【関東×皮膚科】開業への明確なビジョンが決め手に。
【関東×皮膚科】開業への明確なビジョンが医院継承の決め手に。
エリア | 関東 |
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診療科目 | 皮膚科 |
運営組織 | 医療法人 |
譲渡理由 | 事業整理 |
運営年数 | 8年 |
目次
【売り手側】皮膚科の管理医師探しを断念した医療法人やまだ会
売り手側は、関東で内科、総合診療科などを中心に3つのクリニックを経営している医療法人やまだ会(仮称)です。
経営していた皮膚科クリニックの管理医師が開業することになり、代わりとなる管理医師(院長職)を探していました。当然のことながら、医師が不在になるとクリニックの運営は立ち行かなくなります。
しかし、2年程探しても適任を見つけることができず、結局皮膚科の管理医師を探すのは断念し、皮膚科クリニックのみを切り分けて譲渡することに決めたのです。開業意欲が高く、職員の雇用を継続してくれる医師に譲渡することを希望していました。
【買い手側】父親の事業譲渡の経験から承継開業を希望した小野先生(36歳)
譲渡先として決定したのは、30代半ばの小野先生(仮名)です。
小野先生には、承継開業への明確なビジョンがありました。実は小野先生の父親も開業でしたが、小野先生が高校生の頃に急逝してしまい、運営していたクリニックを雇用を継続したまま地域の医療機関に引き取ってもらったという経緯があります。
その過程を間近で見ていた小野先生は、幼いながらも「地域の患者さんが困らずに済む事業譲渡」という方法があることを知り、感動したそうです。この経験がきっかけとなり、ご自身が医師となった際には、後継者不在で困っている医療機関を引き継ぐことで地域の患者さんたちを助けたいと思うようになったのです。
現地視察とトップ面談を行った際には、売り手側である医療法人の理事長が小野先生に対して「真面目な先生」という好印象を持ち、承継を希望する理由にも共感されていました。小野先生だったら職員も安心して働けるということを実感されたようです。
譲渡する皮膚科クリニックは、地域のニーズが高く診療数も多いという特徴がありましたが、「小野先生なら地域の患者さんのためにしっかりとやってくれるだろう」と思われたことも決定要因の一つでした。
2名体制で皮膚科診療を行うことで収益性アップ
実は小野先生が皮膚科の専門医ではなかったため、新たに皮膚科医を採用して診療する体制を作りました。クリニックの規模が大きく人件費も固定費も膨大でしたが、2名体制にすることでより多くの患者を診療し、収益を確保することが狙いです。
クリニック全体のマネジメントに加え、脱毛など自費で行う診療については小野先生が担当し、保険診療の部分を採用した皮膚科医が担当する体制を構築しました。
融資に対する事業計画は、返済プランを3パターンほど作成し、どの場合でも返済できることを記載しました。結果として、融資を受けられるようになり、承継後も心配なく運営できる状態を作ることに成功したのです。
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本事例のポイント
クリニックの承継は1人の医師で行うことが比較的多いですが、本件は2名体制で診療することを決めて承継できた事例です。以下に成功のポイントをまとめます。
①事業計画書の作成に尽力したこと
承継にあたっては、小野先生が若手ということもあり、事業計画書の作成に力を注ぎ、借入をサポートしました。
事業計画書を作成する際には、引き継ぐクリニックの経営状況について、小野先生へできるだけ分かりやすく情報を開示し説明しました。承継によって収益が増加する部分と減少する部分をシミュレーションし、さらに伸ばすための取り組みについても提案したということです。
また、人件費が一部不適切な箇所があったため承継をきっかけに再設定し、年間のコスト削減にも成功しています。この事業計画書をもとに、金融機関に向けて事業の継続性を説明したところ、最終的に借入に成功しました。
引き継ぎにあたり発生する作業を丁寧にスケジュールに落とし込み、やるべきことをリストアップし、問題なく引き継ぎができました。
②売り手と買い手の協力関係を構築したこと
本件の特徴として、売り手と買い手に協力関係が築かれていたことが挙げられます。
承継開業にあたり新たに看護師や事務員などの職員を採用する必要がありましたが、譲渡先である小野先生は多忙であることに加えて、人材採用の経験がありませんでした。そこで、売り手側である医療法人が新規職員の採用や教育にも対応してくれたのです。
このように、売り手と買い手の協力関係があったからこそ、無事に医業承継を行うことができました。
譲渡後の人材採用や育成について懸念がある方は、一度専門家に相談してみてはいかがでしょうか。