医業承継でのトップ面談をスムーズに進めるために

契約関連 2023/07/07

医業承継における第三者承継(M&A)では、その交渉プロセスがある程度進んだ段階で、売り手と買い手の代表者同士が直接会って話し合う場が設けられます。これは「トップ面談」と呼ばれます。

トップ面談は、その後のデューデリジェンス(買収監査)等と比べると、それ程多くの時間が割かれるわけではありませんが、医業承継の成否に関わる重大なイベントです。

そこで本記事では、医業承継でのトップ面談をスムーズに進めるために、売り手と買い手が準備しておくとよい点や注意すべき点などについて解説します。

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トップ面談とはどのようなものか

M&Aによる医業承継のプロセスにおいて、売り手側の医療機関の代表者と買い手側の代表者とが直接会って、医業承継に向けた話し合いをおこなうのが、「トップ面談」です。売り手や買い手が医療法人であれば理事長、個人経営の診療所などであれば院長が、その任を担います。

トップ面談の目的

トップ面談の目的は、一般的には、具体的な譲渡条件等を交渉することではありません。売り手と買い手の双方が互いの現状を認識し、相互理解を深めることがその目的です。

特に、売り手側の院長にとっては、長年育んできた地域医療を託すにあたり、相手がどのような医療理念を持ち、どのような経営ビジョンや診療方針を描いているのか、また、どんな人間性なのかといったことは、非常に重視されます。

そこで、概要書などの書面では知ることのできない疑問を解消し、お互いの医療機関の理念について、また、トップの考え方や人となりについて、相互に理解を深めあうためにトップ面談の場が設けられるというわけです。

トップ面談がおこなわれるタイミング

トップ面談にいたるまでに、医業承継M&Aの流れは、一般的に以下のようになります。

  1. 医業承継について仲介会社に相談し、承継の時期や従業員の扱い、承継後のビジョンなどを話し合う
  2. 仲介会社とNDA(秘密保持契約)を締結した上で、医療機関の現状を把握するための資料(財務書類など)を提出する
  3. 譲渡予定の医療機関の価値評価(譲渡価格の推定)、譲渡スキームなどを検討する
  4. 売り手が特定されない匿名性の高い簡易的な資料(ノンネームシート)を仲介会社が作成し、買い手候補を探す(買い手候補のリストを、売り手候補も確認する)。
  5. 興味を示した買い手候補とは、NDAを締結した上で、より詳しい資料(企業概要書)を開示し、医業承継を検討してもらう
  6. 譲受けを具体的に検討する買い手候補は、希望の譲渡価格や希望条件などが記載された意向表明書を、売り手候補に提出する

この、1~6までのプロセスを経た後で、売り手がこの買い手候補のトップと会って話してみたいと判断した場合に、トップ面談がおこなわれます。

なお、トップ面談ではクリニックの経営理念や事業内容、企業文化などが話し合われますが、相手側を十分に理解できなかった場合には、2回以上の面談がおこなわれることもあります。

トップ面談の出席者

トップ面談の出席者は、売り手と買い手双方の代表者と、仲介会社の担当者が出席しておこなわれます。秘密保持の観点から従業員等が出席することは基本的にありませんが、クリニックの状況等を買い手候補に伝える上で必要な場合は、理事長以外の役員などが出席することもあります。

トップ面談において売り手が準備しておくと良いこと・注意点

トップ面談に臨むにあたって、売り手が準備しておくとよいことや、注意すべき点は、主に以下の3点です。

  • 質問に対して正直に正確に答える
  • 直接の条件交渉は控える
  • できるだけ前向きな返事をおこなう

質問に対して正直に正確に答える

トップ面談は、お互いの相性や価値観、経営理念などを共有し、相互理解を深めることを目的としておこなわれます。その際に、こちらが聞かれたくないことや言いたくないことを聞かれる場合もあります。

ここで事実と異なる情報を伝えたり、誇張した表現をしたりすると、後でトラブルが生じてしまいかねません。実際に、デューデリジェンス(買収監査)によって事実と異なる情報が明らかになることが多く、それが買い手側の不信感を招き、医業承継が中断されることもあります。

