【首都圏×皮膚科】個人から法人に視野を広げたことで、ベストな形で医院継承できた事例

【首都圏×皮膚科】個人から法人に視野を広げたことで、より良い継承先が見つかった事例
【首都圏×皮膚科】個人から法人に視野を広げたことで、より良い継承先が見つかった事例
エリア 東京都
診療科目 皮膚科
運営組織 個人経営
譲渡理由 健康問題
運営年数 17年

本件は、都内で17年間続いた皮膚科クリニックがたった半年で成約まで至った事例です。

クリニックを経営してきた60歳の女性院長は、自身の体調や家族の介護、夫婦の時間などを考慮して医院継承を決断します。当初は個人の女性医師への譲渡を希望していましたが、条件を緩和し、最終的には医療法人への譲渡に決まりました。

条件を緩和した背景や、複数の仲介業者から私たちを選んでいただいた理由などを紹介します。

【売り手側】自身の体調不良や家族との時間を優先するために譲渡を決意した60代院長

売り手側の山田先生(仮名)は17年にわたり、山田クリニック(仮称)を経営してきました。都内で皮膚科・美容皮膚科の診療を行っていましたが、60歳を迎える2〜3年ほど前から譲渡を考えるようになったそうです。

譲渡を考えるきっかけとなったのは、主に以下の理由でした。

  1. 体調不良が続いていた
  2. 親族への介護が必要になってきた
  3. これまで支えてくれたご主人との時間を大切にしたい

仕事に大きな影響はないものの体調の優れない状態が続き、ご家族のなかにも介護が必要な方が出てきたそうです。また、ご主人は一般企業に勤務していましたが、長年クリニックの経営もサポートしていました。

そのため、お互い仕事が忙しく、ご主人との時間がしっかり取れていなかったこともあり、60歳という節目をきっかけに、今後は夫婦の時間を大事にしていきたいという思いが強くなります。

このような理由から、本格的にクリニックの譲渡を決断します。

医院継承(医業承継)を選んだ背景や譲渡の希望条件

山田先生は、まず身内から後継者を探し始めますが、なかなか見つからなかったため、医院継承による譲渡を選んだそうです。

山田クリニックはメディカルビルの中にあり、1階には調剤薬局があります。その調剤薬局を運営しているM&A仲介業者を通じて、以下の希望条件をもとに譲渡先を探し始めました。

  • ・女性医師
  • ・個人の先生
  • ・専門医を持っている
  • ・美容科の経験もある

「個人の先生のほうが、これまで自分が培ってきた経営方針やビジョンを、そのまま継承してくれるのでは」という思いがありましたが、希望条件が具体的かつ細かいことから譲渡先が見つからず、私たちにお声がかかりました。

希望条件を満たした継承先が見つかるも折り合いがつかず破談

私たちの提携先も含めて、山田先生の希望条件に合った譲渡先を探していたところ、40代の女性医師で条件に合致する鈴木先生(仮名)が見つかりました。

早速面談などを行いましたが、最終的には破談となってしまいます。

その理由は、山田クリニックの価値について双方が納得できなかったためです。

候補となった鈴木先生は継承開業を検討してから最初の案件だったため「ひとつめのマッチング候補で、すぐに決めていいのだろうか」という迷いがあったようです。また、開業後の経営的な不安から「初期投資を抑えたい」という思いもあり、譲渡価格の引き下げを求めていました。

通常、クリニックの譲渡価格は、それまでの経営を評価する一つの大きな軸として考えられています。

そのため、山田先生も例に漏れず、ご自身が長年かけて築き上げてきたクリニックの価値を、適切に評価してもらいたいという思いがありました。

しかし、譲渡価格の引き下げを求められたため、「鈴木先生は単純に値下げをしたいだけなのでは」と感じたようです。また、「将来的にこんな風にクリニックを経営していきたい」というような、開業後の明確なビジョンが伝わって来なかったため、最終的に破談となりました。

より良いマッチング先を見つけるために条件の緩和を提案

鈴木先生とのマッチングが破談になったあと、私たちは「個人だけではなく、法人も視野に入れてみませんか」と提案します。

希望条件と合致した譲渡先を紹介するのは当然ではありますが、少し視野を広げるだけでより良い譲渡先が見つかることも多くあります。

山田先生には法人に引き継ぐメリットを説明しつつ「女性医師に引き継ぎたい」という希望についても、実際に働く医師は女性の可能性があることなども説明しました。まずは会っていただき、そこから断っていただいても全く問題ないこともお伝えしたところ、法人とのマッチングにも同意をいただきます。

この条件緩和によって、理想的なマッチングにつながっていくことになります。

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【買い手側】都内開業の実績もある急成長中の医療法人

譲渡先として候補に挙がったのは、設立から10年ほどの医療法人井上会(仮称)です。

井上会は首都圏内で皮膚科クリニックを2つ運営しており、事業も好調に伸びていました。さらなる事業拡大を目指すべく、分院開業を検討していたところだったのです。

他にもいくつか法人の候補はありましたが、なかでも売り手の意図や希望を汲んでくれる井上会が譲渡先として最適だと判断しました。

都内での開業を視野に入れていた理由

井上会が新たなクリニックの開業エリアとして、都内を検討していた理由には2つあります。

1つめが、人材確保の観点です。

基本的にアクセスの良い場所のほうが、管理医師(院長職)も採用しやすい傾向にあります。好立地の場所にあれば優秀な人材を採用しやすく、クリニックもスムーズに運営できると考えられるため、都内での開業を検討していました。

