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医院継承のM&A手数料の種類と相場は?費用を抑えるポイントも解説

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医院継承のM&A手数料の種類と相場は?費用を抑えるポイントも解説

医院継承を検討する際、多くの医師が気になるのが「M&Aにはいくら費用がかかるのか」という点でしょう。医院継承では、M&A仲介会社に支払う手数料のほか実費なども発生します。
本記事では、医院継承で発生するM&A手数料の種類や相場、費用を抑えるポイントについて詳しく解説します。

納得のいく医院継承を実現するためにも、まずは手数料に関する正しい知識を身につけていきましょう。

※本記事の税務・会計処理に関する記載は一般的な内容です。具体的な内容については税理士や仲介会社などの専門家にご相談することをおすすめします。

医院継承(M&A)で発生する手数料の種類と相場

医院継承のM&Aでは、さまざまな手数料が発生します。
その中でも、ここでは主に発生する手数料を6つ紹介します。

相談料

相談料は、M&A仲介会社に最初に相談する際に発生する費用です。
医院継承の可能性について話を聞いたり、簡単な評価を受けたりした際に請求されます。

【相談料の相場】 無料〜1万円程度

多くのM&A仲介会社では初回相談を無料で行っていますが、詳細な相談や複数回の面談になると有料となる場合もあります。
医院継承を検討し始めたら、まずは無料相談を行っている仲介会社を選んだほうが負担は少なくて済むでしょう。

着手金

着手金とは、正式にM&A仲介と契約を締結した際に支払う費用です。
M&A仲介会社が本格的に買い手側や売り手側を探し始める段階で請求されます。

【着手金の相場】無料〜200万円程度

近年は着手金を無料としている仲介会社も増えつつありますが、大手の仲介会社では50万円〜200万円程度の着手金を設定している場合もあります。

なお着手金は、万が一M&Aが成約に至らなかった場合でも基本的には返金されません。

中間報酬

中間報酬とは基本合意書の締結時に支払う費用のことで、売り手側と買い手側が基本的な条件について合意した段階で発生します。

【中間報酬の相場】成功報酬の10〜20%程度

中間報酬を設定している仲介会社では、最終的な成功報酬の一部を前払いとして受け取る形が一般的です。たとえば、成功報酬が1,000万円だった場合、中間報酬として100万円〜200万円程度を支払います。

ただ、基本合意書には法的な拘束力がないので、その後の売り手側と買い手側の商談次第では破談になる可能性もあります。
最終的に破談となった場合でも、中間報酬は返金されません。

月間報酬(リテイナーフィー)

月間報酬は「リテイナーフィー」とも呼ばれ、業務委託の契約期間中、毎月継続的に発生する顧問料のような手数料です。M&Aのプロセスでは資料作成や候補先との交渉、情報管理などの継続的な業務が伴います。

月間報酬は、これらの活動に対する報酬として支払われます。

【月間報酬の相場】月額30万円〜100万円程度

特に医院継承においては、売り手側の負担を考慮し、月間報酬は設定していないところが多いです。

デューデリジェンス費用

デューデリジェンス費用は、買い手側が売り手側のクリニックを詳細に調査する際に発生する費用です。
この費用はM&A仲介の手数料とは別に、調査を依頼する弁護士や公認会計士、税理士などの専門家に対して直接支払う実費にもなります。

【デューデリジェンスの相場】50万円〜300万円程度

デューデリジェンスの費用は、範囲や期間によっても大きく変わります。
個人経営のクリニックであれば比較的少額で済みますが、医療法人や複数の施設を持つ場合は高額になる傾向があります。

成功報酬

成功報酬とは、医院継承が正式に成約した際に支払う費用で、M&A手数料の中で最も大きな割合を占めます。

【成功報酬の相場】譲渡価格の3〜5%程度(レーマン方式が一般的)

成功報酬は後述するレーマン方式で計算されることが多く、譲渡価格が高くなるほど料率は下がる仕組みです。

医院継承(M&A)で手数料が発生するタイミング

医院継承(M&A)で手数料が発生するタイミング

医院継承における手数料の発生タイミングは、下記のとおりです。

発生タイミング手数料の種類
初回の相談時相談料
仲介業務委託契約の締結時着手金
契約期間中月額報酬
基本合意書の締結時(締結後)中間報酬・デューデリジェンス費用
最終契約の締結時成功報酬

