントソリューションズ代表取締役。医療経営士1級。医業承継士。医療機器メーカー、楽天を経て株式会社エムステージ入社。医師紹介事業部の事業部長を経て現職。これまで、病院2件、診療所30件、介護施設2件の事業承継M&Aをサポートしてきた。エムステージグループ内のM&A戦略も推進している。