【北海道×内科】地方都市でも多くの買い手が集まり高額譲渡に成功した事例

【北海道×内科】地方都市でも多くの買い手が集まり高額譲渡に成功した事例
エリア 北海道
診療科目 内科
運営組織 医療法人
譲渡理由 高齢化
運営年数 28年

地方にあるクリニックを経営している先生は、「このようなところに買い手候補が来てくれるだろうか」と心配されることがよくあります。しかし、地方は地元に根付いていて競合が少ないなどの理由から、比較的高収益な経営を続けているクリニックも少なくありません。そのため、経営状態が良ければ地方であっても買い手候補が多く現れる場合があります。

今回は、優良経営を続けてきた地方クリニックの譲渡事例を紹介します。

【売り手側】地方でも売上が2億円を超える高収益クリニック:医療法人ZA会、Z理事長(72)

ZAクリニック(医療法人ZA会による運営)は、北海道の人口15万人に満たないX市の中心部にある内科クリニックです。

理事長のZ先生が1990年代に独立開業しました。Z先生の丁寧な診療と競合の少なさから、開業後は順調に患者を増やし、近年では2億円程度の売上高となっていました。医師はZ先生のみで、他には看護師、事務など5名のスタッフが在籍していましたが、地方部にあるこの規模のクリニックとしてはかなりの高収益でした。

しかし、長く地元住民に頼られてきたZ先生は70歳を超え、心臓に軽度の疾患を抱えるようになりました。直近の1年ほどは診療日を週4日に減らしていましたが、まだ余裕があるうちに医業承継を行うことを決意します。

Z先生の親族には医師がいないため、M&A譲渡してリタイアを検討することにしました。

【買い手側】公立病院の勤務医から、開業医として独立を目指すH先生(38)

買い手となったのは、北海道Y市の公立病院の内科で勤務医として働いていたU先生です。U先生は以前より開業志向があったものの、人口の減少が著しいY市内や近隣での開業には躊躇していました。そこで、対象を北海道全域に広げて承継案件を探していたところ、ZAクリニックの紹介を受けました。

X市は近隣に某大手企業が進出してきたことにより、北海道の中では珍しく流入人口が多く、人口減少が比較的緩やかでした。

ZAクリニックはもともと高収益経営ですが、これまでの実績に加えてX市の人口動態などから、中長期的な将来も地域に安定した医療需要が見込めたため、U先生はZAクリニックの承継に強い意欲を示しました。

スキームの概要と経緯

医療法人ZA会は、出資持分のある医療法人です。

売り手のZ先生への譲渡対価の支払いは、一般的に用いられる出資持分の対価+退職金の方法が用いられました。譲渡対価の支払い後に、法人理事や医療法上の社員を交替して、ガバナンスを移譲します。

このようなスキームの場合、出資持分対価と退職金をどの程度のバランスで支払うのかはケースバイケースですが、今回は医療法人ZA会が無借金の優良な財務状態であったことから、対価のほとんどを退職金として支払い、出資持分の譲渡対価は少額としました。このような割合にすることで、売り手のZ先生には税務的なメリットが生じます。

また、退職金の支払いにより欠損金を計上することで、譲渡後の医療法人運営も税務面で有利となります。

強い買収意志を持つ買い手が高額な対価を提示

本事例では、売り手クリニックが高収益であったことから、すぐに複数の買い手候補が集まりました。

U先生がオファーした時点では、先にオファーをしていた買い手候補A氏との交渉がある程度まで進んでいたため、当初Z先生はA氏を第一候補と考えていました。オファーに遅れを取ったU先生は、このままでは買い手がA氏に決まってしまいそうだと考え、提示する譲渡対価を引き上げることにしました。

ZAクリニックを一般的なM&A譲渡対価の算定方法で計算すると、営業権は1億円程度が妥当な金額だと考えられます。地方にあるこの規模のクリニックとしてはかなり高額ですが、A氏をはじめとした他の買い手候補は、その算定に基づいて1億円での譲り受けの意向を示していました。