手数料の発生タイミングを理解しておくことで、資金計画を立てやすくなります。
特に着手金や中間報酬は成約前に支払わなければならないので、資金の準備が必要です。

医院継承(M&A)における手数料は誰が支払うのか

M&Aの手数料を売り手と買い手のどちらが支払うのかは、仲介会社との契約形態によって決まります。
主に「両手取引」と「片手取引」の2つの方式があり、それぞれに特徴があるので詳しく解説します。

双方が支払う「両手取引」

双方が支払う「両手取引」

両手取引とは、1つのM&A仲介会社が売り手側と買い手側の両方を仲介する取引形態のことです。
この場合、売り手側と買い手側の双方が手数料を支払います。

両手取引のメリットは、仲介会社が両方の事情を理解しているため、条件調整がスムーズに進みやすい点です。
一方で、仲介会社の中立性に疑問が生じる場合もあります。

たとえば売り手側は取引価格を高くしたいと思い、買い手側はできる限り安くしたいと思うのが当然です。このようなケースでは両手取引の場合、仲介会社がどちらの利益を優先するのか、不明確になる可能性があります。

売り手側が支払う「片手取引」

売り手側が支払う「片手取引」

片手取引とは、M&A仲介会社が、FA(ファイナンシャル・アドバイザー)として売り手側または買い手側のどちらか一方と契約を結び、契約した側からのみ手数料を受け取る方式です。

片手取引では、それぞれのFAが依頼者の利益を最優先に考えるため、より公平な取引が期待できます。
ただし、FA同士の調整に時間がかかる場合もあります。

M&A手数料の計算方法はレーマン方式が一般的

医院継承の成功報酬は、ほとんどのレーマン方式で計算されることが一般的です。
レーマン方式の基本的な計算式は「報酬基準額 × 報酬料率」となります。
レーマン方式では、譲渡価格の規模に応じて料率が段階的に下がる仕組みになっています。

一般的な料率は以下のとおりです。

取引金額料率
5億円以下の部分5%
5億円〜10億円以下の部分4%
10億円〜50億円以下の部分3%
50億円〜100億円以下の部分2%
100億円超えの部分1%

たとえば、譲渡価格が3億円のクリニックの場合、成功報酬は「3億円 × 5% = 1,500万円」となります。
ただし比較的小規模なM&Aの場合、最低報酬額が設定されている場合もあります。

最低報酬額が設定されていた場合は、上記の計算結果よりも高額になるケースもあるので注意しなければなりません。

関連記事:レーマン方式の計算方法とは?M&Aの成功報酬の特徴をわかりやすく解説

M&Aの手数料が高額になる理由

医院継承(医業承継)にかかるM&A手数料は、時に数千万円単位に及ぶこともあり、なぜこれほど高額になるのか疑問に思う方もいるかもしれません。

M&Aの手数料が高額になる理由は大きく2つあります。

  • さまざまな専門家の人件費がかかるため
  • 成功報酬を採用しているため

それぞれ詳しく解説します。

さまざまな専門家の人件費がかかるため

M&Aでは仲介業務だけでなく、財務や法務、税務などの専門的な知識が必要になります。
M&A仲介会社は、これらの分野の専門家を社内に抱えているか、もしくは外部の専門家と提携をしています。

特にクリニックにおいては、経営本質として「非営利性」を求められるため、一般的な企業のM&Aに比べると医療法や診療報酬制度など、医療業界特有の規制に関する専門的な知識が必要です。

このため、一般的な事業承継よりも専門性の高い人材が求められ、人件費が高くなる傾向にあります。

成功報酬を採用しているため

多くのM&A仲介会社が成功報酬制を採用していることも、手数料が高額になる大きな要因です。
成功報酬制はM&Aが成約して初めて報酬が発生するため、依頼者にとっては初期費用を抑えられるメリットがあります。

