リフィル処方箋とは?制度概要とクリニックや診療所への影響

最新情報 2022/03/31

2022(令和4)年度の診療報酬改定において「リフィル処方箋」が導入されました。

リフィル処方箋とはどういう制度で、どのようなメリットやデメリットがあり、導入することでクリニックや診療所を営む開業医にはどのような影響があるのでしょうか。詳しく解説していきます。

「リフィル処方箋」はどんな制度?

▼リフィル処方箋の様式(案) 

リフィル処方箋様式案

出典:厚生労働省『個別改定項目について』

リフィル処方箋とは

リフィル処方箋とは、簡単には「最大3回まで使用できる処方箋」のことをいいます。

これまでは薬を処方してもらう前に、必ず医師の診察と処方箋の発行が必要でした。薬をもらうためだけに病院・クリニックに通う患者が多く、患者・事務スタッフ双方の負担削減および医療費を抑えることを目的に導入されたと考えられます。

リフィル処方箋が処方された場合は、医師が決めた一定期間内および決められた回数内であれば、医師の診察なしに同じ薬を複数回もらうことができるようになりました。

対象患者

症状が安定していて、医師の処方により、薬剤師による服薬管理の下、一定期間内に処方箋の反復利用が可能である患者

対象薬剤

保険医療機関および保険医療養担当規則で、投薬量に限度が定められている医薬品、湿布薬を除いた薬剤

処方箋使用回数上限

3回まで

1回当たり/総投薬期間

患者の病状などを踏まえ、医師が個別に医学的に適切と判断した期間

処方箋様式

医師がリフィルによる処方が可能と判断した場合に、処方箋の「リフィル可」欄にチェックし、処方が可能な回数を記入

その他の要件

①通常の処方箋同様、発行から4日間が1回目の調剤の有効期間となります。

2回目以降の調剤については、原則として前回の調剤日を起点とし、投薬期間を経過する日(次回の調剤予定日)の前後7日以内。

②調剤薬局の薬剤師は、患者の服薬状況等の確認を行います。

もし、リフィル処方箋により調剤することが不適切と判断した場合には、調剤は行わず受診勧奨を行うとともに、処方医に情報提供を行います。

リフィル処方箋導入に伴う診療報酬の要件見直し

リフィル処方箋導入に伴い、長期処方の減算規定(30日以上の処方を行った場合処方箋料を100分の40とする)要件が変更され、使用上限3回までのうち1回の処方日数を29日以内にした場合は適用されないことになりました。

海外でのリフィル処方箋の取り扱い

アメリカやフランス、イギリスなど、海外ではリフィル処方箋がすでに導入されている国がいくつかあります。
中でもアメリカは、導入時期が1951(昭和26)年と最も早く、州ごとに規定は多少異なるものの、制度が国内にかなり浸透しているようです。

リフィル処方箋の有効期限は、どの国においても2年を超えては認められていません。

リフィル処方箋と分割調剤の違い

リフィル処方箋と似ている制度として、2016(平成28)年度から導入されている「分割調剤」があります。

分割調剤は、

  1. 薬剤の長期保存が困難な場合
  2. 後発医薬品を初めて使用する場合
  3. 医師により指示がある場合

などに行われます。

しかし、厚生労働省の調査によると、医師の指示により分割処方を行ったことのある薬局は、12.1%という低い数値に留まっています*。

*厚生労働省『薬局の機能に係る実態調査(令和3年度医療課委託調査)』

たとえば、「90日分の内服薬を投薬するため、30日ごとに薬局で調剤して交付する場合」で両者を比較すると、以下のようになります。

【分割調剤】

・医師は90日分の処方箋を発行し、薬局に対して3回の分割指示
・薬局においては、医師の指示通り30日分ずつ調剤。

【リフィル処方箋】

・医師は30日分の処方箋を、繰り返し利用できる回数(3回)を記載した上で発行。
・薬局においては、医師の指示通り30日分ずつ調剤。

最大3枚の処方箋が発行される分割調剤と比べて1枚で済むリフィル処方箋は、患者にとっても分かりやすく、処方の手順も簡易化されています。分割調剤より、より利用しやすい制度だと言えるでしょう。