トップ面談を成功させるためには、双方の信頼関係と誠実な対応が必要です。したがって、買い手からの質問に対しては、正直かつ正確に答えることが大切です。

直接の条件交渉は控える

基本的に、トップ面談は両者の信頼関係を築く場であり、譲渡価額や条件などを交渉して詰める場ではありません。両者の間で話が弾み一気に条件の話まで進む場合もありますが、相手からの不信感を招かないためにも、トップ会談でいきなり条件交渉をおこなうようなことは控えた方が良いでしょう。

できるだけ前向きな返事をおこなう

買い手候補からの質問に対し、「それはできません」「無理です」などのネガティブな返事を繰り返した結果、相手との信頼が築けずに破談となってしまうことがあります。

そうならないために、「○○であれば検討できます」のように、できるだけ前向きな返事をおこなうように心がけましょう。

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トップ面談において買い手が準備しておくと良いこと・注意点

売り手の医療機関の状況にもよりますが、一般的には、医業承継は売り手市場、つまり1件の売り手に対して、複数の買い手候補が登場して、競合することになるケースが多いでしょう。そこで、トップ面談において、買い手候補は、自分のところに譲渡してもらうことで、いかに売り手の医療機関にとってのメリットがあるのかということを、的確にアピールしなければなりません。そのために下記のような点について、入念に準備をしておきましょう。

  • 医業承継後のビジョンを明確にしておく
  • 事前に尋ねるべき内容や共通の話題などを整理しておく
  • 売り手に寄り添い相手を尊重するように心がける

医業承継後のビジョンを明確にしておく

トップ面談では、売り手側から「なぜ当院に興味を持ったのか?」「もし医業承継が実現した場合、どのような将来のビジョンを描いているのか?」「M&Aで経営統合されることで、相互にどのようなメリットや相乗効果があると考えているのか?」などの質問がされます。

こうした売り手側の質問に対し、的確な回答ができるよう、事前に医業承継後のビジョンやシナジー効果等を明確に答えられるようにしておくことは必須です。

事前に尋ねるべき内容や共通の話題などを整理しておく

トップ面談の前には、相手のウェブサイトや経済情報サービスなどから、売り手に関する基本的な情報を収集しておくように心がけましょう。自院についての基本的なことも知らないのかと売り手に思われては、譲受けは難しいでしょう。

また、情報収集は売り手の医療機関に関する企業情報だけでなく、院長個人に関する情報も把握することが大切です。例えば、卒業校や所属学会、医局などに関する人脈、執筆論文などの研究テーマに共通の話題がないかなどです。

なお、こうした質問内容の整理は仲介会社のアドバイザーに相談すれば何をどうすべきかをある程度教えてもらうこともできるでしょう。

売り手に寄り添い相手を尊重するように心がける

医療機関の医業承継件数は年々増加しており、医業承継への理解も少しずつ広まっています。しかし、まだ「買い手の方が優位である」という大きな誤解を持つ人も少なからずいます。

実際の医業承継の現場では、売り手と買い手は完全に対等な関係にあります。医業承継が成約し、PMI(医業承継後の統合プロセス)を成功させるためには、お互いの信頼関係が不可欠です。

一般的に、複数人で検討を進める買い手側とは異なり、売り手側となるクリニックは、院長1人または院長夫妻2人だけで検討を進める場合も珍しくありません。そのような場合、売り手は孤独感や不安を感じている可能性が高いため、売り手側に寄り添う感情的な配慮が必要です。

まれに、「買ってやる」といった尊大な態度になってしまう買い手候補がいます。これはもちろん厳禁ですが、そのように受け取られかねない言動にも注意しましょう。些細な問題にこだわりすぎず、売り手に対して過度な質問をしないように注意しましょう。いずれにしても、トップ面談は細かい条件を詰める場ではありません。

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まとめ

「“算盤勘定”があうなら、誰に病院を譲ってもかまわない」と考える理事長は、少数派でしょう。多くの医療機関経営者にとって、医業承継は経済的な合理性だけで割り切れるものではなく、医療貢献についての理念の承継こそ、医業承継のポイントになるものです。

だからこそ、M&Aにおいても双方の人となりを知るためのトップ面談は、とても重要なプロセスになります。その点を十分に理解して、必要な準備を怠ることなく臨むようにしましょう。

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