しかし仲介会社側から見ると、成約に至らなかった案件については、それまで費やした時間や人件費などの費用コストが、一切回収できないというデメリットがあるわけです。

つまり、一つの成功案件で、複数の案件を動かすための費用を回収する必要があるため、必然的に成功報酬額は高く設定されるわけです。

医院継承(M&A)における手数料を抑えるポイント

M&A手数料はどうしても高額になりがちですが、いくつかのポイントを押さえれば、負担の軽減も可能です。

ここでは主に4つのポイントを紹介します。

  • M&A仲介会社は複数に相談する
  • 医院継承の規模から仲介会社を選ぶ
  • 発生する手数料の種類を確認する
  • 事業継承・引継ぎ補助金を活用する

それぞれ解説します。

M&A仲介会社は複数に相談する

手数料の料金体系は仲介会社によって大きく異なるため、必ず複数の仲介会社に相談をして比較することが重要です。
費用について不安がある場合には、初回の相談時には以下の点を確認しておくとよいでしょう。

  • 着手金の有無と金額
  • 成功報酬の計算方法
  • 最低報酬額の設定
  • 中間報酬や月額報酬の有無
  • デューデリジェンス費用の負担方法

医院継承の規模から仲介会社を選ぶ

M&A仲介会社には大規模な案件を得意とするところから、中小規模の案件に特化しているところまで、さまざまな特徴があります。
特に比較的小規模なクリニックの継承を検討している場合は、注意しておくべき点があります。取引金額が小さいと、一般的なレーマン方式による手数料は、割高になる可能性があるためです。

また「最低報酬額」が設定されている場合もあり、たとえば2,000万円などの最低報酬額が設けられていると、小規模な取引では譲渡対価の大部分が手数料に消えてしまう事態にもなりかねません。

仲介会社によっては固定報酬型を採用している場合もあるため、小さな取引の場合にはそちらを検討してみましょう。

ただし医院継承の場合、固定報酬型を採用している仲介会社は少ないのが現状です。

発生する手数料の種類を確認する

仲介会社によって、発生する手数料の種類は大きく異なります。
たとえば着手金や月額報酬を設定していない仲介会社を選んだほうが、成約に至らなかった場合のリスクを軽減できます。

契約前に以下の点を必ず確認しておきましょう。

  • どの段階でどの手数料が発生するか
  • 成約に至らなかった場合の返金規定
  • 追加で発生する可能性のある費用

特に「完全成功報酬制」を採用しているM&A仲介会社なら、M&Aが成約するまで費用が一切発生しないので安心です。

しかし、完全成功報酬制であったとしても、あらかじめ費用の内訳は確認しておくことが重要です。

事業継承・M&A補助金を活用する

国や地方自治体は、中小企業の事業承継を支援するための補助金制度を設けており、医院継承(医業承継)もその対象となる場合があります。

代表的なものに「事業承継・M&A補助金」があり、これはM&Aにかかる費用の一部を補助してくれる制度です。

公募期間や申請要件があるため、事業承継M&A補助金の公式サイトで最新の情報を確認し、利用できる制度は積極的に活用することを検討しましょう。

ただし医療法人は利用できないといった条件もあるため、詳しくは専門家にご相談することをおすすめします。

M&Aで発生した手数料の会計・税務処理の方法

医院継承(医業承継)のM&Aで支払った手数料は、会計上および税務上、適切に処理しなければなりません。会計・税務処理は売り手側と買い手側、また経営形態が個人開業医か医療法人かによっても異なります。

ここでは、売り手側と買い手側にわけて簡潔に解説します。

関連記事:〈税理士解説〉医療法人の病院やクリニックを承継する際に税金で気をつけること

売り手側

売り手側がM&A仲介会社に支払った手数料は、譲渡を成立させるために直接要した費用として扱われます。経営形態によって、その具体的な処理方法が異なります。

関連記事:クリニック譲渡時の課税とは?一般社団法人を活用する際の注意点を解説

個人開業医の場合

個人開業医が事業譲渡によってクリニックを売却した場合、その譲渡益は「譲渡所得」として課税されます。この際、M&A仲介会社に支払った手数料は、譲渡所得を計算する上での「譲渡費用(必要経費)」として、譲渡価額から控除ができます。