2つめは、井上会の理事長井上先生(仮名)ご自身が都内に在住していたからです。

井上先生は自宅付近での開業を検討しており、都内に位置していた山田クリニックは立地条件としても最適でした。

売り手のビジョンを引き継いでくれる法人とのマッチングに成功

私たちは早速、山田先生と井上先生との面談をセッティングしました。

井上会は、売り手側の院長が築き上げてきた診療方針などを大事にする方針のため、「法人に譲渡した場合、自分が築き上げてきたものが大きく変わるのではないか」という山田先生の心配も、面談で解消されました。

また山田先生と井上先生は、診療に対する考え方やクリニックのビジョンなどが一致していたことも、安心して譲渡できる要素になったとのことです。

また、買い手側の井上会にとっても、山田クリニックには以下のように魅力的な点が揃っていました。

  • ・患者の層が良いエリアにある
  • ・3つの沿線が通っていて好立地な条件
  • ・開業から17年経過しているにも関わらず内装がきれいな状態

山田先生にとって当初は考えていなかった法人とのマッチングでしたが、譲渡後のクリニックの将来が明確にイメージできたため、井上会を譲渡先として決められたのです。

価格交渉についても、山田クリニックの将来性を事前にしっかりと伝えられたため、スムーズな交渉で成約がまとまりました。

本事例のポイント

今回の事例は、売り手側の山田先生のファイナンシャルアドバイザーとして携わりました。

譲渡に至ったポイントとしては、大きく3つあります。

  1. 売り手の不安や問題点となる部分を事前に想定してサポートしながら進行できた
  2. 売り手と密なコミュニケーションを取ったことで強い信頼関係ができた
  3. 売り手の譲渡への視野が広がったことで良いマッチングにつながった

それぞれのポイントを詳しく解説します。

①売り手の不安や問題点となる部分を事前に想定してサポートしながら進行できた

私たちは初期の面談から、不安や問題点を先回りして解消しながらサポートしました。

山田先生には当初、「法人へ譲渡すると、自分が築き上げてきたクリニックが大きく変わってしまうのではないか」という懸念がありました。そのため法人譲渡のメリットを丁寧に解説するとともに、理念を尊重してくれる法人の候補を厳選しました。

とくに今回のような個人から法人への譲渡の場合、手続きが複雑になり時間も要します。山田先生が慎重な性格だったことも考慮し、実際の譲渡手続きにおいても不安や疑問点を事前に想定し準備をしました。

また、買い手となった井上先生には、1回目のマッチングが破談した背景を事前に説明していました。そうすることで山田先生の不安を汲み取った上で、継承後のクリニックのビジョンをしっかりと伝えられたのです。

結果的に山田先生はご自身のクリニックの将来を安心して任せられると判断され、価格交渉にもスムーズに対応していただけました。

②密なコミュニケーションを取ったことで売り手と私たちに強い信頼関係ができた

本件は複数のM&A仲介業者とやりとりがありましたが、そのなかでも私たちを選んでいただけた要因としては、初回から最後まで密なコミュニケーションを取り続けたことだと考えられます。

まず、初回の面談は、山田先生の要望や不安点などを2〜3時間をかけて丁寧に聞き取りを行いました。

面談では、クリニックの経営に対する思いや将来の展望、譲渡に至った経緯などを深く理解することで、良いマッチングが生まれると私たちは考えています。

他のM&A仲介業者も山田先生への連絡を試みていたようですが、私たちは頻繁に最新の探索状況の報告など、こまめに連絡を取り続け、迅速に対応する私たちの姿勢に好意を持っていただけたそうです。

そのような背景もあり、数あるM&A仲介業者のなかから私たちを選んでいただけました。

③売り手の譲渡への視野が広がったことで良いマッチングにつながった

本件で大きなポイントとなったのは、売り手側の条件緩和です。

当初、「女性医師 × 個人の先生 × 専門医を持っている × 美容科の経験もあり」という条件にこだわっていました。最適なマッチング先は見つかったものの、価値観のすり合わせが構築できずに破談となってしまいます。

そこから私たちは希望条件の本質を汲み取り、法人に譲渡した場合のメリット、理事長が男性だったとしても、実際に診療する医師は女性の可能性があることも丁寧に説明しました。

そして法人への譲渡も視野に入り、思いを汲み取って経営をしてくれる医療法人井上会とのマッチングにつながりました。

今回のように少し希望条件を変えるだけで、さらに良いマッチングにつながるケースは大いにあります。

なかなか良い譲受先に巡り合えないと悩んでいる方は、一度私たちにご相談ください。

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