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リフィル処方箋導入のメリット・デメリット

リフィル処方箋のメリット:医師や患者の負担を軽減するとともに、医療費も抑制される

①患者の通院負担を軽減

処方箋をもらうために医療機関を受診する回数が少なくなるため、患者の通院時間を削減できるとともに、通院の度に支払う医療費の負担も削減できます。

②医師の業務負担を軽減

処方箋をもらうために受診する患者の数が減るため、医師の業務負担を大幅に軽減できます。そのため、ほかの重篤な患者への対応や高度な治療に専念する時間を増やすなど、業務効率化を図れるでしょう。

③医療費の抑制

患者の医療機関への受診回数が減ることにより、医療費が削減できます。また、薬剤師が患者へ服薬指導を行うことで服薬状況を把握しやすくなるため、残薬も削減できる可能性が高まります。

リフィル処方箋のデメリット:医療事故や患者の健康被害へのリスクが高まるほか、医業収入が低下する

①医療事故につながる可能性も

医師の診療によるチェックを経ず、薬剤師だけの確認で処方されることから、医療事故につながる可能性もあります。

②患者の健康被害リスク

診療間隔の長期化により、症状悪化の見逃しや薬による副作用の発見の遅れなど、患者の健康被害リスクが高まります。

③医療機関の収入低下

患者の通院機会が減ることに伴い、医療機関の医業収入が低下します。患者が処方箋のために通院する必要が少なくなることで、徐々に病院離れが起こることも考えられます。

リフィル処方箋導入で、クリニックや診療所を経営する開業医は今後どうなる?

▼医療機関及び薬局の施設数、薬剤師数、処方箋発行枚数

医療機関と処方箋発行回数

出典:厚生労働省『調剤(その1)』

慢性疾患の通院患者が多い内科や、外来比率の高いクリニックや診療所の収益が悪化

クリニックや診療の経営側である開業医にとっては、リフィル処方箋の導入は患者の診療回数を削減することになり、医業収入の低下が懸念されています。

上の図の通り、とくに診療所は医療機関の中でも処方箋の発行回数が多く、1番経営に影響があると考えられます。

具体的には、症状の安定している慢性疾患を抱える患者が多く通う内科クリニックや、入院機能を持たず外来比率の高い診療所などが、リフィル処方箋の導入による影響が大きくなりやすいでしょう。

そのため、経営面で直接影響を受けやすい開業医としては、「長期処方による病状悪化の見逃しなどリスクは高まるにも関わらず、診療機会の低下で医業収益は悪化してしまう」といった、リフィル処方箋の導入に否定的な意見が多いのも事実です。

在宅医療や医師の働き方改革の推進

これまでクリニックや診療所の開業医は、売り上げを上げるために多くの患者を診療しなければなりませんでした。必然的に、医師は外来診療で忙殺され、在宅医療に取り組む時間が無かったのです。

リフィル処方箋を導入することで患者数は少なくなり収益が低下しますが、その分医師は時間的余裕が生まれます。低下した収益を補うため、その時間を使って在宅医療に取り組むクリニックや診療所は増えてくることが考えられます。

また、医師の診療を毎回必要としない症状が安定している患者は、連携する薬剤師がフォローすることで、医師のタスクシェアリングが見込めます。医師は医師しか行えないような診療に集中でき、1人の患者に当てる時間も十分取れるようになるため、医療の質の向上も望めるでしょう。

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導入開始に向けて、運用方法を検討する必要性あり

2022(令和4)年4月からのリフィル処方箋の導入開始に向け、クリニックや診療所の開業医は、以下の対応を考えなくてはなりません。

  • 自院ではリフィル処方箋を導入するのか
  • 導入する場合、どのような患者に対応するのか
  • 導入しない場合、患者から要望を受けた際にどのように説明するのか
  • 提携する調剤薬局との、確認事項や連携方法のすり合わせ

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まとめ

クリニックや診療所を経営する開業医にとっては、患者の診療回数の低下など懸念事項も多い、リフィル処方箋の導入。しかし、患者にとっては、通院時間の削減や医療費負担の削減などメリットが多く、これからニーズが増えていくことが見込まれます。

海外とは違い、日本の場合、リフィル処方はあくまで医師の裁量にかかっています。メリットやデメリットとともに、運用方法もよく考えた上で、クリニックや診療所に導入するようにしましょう。

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