医療法人の場合

医療法人が事業譲渡のスキームでクリニックを売却した場合、M&A仲介手数料は、その事業年度の「損金」として計上が可能です。

一方で医療法人の経営権そのもの(出資持分の譲渡など)を売却した場合、手数料の処理は少し複雑になるため税理士に相談することをおすすめします。

買い手側

買い手側が支払ったM&A手数料は、クリニックという事業用資産を取得するために付随して発生した費用として扱われます。こちらも経営形態によって処理が異なります。

個人医師の場合

個人医師がクリニックを買い取った場合、M&A手数料は資産の取得価額に含まれ、減価償却として経費計上します。建物や医療機器などの資産種別に応じて、適切な償却期間で処理します。

医療法人の場合

医療法人が買い手となる場合も、個人医師の場合と同様に、支払ったM&A手数料は取得した資産の「取得価額」に算入します。

事業譲渡であれば建物や医療機器、営業権などの取得価額に含め、それらを減価償却資産として会計処理します。

株式譲渡によって他の医療法人を子会社化した場合は、子会社株式の取得価額に手数料を含めますが、こちらは減価償却の対象とはなりません。

M&A手数料に関する注意点

M&A仲介会社との契約を進めるにあたっては、手数料に関して特に注意すべき点がいくつかあります。
後から「こんなはずではなかった」とならないためにも、契約書の内容を隅々まで確認し、不明な点は事前に解消しておくことが重要です。

ここでは、手数料に関して特に留意しておきたい3つの注意点について解説します。

返金されない手数料がある

M&Aの手数料の中には、たとえ交渉が途中で破談になったり、最終的に成約に至らなかったりした場合でも返金されないものがあります。

具体的には契約時に支払う「着手金」や、基本合意締結時に支払う「中間報酬」などです。
特に複数の買い手候補と並行して交渉を進める場合には、デューデリジェンス費用もそれぞれに発生する可能性があります。

仲介会社の業務範囲を確認しておく

契約するM&A仲介会社の手数料にどこまでの業務が含まれているのか、確認しておくことも重要です。
たとえばデューデリジェンスの実施だけでなく、弁護士や会計士といった外部の専門家による業務が必要となる場面もあります。

特に医院継承においては、医療法の規制が複雑なため専門家によるサポートも不可欠です。

これら専門家の費用が仲介手数料に含まれているのか、それとも別途実費として請求されるのかを事前に確認しておかないと、想定外の追加費用が発生する可能性があります。

最低報酬額を設定されている場合がある

レーマン方式で計算した成功報酬が一定額を下回る場合、最低報酬額が適用される仲介会社もあります。

一般的に最低報酬額として設定されている金額は、500万円〜2,000万円程度です。

特に小規模なクリニックの場合、レーマン方式の計算上の成功報酬よりも最低報酬額の方が高くなる可能性もあります。契約の前に最低報酬額の有無や金額を確認しておくことも重要です。

出費を抑えるためにM&Aの手数料は確認しておきましょう

医院継承では、M&A仲介手数料をはじめとしてさまざまな費用が発生します。
手数料の種類や相場を理解し、複数の仲介会社を比較検討することで、コストを抑えながら適切なサポートを受けられます。

医院継承を成功させるためには費用面だけでなく、仲介会社の実績や専門性も重要な判断材料です。
特に医院継承では、医療業界特有の知識に精通した仲介会社選びが重要です。

私たちエムステージマネジメントソリューションズでは、医療業界での豊富なM&A経験を活かし、医師の皆様の医院継承をトータルでサポートしています。

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この記事の監修者

田中 宏典 <専門領域:医療経営>

株式会社エムステージマネジメントソリューションズ代表取締役。
医療経営士1級。医業承継士。
静岡県出身。幼少期をカリフォルニア州で過ごす。大学卒業後、医療機器メーカー、楽天を経て株式会社エムステージ入社。医師紹介事業部の事業部長を経て現職。
これまで、病院・診療所・介護施設等、累計50件以上の事業承継M&Aを支援。また、自社エムステージグループにおけるM&A戦略の推進にも従事している。
2025年3月にはプレジデント社より著書『“STORY”で学ぶ、M&A「医業承継」』を出版。医院承継の実務と現場知見をもとに、医療従事者・金融機関・支援機関等を対象とした講演・寄稿を多数行うとともに、ラジオ番組や各種メディアへの出演を通じた情報発信にも積極的に取り組んでいる。
医療機関の持続可能な経営と円滑な承継を支援する専門家として、幅広く活動している。
より詳しい実績は、メディア掲載・講演実績ページをご覧ください。

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