それに対して、U先生は1.5倍の1億5,000万円の対価を提示したのです。他の買い手候補はどんなに増額しても1割増し(1億1,000万円)程度と想定されたため、U先生が2割増の1億2,000万円で提示すれば十分に優位な交渉ができると考えられたためです。

しかしU先生は「必ず譲り受けたいし、ここで金額を妥協して、交渉に失敗して後悔したくない」と仰って1億5,000万円の価格を提示しました。Z先生も、その金額からU先生のぶれない意思が感じられたようで、U先生を第一候補として交渉を進め、最終契約まで至りました。

引き継ぎ期間なしでの承継

売り手のZ先生は長年開業医として忙しく働いてきたため、奥様とレジャーに出かけたりする機会がほとんどなかったことに、後悔の念を抱いていました。

リタイア後は、元気に動けるうちに、海外旅行などを夫婦で楽しみたいという強い想いがあったことから、急いで譲渡し譲渡後は完全にクリニック運営から手を引きたいという希望を当初から提示していました。

クリニックの承継の場合、承継後は一定期間、売り手が非常勤で診療をするなどで買い手と併走し、引き継ぐ期間を設けることが一般的です。しかし、今回は上記のようなZ先生の希望から、引き継ぎ期間を一切設けないことが条件になりました。

そのため、Z先生はクリニック運営経験のある買い手が望ましいと考えており、A氏もその条件に該当していました。

しかし、Z先生とU先生が話をする中で、金額面での交渉に加えて、U先生にクリニック経営に対する熱意とビジョンがあり、安心して任せられると判断し、最終契約に至りました。

現在は承継が完了し、U先生が運営・診療を行っています。ほとんどの患者はこれまで通りに通院をしていますが、院長が交代したことで若干の患者数の減少は見られているそうです。ただし、そのような属人的な面での患者減少は、通常一時的なものです。

U先生は、誠実な診療を通じて地域住民の信頼を得ることに加えて、新たに電子カルテを導入するなどして経営効率化を進め、クリニック運営の向上に挑戦している最中です。

本事例のポイント

最後に、本事例のポイントをまとめます。

①地方部でも、経営内容が良いクリニックには多くの買い手候補が集まる

北海道でも、札幌市などの都市部は別として、地方都市だと長期的な将来性の面から買い手候補が集まりにくいのではないか、あるいは、買い手がいても譲渡対価が低めになるのではないかという懸念をもたれるかもしれません。

しかし、地方部でもあっても、収益性が高く経営実績が良ければ買い手候補は集まります。そして、買い手候補が複数集まれば、相応に高額な譲渡対価で評価されます。

②場合によっては引き継ぎ期間なしでも、リタイア承継が可能

クリニックの譲渡では、数週間から数か月の引き継ぎ期間を設けて、売り手の先生が週に1~2日程度のペースで非常勤として診療をしたり運営の補佐をしたりするケースがよく見られます。

しかし、売り手の先生が高齢または体調不良である場合、承継するために引き継ぎ期間を設けることが負担に感じられるケースもあるでしょう。そのような場合は、本事例のように引き継ぎ期間を全く設けないという条件での譲渡も可能です。

ただし、承継した買い手や患者の不安を考えると、多少でも引き継ぎ期間を設けた方が良いでしょう。 

③買い手が強い譲り受け希望を持つなら、迅速でぶれない意思決定が重要

クリニックの承継案件はたくさんありますが、高収益を続けてきて今後もそれが見込まれる案件の割合は少ないものです。そのため、そのようなクリニックを承継したいと考えるなら、買い手は迅速に意思決定をし、最後までぶれずにその意思を貫くことが大切です。

今回の買い手となったU先生も、そのような明確な意思を対価の引き上げという形で提示したことで、他の候補者に決まりかけていたZAクリニックを譲り受けることができました。

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